主題「より良い食生活を目指した話し合い活動の充実へ向けて」 伊勢崎市立三郷小学校 1 芹澤嘉彦 はじめに 学校生活において食の中心的な場の一つとなる学校給食は、栄養バランスのとれた食事 の提供としての役割に加え、食に関する指導を効果的に進めるための重要な教材としての 役 割 も 担 っ て い る 。特 別 活 動 学 習 指 導 要 領 に「( 2 )- キ 食育の観点を踏まえた学校給食 と望ましい食習慣の形成」と示されているように、学校給食の内容を学級活動でも取り上 げ、計画的に指導することで、楽しく食事をすること、健康によい食事のとり方、給食時 の清潔など望ましい食習慣の形成を図るとともに、食事を通した好ましい人間関係の育成 を図ることができる。 児童は学校給食が栄養のバランスがとれた食事であると分かっていながら、実際には栄 養のバランスを考えながら食べておらず、気持ちに流されて安易に苦手なものを残す児童 も少なくない。 「 給 食 は 残 さ ず 食 べ た 方 が い い 」と 表 面 上 は 分 か っ て は い る が 、自 分 の 中 で それを大切なことであると捉えていなかったり、頑張って食べようという姿勢が保てなか ったりしていると考えられる。 そこで本題材は、児童が給食のとり方についての問題を学級で取り上げ給食を残さず食 べるための方策について話し合い、栄養教諭による話を聞く中で自分の食生活を見直し、 自分に合った目標を設定・実践する。このことを通して、給食や家庭での食事などの大切 さを考えながら無理せずに少しでも多く食べようとする態度を育てたいと考え、本題材を 設定した。 本題材について実践していくにあたり、自主的・主体的な話し合いができるように計画 委員の活動を取り入れた。また、一人一人の考えが広がり具体的な実践目標を自己で決定 できるように、班での集団思考の場の設定や話し合いの視点を複数提示をした。 2 実践の概要 対象学年 5年 (1 )事 前 の 活 動 に お い て ①計画委員の活動 ア 毎週一回の計画委員会の中であげられた「給食の残食についての問題」を、学級 へ投げかけるように計画委員に促し、学級の児童が自分たちの問題を意識し、自主 的・主体的に本時の活動に取り組むことができるようにした。 イ 給食についての問題を明確にするため、計画委員が学級児童のアンケートを計画 し、集計を行った。 ②栄養教諭との打合せ 栄養教諭と協力しながら打合せを行い、児童の考えに新たな視点を与えることがで きるように、給食センターの調理の様子を動画で撮影してもらった。 (2 )本 時 の 活 動 に お い て ①事前アンケートの発表を計画委員が行い、児童が現状把握で きるようにした。 ②班の話し合い活動の工夫 ア 班ごとに話し合いを行うことで、全体では意見をなかなか言えない児童が発言し やすくなり、一人一人の考えを大切にして、多様な意見を引き出すことができるよ うにした。 イ 班の中に計画委員のメンバーが必ず入るようにすることで、話し合いをまとめた り活発に意見交流ができるようにしたりした。 ウ 残食の原因を明確にしたり、 「 自 分 は ど の よ う に し て 完 食 し て い る か 。」 「どうした ら 、 み ん な に 食 べ て も ら え る か 。」「 や る 気 を 出 す 方 法 は な い か 。」「 残 さ ず 食 べ る こ と の 良 さ を ア ピ ー ル で き な い か 。」 な ど 話 し 合 い の 視 点 を 投 げ か け た り す る こ と で 、 話し合いを活発にできるようにした。 ③学級全体での意見共有の工夫 ア 班での話し合いで出された意見を短冊に書いて おき発表することで、意見を共有する際に全体に 見やすくしたり、並び替えやすいようにしたりし た。 イ 班で出た意見を全体で共有する場面を設けるこ とで、児童がさまざまな視点をもったり、より良 い意見を踏まえたりしながら自己決定へとつなげ ていくことができるようにした。 ④栄養教諭による指導 給食センターの調理の様子の動画を見ながら、何回 も食材を洗ったり殺菌のために熱したりといった工夫 やたくさんの人が関わっていること、「舌も勉強中で す。」ということなど話をしてもらった。 ⑤自己決定の場面 ア 児童がこれまでの食べ方を見直し、今後の 目標を自分で考える際には、 「いつまでに」 「何 を 」「 ど れ く ら い 」「 ど の よ う に 」 な ど 観 点 に 入れていくように促し、具体的に目標を決め ることができるようにした。 イ 目標設定の際には、 「 ~ だ か ら 、~ す る 」と いうように話し合いを基に給食の良さを理由 に入れて考えるように促し、話し合いを生か して頑張ろうとする思いを明確にできるよう にした。 (3 )事 後 の 活 動 に お い て ① がんばりカードを用いて、実践を記録することで自分の成果を客観的に捉え、今後 さらにどのようにしていけば良いか考えることができるようにした。 ② 仲 間 か ら の 励 ま し や 賞 賛 が で き る よ う に 成 果 を 発 表 し た り 、見 せ 合 っ た り す る こ と で 、「 自 分 も や れ ば で き る 」 と い う 自 信 に つ な げ ら れ る よ う に し た 。 3 まとめ ①実践の成果 栄養教諭の指導の際に、給食センターの動画を真剣に見ていたり、話を聞いたりするこ とによって「給食を作ってくれている人のために、残さず食べたい。」といった目標の理 由を持つ児童が多かった。事後の活動においても、「作ってもらっているから、もう少し 食べよう。」という声も少なくなかった。 話 し 合 い の 視 点 を 提 示 し た り 、班 で の 話 し 合 い で 発 言 を し や す く し た り し た こ と に よ り 、 多くの児童が意見を言うことができた。班で出された意見を学級全体で共有をしたことや 栄養教諭による指導によって児童の意見の幅が広がりそれを自己決定につなげられた。 「先 生 野 菜 残 さ ず 食 べ ら れ ま し た 。」「 い つ も よ り 食 べ る よ う に し ま し た 。」 と い う 児 童 が 多 く 、 完食児童も増えた。また、事後のアンケートは事前のアンケートより苦手な物が出てもが まんしようとする児童が増えるなど意識の改善が見られた。 ②課題 話し合いの視点が多く、何を考えたら良いか分からないという児童がいた。そのため、 児童がどんなことを思考するか事前によく想像し、児童が迷わない範囲での視点の提示が 必要である。話し合いの時間の確保が不十分であった。班での話し合いの際のルールを徹 底することや全体での意見交流の際に、短冊の班分けを発表しながら子どもたちがどんど んと分けるようにするなど方法の見直しが必要である。
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