南海トラフ C0002G 長期孔内観測点の整備および機能拡張

南海トラフ C0002G 長期孔内観測点の整備および機能拡張
○荒木英一郎・木村俊則・町田祐弥・川口勝義(海洋研究開発機構)
海洋研究開発機構では,南海トラフで繰り返し発生するプレート境界型巨大地震発生・準備プロセ
スの理解を目的として,巨大地震震源断層近傍の地殻変動,地震活動,孔内原位置の間隙水圧,温度
変化等を測定する各種センサーを海底下掘削孔内に設置し,それらの観測データを連続的に取得する
ための「長期孔内観測システム」の開発・設置を進めており,南海トラフ熊野灘海域の3か所で「長期
孔内観測システム」の設置を計画している。この長期孔内観測システムの最初の1点として,2010 年
12 月に実施された IODP 第 332 次航海中に長期孔内観測点 C0002G への観測システムの設置に成功し,
さらに,2013 年 1 月に実施した KY13-02 航海では設置した同観測システムを孔内インターフェースと
呼ばれる装置を介して DONET(地震・津波観測監視システム)の海底ケーブルネットワークに接続し、以
降,オンラインでのリアルタイム観測を実施している。
本発表では,この C0002G 孔内観測点において 2014 年 3 月に実施した KY14-04 航海での観測点の校
正および機能拡張について紹介する。KY14-04 航海では,まず孔内水圧計の校正作業を実施した。校正
作業では,孔口装置に設置されている水圧計配管バルブを ROV のマニピュレータで操作することで全
ての水圧計で基準となる海底水圧を記録し,得られた基準海底水圧を用いて各水圧計間の長期ドリフ
トの評価・補正を実施した(図 1)。次に,観測機能拡張として新規開発したネットワーク型海底地震計
の設置を実施した。ネットワーク型海底地震計は孔内に設置されている地震計と組み合わせて表層の
堆積層を挟む形で海底-海底下の鉛直地震アレイを構築し,不均質な堆積層の地震記録への影響を正し
く評価することでプレート境界面等の深部構造に由来した地震イベントをより高精度に検出すること
を主目的として開発・設置を行ったもので,地震計ユニット(3 成分ジオフォン)と通信・データ処理ユ
ニットを分離した構造となっており,両者は 50m のケーブルで接続されている。設置時はまず通信・
データ処理ユニットを孔口装置直近に設置した後,水中着脱コネクタを介して孔内インターフェース
装置に接続した。その後,ケーブルを展張して孔口装置から 50m 離れた場所に地震計ユニットを設置
した(図 2)。この観測機能拡張により、今後継続的に実施予定の繰り返しエアガン発振,雑振動ノイズ
等を利用した速度構造変化計測手法の確立において有益なデータを提供することが期待される。ネッ
トワーク型海底地震計は現在,他の孔内センサーと同様にオンラインでのリアルタイム観測を実施し
ており,観測データの評価を継続中である。
図1
水圧計バルブ開閉作業
図 2 地震計設置作業