PPD-20-32

PPD-20-32
作業を通して意志の発動に変化のみられた事例
―意志質問紙(VQ)を用いて―
Venting of volitional motion has changed through the occupation ; a case report
―Using Volitional Questionnaire(VQ)―
沼田 歩 (OT)
一般財団法人 太田綜合病院附属太田熱海病院
Key words: Occupational balance,Occupational therapy intervention,Volitional
Questionnaire
【はじめに】健康な生活とは一変した作業剥奪状態の中,自己効力感が著しく低下した事例に対し,
意志質問紙(VQ)を用い個人的原因帰属感の向上を主眼に介入した.障害を有する身体での作業経
験の蓄積が,事例の肯定的な参加機会の増大に繋がったので報告する.本報告は事例の同意を得てい
る.【事例】30代男性,重度の右片麻痺,失語症.母と二人暮らし,運送業に従事.ドライブ,釣り
が大切な作業だった.復職を希望するが,具体的な生活のイメージはなかった.構成的な面接は実施
できなかった.最低限のADL以外の作業には強く抵抗し「ダメ」「できない」と語った.【経過】作
業への動機づけを知るため,VQを施行.結果,最低限の作業以外では参加や遂行に非常に支援を要
し,興味はあっても有能性が伴わないことが示唆された.そこで事例が興味を示した作業を軸に,約
12週間介入した.徐々に作業への拒否的で消極的な態度が変化,試行錯誤しながら新しい作業へも
チャレンジする機会が増えた.笑顔も増え「もうちょっとがんばる」と語り,頑なに拒否していた外
出や外泊にも挑戦した.社会参加も現実的に考えるようになり,今後の生活を「一歩ずつ,登山のよ
うに」と語った.【結語】VQを用いたことで,言語的な意志疎通が困難であり,かつ興味関心の低
下が著しい事例に対して,効果的な環境や作業の戦略を立てることができ,事例の新たな意志を引き
出すことが可能になったと思われた.