第1回【キッズデザイン賞】受賞作を見に行く - ジャクエツ

動き回ることと言っても言い過ぎ
子供の“ 仕事 ”は、寝ることと
思慮分別のつかない年齢期には、
遊んでいたりする。とりわけ、まだ
外は、常に走り回ったり、何かで
顕彰する目的で、NPO キッズデ
ザイン協議会により創設されたも
のだ。
第1回の『 大賞 』は、幼稚園など
の施設設計を手掛ける株式会社ジ
ャクエツ(福井県敦賀市)が受賞
した。同社は長年、敦賀市内にあ
取材・文/坂東治朗 撮影/倉部和彦
耐震強度偽装問題や食品の添加物など、安全・安心が
今ほど注目されている時代はない。
建築やデザインの分野では、高齢者や身障者に優しい
バリアフリーの考え方が一般的になってきている。
しかし、子供の安全・安心を考えたものづくりは、まだ未発達の分野。
そんな子供の目線でのものづくりに着目した「キッズデザイン賞」が
ではないように、寝ているとき以
ア世代である中で、子供の目線や
第1回【 キッズ デ ザ イ ン 賞 】受 賞 作 を 見 に 行く
る製品モニターを兼ねた自社で経
営する幼稚園・保育園で実際に起
こった、もしくは起こりそうにな
った事故の事例を独自に収集し、
とめている。収集された事例を分
『ひやりはっと報告書』としてま
析し、その成果を具体的な施設づ
くりに生かしている全社的な取り
組みが高く評価されたのだ。
「1つの保育園で起こったこと
は、全国のどこででも起こり得る
ことなのです」
同社の松井栄一常務はこう語る。
ひやりはっと報告書には、人形
を使った再現写真が掲載され、報
❹
❺
でしょう」
(松井常務)
とわれわれのイタチごっこは続く
るものです。これからも子供たち
れが想像もしなかった使い方をす
作でも、子供たちは大人のわれわ
「
『 こ れ で 完 璧 』だ と 思 っ た 自 信
多くの視察者が訪れている。
に目にすることができ、毎年、数
ど、同社の取り組みの数々を実際
トイレや階段、手すり、サッシな
園内では、子供の目線で作られた
る保育園で、3年前に造られた。
保育園」は、ジャクエツが経営す
福井県敦賀市にある「さみどり
常務)
作ることができるのです」
(松井
とって使いやすくて安全なものを
る部分を採寸することで、子供に
観察したり、子供の身体のあらゆ
では駄目なのです。子供の行動を
「大人用を単純に小さくするだけ
❻
昨年から創設されたのをご存じだろうか。
遊びに夢中になり過ぎて、大人に
気持ちに配慮したデザインがなお
こうした状況を背景に、ここ数
ざりにされているからだ。
年、子供が安全・安心に育てられ
は想像もできない行動に出ること
と、子供の死因の第1位は「不慮
る環境づくりを目指したデザイン
の重要性が、ようやく理解される
昨年8月に発表された第1回
ようになってきた。
活環境を取り巻くすべての物事を
『キッズデザイン賞 』は、子供の生
対象に、子供の目線でデザインさ
きている。しかし、それらが小さ
かと言うと、実は必ずしもそうで
れた製品や施設、取り組みなどを
な子供たちにとっても安全・安心
れたものが、次々と生み出されて
インやバリアフリーの考えで作ら
一方で、昨今ユニバーサルデザ
を占めている。
の事故」で、死因全体の実に2割
も少なくない。厚生労働省による
全国から事故の事例を集めて
施設設計や商品開発に生かし、
子供が安全な生活環境を作る。
製品モニターの場でもある同社経営の「さみどり保育園」。子供がもたれたり
ぶつかっても割れない透明な強化ガラスが使われている。
はない。マーケットの主流がシニ
告書を見た者が危険な状況を一目
で理解できるようにしている。
また、収集した事例をもとに建
築士やデザイナーが施設設計や商
品開発を行い、モニター幼稚園・
保育園で地道に検証を繰り返して
いる。
壁の低い位置に取り付けられたコンセントは、
ハイハイを始めたぐらいの子供にとってとても興
味深いもの。コンセントの穴に物や指を突っ込ん
だりすると、子供が感電する恐れがある。カバー
の形状やロックの方法など試行錯誤を続けて、
ジャクエツでは既製品よりもさらに使い勝手の
良い商品づくりを目指している。
❶
❷
❸
試作模型を手にする、
グループ会社「株式会
社ジャクエツ 環 境 事
業」の伊藤真紀子さん
(一級建築士)
。
株式会社ジャクエツ
❶ 壁を隔てて双方で共有で
きる引き出し棚。抜けた引き
出しの穴から子供が“脱出”
した教訓を生かし、
ストッパー
が設けられた。❷破れたり外
れたりしないよう、網戸部分
にアルミパンチングメタルが
使用されたサッシ。❸ドアの
すき間に指を入れて挟まない
ようにしたセーフティドアスク
リーン。❹子供の手が届く高
さに設置されたサイズも小さ
な洗面台。水はセンサー式の
ため、
「蛇口に手が届かない」
といったこともない。❺ 手が
挟まれない工夫設計がされた
トイレの個室ドア。これでドア
は閉まった状態。❻子供がお
絵書きをしたり食事をとる大
きなテーブルは裏面に滑車が
付き、積み重ねが容易。保育
士たちの労力を軽減する工
夫も施されている。
子供を危険から守るために、
地道な試作が繰り返される。
安全な
子ども環境への
取り組み
キッズ
デザイン
大賞
第一
安全
スライド式の扉には、子
供が手を伸ばす範囲に
すき間が設けられてい
る。子供の身体のあら
ゆる部分を採寸した成
果が生かされている。
【経済産業大臣賞】