さまざまな座標系での表現, 資料
目次
i
さまざまな座標系での表現, 資料
林 祥介
2014 年 9 月 18 日
目次
1
直交曲線座標系
1
2
回転系
8
3
例: 球座標での表現
9
3.1 円筒座標での表現 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 13
3.2 球座標での表現 (緯度経度座標) . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 16
/lecgfd/cood.tex
2014/09/18(林 祥介)
さまざまな座標系での表現, 資料
1
1
直交曲線座標系
1
直交曲線座標系
座標変換において特に問題になるのはベクトル場 (変位や速度) やテンソル場 (歪み
や応力) の表現である. これらは, スカラー場 (温度や圧力) とは違って成分をもっ
ている量であり, 成分の表示が必要となる. 成分は基底ベクトルによって定義され
る. 基底ベクトルとは座標を定義する曲線 (座標曲線) の接ベクトルで大きさ 1 の
ものである. 直交直線座標においては基底ベクトルの向きは着目している空間の位
置 (座標) によらない. 座標軸方向の単位ベクトルの向きはどの点でも同じ向きで
ある. したがって, ベクトルやテンソルはスカラーが行儀良く並んでいるだけの量
(例えばベクトルなら 3 つ) と思っておればよい. 一般座標においては基底ベクト
ルの向きは一般に位置 (座標) の関数である. 球面上の「東向き」は空間 (慣性系)
から見れば経度によって異なり, 地球の反対側では反対向きである. 成分が定数か
らなるベクトルは定ベクトルではない. 「一定な西風」は経度とともに向きを変え
るのである.
空間 (慣性系) に固定した直交直線座標系を O − x1 x2 x3 とする. 座標変換の関数形
が次のように与えられているとしよう (簡単のため座標変換は時間によらないもの
とする).
ξ1 = ξ1 (x1 , x2 , x3 ),
ξ2 = ξ2 (x1 , x2 , x3 ),
(1)
ξ3 = ξ3 (x1 , x2 , x3 ).
空間上の点 x は直交直線座標では (x1 , x2 , x3 ), 一般座標では (ξ1 , ξ2 , ξ3 ) で表現さ
れる.
スカラー場 f が直交直線座標で f = f (x1 , x2 , x3 , t) のように座標の関数として与
えられているとき, 一般座標 (ξ1 , ξ2 , ξ3 ) での表現 f = f˜(ξ1 , ξ2 , ξ3 , t) は逆変換
x1 = x1 (ξ1 , ξ2 , ξ3 ),
x2 = x2 (ξ1 , ξ2 , ξ3 ),
(2)
x3 = x3 (ξ1 , ξ2 , ξ3 ).
を代入することにより直ちに求まる.
微分計算は合成関数の微分を行うことにより変換される.
(
∂•
∂x1
)
(
=
x2 ,x3 ,t
/lecgfd/cood.tex(cood-gen.tex)
∂•
∂ξ1
)
(
ξ2 ,ξ3 ,t
∂ξ1
∂x1
)
x2 ,x3 ,t
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(
)
(
)
∂•
+
∂ξ2
+
(
(
∂•
∂x2
∂•
∂x3
)
∂•
∂ξ3
(
ξ3 ,ξ1 ,t
(
ξ1 ,ξ2 ,t
∂ξ2
∂x1
∂ξ2
∂x1
直交曲線座標系
2
)
)
x2 ,x3 ,t
(3)
x2 ,x3 ,t
= ...
)
x3 ,x1 ,t
= ...
x1 ,x2 ,t
ここで, 微分を囲む ( ) に付けられた添字は, それらの変数を一定に保って偏微分
するという意味である. 以後特に必要のない限りどの変数を一定に保って偏微分す
るかは明示しない. ∂/∂x1 は x2 , x3 , t を一定に保った微分を表し, ∂/∂ξ1 は ξ2 , ξ3 , t
を一定に保った微分を表すものとする. また, ∂/∂t は x1 , x2 , x3 あるいは ξ1 , ξ2 , ξ3
を一定とした時の時間変化を表すものとする.
物質とともに移動する点から見た時間微分 (Lagrange 微分) はその定義により
d•
∂• ∑ ∂•
=
+
x˙ j
dt
∂t
∂xj
j
(4)
∂• ∑ ˙ ∂•
+
ξj
∂t
∂ξj
j
(5)
=
となりどのような座標系においても表現は不変である.
ベクトル場やテンソル場の座標変換の表現を得るためには着目する点の座標の表
現のみならず, その点での基底ベクトルの表現を得なければならない. 基底ベクト
ルは座標曲線方向の接ベクトルとして定義され, 直交直線座標系では






1
0
0






∂x
∂x
∂x
e1 =
=
, e2 =
=
, e3 =
=
0 
1 
0 





.
∂x1
∂x2
∂x3
0
0
1
(6)
であり, 空間上のどの点でも同じ定ベクトルを用いるのであった. 一般座標系では,

e′1 =
1 ∂x 
=

h1 ∂ξ1

e′2 =
/lecgfd/cood.tex(cood-gen.tex)
1 ∂x 
=

h2 ∂ξ2
1
h1
1
h1
1
h1
∂ x1
∂ξ1
∂ x2
∂ξ1
∂ x3
∂ξ1
1
h2
1
h2
1
h2
∂ x1
∂ξ2
∂ x2
∂ξ2
∂ x3
∂ξ2


