2015年の経済見通し

ひめぎん情報 ■ 2015.新春
2015年の経済見通し
愛媛銀行 頭取 本田 元広
明けまして、おめでとうございます。
りましたが、米国では民主党が中間選挙で惨
2015年を迎えるにあたり、ご挨拶申し上げ
敗し、オバマ大統領の求心力は急速に低下し
ます。
ています。その様な中、株価は年間を通じて
昨年は、世界を見渡しますと、相変わらず
上昇し、NYダウ平均株価は夏場に17,000ド
紛争や自然災害なども多く、新たな混乱の種
ル台に乗せた後、史上最高値の更新が続き、
がいたるところで萌芽することとなりました。
景気回復の足取りは確かなものとなっていま
ウクライナや中東での政情不安、スコット
す。リーマン・ショック以降継続的に続けた
ランドやスペインのカタルーニャ地方での独
金融緩和も、出口へ向けて一歩踏み出し、
「量
立機運の盛り上がり、東南アジアでの領海を
的緩和」は昨年10月に終了しました。世界中
巡る軋轢、さらにはアフリカでのエボラ出血
が金融危機の後遺症から完全に抜け出せない
熱の発生など、記憶に新しい事柄です。
中、世界最大の経済大国が、いち早く立ち直
日本におきましても、昨年8月に発生した
り始めたことは、大きな潮目の変化と言って
広島での集中豪雨、9月の御嶽山噴火など、
もよいでしょう。 普段では考えられない災害が発生しました。
一方、中国ではひと頃の力強さに陰りが見
デング熱の広がりに驚きと恐怖を感じました
え、経済成長率も7%台にとどまっているこ
のは私ばかりではないと思います。日本のど
とに加え、環境問題の噴出など無秩序な経済
こにおいても、いつ災害や経験したことのな
政策の弊害が露呈し始めています。
い伝染病などが発生するかもしれないことを
また、EUでは域内格差が拡大し、ドイツ
改めて実感し、防災あるいは予防への備えを
の健闘が顕著となっています。EU域内と東
痛感する年でもありました。
欧地域やロシアは特に密接な関係にあるにも
経済面で見てみますと、これまでは米国を
関わらず、今回のウクライナ紛争によるお互
中心とした先進国、新興国を代表する中国が
いの損失は計り知れないものがあります。
世界を牽引してきましたが、それぞれの国の
我が国日本は「消費税問題」に明け暮れた
思惑が錯綜する中、互いの立ち位置が微妙に
一年でした。4月には、17年ぶりに消費税が
変わり始めています。とりわけ、昨年11月の
8%へ引き上げられ、安倍政権の誕生以来、
米中両国での出来事は象徴的でした。北京で
国内経済はプラス成長が続きましたが、残念
APECが開催され、中国の威信は一段と高ま
ながら増税が景気の回復を遅らせることとな
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りました。10月末には、日銀が追加の金融緩
大国の米国との間での利害の対立も懸念材料
和策を発表し、消費税再増税への地ならしが
となり、目を離すことができません。
試みられましたが、結局、再増税は2017年4
肝心の日本ですが、今年はアベノミクスの
月へ延期されることとなりました。アベノミ
真価が問われます。景気の足腰をより強固に
クスの正念場として、デフレ脱却の芽を摘ま
するため、今年10月に予定されていた10%へ
ないための苦渋の選択でありましたが、来た
の消費税の再増税は延期されましたが、一方
るべき時に備えた充電期間と前向きに捉えた
で財政再建も放置することはできません。
いところです。日経平均株価も、年初来高値
そもそも「デフレ脱却」と「財政再建」の
の更新を実現でき、為替も実力以上の円高か
二兎を追うのがアベノミクスです。昨年末、
ら円安水準に向かい、日本経済の足腰は着実
安倍政権は衆議院選挙において自公両党で定
に改善されつつあります。
数の3分の2を上回る326議席を獲得し、圧
さて、今年です。IMFでは、今年の世界の
