現場校正用移動式水圧計の開発 西田 周平, 町田 祐弥,松本 浩幸,木村 俊則,○荒木 英一郎(海洋研究開発機構) 東南海震源域を観測対象とした地震・津波観測監視システム(DONET1)は 2011 年 8 月に予定され た 20 観測点の構築を完了し運用が開始された.現在,DONET1 の西方,紀伊水道沖において DONET2 の構築が行われている.DONET の観測装置は,地動センサシステムと圧力センサパッケージから構成 されている.圧力センサパッケージには津波観測のために水晶水圧計が配備されている.20 観測点に 配備された水晶水圧計により,水準差の変化量を観測することを考えたとき,年間数 cm 以下の長期的 (1~10 年)な地殻変動量を高い信頼性で観測するためには,cm オーダの水準計測精度が必要となる. しかしながら,DONET に配備された水晶水圧計は長期運用によりドリフトが生じることが確認されて おり,観測精度を向上させるにはドリフト量を補償する必要がある.そこで,観測現場へ校正用水晶 水圧計を運搬し,繰り返し測定値の比較をすることでそのドリフト量を見積り,校正する手法を検討 した.本研究では,校正用移動式水圧計を開発(図 1)し,DONET の水晶水圧計の計測精度を cm オ ーダまで向上させ,南海トラフの巨大地震発生前準備過程の評価にとって重要なデータの提供を目指 す. 水晶水圧計は圧力や温度変化の影響による圧力変化の履歴により計測精度が変動する.したがって, 陸上から海底までの移動の間,外環境変化の影響を可能な限り抑える必要がある.そこで,移動式水 圧計にはバルブおよびヒータによる圧力保持機能を持たせた.実海域試験に先立ち,圧力保持機能に よる計測精度への影響低減効果の事前試験として,実験室において観測現場と同様に 20MPa を印加し, 以下の試験を実施した. 試験① 移動式水圧計に目標値 20MPa の圧力制御させた状態でバルブの開閉を行う. 試験② 圧力制御を行わず,バルブを閉じた状態で外部からの印加圧力を大気圧にする. 試験①での計測の 20MPa 外部印加時のリピータビリティは 1.30hPa,試験②では 8.93hpa となり,圧力 保持を行うことにより校正の正確さが向上することを示す結果となった.この結果を踏まえ,移動式 水圧計による計測の流れを以下の通りとした.1)陸上実験室内の校正装置で校正する.2)観測現場の圧 力を掛けバルブを閉じる圧力を保持させる.3)ヒータによる温度調節により圧力を一定に制御させなが ら,陸上,海上,海中と観測現場まで移動させる.4)観測現場においてバルブを開け校正対象の観測現 場での圧力を計測する. 以上の校正手法の有効性を確認するため,平成 26 年 8 月 NT14-17 航海において,移動式水圧の各機 能の評価データを C0002G 長期孔内観測点での取得した(図 2).航海で得られた結果から外環境変化 の影響を十分に抑えきれていないことが確認されたため,引き続き移動式水圧計の機能向上を実施し ていく予定である. 図 1 ROV に搭載された移動式水圧計 図 2 C0002G プラットフォーム上に設置された移動式水圧計
© Copyright 2024 ExpyDoc