,



,

(7)
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
1
h3
1
h3
1
h3
1 ∂x 
=

h3 ∂ξ3
e′3 =
∂ x1
∂ξ3
∂ x2
∂ξ3
∂ x3
∂ξ3
直交曲線座標系
3


,

である. hi ≡ |∂x/∂ξi | は大きさを 1 にするための規格化因子 である.
基底ベクトルが定義されたので, 任意のベクトル場 A やテンソル場 T は次のよう
に表現されることになる.
A=
∑
A i ei =
i
T =
∑
A′i e′i
i
∑
Tij ei ⊗ ej =
∑
ij
(8)
Tij′ e′i ⊗ e′j
(9)
ij
⊗ は基底ベクトルを並べてテンソルの基底であることを示すための記号である. 変
換公式を書き下しておこう. 基底の変換は形式的に書き下せば
e′k =
∑ 1 ∂xi
i
hk ∂ξk
ei
(10)
である. したがって, ベクトルの成分は
A=
∑
Ai ei =
∑
i
A′k e′k =
∑
A′k
ki
k
1 ∂xi
ei .
hk ∂ξk
最初の式と最後の式とを比べれば
Ai =
∑ 1 ∂xi
k
hk ∂ξk
A′k .
(11)
逆変換は,
∑ ∂ξk ∂xi
i
∂xi ∂ξl
= δkl
に注意して逆解きすれば
例えば
∂x
∂ξ1
は ξ1 曲線 ( ξ2 , ξ3 を固定して指定される曲線 ) の接ベクトルであり,
∇ξ1
は ξ2 − ξ3 曲面 ( ξ1 を固定して指定される曲線 ) の法線ベクトルである.
∂x
· ∇ξi = δij
∂ξj
ということ.
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1
∑
ei =
hk
k
直交曲線座標系
4
∂ξk ′
e .
∂xi k
(12)
∂ξk
Ai
∂xi
(13)
よって, ベクトルの成分については
∑
A′k =
hk
i
となる.
テンソルに関する変換公式はベクトルのそれに準じて各成分に対して同様の変換
を行えばよい.
Tij =
∑ 1 1 ∂xi ∂xj
kl
hk hl ∂ξk ∂ξl
Tkl′ ,
Tkl′ =
∑
ij
hk hl
∂ξk ∂ξl
Tij .
∂xi ∂xj
(14)
ベクトル場の回転 ∇×A や 発散 ∇·A やラグランジュ微分, そして, 歪みテンソル
などの具体的な表現は, 以上の成分変換公式と微分の変換公式を用いてあげれば得
られる. 具体的な計算を行ってみると次のような係数が登場する.
Γlij
≡
∑ ∂ 2 xk ∂ξl
k
∂ξi ∂ξj ∂xk
.
(15)
これは基底ベクトルの空間変化を表す量で, 実際,
∑ ∂ 2 xk
∑ ∂ 2 xk ∂ξl
∑
∂
′
(hi ei ) =
ek =
hl e′l =
Γlij hl e′l .
∂ξj
k ∂ξi ∂ξj
kl ∂ξi ∂ξj ∂xk
l
(16)
である. 曲線座標系でベクトル量, テンソル量などの微分を考える場合には, 成分
の空間変化と成分を定義する基底ベクトルの向きの空間変化とを同時に考えてあ
げてなければならない.
一般的での詳細な表現の記述は以下では用いないので省略することにし, 基底ベク
トルが直交する座標系, すなわち, 直交曲線座標系に限定して具体的な表現をもと
めることにする. 直交曲線座標系では
e′i · e′j = δij ,
また, もともと
(17)
∂x
∂x
· ∇ξi = δij であったから,
と ∇ξi とは平行であることにな
∂ξj
∂ξi
り, 実際,
∇ξi =
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1 ′
e
hi i
(18)
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直交曲線座標系
5
である. 成分で具体的に書けば
∑
1 ∂xk ∂xk
= δij
hi hj ∂ξi ∂ξj
∂ξi
1 ∂xk
= 2
∂xk
hi ∂ξi
k
(19)
(20)
である. さらに, 上式とその微分を用いることにより, 直交曲線座標系では {Γlij }
は {hi } を使って簡略に書き下せる.
∑ ∂ 2 xk ∂ξl
Γlij =
∂ξi ∂ξj ∂xk
k
∑ ∂ 2 xk
=
1 ∂xk
∂ξi ∂ξj h2l ∂ξl
k
1
=
2h2l
(
)
∂h2l
∂h2
∂h2
δjl + l δil − i δij .
∂ξi
∂ξj
∂ξl
(21)
よって基底ベクトルの向きの変化は次のようになる.
∑ 1 ∂hi
∂ ′
1 ∂hj ′
ei =
ej − δij
e′l
∂ξj
hi ∂ξi
h
∂ξ
l
l
l
(22)
直交曲線座標系での表現を並べておこう. 任意のスカラー場 f の勾配 ∇f は次の
ようになる.
∑ ∂f
∇f =
i
∂xi
ei =
k
hk
ikl
∑ 1 ∂f
=
∑
hk ∂ξk
∂ξl ∂ξk ∂f ′
e
∂xi ∂xi ∂ξl k
e′k .
(23)
任意のベクトル場 A の回転は次のようになる.
∑
∑
∂Am
∂ξk ′ ∂ξl ∂
∇×A =
ϵijm
ei =
ϵijm hk
e
∂xj
∂xi k ∂xj ∂ξl
ijm
ijmkln
=
=
∑
hn
e′k ϵkln
hl
kln
∑
[
e′k ϵkln
kln
[
∂
∂ξl
(
A′n
hn
)
+
∑
]
(
Γnlp
p
A′p
hp
1 ∂
(hn A′n ) .
