演習問題の解答例

応用解析・レポート問題 (5 月 16 日)
演習問題の解答例
問題 1.
1. 次の微分方程式の解の存在と一意性について調べてから一般解を求めよ。
(x + y) + (x − y)y 0 = 0
2. 様々な初期値に対する解曲線を図示せよ。
3. 以下の初期条件を満たす全ての特殊解をそれぞれ求めよ。
a)
y(1) =
1+
b)
y(1) =
1
c)
y(1)
−1
=
√
2
――――――――――――――――――――――――――――――
1. 方程式を次のように書くことができる。
y0 =
y+x
=
y−x
右辺の関数を
f (x, y) =
y
x
y
x
+1
−1
y+x
y−x
とおくと、f は y = x となる点 (x, y) において発散する。f の y についての偏微分を計算すれば、
∂f
−2x
(x, y) =
∂y
(y − x)2
であるから、N = R2 \ {(x, y); y = x} のすべての点に対してその点を中心とする長方形領域が存在し、そ
の長方形領域で ∂f /∂y が連続である。したがって、 N のすべての点に対してリプシッツ条件が満たされ
るような長方形領域が存在するので、N の一つの点を通る解が二つ以上あることがない。つまり、N では
解が存在し、その一意性が成り立つことが分かった。
方程式は同次形なので、 y = xz という式により新しい未知関数 z を定義すると、y 0 = z + xz 0 となり、
z + xz 0
xz 0
∫
z−1
dz
1 + 2z − z 2
z+1
z−1
1 + 2z − z 2
z+1
−z =
=
z−1
∫z − 1
√
1
=
dx + C
z=
6 1 ± 2 のとき
x
=
1
− log |1 + 2z − z 2 | = log |x| + C
2
log |1 + 2z − z 2 | = −2 log |x| + C 0 = log
1 + 2z − z 2
x2 + 2x2 z − (xz)2
= ±eC
= C 00
0
1
C 00
=
,
x2
x2
1
+ C0
x2
C 00 6= 0
を得る。ここで、改めて y = zx とおくと、
x2 + 2xy − y 2 = C 00 ,
C 00 ∈ R, C 00 6= 0
(1)
という解に対する関係式が得られる。
2. この関係式を
−(y − (1 +
√
√
2)x)(y − (1 − 2)x) = C 00
√
というふうに分解できるので、解曲線は双曲線である。C 00 = 0 に対応する解は y(x) = (1 + 2)x と
√
√
y(x) = (1 − 2)x の2つである。これらは z 6= 1 ± 2 という上でおいた仮定に関係している。
√
√
従って、解曲線を描くには、y(x) = (1 + 2)x と y(x) = (1 − 2)x を描き、それを漸近線とする双曲線を
描けばよい。また、全ての双曲線の y = x となる点における微分が無限大になる(接線が x 軸と成す角度
が 90 度になる)ことに注意する。
3
2
4
3
2
1
0
-1
-2
-3
-4
-5
1
0
-1
-2
-10
-15
-20
10
-5
5
0
-3
-2
-1.5
-1
-0.5
0
0.5
1
1.5
2
3. 初期条件を満たす解を求める。(1) を 2 次方程式として考え、y を計算すれば、
√
y = x ± 2x2 − C 00
となる。
√
a) 上の考察より、y(x) = (1 + 2)x という関数がこの条件を満たす解であることを得る。また、最初に
述べた一意性により、この関数以外に解が存在しないことが分かる。
b) この初期条件では y = x = 1 となるので、一意性が成り立たない可能性がある。実際、上の式で y が
初期条件を満たすように C 00 を計算すると、C 00 = 2 になり、
y1 (x) = x +
√
2(x2 − 1),
y2 (x) = x −
√
2(x2 − 1)
(x ≥ 1)
という2つの解の候補が得られる。x = 1 において二乗根の中が 0 になるので、両方の関数が初期条件を満
たすことになる。よって、この場合は上式により与えられる2つの解が存在する。
c) y が初期条件を満たすように C 00 を計算すると、C 00 = −2 となり、解の候補が
y1 (x) = x +
√
2(x2 + 1),
y2 (x) = x −
√
2(x2 + 1)
(x ∈ R)
となる。しかし、最初の関数は初期条件をみたさないので、解は
y(x) = x −
√
2(x2 + 1),
x∈R
のみである。
答え
方程式の一般解は
x2 + 2xy − y 2 = C,
C∈R
を満たす関数 y (双曲線)である。y0 = x0 をみたす初期条件 y(x0 ) = y0 に対し、解が2つ存在し、それ以
外の初期条件に対し、解が唯一決まる。
問題 2.
次の条件を満たす関数 y(x) を すべて 見つけよ。
√
= 3 xy
y0
y(0)
= 0
――――――――――――――――――――――――――――――
√
まず、解の存在と一意性を調べる。f (x, y) = 3 xy という関数は K = {(x, y); xy ≥ 0} という領域のなかで
とった任意の長方形領域において連続で有界である。
∂f
3
(x, y) =
∂y
2
√
x
y
と計算すれば、y 6= 0 を満たす K の任意の点を中心とする長方形領域が存在し、その長方形領域で f がリプシッ
ツ条件をみたすことがわかる。よって、領域 N = {(x, y); xy ≥ 0, y 6= 0} の点を通る解がただ一つ存在する。
二乗根のなかの符号を今のところ無視して方程式を解く。ただし、右辺は常に非負の値であるから、解が必ず
増加関数になることに注意する。
∫
1
√ dy
y
√
2 y
y(x)
∫
=
√
3 x dx
√
= 2 x3 + 2C,
(
)2
=
x3/2 + C
y 6= 0 のとき
C∈R
初期条件 y(0) = 0 をみたすような C を求めると、C = 0 を得るので、とりあえず
y(x) = x3
という特殊解が得られた。この関数に x をかけると x4 になり非負なので、定義域は R 全体としてよい。また方
程式に代入して検算してみると解になっていることが確かめられる。
しかし、一意性の考察と解く途中で出た仮定 y 6= 0 を考慮すると、
y(x) = 0
も解であることに気づく。この解も初期条件を満たしている。従って、二乗根の定義域を考慮して上の二つの解
をうまくつなげることですべての解が以下のように書ける。
 (
)2

