第3回 むくみ 困っていませんか?(その2) (情報誌「やわらぎ」No.125

第3回 むくみ 困っていませんか?
(その2)
● 内科主任医長 小松原 一正
循環器専門医として日常診療にあたっている中、心臓や血管の病気のことで皆さんに知ってお
いていただきたい、気を付けていただきたいと常日頃感じていることをお話させていただきます。
中高年の方の全身性のむくみで最も多いものは、運動不足などによる足の筋力低下に伴った血
液の流れの悪化、新陳代謝の低下によるリンパの流れの悪化などが原因となるものです。足の筋
肉は、下半身に流れてきた血液を上半身へと送り返し循環させるポンプの役割をしており、「第2
の心臓」とも言われています。しかし、加齢や運動不足により、足の筋力が低下すると、ポンプ
の力が低下し、これに伴い血行が悪化し、老廃物や水分、血液が足に溜まり、足がむくんでしま
うのです。寝たきりになると「第2の心臓」の働きが落ちるために、足のむくみなどが見られる
ことがよくあります。そのようなむくみを改善する方法としては、毎日のウォーキングが大変効果的です。最初は無
理をせず5分ぐらいの短い時間から始め、少しずつ時間を延ばしていき、一日30分程のウォーキングを週に3回程度す
ることにより、足のむくみはほぼ解消されます。同時にウォーキングは、体全体の新陳代謝も向上させ、高血圧や糖尿
病・脂質異常・骨粗しょう症などにも大変効果的です。
全身性のむくみには、心臓・腎臓・肝臓などの病気によって引き起こされるものもあります。心臓では心筋梗塞など
とどこお
の病気があると、心機能が低下するために血液やリンパの流れが滞り、むくみが起こります。腎臓では腎炎やネフロー
ゼなどの病気により腎機能が低下、そのため尿をうまく排出することができなくなり、水分調節機能が低下し、むくみ
の原因となります。肝臓では慢性肝炎や肝硬変になると血液中のタンパク質が減り、水分が血管外に漏れ出てむくみ
が起こります。他にも膠原病、糖尿病、甲状腺機能低下症といった病気もむくみを引き起こします。一口にむくみと
言っても、病気が原因でむくみが出てくることもあり、そのような場合はむくみだけでなく、動悸や頻尿など別の症状
も伴うようになります。こういう場合は逆にむくみが病気の前兆と思われるケースとなっていることがありますので、
ご心配なことがあれば外来でご相談ください。
第13回I
BD炎症性腸疾患(潰瘍性
大腸炎・クローン病)勉強会を開催しました
● NST(栄養サポート)チームリーダー・内科主任医長 藤原 明子
7月6日(土)午後1時半から、西館1階第1会議室で第13回I
BD勉強会を開催しました。テーマは「成分栄養剤 エレンタールについて」で、演者は当院の末宗亮子薬剤師です。2名の患者さんと当院NSTスタッフ合わせて10名弱
の会となってしまいましたが、その分発言しやすい雰囲気となりました。
末宗薬剤師の口演では、①炎症性腸疾患における食事抗原の影響 ②エレンタールの効能 ③エレンタールの作用
機序 ④服用方法(ゼリーミックス溶解時にお湯が不要となり水でも溶解できるようになりました!)について話し
ました。エレンタールの服用方法としては、各種フレーバーを混ぜて液体のまま飲用するほか、ゼリーミックスで
固めてゼリーとして食べるなどを推奨していますが、本会の第2回時に提案したような寒天で葛きり状にしてポン酢
で食す方法も夏季にはとても良い方法です。エレンタールの作用機序について、以前は「間接的効果―食事内容の脂
肪分を減らす目的や食事抗原を食事内容から除く目的」が主体であると思われてきましたが、最近日本における研究
で「直接的効果―エレンタールに含まれているヒスチジンをはじめとするアミノ酸が直接的に粘膜炎症を抑制する
こと」が証明されてきました。
現在、当院ではエレンタールは炎症性腸疾患のみならず、タンパク質不足や栄養吸収不良の病態に対し、栄養補助
しょく もつ ざん
さ
として広く使用しています。また食物残渣(消化管内に残された食べ物などのかす)ができにくいため、消化管通
過障害の方にも適しています。
エレンタールは飲用しにくい、服用し続けられないと思われている方も、成分栄養剤の特徴を熟知いただくこと
で、治療のひとつに取り入れれば有益な効果を生み出す可能性があると理解いただきやすくするお手伝いを私たち
ができれば嬉しく思います。
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BD患者さんやご家族を対象に年数回開催しております当勉強会の予定は、当院ホームページなどで随時お知ら
せしていますので、ぜひご参加ください。
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やわらぎ 2013 秋