hl hn ∂ξl
)]
(
1 ∂xm ′
A
hn ∂ξn n
)
(24)
最後の行の [ ] 内が ∇×A の ξk 成分である.
めんどくさい計算をしなくてもストークスの定理
∫
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∇×A · dS =
I
A · dl
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直交曲線座標系
6
を知っていれば積分の変数変換を行うことにより結果はたやすく導け
る. たとえば, 面積分を行う面として ξ2 = const, ξ3 = const で囲まれ
た ξ1 = const 面上の無限小面をとれば
∫
∇×A · dS =
I
∫
ξ2 +δξ2
ξ2
∫
ξ3 +δξ3
(∇×A)1 h2 h3 dξ2 dξ3
ξ3
∼ (∇×A)1 h2 h3 δξ2 δξ3
A · dl =
∫
ξ3 +δξ3
ξ3
ξ =ξ +δξ
dξ3 [A′3 h3 ]ξ22 =ξ22 2
∫
ξ2 +δξ2
+
ξ2
dξ2 [A′2 h2 ]ξ33 =ξ33 +δξ3
ξ =ξ
∂A′2 h2
∂A′3 h3
δξ2 δξ3 −
δξ2 δξ3 .
∼
∂ξ2
∂ξ3
よってただちに
(
1
(∇×A)1 =
h2 h3
)
∂A′3 h3 ∂A′2 h2
−
.
∂ξ2
∂ξ3
任意のベクトル場 A の発散は次のようになる.
やはりめんどくさい計算をしなくてもガウスの定理
∫
∇·AdV =
∫
A · dS
を知っていれば積分の変数変換を行うことにより結果はたやすく導け
る. 積分を行う領域として ξ1 = const, ξ2 = const, ξ3 = const で囲ま
れた無限小 6 面体をとれば
∫
∫
∇·AdV
∫
ξ1 +δξ1
∫
ξ2 +δξ2
∫
ξ3 +δξ3
=
ξ1
ξ2
ξ3
∇·Ah1 h2 h3 dξ1 dξ2 dξ3
∼ ∇·Ah1 h2 h3 δξ1 δξ2 δξ3
A · dS =
∫
ξ2 +δξ2
ξ2
∫
ξ3 +δξ3
ξ3
∫
ξ3 +δξ3
∫
∫
ξ3
ξ1 +δξ1
∫
dξ2 dξ3 [A′1 h2 h3 ]ξ11 =ξ11
ξ1 +δξ1
+
ξ1
ξ2 +δξ2
+
(
∼
ξ1
ξ2
ξ =ξ +δξ1
dξ3 dξ1 [A′2 h3 h1 ]ξ22 =ξ22
ξ =ξ +δξ2
dξ1 dξ2 [A′3 h1 h2 ]ξ33 =ξ33
ξ =ξ +δξ3
)
∂A′1 h2 h3 ∂A′2 h3 h1 ∂A′3 h1 h2
+
+
δξ1 δξ2 δξ3
∂ξ1
∂ξ2
∂ξ3
よってただちに
1
∇·A =
h1 h2 h3
/lecgfd/cood.tex(cood-gen.tex)
(
)
∂A′1 h2 h3 ∂A′2 h3 h1 ∂A′3 h1 h2
+
+
.
∂ξ1
∂ξ2
∂ξ3
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∑ ∂Ai
∇·A =
直交曲線座標系
1
(
∑ ∂ξl ∂
1 ∂xi ′
A
hk ∂ξk k
)
=
∂xi
ikl ∂xi ∂ξl
∑ ∂ A′k
∑
A′
=
+
Γlkl k
hk
k ∂ξk hk
kl
∑
1
∂ h1 h2 h3 A′k
=
hk
k h1 h2 h3 ∂ξk
i
7
(25)
任意のスカラー場 f のラプラシアン ∆f は次のようになる.
∆f = ∇·∇f
=
∑
k
(
∂
1
h1 h2 h3 ∂ξk
h1 h2 h3 ∂f
h2k ∂ξk
)
(26)
歪みテンソルは次のようになる.
e =
∑
eij ei ⊗ ej =
ij
∑ 1
∑1
ij
[
∂ξm ∂
=
ijmnkl 2 ∂xi ∂ξm
=
2
(
2
hk
∂ξk
hl
[ {
( )
∑ 1 hl ∂
u′l
kl
2
hk ∂ξk
hl
∂uj
∂ui
+
∂xi
∂xj
)
ei ⊗ ej
)
(
1 ∂xj ′
∂ξm ∂
un +
hn ∂ξn
∂xj ∂ξm
[ {
(
( )
∑ 1 hl
∂
u′l
kln
=
(
+
u′
Γlkn n
hn
hk ∂
+
hl ∂ξl
(
)
hk
+
hl
u′k
hk
(
)}
+
∂
∂ξl
1 ∂xi ′
u
hn ∂ξn n
(
u′k
hk
)
∑ 1 ∂hl
n
hl ∂ξn
+
(
)]
hk
u′
Γkln n
hn
)
∂ξk ∂ξl ′
hl
e ⊗ el
∂xi ∂xj k
)}]
e′k ⊗ el .
]
u′n
δkl e′k ⊗ el .
hn
(27)
最後の行の [ ] 内が歪みテンソルの ξk ξl 成分である.
速度場は次のようになる.
v = x˙ =
∑
x˙i ei
i
=
∑ ∂xi
ξ˙k ei
ik
=
∑
∂ξk
hk ξ˙k e′
(28)
k
k
よってラグランジュ微分を速度成分 vk′ = hk ξ˙k で書けば
d•
∂• ∑ vk′ ∂•
=
+
dt
∂t
k hk ∂ξk
(29)
となる. 任意のベクトル場のラグランジュ微分は
(
)
∑
∂
dA
∂A ∑ ˙ ∂A
∂ ∑ ′ ′
ξ˙j
ξj
=
+
=
A k ek +
dt
∂t
∂ξj
∂t k
∂ξj
j
j
/lecgfd/cood.tex(cood-gen.tex)
(
∑
)
A′k e′k
k
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=
∑
k
=
∑
k
回転系
2

