特集:煉瓦文化財の魅力とその再生 赤煉瓦建造物の修理・保存・復元 国指定重要文化財 旧下野 化株式会社煉瓦窯修理保存工事 株式会社肥後屋 常務取締役 鈴木 行雄 近代化の礎となった赤煉瓦建造物 国内における赤煉瓦製造の歴史は1857( 安政4)年、長崎 鎔鉄所建設にあたり、オランダ人技師ハルデスの指導によ り、地元の瓦屋が焼いたのが最初であるという。 明治新政府は列強の脅威(植民地化)からわが国を守るた め、富国強兵を国策とし、インフラ整備を進めるなかで建 設資材の一つである赤煉瓦の需要が高まり、各地に製造工 場が建設された。明治20年代に入るとドイツ製の機械と窯 (ホフマン式の輪環窯)が導入され大量に生産されるように なり、日本煉瓦製造、大阪窯業、下野煉化などが供給生産 写真 1 旧下野煉化株式会社煉瓦窯補修工事前 を担った。 明治・大正時代は、文明開化・近代化(欧米化)をスロー ガンに急速な国力増強に燃えた時代であり、今も全国に残 る赤煉瓦の建造物は、近代国家構築の象徴であり礎となっ た証としてその姿を残している(東京駅、富岡製糸場(世 界遺産登録)、法務省旧本館、シャトーカミヤ、大阪市公 会堂、碓氷峠三連橋、北海道庁旧本庁舎、横浜市開港記念 館、東京国立近代美術館工芸館…)。 これら赤煉瓦建造物の保存・修復は、後世に歴史上の事 実を伝達するために非常に有意義であり、大切なことだと 思っている。 写真 2 第 16 号窯入り口 旧下野煉化株式会社煉瓦窯の修理工事 そんな折、旧下野煉化株式会社煉瓦窯の修理工事が再開 されるとの情報を得た。現存するホフマン式の東窯は1979 (昭和54)年に国の重要文化財に指定されているが、平成13 年に工事が中断されて以来10年間、自然に晒され、無惨か つ危険な状態であった。その遺構がよみがえることは誠に 喜ばしいと同時に、是非その役目を担いたいとの思いで積 極営業を行った。幸いに平成23年暮れに元請け会社の社寺 建築復興工事で有名な松井建設株式会社と合意に達し、翌 平成24年1月より工事の運びとなった。設計管理を行う公 益法人文化財建造物保存協会のご指導を得ながら、平成26 年10月まで、約2年10ヶ月の長い工事を行い、このほど無 8 No.460 2014 年 12 月号 写真 3 修復工事後 特集:煉瓦文化財の魅力とその再生 写真 4 ヴォールト積み工事前。11 号室破損状況(外観) 写真 5 ヴォールト(円筒状の空間積み)部の復旧工事。型枠を制作しセット 写真 6 墨出しの後、煉瓦積み(1 枚半積み) 写真 7 ヴォールト積み工事完了 写真 8 11 号窯入り口アーチ補修工事。型枠を制作しセット 写真 9 11 号窯入り口アーチ完了 No.460 2014 年 12 月号 9
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