改善効果の計算方法

表紙
「生産管理」現場指導テキスト
改善効果の計算方法
目
次
ページ
1、改善効果計算の目的
1
2、改善活動と原価及び利益の関係
1
3、改善効果測定のものさし
2
4、基礎となるデータの計算
3
5、製品の工数削減の効果をみる方法
4
・製品の工数削減の効果をみる方法(計算例)
6、改善テーマ毎の能率向上の効果をみる方法
・事例1
6
・事例2
7、グループ全体の能率向上の効果をみる方法
・事例1
5
7
・事例2
8、ラインバランス向上の効果をみる方法
9
9、生産リードタイム短縮の効果をみる方法
10
10、レイアウト改善の効果をみる方法
11
11、在庫削減の効果をみる方法
12
12、投資効率の計算
13
T.NAKANISHI
0
1.改善効果計算の目的 2.改善活動と原価及び利益
の関係
1、改善効果計算の目的
「改善効果」が、「改善のために費やした投資や費用」を上回らなければ、当然の
ことながら、改善の意味がない。むしろ改悪である。
「整理整頓が進んで職場がきれいになった」、あるいは「滞留品が減って工程が
すっきりした」、更には、「ある一人の作業者、又はある工程の作業方法を工夫して、
その工程だけは能率が向上した」、といった場合、それらの改善が工場全体に本当
に効果をもたらしているかどうかを確認しておかないと、単なる自己満足に終わって
しまう。
改善活動が会社の経営にどれだけ寄与したか、即ち最終利益をどれだけ増やした
ことになるのかを明確にすることにより、改善活動の正しさを始めて評価できる。
そのために、改善効果を正確に計算しなければならない。
2、改善活動と原価及び利益の関係
<現状の収支>
<改善活動例>
<改善後の収支>
直接材料費
直接材料費
歩留り向上、仕損じ削減 等
比
例
費
(消費量)
(材料単価)
×
作業能率向上、段取り改善
ラインバランス改善 等
×
生産リードタイム短縮
(人件費レート)
販
売
高
(材料単価)
直
接 直接労務費
原
価
(延べ作業時間)
)
直
接 直接労務費
原
(延べ作業時間)
価
)
販
売
高
×
(消費量)
(
(
比
例
費
×
(人件費レート)
設備・レイアウト改善 等
諸 経 費
固
定
費
諸 経 費
固
定
費
家屋費、設備費
家屋費、設備費
事務経費 等
改善は具体的な数値で利
益向上に結びつかなけれ
ばならない
事務経費 等
営業利益
営業利益
改善による生産性向上で、販売高増加に貢献できる場合もあるが、上の図では販売
高は一定とした。 又、材料費の削減には、仕入単価の引下げが大きく寄与するが、
本資料では製造現場を中心にするため対象外とする。
1
3.改善効果測定のものさし
3、改善効果測定のものさし
(1)改善対象の明確化
改善活動に際しては、下記「作業時間の内訳」の、どの部分の削減を目指している
のかを明確にしておく必要がある。その上で計画的に改善前後のデータを把握する
ようにしなければ、正しい効果測定ができない。
拘束時間
実働時間
休 憩
直接時間(作業時間)
主体作業
主作業
間接時間
非作業時間
準備作業
付随作業
非作業
朝の打合せ
教育訓練
無作業
手待ち
材料取付け、取り外しなど
準備
標準時間
段取り
ロット切替え
正味時間
余裕時間
余裕率
作業余裕・・・油差し、切粉取りなど
疲労余裕・・・軽10%、中20%、重30%
職場余裕・・・伝票処理、連絡
用達余裕・・・用便、汗ふき
(2)能率を評価する「ものさし」
評価の基準となる「ものさし」には色々な種類があるが、改善活動の内容に最適な
数値を選定する必要がある。
分 類
労働生産性で評価
する場合
単位
計 算 式
数量
物的労働生産性=生産数÷作業者数
金額
付加価値労働生産性=付加価値額÷作業者数
(付加価値額=生産額-材料費)
原価で評価する場合
%
工数で評価する場合
分
又は
時間
直接労務費率=直接労務費÷生産額
工数=当該製品の生産にかかわった作業者の作業時間の総合計
÷生産数もしくは一定数量