8

∑
∂A′
∂ A′k ∑ ˙ k hk ′ 
e′k  k +
ξj Γlj Al
ξ˙j hk
+
∂t
∂ξj hk
hl
j
jl

(

)
∑ ∂A′k
∂A′
1 ∂hj
1 ∂hk
e′k  k +
ξ˙j
+ −ξ˙j
+ ξ˙k
A′j 
∂t
∂ξ
h
∂ξ
h
∂ξ
j
k
k
j
j
j
(30)
であり, 加速度ベクトルは次のようになる.
v =
=
dv
dt
∑
k
2

(
)

∑ ∂vk′
1 ∂hj
1 ∂hk ′ 
∂v ′
e′k  k +
ξ˙j
+ −ξ˙j
+ ξ˙k
vj
∂t
∂ξj
hk ∂ξk
hj ∂ξj
j
(31)
回転系
前節では座標変換が時間に依存しないことにしていたが, 地球や惑星の諸現象を扱
うには地球や惑星あるいは太陽系ガスとともに回転している座標系で記述したほ
うが自然である場合が多い. このような系での基礎方程式は, 慣性系に付いてすで
にもとめられている基礎方程式に時間に依存する座標変換を行ってあげれば得る
ことができる. 手法は前節と全く同じである.
座標系として静止している直交直線座標系 O − x1 x2 x3 とそれに対して Ω で回転
している直交直線座標系 O − x′1 x′2 x′3 を用いることにする. Ω は定ベクトルである
ものとする. 回転系で直交曲線座標系を用いたい場合には, まずは回転系の直線直
交座標による表現を求めておいてそれをさらに前節の手順によって曲線直交座標
に (時間に依存しない) 座標変換を行うという 2 段階の手続きを踏めば良い. 静止
している直交直線座標系 O − x1 x2 x3 の基底ベクトルを e1 , e2 , e3 , 回転している直
交直線座標系 O − x′1 x′2 x′3 の基底ベクトルを e′1 , e′2 , e′3 とする.
e˙′i = Ω × e′i
(32)
である. 今度は基底ベクトルが時々刻々向きを変えていくことに注意すれば良い.
時間に依存する座標変換において問題となるのは結局時間微分を含む項だけであ
る. すなわち, 速度ベクトルや加速度ベクトルである. 質点の位置ベクトル x とす
れば, それぞれの座標系での成分 (xi ), (x′i ) は
x =
∑
i
/lecgfd/cood.tex(cood-rot.tex)
x i ei =
∑
x′i e′i
(33)
i
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3
例: 球座標での表現
9
である. 速度ベクトルはその時間微分であったから
v = x˙
=
∑
x˙i ei
i
=
∑
x˙′i e′i +
∑
i
x′i e˙′i =
∑
i
x˙′i e′i +
i
∑
x′i Ω × e′i
i
= v′ + Ω × x
(34)
ここに
∑
v′ =
vi′ e′i ≡
∑
i
x˙′i e′i
(35)
i
を相対速度あるいは回転系から見た速度という.
加速度ベクトルは速度ベクトルをさらに時間微分したものであったから
a = v˙
=
∑
x¨i ei
i
=
∑
x¨′i e′i +
i
=
∑
∑
2x˙′i e˙′i +
i
x¨′i e′i +
∑
∑
x′i e¨′i
i
2x˙′i Ω × e′i +
∑
i
i
i
x′i Ω × Ω × e′i
= a′ + 2Ω × v ′ + Ω × Ω × x
(36)
ここに
a′ =
∑
a′i e′i ≡
∑
i
x¨′i e′i
(37)
i
を相対加速度あるいは回転系から見た加速度という. −2Ω × v ′ はコリオリ力,
−Ω × Ω × x は遠心力と呼ばれる.
3
例: 球座標での表現
以下球座標系での具体的表現を与えておく. 座標は
√
ξ1 = r =
x2 + y 2 + z 2 ,
√
ξ2 = θ = tan−1 ( x2 + y 2 /z)
(38)
ξ3 = ϕ = tan−1 (y/x),
/lecgfd/cood.tex(cood-sph.tex)
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さまざまな座標系での表現, 資料
3
例: 球座標での表現
10
あるいは
x = r sin θ cos ϕ, y = r sin θ sin ϕ, z = r cos θ,
(39)
h1 = 1, h2 = r, h3 = r sin θ,
(40)
であリ,
基底ベクトルの O − xyz 系での成分は,






