2014年12⽉30⽇ ⽇本株ファンドマネージャーの視点 ⼩型株の運⽤は流動性対策が重要です! ※このレポートでは、⽇本株ファンドマネージャーが注⽬しているトピックなどを毎週お届けします。 以前から感じていたのですが、TOPIXなどをベンチマークとするAll Capの⽇本株ファンドマネージャーやアナリ ストの⾔葉に、Small Capファンドマネージャーとして違和感を持ってきました。というのは私がある銘柄を売却し たというと、All Capのマネージャーは保有ウェイトの多くを売ったと考えるのです。例えばAという時価総額200 億円の⼩型株を私の担当ファンドで6億円分保有している場合、私が「売った」という売却⾦額は⽇通しで売っても株価を 壊さず売るため、せいぜい600万円分です。保有ウェイトに対する売却割合は1%です。100営業⽇の間、同じことを 繰り返してやっと全部売り切ることができる微々たる量です。 ⼀⽅、All Cap担当の運⽤者の場合、TOPIXの構成⽐に引っ張られるため、トヨタやソフトバンクなどの⼤型株を 中⼼に運⽤していることが多く、これらは同じ6億円売るにも、ものの1分で売却を完了できます。All Capのマネー ジャーも⼩型株の保有をしていますが、ベンチマークの⼩型株ウェイトは15%程度であることを考えると保有ウェイトは 限定的と考えられ、保有銘柄の⼤半の売買を意思決定から100⽇かけることなく完了できます。 この⼤型株と⼩型株の流動性の格差は、機関投資家として運⽤する場合は⼤きな影響があります。個⼈投資家は絶対値での 利益が重要で、限られた資⾦量をいかに上がる株に配分できるかが勝負です。⼀⽅、機関投資家でロングオンリーの場合、 ベンチマークが設定され、それを上回るパフォーマンスを上げるかがもっとも重要となります。All Capの⽇本の機関 投資家の場合はTOPIX(配当込み)がメジャーです。Small Capの場合もなんらかのベンチマークが設定される ことが⼀般的です。ベンチマークが設定されることは同じであるにも関わらず、流動性は雲泥の差があります。 売買を⾏うトリガーは、銘柄のバリュエーション、想定業績などの確信度、中⻑期の成⻑性、経営陣の質など定量的、定性 的なものを総合的に判断して適正株価を考えながら⾏います。これは⼤型株でも⼩型株でも同様ですが、⼩型株の場合は前 述のとおり、意思決定に沿った売買を⾏う際、⻑い時間がかかるという流動性の問題が、運⽤の制約条件に新たに加わりま す。この制約条件があることは、極めて⼤きな違いです。というのは100⽇間売買している間に、必ず株価変動があるか らです。⼤型株なら投資判断を決めた瞬間の株価とあまり変わらずに売買できますが、100営業⽇もたてば上下10%以 上の変化は覚悟しなければなりません。その上、同じ⼩型銘柄を継続的に売れば下がる⽅向に、買えば上がる⽅向に影響し ます。⼤型株でも⼩型株でも運⽤担当者が算出する適正株価は1ヶ⽉でそう⼤きくは変わらない⼀⽅、アップサイドを計算 する基準の現在の株価は変化するので、アップサイドは売却期間で⼤きく変化します。株価が10%変われば売買の意思決 定は変わります。株価が下がれば売却量を減らしたり⽌めたりします。⼩型株運⽤では、株価を基点に投資判断を⽇々変化 させる必要があるのです。単なる売りや買いという⼀⽅向の投資判断ではなく、アナログ的に投資判断を変える必要がある のです。流動性の影響を考慮する必要のある50億円を超える運⽤資産規模の⼩型株運⽤では、アナログ的な運⽤が必須と なります。私の場合、⾼校数学で習った「微分可能」な感覚を、常に感じながら⽇々の投資を⾏っています。その感覚で銘 柄の話を他の運⽤担当者とすると、⾮連続な感覚で銘柄の売買を語ることが多いため、違和感を持ってしまうのです。 これだけ⾒ると⼩型株は流動性リスクの分不利で機関投資家向きではなさそうですが、その分1銘柄の持つ個別リスクが⾼ く、集中投資しなくても⼤型株よりリスクをとることが可能になります。また⾼いリターンも努⼒すれば獲得することがで きます。その点でFeeに⾒合ったリスクテイクとリターンを求める機関投資家には、⼩型株運⽤は投資価値が⾼いといえ ます。 ⼩型株投資の場合でも、資産規模が30億円以下なら実はあまり流動性を考慮する必要がありません。100銘柄保有する と1銘柄3000万円です。1⽇600万円売買しても、1週間で完了できます。これは⼤型株の運⽤と同じ感覚の流動性 で、⼩型株のおいしいところだけをとることが出来ます。 資産規模の⼩さい間は良いパフォーマンスで、そのパフォーマンスをもとにお⾦が集まり規模が⼤きくなる⼩型株ファンド が良くありますが、⼀定程度を超えると流動性制約の影響が⼤きくなり、パフォーマンスが悪化することが良くあります。 ⼩型株ファンドの場合は短期的なパフォーマンスだけでなく、資産規模の変化とリスクと⻑期的なパフォーマンスを複合的 に⾒ないと、実⼒があるファンドかどうか判断できません。 株式運⽤部 永⽥ 芳樹 ■当資料は情報提供を⽬的として⼤和住銀投信投資顧問が作成したものであ り、特定の投資信託・⽣命保険・株式・債券等の売買を推奨・勧誘するもの ではありません。■当資料は各種の信頼できると考えられる情報源から作成 しておりますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。■当 資料に記載されている今後の⾒通し・コメントは、作成⽇現在のものであり、 事前の予告なしに将来変更される場合があります。■当資料内の運⽤実績等 に関するグラフ、数値等は過去のものであり、将来の運⽤成果等を約束する ものではありません。■当資料内のいかなる内容も、将来の市場環境の変動 等を保証するものではありません。 大和住銀投信投資顧問株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第353号 加入協会 一般社団法人投資信託協会 一般社団法人日本投資顧問業協会
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