情報提供資料 DIAMコラム(2015/2/27) 『今世紀最高値更新後の日本株の行方を考える』 今年に入り各国で積極的な金融緩和策が打ち出さ れ、緩やかに世界的な景気回復が進み、堅調な展 開となっている主要国の株式。その中でも今回は、 第2次安倍政権から成長戦略が打ち出されて3年目 を迎え、今世紀最高値を更新した日本株の投資環 境を考えてみたいと思います。 今後の株価を見るには、 何に注目すればいい んだろう? 【最高益更新が続く】 日本企業の2014年度の第3四半期決算が出揃いました。 2014年度(通期)は、国内で消費増税など逆風がありまし たが、米国を中心とした世界的に緩やかな景気回復と為 替の円安効果などを背景に、経常利益では2012年度より 3年連続の増益を達成し、主要企業は最高益を更新する 見込みです。業種別には輸送用機器、電気機器、機械な どの製造業の寄与が大きくなっています。また、2015年度 については、足元で日銀が流動性を供給する中、消費増 税の先送りと緊急経済対策による国内景況感の下げ止ま りに加えて、海外現地法人売上の増加基調継続と輸出環 境の改善効果により4年連続増益となる可能性が高いと考 えられます。 【日本企業の売上高と経常利益の推移】 (期間:2005年度~2015年度) (兆円) (兆円) 1,000 100 90 経常利益(左軸) 900 80 売上高(右軸) 800 70 700 60 600 50 500 40 400 30 300 20 200 10 100 0 0 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 (年度) ※データの対象は東証1部上場企業(除く金融)。 ※2014年度および2015年度は予想値。 (出所:各種データをもとにDIAMアセットマネジメント作成) 【コスト抑制効果で損益分岐点は低下傾向】 【日本企業の損益分岐点比率】 (期間:2000年度~2014年度) 日本企業の損益分岐点比率*は固定費抑制効果により 直近の4四半期でみると、全体が65.8%、製造業で 65.9%、非製造業で62.6%とここ10年では最低水準にあ ります。今後、緩やかな経済成長に伴い売上高が増加す れば、賃上げなどで費用が増加しても増益基調が維持 できる環境にあるものと考えられます。 100% 95% 90% 全産業(除く金融) 製造業 非製造業 85% 80% 75% *損益分岐点比率 売上高に占める損益分岐点の売上高の比率のことをい い、低いほど収益力が高く、利益が出やすいことを示し ています。また、損益分岐点とは、企業の損益が0とな る売上高をいい、下記の式により計算されます。 損益分岐点 = 固定費 ÷ (1 - (変動費÷売上高) ) 70% 65% 60% 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 (年度) ※データの対象は資本金10億円以上、除く金融。 ※2014年度は9月までのデータ。 (出所:財務省のデータをもとにDIAMアセットマネジメント作成) ※当資料は、将来の市場動向等を示唆・保証するものではありません。 ※巻末のご注意事項等を必ずご確認ください。 商 号 等 / DIAMアセットマネジメント株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第324号 加入協会/一般社団法人投資信託協会 一般社団法人日本投資顧問業協会 1/4 150226情報コラム日本株-1 DIAMコラム 【厳しく問われる手元資金の使途】 【日本企業の資金使途】 (2013年度) 連続増益を達成する中、日本企業は現在、潤沢な 手元資金を保有している状況にあります。 2013年度の日本企業の資金使途の内訳は研究開 発が22%、設備投資が56%、M&Aが7%となる一方で、 自社株買いが5%、配当が10%と株主還元とされる部 分が15%となっており、株主還元に積極的な米欧企 業などと比較すると低いとされる状況です。 100% 自社株買い 4.8% 90% 配当 9.8% 80% M&A 6.8% 70% 研究開発 22.3% 60% 2月中旬には、アクティビスト(物言う投資家)が、日 本の超優良機械メーカーに、「株主価値のため何もし ていない不合理な資本構造」を指摘し、大規模な自 社株買いを書簡で求めました。一方、同社社長は手 元資金の有効活用に関して「本業を伸ばす地道な活 動で企業価値を高める」と応酬しました。株式市場で は、このコメントが好意的に受け止められ、同社株は 堅調な展開となりました。 50% 成長投資 85.3% 40% 30% 20% 株主還元 14.6% 設備投資 56.4% 10% 0% ※東証1部上場企業のデータを基に集計。 ※端数処理の関係で100%にならない場合があります。 このように、上場企業は、その企業価値最大化のた めの手元資金の資金使途が厳しく問われ、その使用 使途によっては株価が左右される動きはますます強 まると考えられます。 (出所:各種データをもとにDIAMアセットマネジメント作成) ここがポイント! 企業価値を最大化するた めに、企業の資金使途が、 ますます問われる時代な んだね! 【日本企業の株主還元の推移】 (期間:2005年度~2015年度) (兆円) (兆円) 20 【自社株買い、配当は好業績を通じて増加予想】 日本企業は、2013年度で350兆円と大規模の自己 資本を有しています。好業績に比例し日本企業の株 主還元も注目されていますが、2013年度の配当額は 約8.2兆円、自社株買い金額は2.7兆円となっていま す。配当額は最高金額を更新していますが、自社株 買い金額は過去最高である2006年度の約6.4兆円に 及ばない状況です。配当金額は2014年度に約9.3兆 円、2015年度10.9兆円、自社株買いは2014年度3.4 兆円となり、株主還元性向*は2013年度39.5%、2014 年度41.6%、2015年度45.8%と上昇傾向をたどると考 えられます。 