− sin ϕ
cos θ cos ϕ
sin θ cos ϕ











er =  sin θ sin ϕ  , eθ =  cos θ sin ϕ  , eϕ =  cos ϕ 
,
cos θ
− sin θ
0
(41)
Γlij で 0 でない成分は
1
1
Γθrθ = Γθθr = , Γϕrϕ = Γϕϕr = , Γrθθ = −r,
r
r
Γϕθϕ = Γϕϕθ = cot θ Γrϕϕ = −r sin2 θ, Γθϕϕ = − sin θ cos θ
(42)
よって基底ベクトルの向きが位置依存するものは
∂
∂
er = eθ ,
er = sin θeϕ ,
∂θ
∂ϕ
∂
∂
∂
eθ = −er
eθ = cos θeϕ
eϕ = − sin θer − cos θeθ
∂θ
∂ϕ
∂ϕ
(43)
である.
速度ベクトルは
˙ vϕ = r sin θϕ,
˙
vr = r,
˙ vθ = rθ,
(44)
ラグランジュ微分は次のようになる.
∂•
1 ∂•
1 ∂•
d•
∂•
=
+ vr
+ vθ
+ vϕ
dt
∂t
∂r
r ∂θ
r sin θ ∂ϕ
(45)
任意のベクトル場 A のラグランジュ微分は次のようになる.
[
]
/lecgfd/cood.tex(cood-sph.tex)
2014/09/18(林 祥介)
dA
∂Ar
∂Ar
1 ∂Ar
1 ∂Ar vθ
vϕ
= er
+ vr
+ vθ
+ vϕ
− Aθ − Aϕ
dt
∂t
∂r
r ∂θ
r sin θ ∂ϕ
r
r
[
]
∂Aθ
∂Aθ
1 ∂Aθ
1 ∂Aθ vθ
vϕ cot θ
+eθ
+ vr
+ vθ
+ vϕ
+ Ar −
Aϕ
∂t
∂r
r ∂θ
r sin θ ∂ϕ
r
r
[
]
∂Aϕ
∂Aϕ
1 ∂Aϕ
1 ∂Aϕ vϕ
vϕ cot θ
+eϕ
+ vr
+ vθ
+ vϕ
+ Ar +
Aθ
∂t
∂r
r ∂θ
r sin θ ∂ϕ
r
r
(46)
さまざまな座標系での表現, 資料
例: 球座標での表現
11
∂vr
1 ∂vr
1 ∂vr vθ2 + vϕ2
+ vθ
+ vϕ
−
,
∂r
r ∂θ
r sin θ ∂ϕ
r
∂vθ
1 ∂vθ
1 ∂vθ vr vθ vϕ2 cot θ
= v˙θ + vr
+ vθ
+ vϕ
+
−
,
∂r
r ∂θ
r sin θ ∂ϕ
r
r
∂vϕ
1 ∂vϕ
1 ∂vϕ vϕ vr vθ vϕ cot θ
= v˙ϕ + vr
+ vθ
+ vϕ
+
+
∂r
r ∂θ
r sin θ ∂ϕ
r
r
(47)
3
よって加速度ベクトルは
ar = v˙r + vr
aθ
aϕ
である.
任意のスカラー場 f の勾配 ∇f は次のようになる.
∇f =
∂f
1 ∂
1 ∂f
er +
eθ +
eϕ .
∂r
r ∂θ
r sin θ ∂ϕ
(48)
任意のベクトル場 A の回転は次のようになる.
(
(∇×A)r
(∇×A)θ
(∇×A)ϕ
)
∂Aϕ sin θ ∂Aθ
1
,
−
=
r sin θ
∂θ
∂ϕ
1 ∂Ar 1 ∂rAϕ
=
−
,
r sin θ ∂ϕ
r ∂r
1 ∂rAθ 1 ∂Ar
=
−
.
r ∂r
r ∂θ
(49)
(50)
(51)
任意のベクトル場 A の発散は次のようになる.
1 ∂r2 Ar
1 ∂Aθ sin θ
1 ∂Aϕ
∇·A = 2
+
+
.
r ∂r
r sin θ
∂θ
r sin θ ∂ϕ
(52)
任意のスカラー場 f のラプラシアン ∆f は次のようになる.
∆f = ∇·∇f
(
)
(
)
1 ∂
1 ∂f
∂f
1
∂ 2f
2 ∂f
= 2
r
+ 2
sin θ
+ 2 2
r ∂r
∂r
r sin θ ∂θ
∂θ
r sin θ ∂ϕ2
(53)
歪みテンソルは次のようになる.
∂ur
,
∂r
1 ∂uθ ur
+ ,
=
r ∂θ
r
1 ∂uϕ ur uθ cot θ
=
+
+
,
r sin θ ∂ϕ
r
r
[
]
( )
1
∂ uθ
1 ∂ur
=
r
+
,
2 ∂r r
r ∂θ
err =
(54)
eθθ
(55)
eϕϕ
erθ
/lecgfd/cood.tex(cood-sph.tex)
(56)
(57)
2014/09/18(林 祥介)
さまざまな座標系での表現, 資料