勝による信任と、貴重な時間を手に入れるこ
実質経済成長率は前年比0.5ポイント改善す
とができました。2017年4月までの2年間を
る3.8%と見込んでいます。米国は0.9ポイン
無駄にしないためにも、一日も早く“人材が
ト改善の3.1%、ユーロ圏は0.5ポイント改善の
移りやすくする雇用市場改革”や“収益力の
1.3%、日本は0.1ポイント悪化の0.8%、中国
向上を促す企業統治改革”など、人・物・資
は0.3ポイント悪化の7.1%です。当行の調査
金を動かす成長戦略の実施が待たれます。真
部門、ひめぎん情報センターでも同じ予想で、
の財政再建は、成長戦略の実践、そこから得
存在感の大きさから、やはり米中両国の今後
られる果実によるべきで、
今後本格化する「地
の動向が注目点と予測しております。
方創生」には大いに期待するところです。
順調な経済成長が期待される米国ですが、
第一次産業立県である愛媛県にとって、
「地
出口戦略のもう一つの柱「ゼロ金利」の解除
方創生」は大きなチャンスです。日本の「食」
は、円相場にも影響があり、特に新興国等で
を支えているのは地方の第一次産業です。大
は前向きな投資資金の流出に繋がりかねず、
切な「食」の供給には、水、エネルギー、自
イエレン米連邦準備理事会議長の金融政策に
然環境などの資源、あるいは農林水産物の生
は衆目が集まっています。
産技術力が不可欠です。愛媛県はそれらの資
近年、中国は世界第二位の経済大国として
源や技術力の宝庫です。再生可能エネルギー
存在感が増すばかりです。国内的には、拡大
の開発についても、県は重要な施策として現
する貧富の差、都市部と農村部との格差など、
在取り組んでいますが、重要性は今後一段と
至るところに矛盾を抱え、過熱気味であった
高まることでしょう。愛媛県は太陽光発電を
景気をソフトランディングさせるため、政府
中心に、風力、潮流、バイオマス、小水力発
の舵取りは今年も綱渡りが続くでしょう。
電など再生可能エネルギーを生み出す適地で
また、原油価格の動向も気になるところで
もあります。我々一人ひとりが、ふるさと愛
す。昨年来、原油価格が大幅に低下し、産油
媛の将来を考え、知恵を出し合い、こうした
国と消費国、あるいは産油国とシェールガス
資源を十二分に生かしていかなければなりま
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せん。
とげたことに、愛媛県あるいは瀬戸内地域の
昨年、愛媛県出身の中村修二先生がノーベ
可能性を感じずにはいられません。
ル物理学賞を受賞されました。愛媛で生まれ
そのほかにも、愛媛には日本最古の道後温
育ち、そして四国で学び、研究に打ち込んだ
泉や四国八十八箇所巡りの札所など、数々の
成果が実を結んだのです。受賞の報に接し、
観光資源があります。特に、人口減少・少子
私達県民は大変勇気付けられました。今回の
高齢化の中では、観光産業の発展は非常に大
受賞の意味は、
“知恵と熱意があれば、地方
きな魅力となります。
でも十分世界と伍していける”ことを証明し
来県された方々をおもてなしの心で迎える
たことで、まさに、地方発・愛媛発のノーベ
ことで、愛媛の素晴らしさを味わってもらう
ル賞と言えます。
ことも、愛媛の将来につながることになるで
また、しまのわ2014「しまなみ国際サイク
しょう。当行も地域金融機関として、地域の
リング大会」では、7,300名もの方々が参加す
限りない発展のため、
“誠心誠意”尽力して
るほどの大盛況となり、しまなみ海道周辺の
参りたいと思います。
魅力を、国内外に発信する絶好の機会となり
最後となりますが、今年が、輝かしい未来
ました。愛媛県と広島県が手を携え、前例の
に向けて、確かな一歩が踏み出せる良き年と
ないことにチャレンジし、知恵と熱意でやり
なりますよう期待したいと思います。