(製品1個又は1,000個とか1トン等一定数量当たりにかかった時間)
その他、生産リードタイム、設備稼働率、ラインバランス率、面積生産性、
等々があるが省略
これらの数値を改善前後で比較し、最終的に利益をどれだけ向上させたかを計算する
2
4.基礎となるデータの計算
4、基礎となるデータの計算
改善効果の計算のためには、根拠となる基礎データを明確にしておく必要がある。下記の
数値を基に、改善前後でねらいとする数値がどう変化したかを計算し、効果を測定する。
なお表中の記号は本資料の説明用に便宜上決めただけで、一般に使われるものではない。
(1)作業能率に直接関連する項目
項 目
単位
記号
年間販売高(生産高)
億VND
Sy
昨年実績又は年間推定
直接労務費
億VND
Ry
賃金+福利厚生費+保険料など
%
RL
(Ry÷Sy)×100
億VND
Rm
Ry÷12
全従業員
人数
LT
事務員、保安、清掃等を含む
直接労働者
人数
Ld
現場の作業者+監督者
改善対象工程
人数
Li
改善の対象になる工程の人数
千VND
Ra
年間稼動日数
日数
Dy
月平均稼動日数
日数
Dm
1日の稼動時間
分
Wd
月平均合計稼動時間
分
Wm
VND
R1
単位
記号
計算根拠
億VND
Zy
上記販売に要した材料費の合計
%
Rz
A製品年間販売高(生産高)
億VND
Sa
A製品の昨年実績又は年間推定
A製品直接材料費
億VND
Za
A製品販売に要した材料費合計
%
Rx
対販売高 直接労務費率
月当たり直接労務費
従
業
員
月平均1人当たり直接労務費
1分当たり直接労務費レート
計算根拠
計算式
5
(Rm÷ Ld)×10
365-休日(仕事しない日)合計
Dy÷12
勤務時間-食事及び休憩時間
Dm×Wd
(工数低減の計算によく使う)
(Rm÷Wm)×10 8
(2)その他の関連項目
項 目
直接材料費
対販売高 直接材料費率
A製品 直接材料費率
計算式
(Zy÷Sy)×100
(Za÷Sa)×100
(今回は生産性の計算のため、上記材料費関係の計算は必要なし)
機械設備費
対販売高 機械設備費率
固定費(便宜上エネルギー等
の原動費も含む)
対販売高 固定費率
億VND
Ky
%
Rk
億VND
Fy
%
Ru
生産に必要な機械設備の投資額
を償却年数で割った数字
(Ky÷Sy)×100
材料費、労務費、機械設備費以
外の生産増減に影響されないそ
の他のすべての費用の合計
(Fy÷Sy)×100
上記以外にも、改善効果額:Em 対販売高利益率:Mp 投資回収期間:Mr 販売価格:St 等を使用する
3
5.製品の工数削減の効果をみる方法
5、製品の工数削減の効果をみる方法
(1)製品1台当たりの工数の計算
色々な切り口で作業能率向上の改善を進めた時、その効果を確認するのに便利かつ
正確なものさしである。又、下記①のUTに人件費レートR1を掛ければ、製品1台当たり
の直接労務費となるので、製品の価格設定の根拠としても活用できる。
注:労働生産性のものさしとして、一人当たりの生産量(額)があるが、残業や休日
出勤など異常な作業時間での増産などが隠れてしまい、不正確なことがある
① A製品全工程の工数:UT
(単位は分を使うことが多い)
ある一定期間(1カ月、1週間、1日)にA製品を生産するのに要した延べ総作業時間:WT
UT=
ある一定期間(1カ月、1週間、1日)に生産したA製品の生産量:Pt
(WT:「その都度作業した人数×それぞれの作業者が作業した時間」の総累計)
② A製品の改善対象工程の工数:UTk
対象工程で、ある一定期間(1カ月、1週間、1日)にA製品を生産するのに要した
延べ総作業時間:WTk
UTk=
対象工程で、ある一定期間(1カ月、1週間、1日)に生産したA製品の生産量:Ptk
(WTk:「対象工程においてその都度作業した人数×それぞれの作業者が作業した時間」の総累計)
(2)改善前後の工数の比較
上記の数値を改善前後で比較することにより、効果を評価することができる。
