最近の国際金融経済情勢 - 東北大学経済学部・大学院経済学研究科

最近の国際金融経済情勢
―サブプライムローン問題の意味するところ
東北大学経済学部
第2回ホームカミングデー記念講演
平成20年10月11日
成 年
東北大学大学院経済研究科教授 出沢敏雄
IMFによる世界経済見通しと実績の比較
(前年比、 %)
97
98
99
00
01
02
03
04
05
06
誤差の絶対値
07 の平均
実績(A)
4.2
2.7
3.8
4.8
2.5
3.1
4.0
5.3
4.8
5.4
5.0
見通し(B)
4.3
4.4
3.7
3.4
3.9
3.9
4.0
4.1
4.4
4.4
4.7
前年の実績見込み(C)
3.8
4.4
3.1
2.3
4.2
3.2
2.8
3.2
4.6
4.3
4.9
(A)-(B)
▲ 0.1 ▲ 1.7
0.1
1.4 ▲ 1.4 ▲ 0.8
0.0
1.2
0.4
1.0
0.3
0.8
(A)-(C)
0.4 ▲ 1.7
0.7
2.5 ▲ 1.7 ▲ 0.1
1.2
2.1
0.2
1.1
0.1
1.1
(出所)IMF, "World Economic Outlook"
(注1)(B) (C)は前年春時点のもの
(注1)(B)、(C)は前年春時点のもの。
(注2)07年の「実績(A)」は、2008年1月に公表された新しいPPPウェイトに基づくものであり(World Economic Outlook UPDATE 2008年7月版で公表された実績値
06年に公表された、「見通し(B)」や「前年の実績見込み(C)」と単純に比較することはできない。
2
IMFの世界経済見通し
(前年比、%)
2008年 7月 時 点
米 国
ユーロエリア
英
国
NIEs
アジア新興国
中 国
インド
ASEAN-5
日 本
世 界 計
2008年
2009年
1.3
1.7
1.8
4.2
8.4
9.7
8.0
5.6
1.5
4.1
0.8
1.2
1.7
4.3
8.4
9.8
8.0
5.9
1.5
3.9
( 出 所 ) IM F , " W o rld E c o n o m ic O u tlo o k U P D A T E (2 0 0 8 年 7 月 )"
3
産油国-消費国の所得移転の効果
主要国における原油価格上昇のインパクト
原油純輸入量(億バレル/年) 原油価格が$30/バレル上昇した場合
の輸入額増加(対名目 GDP 比率、%)
比率 %)
米国
44.6
1.0
日本
18.6
1.3
中国
12.5
1.6
ドイツ
9.1
0.9
韓国
7 8
7.8
2 7
2.7
タイ
2.2
3.2
(注)いずれも 2006 年暦年の計数。
(出所)米国エネルギー庁、International Financial Statistics (IMF)。
4
世界の流動性の増大
10
(兆
(兆ドル)
)
(兆
(兆ドル)
)
ソブリン・ウェルス・ファンド総資産額(注1)
9
1.8
1.6
外貨準備高
8
1.4
ヘッジ・ファンド純資産額(右目盛)
7
1.2
6
1 0
1.0
5
0.8
4
0.6
3
0.4
2
0.2
1
0
0.0
1996
1997
1998
1999
2000
2001
2002
2003
(注1)ソブリン・ウェルス・ファンドは外貨準備に含まれないもののみ。計数は、2001年と2007年のみ。
(注2)ヘッジ・ファンドは、Lipper TASS Database に登録のあるファンド。
(出所)IMF, Tremont Capital Management, Morgan Stanley.
