様式 3 学 位 論 文 要 旨 研究題目 (注:欧文の場合は、括弧書きで和文も記入すること) Antimicrobial prophylaxis to prevent perioperative infection in urological surgery : a multicenter study (泌尿器科領域における周術期感染予防抗菌薬の検討:多施設共同研究研究) 兵庫医科大学大学院医学研究科 医科学専攻 器官・代謝制御系系 泌尿器科学(指導教授 山本 新吾 教授 ) 氏 名 東郷 容和 対象と方法 2010 年 1 月〜12 月の 1 年間に 21 施設で低〜中リスク(ASA スコア 1〜3)の尿路内視鏡手術、 清潔手術、準清潔手術、消化管利用手術を施行された 4677 症例を対象とした。各術式は尿路内視 鏡手術、清潔手術、準清潔手術、消化管利用手術に分類した。抗菌薬の投与方法は単回投与を原 則とし、TURP、PNL においては 3 日間以内、消化管利用手術においては 2 日間以内とした。各症 例において患者の背景因子として、年齢、性別、ASA Score、合併症(肺疾患、高血圧、心疾患、 糖尿病、など)の有無、BMI、手術時間、出血量を確認し、術後 30 日目までの手術部位(SSI) 、 尿路感染(UTI) 、遠隔感染(RI)の発生頻度を前向きに調査した。2 群間検定は χ 二乗検定にて、 危険因子解析はロジスティク回帰分析にて行い、有意差は<0.05 とした。 結果 術後感染症発生率は、尿路内視鏡手術は UTI 4%、RI 0%、清潔手術は SSI 1%、UTI 1%、RI 1%、 準清潔手術は SSI 3%、UTI 3%、RI 2%、消化管利用手術は SSI 17%、UTI 30%、RI 10%であった。 感染症発生リスク因子の多変量解析の結果、尿路内視鏡手術における UTI 発生は手術時間が有意 なリスク因子(P<0.01)であったが、RI においてはリスク因子を認めなかった。清潔手術において、 SSI および UTI に有意なリスク因子は認めなかったが、RI においては ASA(P=0.02)および手術 時間(P<0.01)が有意なリスク因子であった。準清潔手術および消化管利用手術においては SSI、 UTI、RI のいずれにおいても有意なリスク因子は認めなかった。 考察 尿路内視鏡手術においては、UTI 発生率は 4%であった。各術式別において諸家の報告と比べて も感染率に差はなく、原則単回投与でいいと考える。開腹手術においては、清潔手術の感染率は SSI、UTI、RI のいずれにおいても約 1%であった。消化管損傷をはじめとする術中のあらゆる合 併症の可能性を考慮し、単回投与を推奨すべきと考える。 準清潔手術の感染率は SSI、UTI、RI においてそれぞれ 3%、3%、2%で十分に許容できる結果で あり、他の論文にも推奨されているように、準清潔手術においても抗菌薬の投与期間は単回投与 を推奨すべきであろう。消化管利用手術の SSI 発生率は約 19%であった。予防抗菌薬の投与期間 を 96 時間以内と設定している諸家の報告における SSI 発生率は 18〜32%であり、SSI の発生率 はより高い傾向にある。このことからも消化管利用手術における予防抗菌薬投与期間は 48 時間以 内が妥当と考えられる。 結論 今回の他施設共同研究の結果および過去の諸家の報告より、本研究のプロトコールは広く推奨 されるものと考える。
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