又、改善前後だけでなく、タイプ別、ライン別、時系列(月別、週別、日別)などの比較に
も利用でき、作業能率の管理点として有効な「ものさし」である。
効果金額等の計算は下記の通りである。
改善前:UT
改善後:UT’ 月当たり生産数:Pm 人件費レートR1(VND) とすれば
月当たり効果金額Em(VND) = (UT-UT’)×Pm×R1
改善の為の投資額及び費用:Mi とすれば
投資効率Mp(%) = (Em×12)÷Mi
直接労務費:Ry
投資回収期間Mr(月数) = Mi÷Em
直接労務費率:RL とすれば
利益率増加分Mm(%) = RL×(Em÷Ry)
4
製品の工数削減の効果をみる方法-続き
製品の工数削減の効果をみる方法-続き(計算例)
(3)製品の工数の計算例
① A製品1個当たりの工数:UT
A製品の1カ月の生産量Pm : 27,200個
作業者1人1日の作業時間
: 480分
対象工程の作業者の人数
: 15人
1カ月の稼動日数
: 24日
WT
UT=
480×15×24
=
Pm
≒ 6.35(分)
27,200
(WT:「その都度作業した人数×それぞれの作業者が作業した時間」の総累計)
② UTを使った色々な計算
・1分当たり直接労務費レートが 200VND とすると、 Ryu=UT×R1=6.35×200=1,270VND
(Ryu:A製品1個当たりの直接労務費)
・A製品の販売価格Stが 10,000VND とすると、 RLt =Ryu÷St =1,270÷10,000=0.127≒13%
(A製品の直接労務費率)
・その他UTを使って、生産計画の必要工数、必要人員などに活用もできる
③ 個数より重量で扱う場合、例えばB製品1トン当たりの工数:UTt
B製品の1週間の生産量Pmt : 853トン
作業者1日の作業時間
: 480分×2交替
対象工程の作業者の人数
1週間の稼動日数
: 20人
(480÷60)×2×20×6
WT
UTt=
: 6日
Pmt
=
≒ 2.25(時間)
853
(WT:「その都度作業した人数×それぞれの作業者が作業した時間」の総累計)
(4)改善前後の工数の比較と利益向上への寄与
上記(1)①の例題で他の数値が同じで生産数が 30,000個に改善できたとすると、改善後の工数UT’は
UT’=
480×15×24
30,000
= 5.76(分)
改善効果は UT-UT’=6.35-5.76=0.59(分)・・・・1個当たりの工数削減分
1分当たり直接労務費レートが 200VND とすると、0.59×200=118VND・・・・1個当たりの削減金額
1カ月当たりの効果金額は、118×30,000=3,540,000VND・・・・1カ月の直接労務費コストダウン額
上記(1)②の例題より製品価格を 10,000VNDとして、
3,540,000÷(10,000×30,000)=0.0118 ・・・・約1.2%利益を向上させたことになる
5
6.改善テーマ毎の能率向上の効果をみる方法
6、改善テーマ毎の能率向上の効果をみる方法
1分当たり直接労務費レート(R1):200VND、1日稼働時間(Wd):8、月平均稼動日数(Dm):25 とする
事例1:運搬のムダ取り
改 善 前
改 善 後
・シャーリング機で
鉄板を切断した後、
床に直接落として
いた(拾いなおす
ロスがあった)
・引き出せばその
まま移動できる
台車を作成した
(持ち上げて
拾いなおす必要
がなくなった)
・1日平均600枚
・拾い上げる時間=100枚で5分×6回=30分/日
・横移動は同じなので、拾い上げ時間のみ節減でき
たことになる(運搬のムダ取りができた)
・節減できた30分を他の仕事に活用なら、
30分×200VND=6,000VND/日節約
・節約した時間を他の仕事に活用できず、
作業者が手待ちになるだけなら効果はなし
・ひと月あたりの効果は
6,000VND×25=150,000VND
・月平均1人当たり直接労務費が240万VNDとして
