倫 理 学習メモ 第 39 回 第 5 章 現代の課題を考える 地域社会と倫理 今回学ぶこと 私たちは一人では生きられない。具体的には、さまざまコ ミュニティのなかで生きている。コミュニティとは、ある物 や価値などを共有し、地域性や共同性などをもつ集団や社会 関係を意味する。このようなコミュニティはどのような機能 を果たしているのか、またどのような課題や可能性があるの かについて学習する。 今回のキーワード! 講師 千田有紀 地域社会/コミュニティ/しなやかな共同性/ 情報や記憶の共有/セーフティネット 地域社会とコミュニティ ▼ コミュニティとは、「ある物や価値などを共有し、地域性や共同性などをもつ集団や社会関 係」のことを意味し、 「共同体」や「地域社会」とも訳される言葉である。こうしたコミュニティ は、 固有の文化を継承している。それは祭りや町並みなどの伝統であったり、共通の経験であっ たり、記憶であったりする。 こうした共同性は、ときには人を縛るものにもなり得る。しかしそうした硬直した強制的な 共同性ではなく、しなやかな共同性とでもいえるものを、私たちはつくり出す必要がある。 近年は、雇用や人口動態などの社会の変化により、地域活動の担い手が減少するという問題 なども生じている。 − 79 − 高校講座・学習メモ 倫 理 地域社会と倫理 震災復興と地域社会 2011 年に発生した東日本大震災は、地域社会を直撃した。とくに被災した東北地方は、第 一次産業を中心とした農村や漁村であり、そもそも人口の高齢化や過疎化に悩む地域でもあっ た。 震災後には、避難をした人、仮設住宅で暮らしている人などさまざまな人たちが存在してい る。かつて同じコミュニティに暮らしていた人たちと、必ずしも生活を共にできているわけで はなく、地域社会を復活させ、東北を復興していくためには、難しい問題が山積している。 しかし地域社会とは、情報や記憶の共有の場でもある。情報や記憶の共有をもたない地域は、 たんなる空間を意味するにすぎない。地域を地域として成立させているこうした文化的な営為 に着目しながら、コミュニティの復興を考える必要がある。 セーフティネットとしての地域社会 セーフティネットという言葉がある。セーフティは安全、ネットは網であり、安全網という 意味である。一般に、事故や災害の被害者や社会・経済的弱者などを救済する制度や措置のこ と指す。螺旋階段などの隙間の下に、人や物が落ちても大丈夫なように、網が張ってあるよう に、セーフティネットは、社会的に、経済的に弱い人々を救済する制度のことである。 ▼ このようなセーフティネットは、行政によるものもあるが、それだけではなく、地域社会も セーフティネットとして機能している。 また、インターネット上にできるバーチャルなコミュニティも、現実のコミュニティと連動 しながら、情報や記憶の共有を可能にする場として機能することもある。こうしたネットは、 しなやかな共同性を成立させる可能性を秘めている − 80 − 高校講座・学習メモ
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