PISA 型読解力を高める指導の授業提案 さいたま市立東宮下小学校 教諭 菊池健一 ■(19)2 学年での実践 (国語・ 『主語と述語』より) 新聞を教材に『文作り』を言語活動として取り上げた国語学習 PISA型読解力育成の手だて 【情報へのアクセス・取り出し】 ・新聞写真をみて、どのような場面であるか考える。 【解釈・統合】 ・新聞写真について、どのような場面であるのかを考えて話し合う。 【熟考・評価】 ・新聞写真を活用して、主語と述語のそろった文を作る。 ・自分が作った文を友達に紹介する。 【取り組む能力】 ・新聞写真をもとに、文作りに進んで取り組む。 2 年生の国語科に「主語と述語」という短い単元があります。 「だれが、どうした」の「だ れが」に当たる部分を主語、「どうした」にあたる部分を述語と学習します。また、主語は 文章によって省略されることがあることや、述語には「どうした」以外に「どんなだ」と いう様子を表す言葉が使われるときもあることも学習します。今回はこの学習の中に新聞 活用を取り入れ、さらに PISA 型読解力の向上も目指した授業を実践してみました。 朝日小学生新聞には週 1 回、動物写真家の先生が撮影した動物写真が掲載されます。大 変大きなスペースを割いて掲載されるので、いつも児童はこのコーナーを楽しみにしてい ます。以前、3 学年の「修飾語」の学習でも使ったウミガメの産卵の写真を活用して授業を 進めました。新聞に掲載されたウミガメの親が卵を産みに陸へ上がる写真や、卵からかえ った子ガメが海に戻る写真などを活用して、主語と述語がそろった文作りに取り組ませま した。 まずは、国語の授業の前に(本校では業前に行っている「NIE タイム」で)活用する記事 を読ませる活動を行いました。オリジナルのワークシートを用意して、児童に新聞写真を 示し、感想などを書かせる活動を行いました。児童は動物に大変興味を持っているので、 「どうして5千も卵を産むんだろう」 「これだけ生まれて、いったいどれだけ大人になれるのだろう」 「ウミガメが卵を産んでいるところを見てみたいな」 など、思い思いの感想を述べていました。 国語科の授業の前に記事に触れ ておくことで、授業で記事を活用 しやすくなりました。児童はウミ ガメの記事をスクラップして友 達と感想などを話し合っている ので、主語と述語がそろった文作 りもスムーズに行うことができ ました。 次は、授業でこの記事を活用しました。教科書で、主語と述語について学習した後、児 童に「この記事にある写真について、見ていない人にもわかるような文を作ってみよう。 そのためには主語と述語をきちんと書くことが必要だよ。」と投げかけました。児童は記事 に掲載されている写真を見ながら、夢中で文を作っていきました。児童が作った文は以下 の通りです。 「ウミガメが上がってきた。 」 「ウミガメが海から陸にやってきた。」 「ウミガメが卵を産んだ。 」 「赤ちゃんのウミガメが歩いている。」 「ウミガメが海に帰った。 」 3 学年で学習をする修飾語も含めながら、どの児童も写真を説明するための文を書くこと ができました。文を作った後には友達同士で文の紹介を行いました。同じ写真でも、友達 と自分の作った文が大きく違っていたこともあり、児童は友達の発表を楽しそうに聞いて いました。 今回の授業で、3 学年の「修飾語」についての学習と同様、新聞写真を活用することで、 児童のイメージを広げ、文を作るという活動を豊かにできることが分かりました。また、 PISA 型読解力向上という視点で考えても、新聞写真から必要な情報を取り出し、どのよう な場面か考えて話し合う活動を通して、「情報へのアクセス・取り出し」「解釈・統合」の 力が伸ばせることを実感しました。また、自分で主語と述語がそろった文を作ったり、友 達と紹介し合ったりすることで、 「熟考・評価」の力も高められると感じています。 これからも、新聞写真を積極的に活用して、児童が楽しみながら学習できるような授業 作りをしていきたいと考えています。
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