この作業者について6.25%のコストダウン
・直接労働者数(Ld)90人、対販売高直接労務費率
(RL)を3%とすると、
(0.0625÷90)×0.03≒0.000021
利益を0.0021%向上させた
事例2:付随作業のムダ取り
改 善 前
改 善 後
・丸い石鹸を紙で
包み、上にラベ
ルを貼る作業で、
台紙からラベル
を剥がしにくか
った
・治具を作成して
台紙からラベル
を剥がしやすくし、
作業速度を上げ
た
・1日平均7,000枚 ・剥がす時間の節約=100枚で
130秒×70倍=151分/日
・横移動は同じなので、剥がす時間のみ節減できた
ことになる(付随作業のムダ取りができた)
・節減できた151分を他の仕事に活用なら、
151分×200VND=30,200VND/日節約
・節約した時間で作業数を増やさず、余裕として
消費し、ムダに使うだけなら効果はなし
・ひと月あたりの効果は
30,200VND×25=755,000VND
・この工場全体のひと月あたりの直接労務費が
1億VNDとして、その0.76%をコストダウン
・対販売高直接労務費率(RL)を8%とすると、
0.0076×0.08≒0.000608
利益を0.061%向上させた
6
7.グループ全体の能率向上の効果をみる方法
7、グループ全体の能率向上の効果をみる方法
1分当たり直接労務費レート(R1):172VND、1日稼働時間(Wd):8、月平均稼動日数(Dm):25 とする
事例1:コンベヤー導入による作業の平準化
改 善 前
改 善 後
・箱詰め作業方法を
作業者個人に任せ
山積みにした製品
を手送りで次の作
業者に渡していた
・ラインバランスを
取れるようにして
コンベヤーを導入
し、平準化した
・2,000セット/10人/1時間
ピッチタイム:60×60÷2,000=1.80秒
・1セット当たりの工数=10人×60分÷2,000
= 0.30分/セット
・3,600セット/11人/1時間
ピッチタイム:60×60÷3,600=1.00秒
1セット当たりの工数=11人×60分÷3,600
= 0.18分/セット
・各作業者は自分の作業に専念することができる
ようになり、立ち歩きもなくなった。山積みの製品を
動かすこともなくなった。
・工程内の仕掛品が溜まった場所に、他の作業者が
応援に行き、全体として努力しているように見える
が、山積みの製品を動かしたり、持ち運びなどの
作業者全員のマテハンのロスが目立った。
・(0.30-0.18)÷0.30=0.40・・・40%の能率向上
・包装25人×0.8(この作業の割合)×0.40=8人分
・包装工程の作業内容の比率の変化があれば、
この効果は変動する。
・8÷55=0.145
全直接者55人に対して14.5%(直接労務費削減)
・月当たり直接労務費削減は1,583万VND
・直接労務費率8.4%×削減率0.145≒0.0122
・又は、削減額1.583÷販売高≒0.0122
利益を1.22%向上させた
問題点
・当工場では先に5S導入のため、製品の流し方を
整列しながら次へ送るようにしたが、見た目は良く
なったものの、作業者として整頓するための時間
が必要になり、作業能率向上にはならなかった。
教 訓
・個々の作業者に方法を任すのではなく、仕事の進
行を平準化してスムーズに流し全体で最速な方法
を採用することが重要である。
・作業者は自分達なりに一所懸命速くできるように
努力しているが、個々にロスが生じており、全体の
効率につながっていないことが分からないまま、
行動しているので十分観察が必要である。
・5S単独で作業者に強要すると、作業者にとって余
分な時間が増え、能率向上につながらない場合が
ある。全体最適を考えないといけない。
・整理整頓が最優先ではない、全体の作業方法を
改善することにより、同時に5Sも実現できることが
ある。
7
グループ全体の能率向上の効果をみる方法-続き
グループ全体の能率向上の効果をみる方法-続き