[
eθϕ
eϕr
3
(
例: 球座標での表現
)
12
]
1 sin θ ∂
uϕ
1 ∂uθ
=
+
,
2
r ∂θ sin θ
r sin θ ∂ϕ
[
( )]
1 ∂ur
∂ uϕ
1
=
+r
.
2 r sin θ ∂ϕ
∂r r
(58)
(59)
回転系のナビアストークス方程式の表現は次のようになる.
∂vr
∂vr
1 ∂vr
1 ∂vr vθ2 + vϕ2
+ vr
+ vθ
+ vϕ
−
− 2Ωz sin θvϕ
∂t
∂r
r ∂θ
r sin θ ∂ϕ
r
1 ∂p ∂Φ′
=−
−
ρ ∂r
∂r
(
)
2vr
2 ∂vθ 2vθ cot θ
2 ∂vϕ
+ν ∆vr − 2 − 2
−
− 2
(60)
r
r ∂θ
r2
r sin θ ∂ϕ
∂vθ
∂vθ
1 ∂vθ
1 ∂vθ vr vθ vϕ2 cot θ
+ vr
+ vθ
+ vϕ
+
−
− 2Ωz cos θvϕ
∂t
∂r
r ∂θ
r sin θ ∂ϕ
r
r
1 1 ∂p 1 ∂Φ′
−
=−
ρ r ∂θ
r ∂θ
(
)
vθ
2 ∂vr
2 cos θ ∂vϕ
(61)
+ν ∆vθ − 2 2 − 2 2
+ 2
r ∂θ
r sin θ r sin θ ∂ϕ
∂vϕ
∂vϕ
1 ∂vϕ
1 ∂vϕ vϕ vr vθ vϕ cot θ
+ vr
+ vθ
+ vϕ
+
+
+ 2Ωz cos θvθ + 2Ωz sin θvr
∂t
∂r
r ∂θ
r sin θ ∂ϕ
r
r
1 1 ∂p
1 ∂Φ′
=−
−
ρ r sin θ ∂ϕ r sin θ ∂ϕ
)
(
vϕ
2 ∂vr
2 cos θ ∂vθ
+ν ∆vϕ − 2 2 + 2
+ 2 2
(62)
r sin θ r sin θ ∂ϕ
r sin θ ∂ϕ
ただし系の回転軸を z 軸としてある. 系の回転角速度ベクトルの O − rθϕ 系で
の成分は Ω = (Ωz cos θ, −Ωz sin θ, 0), 遠心力はポテンシャル力に含めてある, すな
わち
1
Φ′ = Φ − r2 sin2 θΩ2z
2
(63)
Φ は非回転系で与えられる保存力のポテンシャルである.
等方線形弾性体の運動方程式の表現は次のようになる.
(
)
∂ur
∂
1 ∂uθ sin θ
1 ∂uϕ
1 ∂r2 ur
ρ
= (λ + 2µ)
+
+
2
∂t
∂r r ∂r
r sin θ ∂θ
r sin θ ∂ϕ
[
(
)
(
)]
1 ∂
1 ∂
1 ∂ruθ 1 ∂ur
1 ∂ur 1 ∂ruϕ
−µ
sin θ
−
−
−
r sin θ ∂θ
r ∂r
r ∂θ
r sin θ ∂ϕ r sin θ ∂ϕ
r ∂r
(64)
/lecgfd/cood.tex(cood-sph.tex)
2014/09/18(林 祥介)
さまざまな座標系での表現, 資料
3
例: 球座標での表現
(
13
)
∂uθ
1 ∂
1 ∂r2 ur
1 ∂uθ sin θ
1 ∂uϕ
ρ
= (λ + 2µ)
+
+
2
∂t
r ∂θ r ∂r
r sin θ ∂θ
r sin θ ∂ϕ
(
)
(
)]
[
1 ∂ sin θuϕ
1 ∂uθ
1 ∂
1 ∂ruθ 1 ∂ur
1 ∂
−µ
−
−
r
−
r sin θ ∂ϕ r sin θ
∂θ
r sin θ ∂ϕ
r ∂r
r ∂r
r ∂θ
(65)
(
)
2
∂uϕ
1 ∂
1 ∂r ur
1 ∂uθ sin θ
1 ∂uϕ
ρ
= (λ + 2µ)
+
+
2
∂t
r sin θ ∂ϕ r ∂r
r sin θ ∂θ
r sin θ ∂ϕ
[
(
)
(
)]
1 ∂
1 ∂ur 1 ∂ruϕ
1 ∂
1 ∂ sin θuϕ
1 ∂uθ
−µ
r
−
−
−
r ∂r
r sin θ ∂ϕ
r ∂r
r ∂θ r sin θ
∂θ
r sin θ ∂ϕ
(66)
3.1
円筒座標での表現
以下円筒座標系での具体的表現を与えておく. 座標は
√
ξ1 = r =
x2 + y 2 , ξ2 = ϕ = tan−1 (y/x), ξ3 = z,
(67)
あるいは
x = r cos ϕ, y = r sin ϕ, z = z,
(68)
h1 = 1, h2 = r, h3 = 1,
(69)
であリ,
基底ベクトルの O − xyz 系での成分は,






