補助資料 [pdf]

2014/10/03(金) 19:40-21:10 数学演習 (東京理科大学 工学部第二部 経営工学科)
補助資料
目標: III 複素数の関数 (第 1 章)
§3. 数列 · 級数 · 極限 (テキスト p.137-141)
§4. 複素変数の関数 (テキスト p.141-146)
§3. 数列 · 級数 · 極限 (テキスト p.137-141)
定義 3.1 (数列の収束). z0 を複素数とする. このとき, 複素数の数列 {zn }∞
n=1 が z0 に収束するとは,
∀ε > 0 ∃N = N (ε) > 0 s.t. ∀n > N =⇒ |zn − z0 | < ε,
(∗)
すなわち, 任意の正の実数 ε に対して,正の整数 N = N (ε) が存在し, n > N を満足するすべての n に対して
|zn − z0 | < ε が成り立つときをいい, lim zn = z0 または zn → z0 (n → ∞) と書き表す.
n→∞
注意 3.1. 定義 3.1 は番号 n が大きくなるにつれて, zn が限りなく z0 に近づくことを置き換えて述べたものである.
∞
定義 3.2 (数列の発散). (i) 複素数の数列 {zn }∞
n=1 が収束しないとき, 数列 {zn }n=1 は発散するという.
(ii) 複素数の数列 {zn }∞
n=1 が ∞ に発散するとは,
∀K > 0 ∃N = N (K) > 0 s.t. ∀n > N =⇒ |zn | > K,
(∗∗)
すなわち, 任意の正の実数 K に対して,正の整数 N = N (K) が存在し, n > N を満足するすべての n に対して
|zn | > K が成り立つときをいい, lim zn = ∞ または zn → ∞ (n → ∞) と書き表す.
n→∞
例 3.1. zn = 1 −
(−1)n i
n
とする. このとき, 数列 {zn }∞
n=1 は 1 に収束すること ( lim zn = 1) を証明せよ.
n→∞
証明 (概要). N を正の整数とする. このとき, n > N を満足するすべての n に対して,
(−1)n i (−1)n i
1
1
|zn − 1| = 1 −
− 1 = −
= < .
n
n
n
N
したがって, 任意の ε > 0 に対して, N = [ 1ε ] + 1 ([ ] はガウス記号) とおくと, [ 1ε ] + 1 >
|zn − 1| <
1
ε
より,
1
1
1
= 1
< 1 = ε.
N
[ε] + 1
ε
定義 3.1 より, 数列 {zn }∞
n=1 は 1 に収束する.
□
定義 3.3 (級数の収束). 無限個の複素数の列 z1 , z2 , · · · , zn , · · · に対して,
(
S1 = z1 , S2 = z1 + z2
=
2
∑
)
( ∑
)
n
zk , · · · , Sn = z1 + z2 + · · · + zn =
zk , · · ·
k=1
k=1
として, 数列 {Sn }∞
n=1 をつくる. このとき, Sn が S に収束するとき, 無限級数
∑∞
であるといい, S = k=1 zk と書き表す.
例 3.2. 無限 (べき) 級数
∞
∑
∑∞
k=1 zk
は収束して, その和は S
(−z)k について, 次の場合:
k=0
(1) |z| < 1
(2) |z| > 1
における収束 · 発散を調べよ. また, 収束するならば, その極限も求めよ.
解答 (概要). Sn =
n
∑
1 − (−z)n+1
1 − (−z)n+1
=
.
1 − (−z)
1+z
∞
∞
∑
∑
(n → ∞). したがって, 級数
(−z)k は収束し,
(−z)k =
(−z)k とおくと, Sn = 1 − z + z 2 + · · · + (−z)n =
k=0
(1) |z| < 1 なので, (−z)n → 0, すなわち Sn →
1
1+z
k=0
(2) |z| > 1 なので, (−z)n は n → ∞ のとき発散するので, Sn は収束しない. したがって, 級数
∞
∑
k=0
1
k=0
1
.