1分当たり直接労務費レート(R1):161VND、1日稼働時間(Wd):460分、月平均稼動日数(Dm):27 とする
事例2:細かい改善の積み重ね
改 善 前
改 善 後
問題点
・作業者が立ち歩いて物を運んでいる。
・物の配置が悪く移動距離が長い。
・滞留品が多くラインバランスが取れていない。
改善実施事項
・投入待ちの材料を包装工程の傍に移動した(倉庫
に取りに行く回数が激減した)。
・ケース詰め材料の補給を専任化した。
・ケース詰め者は計量と詰め作業に専念するように
した(1ラインに集合した)。
・フィルム切断を加熱コンベヤーの横に移動した。
・貼付けラベルを作業の横に用意するようにした。
・後半工程2人を4人に集合した。
・収容個数別の専用箱を作成して完成化粧箱とし、
箱詰め作業を容易化し速度を速めた。
・バーコード作成と読取り場所を結合した。
・高さ調節可能な置き台使用により取出しを速くした。
・加熱コンベヤーがフルに動いていない。
・作業進行のペースは作業者に任されている。
・ラインバランスが取れてきた。
・8月実績18人で1日平均4,697ケース
=260.9ケース/人/日
・加熱コンベヤーピッチタイム5.69秒/ケース
(最大能力3.50秒/ケース)
・9月実績:298.9 10月実績:311.5
・ひと月あたりの効果は
3.49×2,000,000≒6,980,000VND
・3.49÷直接者合計60人≒0.0582
直接労務費全体の5.82%削減の効果
・対販売高直接労務費率が約4.4%
・0.044×0.0582≒0.00256
・311.5÷260.9≒1.1939
・18人×19.39%≒3.49人分効率化
利益を0.26%向上させた。
8
8.ラインバランス向上の効果をみる方法
8、ラインバランス向上の効果をみる方法
(1)ラインバランス改善(平準化)のポイント
いくつかの作業をコンベヤーを利用して順番に流していく場合(コンベヤーを利用せず
に順送りでも同じであるが)、スムーズに流れているように見えても、分けた作業毎に正
確な正味時間を評価すると、下図のようにロスが隠れていることが多い。
作業毎に手待ちが起こっているか、仕掛品が発生しているのはこのためで、最も時間
がかかっているボトルネックの作業を改善することで、全体の能率が向上する。
単位:DM
50
最初の改善対象
(ボトルネック)
ピッチタイムTp : 40DM
40
30
作業時間
20
2番目の改善対象
10
0
作業者、作業順→
A
B
C
D
E
F
G
H
I
J
正味時間
35
40
37
31
30
27
32
33
30
33
60
100
バランス効率(%)=
1DM=
Sec.
各工程の正味時間の合計
=
最大時間の工程の作業時間×工程数
: バランスロス
328
= 82%
400
(2)改善効果の計算
例えば上図で、作業Bの正味時間を36DMに削減できたとすると、下図のようになる。
単位:DM
50
次の改善対象
(ボトルネック)
ピッチタイムTp’ : 37DM
40
30
作業時間
20
2番目の改善対象
10
0
作業者、作業順→
A
正味時間
35
324
バランス効率(%) =
370
B
36
C
D
E
F
G
H
I
J
37
31
30
27
32
33
30
33
= 87.6%
→ 効率が5.6%向上した
ピッチタイム Tp’÷Tp=0.925 → 7.5%の低減(速度アップ)
1÷0.925=1.081
→ 8.1%の能率向上
あとは工数が7.5%削減できたとして、前述「5、製品の工数」と同様の計算ができる。
9
9.生産リードタイム短縮の効果をみる方法
9.生産リードタイム短縮の効果をみる方法
9、生産リードタイム短縮の効果をみる方法
(1)生産リードタイム(PLT)改善のポイント
生産リードタイムとは、材料の投入を開始して、完成品ができ上がってくるまでの日数
もしくは時間のことで、製品をいかに速く生産できるかを表す「ものさし」である。
