連 載 米国の経済指標を斬る!<第 10 回> 米 国 の家 計 バランスシート調 整 -負 債 - 趙 玉亮 バランスシート調整とは、一般的に資 計負担感が軽減したと考えられる。 産価格の大幅な下落によって、資産売却 や負債圧縮などが引き起こされる現象を 種類別にみた負債の動向 指す。米国ではリーマンショック以後、 種類別に負債の構成を確認すると、主 資産価格の急落を受け、家計のバランス に学生ローンや自動車ローンの増加によ シートは調整が行われてきた。以下では、 って、11 年半ばから消費者ローンは上昇 家計の負債を中心に、その調整過程と種 に転じ、直近で 3.2 兆ドルとなり、ピー 類別の構成を整理する。 クだった 08 年の水準(2.6 兆ドル)を大 幅に超えた(図表 2) 。ただし、返済能力 負債の高止まりと家計負担感の軽減 の低い消費者を中心に、自動車のサブプ リーマンショック以前、住宅購入や住 ライムローンや学生ローンの増加が目立 宅価格の上昇を前提とした借入が旺盛だ つなど(自動車サブプライムローン残 ったため、家計負債は急速に膨らみ、2008 高:12 年には 2,250 億ドル、直近は 3,370 年にピークを迎えた(図表 1)。その後、 億ドル) 、新たな懸念も浮上している。 住宅バブルの崩壊に伴い家計は過剰債務 に直面し、消費支出の削減や新規借り入 れの抑制などで、家計負債は低下に転じ 14.0 12.0 10.0 た。しかし、雇用改善や経済回復の下、 8.0 負債残高は再び上昇し始め、直近では 14 4.0 兆ドルと、ピーク時の水準には及んでい ないが、緩やかに上昇している。 (兆ドル) 16.0 14.0 160% 12.0 10.0 (負債/可処分所得) (右目盛り) 8.0 6.0 Q1 Q4 Q3 Q2 Q1 Q4 Q3 Q2 Q1 Q4 Q3 Q2 Q1 Q4 Q3 Q2 Q1 Q4 Q3 Q2 2.0 0.0 その他 消費者ローン 住宅ローン Q1 Q4 Q3 Q2 Q1 Q4 Q3 Q2 Q1 Q4 Q3 Q2 Q1 Q4 Q3 Q2 Q1 Q4 Q3 Q2 (年、四半期) (資料) FRB 注 消費者ローンは学生ローン、自動車ローン、クレジットカードなどが含まれる。 140% また、住宅ローン残高(ホームエクテ 120% ィローンを含む)は、08 年第 1 四半期に 100% 市場最高水準に達した後、減少傾向が続 80% いている。その理由は、銀行の償却によ 60% る減少、貸出基準の厳格化、新規借入の 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 20132014 (資料) FRB、BEA。 6.0 200020012002200320042005200620072008200920102011201220132014 図表1 米国における家計負債の推移 家計の負債 (左目盛り) 図表2 種類別にみた負債の推移 (兆ドル) 16.0 (年、四半期) 抑制などがあげられる。直近で、住宅ロ 一方、家計への負担感を示す可処分所 ーン残高は 9.4 兆ドルと 06 年末と同じ水 得に対する負債の割合をみると、家計消 準であり、依然として高い。今後も、緩 費抑制のほか、08~12 年までは景気対策 やかなペースで住宅ローンの減少が続く による移転所得増や減税などから急速に との見方が根強い。 低下した。13~14 年は、負債残高が増加 家計負債の調整は消費に大きな影響を に転じたため低下傾向は鈍化したものの、 及ぼすことから、今後もその動向や関連 03 年と同じレベルまで低下しており、家 政策を注視していきたい。 金融市場2015年3月号 38 ここに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます 農林中金総合研究所 http://www.nochuri.co.jp/
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