遅ればせながら本にターボ時代がやってきた!

2015年2⽉9⽇
⽇本株ファンドマネージャーの視点
遅ればせながら⽇本⾞にターボ時代がやってきた!
※このレポートでは、⽇本株ファンドマネージャーが注⽬しているトピックなどを毎週お届けします。
最近の20代は⾞への興味が希薄と⾔われています。私の周りの20代から30代半ばの⾃家⽤⾞保有率は15%程度です。東京
は電⾞網が発達しているため⾃動⾞がなくても困りません。しかし1990年代までの若者は違いました。⾞は働く⼀番の⽬的で
あり、アクティブに休⽇を過ごすための⼿段であり、ローンを組んででも買うのが主流派でした。
今のアジア諸国の⼈々と同じように⾞への憧れを持った若者が、⼀度は乗るのを夢⾒たのがターボ⾞です。今では信じられないこ
とですが、1980年代から1990年代の⽇本には⼤量のターボ⾞が存在しました。スープラ、シルビア、RX-7といった往
年のスポーツカーから、クラウン、マーチ、サニー、カローラといった⼤衆⾞まで、ありとあらゆる⾞がターボ化されていました。
しかし時代の流れとともに排ガス規制の強化やエコカー志向、⾃動⾞税の変更により、ガソリンエンジンの普通⾞でのターボは消
えていきました。
ターボ⾞とはターボチャージャーという過給機のついたエンジンを積んだ⾃動⾞です。エンジンで空気とガソリンが燃焼すると、
推進⼒と⾼温の排気がつくられます。通常のNA(⾃然吸気)エンジンではこの排気を捨ててしまうのですが、ターボ⾞では排気
でタービンを回しエネルギーを取り出します。⾼温の排気は熱エネルギーを持っており、これを運動エネルギーに変換する機械が
ターボです。その運動エネルギーを使って、直結したコンプレッサーで吸気側の新鮮な空気を圧縮します。空気を圧縮することで
単位体積あたりの酸素濃度が濃い空気を作り出すことで、エンジンには実際の排気量以上の酸素が送り込まれます。濃い酸素には
より多くのガソリンを燃やす能⼒があるため、エンジンの⼤きさが変わらなくてもより⼤きな⼒を産み出すことができます。
このため660ccとエンジンの排気量の上限が決まっている軽⾃動⾞や、圧⼒で⾃⼰着⽕させるディーゼルは、エンジン⾺⼒をター
ボ技術で補うターボ⾞が好都合です。ただ当時の⽇本のターボ⾞には、既存のNAエンジンの1.6リットルや2.0リットルという
税制の有利な排気量で、極限まで⼤きな⾺⼒を出すためにターボ技術が使われていました。
⼀⽅、2000年代半ばからフォルクスワーゲンなどのドイツ⾞を中⼼に世界でメジャーとなってきた「ダウンサイジングター
ボ」は、同じ⾺⼒をだすためにいかにエンジンを⼩さくするかということを考えて設計されています。これはターボなしなら2
リッターエンジンが必要なものを、1.2リッターですませるということです。排気量が⼩さければ、⼀般的に燃費を向上できます。
そのために直噴を導⼊するなど、いかに薄い燃料噴射で適量の酸素を燃やせるかを追求しています。ターボの採⽤⽬的がハイパ
ワーでなく、エコノミーなのです。さらに出⼒トルクを低回転から⼤きくできるようにセッティングすることで、ターボラグも感
じさせず扱いやすいエンジンを実現しました。
⽇本⾞は、2000年代のハイブリッドに代表される電気的な技術で省燃費を追及してきました。燃費⾯ではターボ⾞以上の成果
を出してきましたが、問題はその値段です。バッテリーやモータを新たに必要とするハイブリッド⾞は、ターボを追加するだけの
ターボ⾞に対し、価格という初期費⽤でどうしても⾼くなってしまいます。その上、重量も重くなり、居住性でもディスアドバン
テージがあります。
さらに販売戦略としてターボ⾞の重要性が⾼まっています。中国などの新興国ではターボ⾞が⾼級⾞の代名詞となっているのです。
ドイツの⾼級⾞が率先してターボを導⼊しイメージを作り上げてきたこともあり、ターボ⾞はグローバル戦略で極めて重要となっ
ています。
とうとうトヨタもレクサスNXで本格的にダウンサイジングターボを導⼊してきました。さらに⼤衆⾞クラスでも今後ラインナッ
プに続々加わってくるようです。⽇産、ホンダ、富⼠重⼯も既に市場投⼊していますが、今後⽇本の多くの⾞種の主⼒エンジンと
なる可能性が⾼いと思います。
私は省エネを実現するためのコスト⾯の優位性から、ダウンサイジングターボの将来性に期待し、5年前からターボを調べてきま
した。⽇本の最⼤⼿メーカーのトヨタのターボ採⽤が、⽇本⾞のハイブリッドにつぐカタリストとなると考えてきました。201
4年のトヨタの本格投⼊は予想より1年早く、グローバル競争⼒の維持のためにトヨタも必⾄の技術として市場投⼊した感じがし
ます。難易度を考えればハイブリッドよりターボの⽅が容易なこともありますが、1980年代の国内市場のハイパワーを追い求
めた熾烈なターボ競争の経験が、この開発スピードに⽣かされたと思います。
ターボ関連の⽇本の銘柄は三菱重⼯やIHI、豊⽥⾃動織機などターボそのものをつくっている会社がメインです。関連部品は軸
受けの会社などですが、市場規模のわりに銘柄の広がりは⼩さくなってしまいます。ターボはF1エンジンの20倍以上という超
⾼速回転するので必然的に単純な構造をしている⼀⽅、信頼性が重要です。そのため付加価値はターボを作っている企業にまるま
る残り、世界的にも⽇本の企業以外ではハネウェルやボルグワーナーなどに限られます。今後、⽇本⾞のターボ化で急速に数量増
が期待されるターボ関連銘柄は、⻑期成⻑株としてますます注⽬されていきそうです。
株式運⽤部
永⽥ 芳樹
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