3/2
3/2

−
(−x)
−
(−C
1)


y(x) =
0

(
)2


 x3/2 − C 3/2
2
x ≤ C1
C1 ≤ x ≤ C2
x ≥ C2
ただし、C1 ≤ 0 と C2 ≥ 0 は勝手に選んだ定数である。C1 = C2 = 0 とおくと、y = x3 の解が得られる。また、
x ≤ C2 に対し y(x) = 0 とした関数も解である(同様に x ≥ C1 )。
20
15
10
5
C
C
1
2
0
-5
-10
-15
-20
-3
-2
-1
0
1
2
3
問題 3.
微分方程式
x3 y 0 + xy = 1
の一般解を求めよ。
――――――――――――――――――――――――――――――
方程式をう次のように書き直す。
1
1
y+ 3
2
x
x
関数 f (x, y) = − x12 y + x13 は x = 0 となる点を含まない長方形領域において連続かつ有界である。また、
∂f /∂y = − x12 より、f は x = 0 となる点を含まない長方形領域においてリプシッツ条件を満たす。よって、x 6= 0
y0 = −
をみたす点 (x, y) を通る解が一通り定まる。
• この方程式は 1 階の線形方程式であるので、まず同次方程式 y 0 = −y/x2 の解を求める。
∫
∫
1
1
dy = −
dx + C1
y
x2
1
log |y| =
+ C1
x
1
1
y = ±eC1 e x = Ce x ,
C∈R
• 次に、定数変化法によりもとの非同次方程式の解を計算する。すなわち、解を
1
y(x) = C(x)e x
(2)
の形で求める。すると、y 0 (x) = C 0 (x)e x − C(x)e x /x2 となるので、
1
1
C 0 (x) =
を得る。この積分を z =
1
x
1 −1
e x
x3
という変数変換を用いて求めると、
C(x) =
(1
x
) 1
+ 1 e− x + C 0
これを (2) に代入すると、一般解
y(x) = 1 +
1
1
+ Ce x
x
が従う。
答え
方程式の一般解は
y(x) = 1 +
1
1
+ Ce x ,
x
C ∈ R,
x 6= 0
である。
10
8
6
4
2
0
-2
-4
-6
-8
-10
-3
-2
-1
0
1
2
3
問題 4.
微分方程式
y 00 − y + 2x2 = 0
に対し、初期条件
y(0) = y 0 (0) = 2
を満たす特殊解を求めよ。
――――――――――――――――――――――――――――――
方程式は 2 階の定数係数線形方程式である。
• 同次方程式 y 00 − y = 0 の解を求める。
特性方程式 λ2 − 1 = 0 の根は λ = ±1 であるので、同次方程式の一般解は
y(x) = C1 e−x + C2 ex ,
C1 , C 2 ∈ R
である。
• もとの方程式の特殊解を求める。右辺が 2 次関数なので、特殊解も 2 次関数 y0 (x) = αx2 + βx + γ の形で
求めることができる。そのとき、y00 (x) = 2αx + β, y000 (x) = 2α であるので、y0 の形を方程式に代入すれば、
2α − αx2 − βx − γ = −2x2
を得る。この式が全ての x ∈ R に対して成り立たなければならないので、−α = −2, −β = 0, 2α − γ = 0
という条件を得る。従って、α = 2, β = 0, γ = 4 となり、
y0 (x) = 2x2 + 4
の特殊解が求まった。
• 非同次方程式の一般解は「同次方程式の一般解+非同次方程式の特殊解」と書けるので、
y(x) = C1 e−x + C2 ex + 2x2 + 4.
上の一般解の式に初期条件を適用すると、
y 0 (0) = −C1 + C2 = 2
y(0) = C1 + C2 + 4 = 2,
という条件を得るので、C1 = −2, C2 = 0 が求まる。
答え
方程式の一般解は
y(x) = C1 e−x + C2 ex + 2x2 + 4,
C1 , C2 ∈ R
であり、与えられた初期条件を満たす特殊解は
y(x) = −2e−x + 2x2 + 4
である。
25
20
15
10
5
0
-5
-10
-15
-20
-3
-2
-1
0
1
2
3