「九州を〝一国〟と見立てて農業の発展戦略を描く」

農民作家・山下惣一氏
「九州を〝一国〟
と見立てて農業の発展戦略を描く」
年が始まったばかりで、過去の話 題
大の農業国であり、農産物の輸出大国を支え
だと考えるべきだ」と言ったのである。欧州最
てきた最大の要因だと認識していた私には大
を持ち出すのはいささか気が引けるが、
九州の農業を考察する上で極めて重要な視
きな衝撃だった。同時に、農業の大規模化へ
新
点だと考えるので触れさせていただきたい。
のこだわりが変化するきっかけにもなった。
九州の農業が発展するために必要な視点
は、九州を一国ととらえた独自の振興策を講
2014年は、国連が定めた「国際家族農
業年」だった。その目的は、飢餓の根絶と天
然資源の保全において家族農業が大きな役
じることだと考える。南北に細長い日本列島
れば彼らの生産性が向上し飢餓問題が解消
上国の農村部に住んでおり、条件が整備され
じて多様な品種が収穫できるため、大規模で
規模が必要になる。しかし、九州は 年を通
の農業は、北と南で大きな違いがある。北は
割を果たすという認識を深めることにあった。
割以上が発展途
に向かうことは間違いない。他方、先進国の
なくても持続的な農業経営が可能という他
食料不安に苦しむ人口の
複数の国でも、農業の最小の経営体は家族で
のエリアがうらやむような特徴を持つ。そこ
ほとんどの作物が年 作なので、ある程度の
あるという観点が見直されていることも軽視
すべきではないだろう。
てけん引するビジョンを描き〝所得源泉の多
で重要な視点は、中小規模農家が中軸となっ
が有効な手段の一つではあることは論を待たな
に、多様な経営主体の参入と農業の大規模化
ばならないと考えるからだ。この目的の達成
は、自分たちの身近にある農業を支えなけれ
生きていく上で不可欠な食を充足するために
業国と言われる国々でも兼業農家の比率が
る制度の拡充も進めるべきだろう。実は、農
な就農希望者が、離農した跡地を購入でき
の特徴を生かす方法だと考えるからだ。新た
ある。地域に農家と消費者が混在する日本
小規模では安定した収益が確保できないと
いう指摘もあるが、兼業農家という選択も
様化〟につなげることだと考える。
いだろう。しかし、他の産業と同様、農業も
以下の農家が 割弱を占める。欧州だと、フ
高い。例えば米国は、販売額2万5000㌦
また重要だと言える。
多様な規模の経営体の融合であるという点も
題」だと言い続けている。それは、消費者が
私は「農業問題、食料問題は農家の側か
らではなく、消費者の側から考察すべき問
1
ランスは農家の 割以上、オランダに至って
7
は 割以上が農業以外にも就労している。土
5
業試験場の国際広報官が発した一言が今も耳
地生産性が高い九州の農業が持つ特性を生か
8
した多面的な展開が求められている。
私がこの思いを強くしたのは 年ほど前、
視察のためフランスを訪れた時だった。国立農
25
に残っている。彼は「もはや大型農業は死ん
Zaikai Kyushu / FEB.2015
9
1
7