cos ϕ
− sin ϕ
0








 , ez =  0  ,
er = 
 sin ϕ  , eϕ =  cos ϕ



0
0
1
(70)
Γlij で 0 でない成分は
1
Γϕrϕ = Γϕϕr = , Γrϕϕ = −r,
r
(71)
よって基底ベクトルの向きが位置依存するものは
∂
∂
er = eϕ ,
eϕ = −er
∂ϕ
∂ϕ
(72)
である.
/lecgfd/cood.tex(cood-cyl.tex)
2014/09/18(林 祥介)
さまざまな座標系での表現, 資料
3
例: 球座標での表現
14
速度ベクトルは
˙ vz = z,
vr = r,
˙ vϕ = rϕ,
˙
(73)
ラグランジュ微分は次のようになる.
d•
∂•
∂•
1 ∂•
∂•
=
+ vr
+ vϕ
+ vz
dt
∂t
∂r
r ∂ϕ
∂z
(74)
任意のベクトル場 A のラグランジュ微分は次のようになる.
[
]
dA
∂Ar
∂Ar
1 ∂Ar
∂Ar vϕ
= er
+ vr
+ vϕ
+ vz
− Aϕ
dt
∂t
∂r
r ∂ϕ
∂z
r
[
]
∂Aϕ
∂Aϕ
1 ∂Aϕ
∂Aϕ vϕ
+eϕ
+ vr
+ vϕ
+ vz
+ Ar
∂t
∂r
r ∂ϕ
∂z
r
[
]
∂Az
∂Az
1 ∂Az
∂Az
+ez
+ vr
+ vϕ
+ vz
∂t
∂r
r ∂ϕ
∂z
(75)
よって加速度ベクトルは
∂vr
1 ∂vr
∂vr vϕ2
+ vϕ
+ vz
− ,
∂r
r ∂ϕ
∂z
r
∂vϕ
1 ∂vϕ
∂vϕ vr vϕ
= v˙ϕ + vr
+ vϕ
+ vz
+
,
∂r
r ∂ϕ
∂z
r
∂vz
1 ∂vz
∂vz
= v˙z + vr
+ vϕ
+ vz
,
∂r
r ∂ϕ
∂z
ar = v˙r + vr
aϕ
az
(76)
である.
任意のスカラー場 f の勾配 ∇f は次のようになる.
∇f =
∂f
1 ∂f
∂f
er +
eϕ +
ez .
∂r
r ∂ϕ
∂z
(77)
任意のベクトル場 A の回転は次のようになる.
1 ∂Az ∂Aϕ
−
,
r ∂ϕ
∂z
∂Ar ∂Az
=
−
,
∂z
∂r
1 ∂rAϕ 1 ∂Ar
−
.
=
r ∂r
r ∂ϕ
(∇×A)r =
(78)
(∇×A)ϕ
(79)
(∇×A)z
(80)
任意のベクトル場 A の発散は次のようになる.
∇·A =
/lecgfd/cood.tex(cood-cyl.tex)
1 ∂rAr 1 ∂Aϕ ∂Az
+
+
.
r ∂r
r ∂ϕ
∂z
(81)
2014/09/18(林 祥介)
さまざまな座標系での表現, 資料
3
例: 球座標での表現
15
任意のスカラー場 f のラプラシアン ∆f は次のようになる.
(
1 ∂
∂f
∆f = ∇·∇f =
r
r ∂r
∂r
)
+
1 ∂ 2f
∂ 2f
+
.
r2 ∂ϕ2 ∂z 2
(82)
歪みテンソルは次のようになる.
err =
eϕϕ =
ezz =
erϕ =
eϕz =
ezr =
∂ur
,
∂r
1 ∂uϕ ur
+ ,
r ∂ϕ
r
∂uz
,
∂z[
]
( )
1
1 ∂ur
∂ uϕ
r
+
,
2 ∂ϕ r
r ∂ϕ
[
]
1 1 ∂uz ∂uϕ
+
,
2 r ∂ϕ
∂z
[
]
1 ∂ur ∂uz
+
.
2 ∂z
∂r
(83)
(84)
(85)
(86)
(87)
(88)
回転系のナビアストークス方程式の表現は次のようになる.
∂vr
∂vr
1 ∂vr
∂vr vϕ2
+ vr
+ vϕ
+ vz
−
− 2Ωz vϕ
∂t
∂r
r ∂ϕ
∂z
r
(
)
vr
1 ∂p ∂ϕ′
2 ∂vϕ
=−
−
+ ν ∆vr − 2 − 2
ρ ∂r
∂r
r
r ∂ϕ
∂vϕ
∂vϕ
1 ∂vϕ
∂vϕ vϕ vr
+ vr
+ vϕ
+ vz
+
+ 2Ωz vr
∂t
∂r
r ∂ϕ
∂z
r
(
)
1 1 ∂p 1 ∂Φ′
vϕ
2 ∂vr
=−
−
+ ν ∆vϕ − 2 + 2
ρ r ∂ϕ r ∂ϕ
r
r ∂ϕ
∂vz
∂vz
1 ∂vz
∂vz
+ vr
+ vϕ
+ vz
∂t
∂r
r ∂ϕ
∂z
′
1 ∂p ∂Φ
=−
−
+ ν (∆vz )
ρ ∂z
∂z
(89)
(90)
(91)
ただし系の回転軸を z 軸としてある. 系の回転角速度ベクトルの O − rϕz 系での
成分は Ω = (0, 0, Ωz ), 遠心力はポテンシャル力に含めてある, すなわち
1
Φ′ = Φ − r2 Ω2z
2
(92)
Φ は非回転系で与えられる保存力のポテンシャルである.
/lecgfd/cood.tex(cood-cyl.tex)
2014/09/18(林 祥介)
さまざまな座標系での表現, 資料
3
例: 球座標での表現
等方線形弾性体の運動方程式の表現は次のようになる.
(
)
∂ 1 ∂rur 1 ∂uϕ ∂uz
∂ur
ρ
= (λ + 2µ)
+
+
∂t
∂r r ∂r
r ∂ϕ
∂z
[
(
)
(
)]
1 ∂ 1 ∂ruϕ 1 ∂ur
∂ ∂ur ∂uz
−
−
−
−µ
r ∂ϕ r ∂r
r ∂ϕ
∂z ∂z
∂r
(
)
∂uϕ
1 ∂ 1 ∂rur 1 ∂uϕ ∂uz
ρ
= (λ + 2µ)
+
+
∂t
r ∂ϕ r ∂r
r ∂ϕ
∂z
(
)
(
)]
[
∂ 1 ∂ruϕ 1 ∂ur
∂ 1 ∂uz ∂uϕ
−
−µ
−
−
∂z r ∂ϕ
∂z
∂r r ∂r
r ∂ϕ
(
)
∂uz
∂ 1 ∂rur 1 ∂uϕ ∂uz
ρ
= (λ + 2µ)
+
+
∂t
∂z r ∂r
r ∂ϕ
∂z
[
(
)
(
) ]
1 ∂ 1 ∂uz ∂uϕ
1 ∂
∂ur ∂uz
−
n
−µ
r
−
−
r ∂r
∂z
∂r
r ∂ϕ r ∂ϕ
∂z
3.2
16
(93)
(94)
(95)
球座標での表現 (緯度経度座標)
おなじ球座標系でも気象学などでは緯度経度を使って記述することが多い. 以下く
りかえしになるが緯度経度座標系での具体的表現を与えておく.
ξ1 = λ = tan−1 (y/x),
√
ξ2 = ϕ = tan−1 (z/ x2 + y 2 )
(96)
√
ξ3 = r =
x2 + y 2 + z 2 ,
あるいは
x = r cos ϕ cos λ, y = r cos ϕ sin λ, z = r sin ϕ,
(97)
h1 = r cos ϕ, h2 = r, h3 = 1,
(98)
であリ,
基底ベクトルの O − xyz 系での成分は,