1+z
(−z)k は発散する.
§4. 複素変数の関数 (テキスト p.141-146)
複素数 z = x + yi について, x と y が互いに独立な実数の変数であるとき, z を複素変数という. ある領域 D の各点
z = x + yi に対し, 1 つの複素数 w = u + vi が対応する規則が与えられたとき, w を z の (複素) 関数といい,
w = f (z) = u(x, y) + iv(x, y)
と表す. この領域 D を f の定義域といい, 集合 I = {f (z)| z ∈ D} を f の値域という. また, z を独立変数という.
独立変数 z の値を示すために用いられる複素数平面を z 平面といい, 関数 w = f (z) の値を示すために用いられる複素数
平面を w 平面という.
定義 4.1 (複素関数の連続性). 領域 D 上で定義された関数 w = f (z) を考える. このとき, 関数 f (z) が点 α ∈ D
で連続であるとは,
∀ε > 0 ∃δ = δ(ε) > 0 s.t. |z − α| < δ =⇒ |f (z) − f (α)| < ε,
すなわち, 任意の正の実数 ε に対して, 正の数 δ = δ(ε) が存在し, |z − α| < δ を満足するすべての z に対して
|f (z) − f (α)| < ε が成り立つときをいい, lim f (z) = f (α) または f (z) → f (α) (z → α) と書き表す.
z→α
注意 4.1. 定義 4.1 は独立変数 z がいかなる方向から α に近づいても, 関数 f (z) が限りなく一定値 f (α) に近づくこと
を置き換えて述べたものである.
命題 4.1. 領域 D 上で定義された関数 f (z), g(z) が点 α ∈ D で連続であるとする. このとき, f (z) ± g(z), f (z)g(z)
は点 α で連続である. また, g(α) ̸= 0 のとき
f (z)
g(z)
は点 α で連続である. さらに, 関数 f (z) の実部 Re f (z) および
虚部 Im f (z) も点 α で連続である.
命題 4.2. 領域 D 上で定義された関数 f (z) が点 α で連続であることの必要十分条件は次の 3 つの条件:
(i) f (z) が z = α で定義されている
(ii) lim f (z) が存在する
z→α
(iii) lim f (z) = f (α)
z→α
が成立することである.
例 4.1. 複素数平面上で定義された次の関数が z = 0 で連続であるかどうかを調べよ.
 z
{
{

,
2z, z ̸= 0
2z, z ̸= 0
|z|
(1) f (z) =
(2) f (z) =
(3) f (z) =
 0,
0,
z=0
1,
z=0
z ̸= 0
z=0
解答 (概要). (1) δ を正数とする. このとき, |z| < δ を満足するすべての z に対して, |f (z) − f (0)| = |2z − 0| = 2|z| < 2δ
が成立するので, 任意の ε > 0 に対して, δ =
ε
2
とおくと, |f (z) − f (0)| < ε. 定義 4.1 より, 関数 f は z = 0 で連続である.
(2) lim f (z) ̸= f (0) である (命題 4.2 (iii) が成立しない) ことから, 関数 f は z = 0 で連続でない.
z→0
(3) 複素平面上の点 z := x + yi が, 直線 y = mx に沿って第一象限から (x, y > 0 を保ったまま) 0 に近づくとすれば,
x + yi
x(1 + mi)
z
1 + mi
√
√
√
=
lim
=
lim
lim
=
lim
.
2
2
2
y=mx, x→+0
y=mx, x→+0 x 1 + m
y=mx, x→+0 |z|
y=mx, x→+0
1 + m2
x +y
しかし, 極限値
√1+mi
1+m2
は点 z の経路である直線の傾き m とともに変化する. これは, 点 z から原点 0 への近づき方に
よって f (z) の近づく値が変わることを意味する. したがって, lim f (z) は存在しない (命題 4.2 (ii), (iii) が成立しない)
z→0
ことから, 関数 f は z = 0 で連続でない.
2
· · · (答)