( )V

伝送工学特論(復習)
:受講に対する前提条件
正弦波定常状態解析(フェーザ法)他
2014年4月15日
矢加部利幸
その1.「インピーダンス」? ← フェーザ電圧、フェーザ電流
その2.「実効値」? ← RMS 値(Root Mean Square value)
その3.「デシベル」? ← 定義は入出力電力の比から
その1.
「インピーダンス」?
←
フェーザ電圧、フェーザ電流
大変重要な[前提条件]:線形時間不変回路において
正弦波交流波形(実時間 or 瞬時電圧 vt  を例に展開する)
式(1)
vt   Vm cos t  V 
[V]
ここで、
Vm
振幅(amplitude)を表し、単位は [V]

角周波数(angular frequency)[rad/s]を表し、   2f で  (rad)は円周率、
f [Hz]は周波数(frequency)と言い、[Hz]=[1/s]である。
また、周波数 f の逆数(inverse number)を周期(period)T [s]と呼ぶ( T  1 / f )。
t
時刻(time)[s]と呼ばれる。
V
初期位相(initial phase)、または単に位相(phase)(rad)と呼ばれる。
少しの数学的知識(オイラーの公式)を取入れる事により回路解析が簡明かつ明瞭に記述
(フェーザ表記)できるようになった。
オイラーの公式
式(2)
e  j  cos   j sin 
実時間 or 瞬時関数 vt  のフェーザ表記
v t   Vm cos t  V 
式(3)
 eVm cos t  V   jVm sin  t  V 





 e Vm e j  t V   e Vm e jV  e j t  e Ve j t

⇔
V  Vm e jV
ここで現実世界の実時間 or 瞬時関数 vt (  Vm cost   v  )を別(現実でない仮想)の
複素数世界であるフェーザ関数
写像している。

V  Vm e jV  Vm cos V  jVm sin V

に
フェーザの世界と実時間の現実世界とを確り区別することが大変重要である。
フェーザ世界で解析したフェーザ関数(例えば V )を実時間関数 vt  に変換するのは大変
簡単で V に e jt (  は使用の角周波数)を乗じた後、単にその実部を取り出せばよい。
また、このフェーザ(正確には、より広義なラプラス変換)の導入により、インピーダン
ス(impedance) Z [  ]と、その逆数であるアドミタンス(admittance) Y [S] が定義
されるに至った。
なお、 Z 、 Y の両者を総称してインミッタンス(immittance)と呼ばれることがある。
式(4)
[定義]インピーダンス; Z 
V
I
I
V
、アドミタンス: Y 
ここで、 V はフェーザ電圧、 I はフェーザ電流であり、これらは一般に複素数である。
また、使用する線形時間不変回路素子の抵抗、インダクタ、キャパシタのインミタンス表
現が重要となる。
抵抗 R [  ](現実)のインピーダンス Z R [  ](フェーザ)
vt   R  it  ⇔ V  R  I  Z R  I :関係 Z R  R [  ]
式(5)
コイル L [H] (現実)のインピーダンス Z L [  ](フェーザ)
式(6) v t  
L
di t 
⇔ V  L  j I  jL  I  Z L  I :関係 Z L  jL [  ]
dt
コンデンサ C [F] (現実)のアドミタンス YC [S] (フェーザ)
dvt 
⇔ I  C  j V  jC V  YC V :関係 YC  jC [S]
dt
d
はフェーザ世界で j となることに注意しよう。
ここで現実世界での時間微分演算子
dt
式(7) i t   C
これで皆さんは正弦波定常状態解析に対しフェーザ法を用いて直流回路と同様に計算する
ことができる(ただし、複素数の代数演算)技術を習得した。


xt   e Xe j t ⇒
dx t  d
d
  e X e j t   e
Xe j t (可換律)
dt
dt
dt





 d

  e  X e j t    e j  X e j t
 dt


その2.
「実効値」?
RMS 値(Root Mean Square value)
←
一定振幅で周期的に変化する瞬時値 vt  に対して次式で定義する値 v eff を対応させ、これを
実効値(effective value)という。
式(8)
veff 
1 T 2
v t  dt
T 0


例えば vt   Vm cos t  V   e Ve j t のとき veff 
Vm
2

V
2
となる。ここで、v eff ,Vm ,
V はそれぞれ実効値(実数)、振幅値(実数)、フェーザ値(複素数)である。
その3.
「デシベル」?
←
定義は電力比
電気・電子回路の入力(平均)電力 P1 に対する出力(平均)電力 P2 の比(電力比)を基に、次式で
定義する。
式(9)
G P  10 log 10
P2
P1
(dB)
ここで P1  P2 の時は電力ゲイン(gain:利得)、 P1  P2 の時は負号を付け電力ロス(loss:損
失)と呼ばれ、共に正の値とする。
また、平均電力 P とフェーザ電圧 V 、フェーザ電流 I 、インミッタンス Z , Y の関係は、
式(10) P

 
1
1 2
1 2
e VI *  V e(Y )  I e( Z )
2
2
2
(*は共役複素数)
ここで P1  P2 の時は電力ゲイン(gain:利得)、 P1  P2 の時は負号を付け電力ロス(loss:損
失)と呼ばれ、共に正の値とする。
となるので、回路の入力インピーダンス Z1 と出力側に接続する負荷(出力)インピータンス
Z 2 が等しい条件の下では、
V2
式(11) GV  10 log10
V1
式(12) G I  10 log10
I2
I1
2
 20 log10
v2 eff
V
V2
 20 log10
 20 log10 2 m
v1eff
V1m
V1
(dB)
 20 log10
i2 eff
I
I2
 20 log10
 20 log10 2 m
I1
i1eff
I 1m
(dB)
2
となる。ここで、 GV は電圧ゲイン、 GI は電流ゲインであり、デシベル値で表す。また、
dB はデシベルと呼び、デシはSI接頭語( 10 1 )、ベルはベル研究所創始者 Bell である。
演習課題
図1に示す回路は直列共振回路と呼ばれている。図1の、インダクタ、キャパシタおよび
抵 抗 を そ れ ぞ れ L [H] 、 C [F] 、 R [  ] 、 ま た 電 源 実 時 間 ( 瞬 時 ) 電 圧 を
vt   Vm cos  t  V  [V]とする。以下の設問に答えよ。
1.図1の実時間回路をフェーザ表示回路(フェーザ電圧・電流とインピーダンス)で書け。
2. L C R 直列合成インピーダンス Z を求めよ。
3.電圧の実効値 v eff (指導書では E )が 2 V の時、振幅 Vm は何ボルトか。
4. Vm  1 V、 V  0 rad、 L  1 H、 C  1 F、 R  2  のとき、

1 
 は何(rad/s)となるか。またその時のインピーダンス
LC 

Z 0 、フェーザ電流 I 0 および実時間電流 i0 t  を求めよ。
(a) 共振角周波数  0  
(b) 角周波数が 1 
2  1 rad/s のとき、インピーダンス Z1 、フェーザ電流 I1 および
実時間電流 i1 t  を求めよ。
(c) (b)の状態で、抵抗 R の枝(フェーザ)電圧 VR を求めよ。また、電源(フェーザ)
電圧 V と抵抗 R の電圧 VR の比(
VR
)はいくらか、また何デシベルか。
V
it 
v t 
図1.直列共振回路(実時間表示)