− sin λ
− sin ϕ cos λ
cos ϕ cos λ











eλ =  cos λ  , eϕ =  − sin ϕ sin λ  , er =  cos ϕ sin λ 
,
0
cos ϕ
sin ϕ
(99)
Γlij で 0 でない成分は
Γrλλ = −r cos2 ϕ, Γϕλλ = cos ϕ sin ϕ Γλϕλ = Γλϕλ = − tan ϕ
1
1
Γrϕϕ = −r, Γλrλ = Γλλr = , Γϕrϕ = Γϕϕr = ,
r
r
/lecgfd/cood.tex(cood-sph2.tex)
(100)
2014/09/18(林 祥介)
さまざまな座標系での表現, 資料
3
例: 球座標での表現
17
よって基底ベクトルの向きが位置依存するものは
∂
∂
∂
eλ = − cos ϕer + sin ϕeϕ ,
eϕ = − sin ϕeλ ,
eϕ = −er ,
∂λ
∂λ
∂ϕ
∂
∂
er = cos ϕeλ ,
er = eϕ ,
(101)
∂λ
∂ϕ
である.
速度ベクトルは
˙ vϕ = rϕ,
˙ vr = r,
vλ = r cos ϕλ,
˙
(102)
ラグランジュ微分は次のようになる.
d•
∂•
1 ∂•
1 ∂•
∂•
=
+ vλ
+ vϕ
+ vr
dt
∂t
r cos ϕ ∂λ
r ∂ϕ
∂r
(103)
任意のベクトル場 A のラグランジュ微分は次のようになる.
[
]
dA
∂Aλ
1 ∂Aλ
1 ∂Aλ
∂Aλ vλ
vλ tan ϕ
= eλ
+ vλ
+ vϕ
+ vr
+ Ar −
Aϕ
dt
∂t
r cos ϕ ∂λ
r ∂ϕ
∂r
r
r
]
[
1 ∂Aϕ
1 ∂Aϕ
∂Aϕ vϕ
vλ tan ϕ
∂Aϕ
+ vλ
+ vϕ
+ vr
+ Ar +
Aλ
+eϕ
∂t
r cos ϕ ∂λ
r ∂ϕ
∂r
r
r
]
[
1 ∂Ar
1 ∂Ar
∂Ar vϕ
vλ
∂Ar
+ vλ
+ vϕ
+ vr
− Aϕ − Aλ
+er
∂t
r cos ϕ ∂λ
r ∂ϕ
∂r
r
r
(104)
よって加速度ベクトルは
1 ∂vλ
1 ∂vλ
∂vλ vλ vr vϕ vλ tan ϕ
+ vϕ
+ vr
+
−
r cos ϕ ∂λ
r ∂ϕ
∂r
r
r
2
1 ∂vϕ
1 ∂vϕ
∂vϕ vr vϕ vλ tan ϕ
= v˙ϕ + vλ
+ vϕ
+ vr
+
+
,
r cos ϕ ∂λ
r ∂ϕ
∂r
r
r
1 ∂vr
1 ∂vr
∂vr vϕ2 + vλ2
= v˙r + vλ
+ vϕ
+ vr
−
,
r cos ϕ ∂λ
r ∂ϕ
∂r
r
aλ = v˙λ + vλ
aϕ
ar
(105)
である.
任意のスカラー場 f の勾配 ∇f は次のようになる.
∇f =
/lecgfd/cood.tex(cood-sph2.tex)
1 ∂f
1 ∂f
∂f
eλ +
eϕ +
er .
r cos ϕ ∂λ
r ∂ϕ
∂r
(106)
2014/09/18(林 祥介)
さまざまな座標系での表現, 資料
3
例: 球座標での表現
18
任意のベクトル場 A の回転は次のようになる.
1 ∂Ar 1 ∂rAϕ
−
,
r ∂ϕ
r ∂r
1 ∂rAλ
1 ∂Ar
=
−
,
r ∂r
r cos ϕ ∂λ
(
)
1
∂Aϕ ∂Aλ cos ϕ
=
.
−
r cos ϕ ∂λ
∂ϕ
(∇×A)λ =
(107)
(∇×A)ϕ
(108)
(∇×A)r
(109)
任意のベクトル場 A の発散は次のようになる.
∇·A =
1 ∂Aλ
1 ∂Aϕ cos ϕ
1 ∂r2 Ar
+
+ 2
.
r cos ϕ ∂λ
r cos ϕ
∂ϕ
r ∂r
(110)
任意のスカラー場 f のラプラシアン ∆f は次のようになる.
∆f = ∇·∇f
(
)
(
)
∂ 2f
∂
1
1
∂f
1 ∂
2 ∂f
= 2
+
cos ϕ
+ 2
r
r cos2 ϕ ∂λ2 r2 cos ϕ ∂ϕ
∂ϕ
r ∂r
∂r
(111)
歪みテンソルは次のようになる.
err =
eϕϕ =
eλλ =
erϕ =
eϕλ =
eλr =
∂ur
,
∂r
1 ∂uϕ ur
+ ,
r ∂ϕ
r
1 ∂uλ ur uϕ tan ϕ
+
−
,
r cos ϕ ∂λ
r
r
[
]
( )
1
∂ uϕ
1 ∂ur
r
+
,
2 ∂r r
r ∂ϕ
[
(
)
]
1 cos ϕ ∂
uλ
1 ∂uϕ
+
,
2
r ∂ϕ cos ϕ
r cos ϕ ∂λ
[
( )]
∂ uλ
1
1 ∂ur
+r
.
2 r cos ϕ ∂λ
∂r r
(112)
(113)
(114)
(115)
(116)
(117)
回転系のナビアストークス方程式の表現は次のようになる.
∂vλ
1 ∂vλ
1 ∂vλ
∂vλ vλ vr vϕ vλ tan ϕ
+ vλ
+ vϕ
+ vr
+
−
− 2Ωz sin ϕvϕ + 2Ωz cos ϕvr
∂t
r cos ϕ ∂λ
r ∂ϕ
∂r
r
r
1 1 ∂p
1 ∂Φ′
=−
−
ρ r cos ϕ ∂λ r cos ϕ ∂λ
(
)
vλ
2 ∂vr
2 sin ϕ ∂vϕ
+ν ∆vλ − 2
+
− 2
(118)
r cos2 ϕ r2 cos ϕ ∂λ
r cos2 ϕ ∂λ
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2014/09/18(林 祥介)
さまざまな座標系での表現, 資料
3
例: 球座標での表現
19
∂vϕ
1 ∂vϕ
1 ∂vϕ
∂vϕ vr vϕ vλ2 tan ϕ
+ vλ
+ vϕ
+ vr
+
+
+ 2Ωz sin ϕvλ
∂t
r cos ϕ ∂λ
r ∂ϕ
∂r
r
r
1 1 ∂p 1 ∂Φ′
=−
−
ρ r ∂ϕ r ∂ϕ
(
)
vϕ
2 sin ϕ ∂vλ
2 ∂vr
+ν ∆vϕ − 2
+
+ 2
r cos2 ϕ r2 cos2 ϕ ∂λ
r ∂ϕ
2
∂vr
1 ∂vr
1 ∂vr
∂vr vϕ + vλ2
+ vλ
+ vϕ
+ vr
−
− 2Ωz cos ϕvλ
∂t
r cos ϕ ∂λ
r ∂ϕ
∂r
r
1 ∂p ∂Φ′
=−
−
ρ ∂r
∂r
)
(
2vr
2 ∂vϕ 2vϕ tan ϕ
2 ∂vλ
+ν ∆vr − 2 − 2
−
− 2
r
r ∂ϕ
r2
r cos ϕ ∂λ
(119)
(120)
ただし系の回転軸を z 軸としてある. 系の回転角速度ベクトルの O − λϕr 系で
の成分は Ω = (0, −Ωz cos ϕ, Ωz sin ϕ), 遠心力はポテンシャル力に含めてある, すな
わち
1
Φ′ = Φ − r2 cos2 ϕΩ2z
2
(121)
Φ は非回転系で与えられる保存力のポテンシャルである.
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2014/09/18(林 祥介)