要旨 [PDFファイル/218KB]

国際観光学科卒業論文(2013 年 12 月提出)要旨
指導教員:島川崇准教授
日本におけるダークツーリズムサイトとしてのヒロシマ・ナガサキの研究
学籍番号 1820100210 田中杏奈
論文構成
第1章
第2章
ダークツーリズムについて
第3章
第4章
第7章
原爆投下の歴史背景
ヒロシマの戦後復興
第6章
第5章
ナガサキの戦後復興
ヒロシマ・ナガサキの比較
ヒロシマ・ナガサキからみえるダークツーリズムの可能性・展望
第8章
第1章
はじめに
まとめ
はじめに
1945 年 8 月 15 日に第二次世界大戦が終戦し、今年で戦後 68 年目を迎えた。原爆を落と
された唯一の国である日本の被爆者の平均年齢は 79 歳を超えた。唯一の被爆国である日本
が国内外に向けて原爆に対する思いや恐ろしさを伝えゆくことがで きるのか。
「死」という
ダークな部分を見栄えの良いものとして残す面があり、核爆弾の恐ろしさを正しく伝えて
いくことができるのか考えさせられる。唯一の被爆国である日本が原爆の恐ろしさを後世
に伝えていくために何ができるのか、歴史背景と戦後復興の営みを通して考察する。
第2章
ダークツーリズムについて
歴史的出来事を伝える手段の一つとしてダークツーリズムがあげられる。一般的にダー
クツーリズムは「死や悲劇、災害等にまつわる観光」と定義されている。ダークツーリズ
ムは、古くから行われており、昔から、死や悲劇というものは人 々の好奇心を惹きつけて
きた。歴史史跡に関しては、見せたい過去に焦点を当てた見栄えの良いものとして作りあ
げられ、歴史が学べるものとして観光の商品とされる。
第3章
原爆投下の歴史背景
最初に原子力を発見したのはドイツであった。しかし、ナチス・ドイツの迫害から逃れ
るためにアメリカに亡命したユダヤ系科学者たちにより、アメリカでも研究が始まった。
1945 年 7 月 16 日に世界で初めての原子爆弾実験が成功し初めて人類が最も凶悪な兵器を
手にした。アメリカが原子爆弾の投下の対象に想定していたのは最初から、日本であ り、
そして 1945 年 8 月 6 日に広島へ、1945 年 8 月 9 日に長崎に 2 発の原子爆弾が投下された。
第4章
ヒロシマにおける戦後復興
特別都市計画法に基づき戦災都市に指定され、
「広島平和都市記念都市建設法」の下、復
興に取り組んだ。世界最初の原爆による被害を受けた土地として観光を展開している。平
和公園内には、平和記念施設として平和の池、原爆資料館等がある。原子爆弾と関連付け
られる建物はほとんど平和公園内に集約されている。そして、元広島県産業奨励館の残骸
である原爆ドームが世界遺産委員会で原爆ドームの世界遺産一覧表への登録が 決定した。
第5章
ナガサキにおける戦後復興
特別都市計画法に基づき戦災都市に指定され、
「長崎国際文化都市法」の下、復興に取り
組んだ。平和公園地区景観形成地区として平和と祈りを伝える街づくりを行っている。平
和公園内は時代を超えて平和の尊さを発信する拠点として新たな歴史を刻み始めている。
一方で、旧浦上天主堂の遺構の撤去が行われるなど事実が消され、忘却されている。平和
のための神への犠牲と強調していった長崎市は、日本の戦争責任やアメリカの原爆投下責
任は隠蔽され、外国人被爆者や海外の各事件の被爆者は忘却されていった。
第6章
ヒロシマ・ナガサキの比較
反核運動、核廃絶運動等に対する態度を表すフレーズとして、それぞれ「怒りのヒロシ
マ」
「祈りのナガサキ」と呼ばれる。両市には、観光面での捉えられ方の違いや、観光資源
としての負の遺産を考えるときに起こるマーケティング問題がある。また、広島において
は原爆ドームという世界遺産があるが、他に残されている被爆遺構はほとんどない。一方
の長崎は、原爆ドームのようなものはないが、多くの被爆遺構が現存している。広範囲に
点在しているのは難点でもあるが、原爆の被害の大きさを感じ取れる利点もある。
第7章
ヒロシマ・ナガサキからみえるダークツーリズムの可能性・展望
日本の死生観がダークツーリズムの可能性について考える上で大切になってくる。悲劇
や・災害等を風化させないためにも、負の遺産は存続し続け、広島と長崎は原爆が落とさ
れた地として日本のダークツーリズムサイトとしてこれからも先行するであろう。そして、
日本の平和を考えていく上で広島・長崎は有効的なものであると考える。そのため、今後
も広島・長崎は被爆地として今までよりも注目される可能性があ る。
第8章
まとめ
広島は国内外問わず注目されている。原爆ドームの世界遺産への登録が関係しているで
あろう。しかし、これ以外の被爆遺構はあまりない。一方の長崎は、多くのものが広範囲
に点在している。ダークツーリズムで重要なことは、リアルな体験・本物を見ること・多
くの人に知ってもらうことであり、長崎の方がふさわしい場所ではないだろうか。風化さ
せないための大事な役割がダークツーリズムである。いかに人生を生きるべきかを考える
ために死の存在はあるといえ、その意味でダークツーリズムにおける観光資源は普遍的価
値を有しており、今後注目すべきツーリズムである。