仮想空間での上肢リハビリテーションシステムの構築

RSJ2014AC2H1-04
仮想空間での上肢リハビリテーションシステムの構築
郭 書祥(香川大学)
○山本
1. はじめに
現在、日本では高齢化が進んでおり、2007 年には
超高齢社会に突入している。高齢者が生活していく
上で、上肢は最も使用頻度の高い部位であり、老化
によって機能の低下した上肢に対するリハビリは大
変重要である。また、脳血管疾患、いわゆる脳卒中
は日本ではがん、心疾患に次いで死亡原因の第 3 位
になっており、その患者数は高齢化に伴い、さらに
増加することが予想される。さらに、脳卒中は、一
命を取り留めた場合でも片側麻痺などの後遺症が残
る場合が多い。しかし、増加傾向にある脳卒中患者
に対し、介護士、療法士の数が不足している。そこ
で介護士、療法士を必要としないリハビリテーショ
ンシステムの開発が求められている[1]。
2. 研究目的とアプローチ
啓嗣(香川大学)
動作は深指屈筋、伸ばし動作は深指伸筋を測定対象
とした。MTx センサを、人差し指、中指、薬指の第
1、第 2 関節に、チャンネルを深指伸筋、深指屈筋に
貼付する。図 2 に指の曲げ、伸ばし動作の順序を示
す。実験が開始される位置と伸ばし動作が終了する
位置を(a)、曲げ動作が終了する位置を(b)と設定した。
上肢の動作はそれぞれ 10 回ずつ行い、その中のデー
タを用いる。動作、停止の時間をそれぞれ 2 秒と設
定し、連続動作を可能とするため、曲げ動作と伸ば
し動作の開始の位置を 0°、終了の位置を 180°と
し、以下の 4 パターンの角度で動作と停止を繰り返
し、測定を行った。
(1) 0°→90°→180°(90°毎)
(2) 0°→60°→120°→180°(60°毎)
(3) 0°→45°→90°→135°→180°(45°毎)
(4) 0°→30°→60°→90°→120°→150°→180°(30°毎)
本研究では、両側リハビリテーションのデバイス
として仮想空間(VR)に作成した上肢を用いて、片
側麻痺患者に対するリハビリテーションシステムの
構築を目指す。
そのために、
上肢から sEMG 測定し、
特徴抽出を行った後、フィルタ処理を行い、連続動
作の上肢動作を VR で動作させる。実験では、測定
した sEMG を用いて、VR 内でのリハビリテーショ
ンシステムを構築し、閾値を設定し、実験を行う。
本研究では特徴抽出法として RMS を用い、フィル
タとしてローパスフィルタの一つであるバターワー
スフィルタを使用する。図 1 に作成した VR の上肢
モデルを示す [2] 。
(a)初期状態
(b)停止状態
図 2 sEMG 測定の様子
3.2. VR を用いた動作実験
図 1 作成した VR の上肢モデル
3.
実験方法
3.1. sEMG の測定
MTx センサによる角度の測定、Personal-EMG に
よる EMG の測定を行う。被験者は健康な 20 代男性
である。測定する上肢の動作は手指の曲げ動作、伸
ばし動作である。上肢の動作に対する筋肉は、曲げ
第32回日本ロボット学会学術講演会(2014年9月4日~6日)
測定した sEMG を用い、VR で動作実験を行う。
RMS を用い、sEMG を特徴抽出し、バターワース
フィルタを用い、フィルタ処理を行い、MTx センサ
で測定した角度の変化を用い、閾値を設定し、閾値
を上回る sEMG を測定すれば VR が動作する。30
度毎の曲げ動作は、角度の変化に対し、sEMG の差
がほとんどなく、閾値の設定が困難なため、実験を
行うことができなかった。
4. 実験結果
測定し、特徴抽出及びフィルタ処理後の sEMG の
測定結果の一例として、90 度毎の動作の測定結果を
図 3,4 に示す。MTx センサで測定した角度の変化
を図 5 に示す。図 6 に制御した VR を用いた動作実
験の様子を示す。
RSJ2014AC2H1-04
5. VR を用いたニューロリハビリテーション
sEMG(mV)
0.02
0.015
0.01
0.005
0
0
100
200
300
Sampling number
400
図 3 指屈筋の sEMG の変化
0.035
ミラーニューロンを駆使し、VR を用いたニューロ
リハビリテーションを提案する。3.2 の動作実験で使
用した VR の hand モデルにボールを持たせた。曲
げ動作を行うとボールは小さくなっていき、180 度
に達するとボールが消えるようになっている。また、
伸ばし動作を行うと、ボールは大きくなっていき、
伸ばし動作の 180 度に達するとボールは初期の大き
さにもどる。指の動作より分かりやすく、視覚的に
効果が出るよう構築した。動作実験の手順、原理は
3.2 の VR を用いた動作実験と同様とする。曲げ動作
の閾値は 0.015mv、伸ばし動作の閾値は 0.020mv
である。図 7 にボールを用いたニューロリハビリテ
ーションの動作実験の様子を示す。
sEMG(mV)
0.03
0.025
0.02
0.015
0.01
0.005
0
0
100
200
300
400
Sampling number
図 4 指伸筋の sEMG の変化
(b) 停止状態
図 7 ボールを用いた動作実験
100
6. 結論
50
Angle(° )
(a) 初期状態
0
-50
-100
0
300 600 900 1200150018002100
Sampling number
図 5 角度の変化
本研究では、指定した角度での指の曲げ、伸ばし
動作の sEMG の測定、測定した sEMG を用い、仮
想空間での指の曲げ、伸ばし動作の動作実験を行っ
た。45 度毎の測定までは VR を動作させるための閾
値を設定出来たが、30 度毎の測定になると閾値の設
定が難しく、VR を動作させることが出来なかった。
また、動作の切り替え時に、sEMG の誤認識が起こ
り、VR が誤作動を起こすことがあったことから、新
たな特徴抽出法、識別法、フィルタを考察し、誤作
動を減らし、連続動作が可能な角度を増やす必要が
ある。また、力フィードバックがないため、デバイ
スを用い、力フィードバックを加えることが今後の
課題である。
参考文献
(a) at 0°
(b) at 90°
(c) at 180°
図 6 動作実験の様子
第32回日本ロボット学会学術講演会(2014年9月4日~6日)
[1] Muye Pang, Shuxiang Guo, Songyuan Zhang:Finger
Joint Continuous Interpretation based on sEMG
Signals and Muscular Model:Proceedings of 2013
IEEE International Conference on Mechatronics and
Automation,
pp.1435-1440,
August
4-7,
Takamatsu, Japan, 2013
[2] 郭書祥, Mohd Yazid Bin Kamarudin, 宋智斌,
吉田俊一: 上肢の VR リハビリテーションシス
テムに関する研究. 第 15 回知能メカトロニクス
ワークショップ, B2, 愛媛, 日本, 2010.