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微分積分学演習第二 U クラス 試験問題・略解(1/26)
担当:柴田 将敬
t15-1. 次の R の部分集合について、上限、最大、下限、最小は何か答えよ。なお、最大や
最小が無い場合は「×」と記入すること。
{
(i):
}
n
;n ∈ N ,
1 + n2
√
(ii): [ 2, π] ∩ Q,
{
(iii):
}
5m
; m, n ∈ N, m < n .
n
解説. (i) や (iii) は、集合の要素がどのようになっているか、表を書いてみれば、答えは容易
にわかる。
上限
最大
下限
最小
(i)
1/2
1/2
×
(ii)
π
×
0
√
2
(iii)
5
×
0
×
×
t15-2. 0 < a < b とする。
a1 = a,
b1 = b an+1 =
√
an bn ,
bn+1 =
an + bn
2
∞
で数列 {an }∞
n=1 , {bn }n=1 を定める。
(i): an ≤ bn が成り立つ事を示せ。
∞
(ヒント:an , bn , an+1 , bn+1 の大小関
(ii): {an }∞
n=1 , {bn }n=1 は収束することを示せ。
係は?)
(iii): limn→∞ an = limn→∞ bn を示せ。
解説. (i): 相加相乗平均の関係を用いれば示せる。
(ii): 平均の性質を使えば、
a = a1 ≤ a2 ≤ · · · ≤ an ≤ an+1 ≤ · · · ≤ bn+1 ≤ bn ≤ · · · ≤ b1 ≤ b1 = b
となっていることがわかる。0 < a < b < ∞ であるので、{an } は上に有界な非減少数列と
なっており、実数の性質より、収束する。同様に、{bn } は下に有界な非増加数列となってお
り、収束する。
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■コメント 「0 ≤ an ≤ bn で {bn } が収束するので {an } も収束する」といった議論が多々
見受けられました。はさみうちの原理に似ているかもしれませんが、これは成立しません。
t15-3. 次の級数が収束するかどうか判定せよ。ただし a, b は正の定数とする。
∞
∑
4n
(i):
,
2n + 3n
n=0
∞
∑
an
(ii):
.
nb
n=1
解説. (i):
4n+1
2n + 3n
4
=
n+1
n+1
n
n→∞ 2
+3
4
3
lim
より、ダランベールの判定法を用いると、発散することがわかる。
(ii): ダランベールの判定法を用いると、a > 1 で発散、a < 1 で収束することがわかる。
∑∞
a = 1 の場合は、級数 n=1 1/nb の収束を考えれば良いので、b ≤ 1 で発散、b > 1 で収束、
となる。
■コメント (ii) については、a = 1 の場合は、コーシーやダランベールの判定法では判定で
きません。従って、別の考察が必要です。
t15-4. 次の冪級数の収束半径を求めよ。ただし a は非負の定数とする。
∞
∑
(n!)3 n
(i):
x ,
(3n)!
n=0
(ii):
∞ (
∑
1+
)n
√
n
2 xn .
n=0
解説. 収束半径に関する公式を用いて計算すれば良く、(i) は収束半径 33 = 27. (ii) は収束半
径 1/2.
t15-5. 次の関数を、x = 0 において、冪級数(テイラー級数)で展開せよ。
(i): f (x) = arctan 2x,
(ii): g(x) =
x2 − x + 2
(x − 1)2 (x + 1)
解説. (i): arctan t を冪級数展開(テイラー展開)しておいて、t = 2x を代入して整理すれば
良い。
arctan t の冪級数展開については、
(arctan t)′ =
2
1
1 + t2
を用いて右辺を冪級数展開した後、項別積分すれば良い。
(ii): 部分分数分解すれば、
x2 − x + 2
1
1
=
+
(x − 1)2 (x + 1)
1 + x (1 − x)2
となる。
1
=
(1 − x)2
(
1
1−x
)′
を用いて、冪級数展開・項別積分などして計算すれば良い。
t15-6. R2 上の関数 f (x, y) = 4xy − x4 − y 4 について、3 つある停留点を全て求めよ。さ
らに、それぞれの停留点において、ヘッセ行列を求め、その停留点が、極大点・極小点・鞍
点のいずれになるか判定せよ。また、最大値、最小値があれば求めよ。
解説. fx (x, y) = fy (x, y) = 0 となる (x, y) を求めれば、停留点は (0, 0), (1, 1), (−1, −1) と
求まる。
(0, 0) でのヘッセ行列は
(
0
4
4
0
)
となり、判定法を用いると、(0, 0) は鞍点であることが分かる。
±(1, 1) でのヘッセ行列は
(
−12
4
)
4
−12
となり、判定法を用いると、±(1, 1) は極大点であることが分かる。
{
}
t15-7. R2 の閉領域 D = (x, y); x2 + y 2 ≤ 1 を考える。関数 f (x, y) = x2 + 3y 2 + 2y に
ついて、D 上での f の最大値、最小値を調べよ。
{
}
{
}
解説. D の内部 (x, y); x2 + y 2 < 1 における、f の停留点、D の境界 (x, y); x2 + y 2 = 1
における、f の最大点・最小点が、D 上での最大点や最小点となりうる点である。
D の内部での f の停留点を探すと、(0, −1/3) が求まる。また、D の境界上で f の値が極
√
値となりうる点を、Lagrange の未定乗数法を使って求めると、(0, ±1), (± 3/2, −1/2) が
求まる。
これら 5 点の中で f の値を比較すると、(0, 1) で最大値 5、(0, −1/3) で最小値 −1/3 を取
ることがわかる。
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t15-8. 微分方程式
y ′ (x) − y(x) = ex ,
y(0) = 0
を満たす y(x) を、冪級数を用いて表したい。
(i): y(x) =
∑∞
n=0
an xn としたとき、数列 {an }∞
n=0 が満たすべき漸化式を求めよ。
(ii): {an }∞
n=0 を求めよ。
解説. (i): y(x) を冪級数で表して、方程式に代入する。項別微分などは出来るとし、ex も冪
級数で表して、xn の係数を比較すれば、
(n + 1)an+1 − an =
1
,
n!
a0 = 0
が満たすべき漸化式である。
(ii): (i) の漸化式を解けば、an = 1/(n − 1)! と求まる。漸化式の解き方は、うまい解き方
もあるが、a1 , a2 , a3 , a4 , . . . を具体的に求めてみれば、答えが推測出来る。
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