400 18 自社株買い(左軸) 380 16 配当総額(左軸) 360 14 自己資本(右軸) 340 12 320 10 300 8 280 6 260 4 240 2 220 0 200 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 (年度) ※東証1部上場企業(連結ベース)のデータを基に算出。 ※2014年度および2015年度については予想値。 ※自己資本については2014年度までのデータ。 *(配当総額+自社株買い)÷税引利益 (出所:各種データをもとにDIAMアセットマネジメント作成) ※当資料は、将来の市場動向等を示唆・保証するものではありません。※巻末のご注意事項等を必ずご確認ください。 2/4 DIAMコラム 【国内企業のROE・ROAとPBRの推移】 (期間:2004年度~2014年度) 【利益成長と収益性に沿った株価形成が期待される】 (%) 安倍政権が掲げている成長戦略の目玉の一つとい われている「コーポレートガバナンス・コード」の策定に 伴い東証で制度整備が進められています。2015年6 月からの適用後は、上場会社は今後説明責任、情報 開示などがこれまで以上に求められることとなります。 また、ROE(株主資本利益率)改善も注目されていま す。議決権行使助言大手のISSでは、原則過去5期の 平均ROEが5%を下回る企業のトップの選任案に反対 を推奨する動きをみせており、経済産業省の「伊藤レ ポート」でも「日本企業は最低限8%を上回るROEをコ ミットすべき」としています。さらにJPX日経インデックス 400の構成銘柄のROE単純平均(2011∼2013年度) は11.2%となっており、ROEを意識した経営を求めら れる環境になっているとみられます。 12 ROE(左軸) ROA(左軸) PBR(右軸) 10 (倍) 3.5 3.0 8 2.5 6 2.0 4 1.5 2 1.0 0 0.5 -2 0.0 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 (年度) ※ROEは東証1部上場企業のデータを集計し算出。 ※PBRとROAはTOPIX(東証株価指数)を使用。 ※TOPIXのデータについては2014年度は、12月末の数字を使用。 (出所:各種データをもとにDIAMアセットマネジメント作成) また、ROA(総資産利益率)も含めた収益性改善や 株主価値最大化も注目されています。このようなことか ら、今後日本企業が米国企業並みの投資効率で高 収益を実現する期待がさらに強まり、それに沿った株 価形成がなされるものと予想しています。 2,500 TOPIX(東証株価指数)のROEとPBR(株価純資産 倍率)の推移を見ると、2005年度から2014年度(2014 年12月まで)はPBRは1.0倍∼2.0倍で推移しています。 ROEが8%以上確保できる局面であればPBRは1.2倍 が下値の目途として考えられ、収益性改善の兆しが 鮮明になった場合は株価のバリュエーション上昇の 期待もできると考えています。 日本企業の企業努力が奏功する兆しが多く出てく れば、日本株が米国株にキャッチアップすると期待さ れます。米国株と比した日本株の出遅れを見る指標 であるST倍率は2015年1月末時点で1.41倍となってい ますが、2005年12月末∼2015年1月末の平均値1.27 倍に回帰していくと考えられます。 【TOPIX・S&P 500種指数とST倍率の推移】 (期間:2005年12月末~2015年1月末) (倍) 2.5 2,000 2.0 1,500 1.5 1,000 1.0 TOPIX(左軸) S&P 500種指数(左軸) ST倍率(右軸) 500 0 05/12 07/12 09/12 11/12 0.5 0.0 13/12 (年/月) ※月次データ。 (出所:BloombergのデータをもとにDIAMアセットマネジメント作成) ◇◆ポイント◆◇ 1. 日本企業は、2015年度に4年連続の増益と最高益更新に加え収益性改善が期 待できる環境です。 2. 安倍政権が成長戦略を掲げる環境下、企業価値最大化のため、企業の資金使 途が様々な投資家から問われる環境にあります。 3. ROEやROAなど収益性改善の兆しが見られれば、日本株はPBRなどのバリュ エーションの上昇や先行する米国株へのキャッチアップが期待できます。 ※当資料は、将来の市場動向等を示唆・保証するものではありません。※巻末のご注意事項等を必ずご確認ください。 3/4 DIAMコラム 【指数の著作権等】 Standard & Poor‘s®並びにS&P®は、スタンダード&プアーズ・ファイナンシャル・サービシーズLLC(以下「S&P」)の登録商標です。Dow Jones®は、ダウ・ ジョーンズ・トレードマーク・ホールディングズLLC(以下「ダウ・ジョーンズ」)の登録商標です。これらはS&P ダウ・ジョーンズ・インデックスLLCに対して使 用許諾が与えられており、DIAMアセットマネジメント株式会社に対しては特定の目的のために使用するサブライセンスが与えられています。S&P 500種 指数はS&P ダウ・ジョーンズ・インデックスLLCが所有しており、DIAMアセットマネジメント株式会社に対して使用許諾が与えられています。S&P ダウ・ ジョーンズ・インデックスLLC、ダウ・ジョーンズ、S&Pおよびその関連会社は、DIAMアセットマネジメント株式会社の商品を支持、推奨、販売、販売促進す るものではなく、また投資適合性についていかなる表明をするものではありません。 東証株価指数(TOPIX)は、株式会社東京証券取引所(㈱東京証券取引所)の知的財産であり、指数の算出、指数値の公表、利用など同指数に関するす べての権利は、㈱東京証券取引所が有しています。 「JPX 日経インデックス400」は、株式会社日本取引所グループ及び株式会社東京証券取引所(以下、総称して「JPXグループ」という。)並びに株式会社 日本経済新聞社(以下、「日経」という。)によって独自に開発された手法によって算出される著作物であり、「JPXグループ」及び「日経」は、「JPX 日経イ ンデックス400」自体及び「JPX 日経インデックス400」を算定する手法に対して、著作権その他一切の知的財産権を有します。 4/4
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