広い意味のリードタイムは、生産予定を作成し材料の発注を始めてから、製品を納入
できるまでの期間を表す場合もあるが、ここでは生産現場のみを対象とする。
改善の方法は
① 製品の機能を落とさず、構成する部品材料を削減するような設計改善
② 生産のスピードを上げるための設備改善、工法改善、又は作業方法の改善
③ 運搬のスピードをあげる、運搬距離の短縮、もしくは色々なムダの削減
④ 生産の段取り時間の短縮、品種の切替え時間の短縮
などが考えられる
生産リードタイム
材料加工工程
部品加工工程
部品加工工程
部品組立工程
組立工程
完成工程
部品加工工程
材料加工工程
部品加工工程
(2)改善効果の計算
① 作業能率の向上に結びつく場合は、前述の「能率向上の効果をみる方法」に基づき
計算する(必ずしも結びつかない時もある)。
② 前述「2、改善活動と原価及び利益」で示した「固定費」が薄まる(製品単位当たりの
固定費が少なくなる)効果がある。
リードタイム 改善前:PLT 改善後:PLT’ とすると
PLT-PLT’
1カ月当たり効果金額=1カ月当たり固定費Fy×
PLT
ただし、上記計算はすべての製品が同じ割合で短縮できた場合に限り、一部の製品だけの場合は
計算方法は違ってくる。ここでは基本の考え方を示すだけで、詳細は省略する。
③ 改善の為の投資や費用が発生している場合が多いので、その金額が回収できるか
どうかの確認が必要で、その方法は後述「12、投資効率の計算」に基づく。
10
10.レイアウト改善の効果をみる方法
10、レイアウト改善の効果をみる方法
(1)レイアウト改善のポイント
作業場の配置を、同じ面積でより多くの生産を速いスピードで、効率よく、良い品質と
安全性に配慮しながら、より安価に生産できるようにすることが重要である。できれば工
場建設前から計画されることが望ましいが、次の点で問題があれば、改善が必要である。
① 面積の有効活用ができているか(設備の間隔が空き過ぎていないか等)
② 生産の流れが見通せて良く分かり、停滞しているものも少ないか
③ 直接作業をする作業者の移動が多くないか
④ 運搬通路、材料部品や製品が流れる通路は常に確保されているか
⑤ 環境や安全への配慮がなされているか
改善のポイントは
① 入口から出口まで、可能な限り最短距離でメイン通路を描いて作業場と通路を明確に区分し、大動脈と
とする。
② 製品が流れる順番に設備等を配置する(逆流を防止する)。
③ 大動脈に対して、すべてのプロセスや設備、作業台、棚を最大限近づける(人と物の移動距離を最短に
する)。
④ 天井の高さに余裕がある場合は、立体的な配置も考慮する。ただし上下移動は基本的に目的地に向か
って動き始めていないので、価値を生んでいないことを認識しておく。
⑤ ムダを排除して余った場所は、増産対策や新製品のための場所として、明確に区分しておく。
(2)改善効果の計算
① 生産リードタイム短縮に結びついた場合は、前述「9項」の計算を行なう。
② 無駄な面積をなくし、新たに生み出せた面積に対して金額評価を行なう。
単位面積(㎡)1カ月当たりの評価額Mu
(工場敷地の1カ月の減価償却費+工場建設費用の1カ月の減価償却費)
=
生産面積
効果金額=Mu×「新たに生み出せた面積を実際に使った面積」
③ 近隣の同一面積の貸し倉庫の費用を評価額とする方法もある。
11
11.在庫削減の効果をみる方法
11、在庫削減の効果をみる方法
(1)在庫削減のポイント
在庫には利点と欠点があるので、十分認識して適正在庫の水準を検討し、在庫管理
を効率的に進める必要がある(在庫はゼロが理想的ではあるが)。
利 点
・生産リードタイムが長い製品でも、在庫を持つことにより、納入リードタイムを短
縮することができ、顧客の要望に即応しやすい。
・需要の変動や生産の変動があっても、生産や部品材料調達を一定の安定した
ペースで進めるためのバッファーの役割を果たす。
・多品種生産にあって、機種切り替えの頻度を少なくし、生産効率の低下を防ぐ。