2004
2005
2006
2007
直近は、2007年12月末
5
商品市況の推移
(ドル/バレル)
160
(2003年1月=100)
200
180
160
CRB商品先物指数
140
原油価格(WTI 右目盛)
原油価格(WTI、右目盛)
120
100
140
80
120
60
100
40
80
20
60
2003
0
2004
2005
2006
2007
2008
/8月
6
中国
中国の外貨準備高
貨準備高
1.6
(兆ドル)
1.4
外貨準備高
1.2
1.0
0.8
0.6
0 4
0.4
0.2
0.0
2000年
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
(注)2007年は10月末時点の金額。
7
米国における金融ショック
25
(%)
(万ドル)
中 南 米 債 務 危 機
NYダウ
20
1 5
1.5
1.2
FFレート
15
0.9
コンチネンタル・イリノイ 銀行 破綻
貯 蓄 貸付 組合 危機
10
0.6
IT バ ブ ル 崩 壊
LTCM破綻
サブプライム問題
5
0.3
ベア・スターンズ
0
1980
1985
1990
1995
2000
2005
0.0
GSE国有化
リーマン破綻
AIG公的資金注入等
直近は、08年9月23日
8
各国・地域のマネー集計量
28
24
(年平均レート換算、兆$)
米国
ユーロエリア
リア
中国
日本
20
16
12
8
4
0
1999 年
2000
2001
2002
2003
2004
(注)ユーロエリア、日本、中国については、それぞれのマネー集計量を各年の為替レートでドル換算したもの。
2005
2006
9
米国の中古住宅販売価格
(千ドル)
250
230
210
中古住宅販売価格
190
平均年収×3倍
170
150
130
110
90
70
50
90 年 91
92
93
94
95
96
97
98
99
00
01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
(注1)中古住宅販売価格の直近は、2008年7月の値。
(注2)平均年収は、2007年までが実績値。2008年以降は、FOMCの実質GDP・インフレ見通し(2008年6月時点)から試算。
10
米国のサブプライム層
白人
7%
その他マイノ
リティ
21%
ネイティブ
ネイティブ・
アメリカン
16%
LTV比率
<80%
800
ト
・
ス
コ
ア
680
620
400
ッ
ク
アジア レ
ジ
9%
ヒスパニック
20%
<
90%<
プライム
二ア・プライム
サブ・プライム
黒人
27%
(注)2002年時点(出所)HMDA
11
サブプライム延滞率の推移
12
米国のモーゲージの証券化率
60
(%)
50
米国の証券市場の構成
ABS
8%
40
その他
15%
エージェンシー
債 10%
地方債
9%
総額
27兆ドル
モーゲージ証券
24%(6兆ドル)
国債
16%
30
(参考)
06年末の住宅
ローン残高は
10兆ドル。
社債
20%
06年末ベース
20
90
年
91
92
93
94
95
96
97
98
99
00
01
02
03
04
05
06
07
/2Q
13
主要国の証券化比率
25
(%)
20
15
10
5
0
ドイツ
ト
イ
フランス
ラ
イタリア
英国
日本
(注)・民間貸出全体(2007/9月末時点<日本のみ2007/3月末時点>)。
・ユーロ建CDOなど、一部に再証券化商品を含むベース。
14
ABCPとSIVのスキ ム
ABCPとSIVのスキーム
<ABCPコンデュイット、SIV>
基本的には、証券化を通じて金融資産を購入、保有する特別目的会社。
化
融
☆ABCPコンデュイット:ABCP(Asset Backed Commercial Paper)を発行した資金を使って金融資産を購入する
プログラム。ABCPで調達した資金を高品質の証券に投資するもの。殆どはAAAかAA格のABS、MBSへ投資(証券
アービトラージ型)。発行されるABCPには金融機関によるバックアップファシリティが用意されることが格付機
関によって要求される。
関によって要求される
☆SIV:ABCPだけでなく、中長期債とABCPを組み合わせた資金調達を行うもの(Structured Investment
Vehicle)。このうち、再投資や清算の期間の定義、償還日の指定、レバレッジの使用を含めた期限が設けられ
ているものがSIV-lite。
ABCPのB/S
AAA/AA格
証券化商品等
金融資産
SIVのB/S
ABCP*
ABCP//
AAA/AA格
証券化商品等 優先債(中長期)
金融資産
金融債
劣後債(中長期)
*資産対比、残存期間は短い。
15
ムーディーズの売上高構成比
KMV
6%
リサ チ
リサーチ
13%
ストラクチャー
ド
42%
公営企業
5%
国際機関・
ソブリン
13%
社債
21%
(注)2007年第1~第3四半期決算の平均値。
16
ムーディーズの営業利益の推移
(百万ドル)
400
350
300
250
200
150
100
50
0
96
年
97
98
99
00
01
02
03
04
05
06
07
/3Q
17