・調達先の原因による材料部品の不足での生産停止のロスを防止する。 等々
欠 点
・需要の変化や品質の劣化で在庫が陳腐化し、廃棄処理をせざるを得ない場合に
は、莫大な損失が発生する。(企業の命取りになりかねない場合がある)
・在庫は停滞であり、そのための費用はお金が眠っていることになり、資金運用の
ロスを生じると共に、そのための金利支払や在庫管理の人件費や管理費用が負
担になる。
・在庫のためのスペースが面積の有効活用を阻害する。 等々
在庫の多寡は、企業の体質を表すとも言われ、削減は経営の仕組みを根本的に改善
しないと実現できない場合が多い。世の中の趨勢として、消費者の嗜好の多様化や、
競争他社との競争の激化があり、在庫の増加や陳腐化への対応が必要になる。
① 工程内仕掛品在庫の削減
工程間の生産能力のアンバランスや品種切り替え・段取り替えの手間の多さが
原因であり、これらを改善する必要がある。倉庫在庫の削減ほど難しくはない。
② 部品材料倉庫、完成品倉庫の在庫削減
倉庫在庫の削減は、工場全体の仕組みの抜本的な改革が必要で、総合的な観点
から体系的な取組みが必要である。総合的とは、製品設計から、営業の精度向上
生産管理の強化、部品材料の購買調達方式の改善など、入口から出口に至る全
体のあり方を体系的・組織的に見直す必要があるということである(詳細は省略)。
特に外部の要因に影響される要素が大きいだけに困難な面が多い。
(2)改善効果の計算
・在庫削減により利点の面で問題が生じていないか注意しながら、在庫の欠点
を減らす方向で出ている効果を評価する。「ものさし」としては、
・在庫金額の減少度合 ・在庫費用の減少度合 ・廃棄額の減少度合
・在庫管理人件費及び管理費用の減少度合 ・在庫面積の減少度合
等が考えられる
・これらの金額が固定費の削減になり、その分が利益向上に結びつく。
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12.投資効率の計算
12、投資効率の計算
前項までは効果金額の計算が中心であったが、改善のためには投資や費用が必要な
場合が多く、無視できないことから、投資効果の評価が必要でその方法を紹介する。
(1)投資決定基準の種類と比較
種
類
長
所
短
所
回収期間
計算が簡単である
目標の定め方が恣意的である
割引回収期間
キャッシュフローのタイミングを考慮する
目標の定め方が恣意的である
会計上の収益率
会計数字をそのまま使える
目標の定め方が恣意的である
内部収益率
直感的に分かりやすい
手計算では困難である
収益性指標
資本投下額の制約がある時に用いる
使用目的に注意が必要である
正味現在価値
いかなる場合にも客観的な答えが出る
直感的に分かりにくい
引用 : 「企業財務入門」 1995 日本経済新聞社発行
本資料は財務の解説が目的ではないので、詳細な説明はできないが、正式に正確な
計算をする場合には、別途学習することを勧める。
今回は工場の現場で簡易な方法を用いて判断の参考にする方法を提案する。
(2)回収期間による方法
改善のための投資額及び費用Mi
回収期間Mr =
(単位:月数)
月当たり改善効果金額Em
例えば、Mi=4億VND、 Em=1億VND とすれば
Mr=
4億VND
1億VND
投下した金額は4ヶ月で回収でき
(その間は効果が帳消しになるが)
= 4 (カ月)
その後は正味の利益向上となる
何カ月までを良いとするかは、会社の方針として決める(すなわち恣意的ではある)
(3)投資効率による方法
月当たり改善効果金額Em×12
投資効率Mp =
(単位:%)
改善のための投資額及び費用Mi
例えば、Mi=12億VND、 Em=1億VND とすれば
Mp=
1億VND×12
12億VND
上記回収期間を逆数にしただけで
1年で回収できれば100%とする
= 100 (%)
2年目からは正味の利益向上となる
何%以上なら良いとするかは、会社の方針として決める(すなわち恣意的ではある)
以
13
上