OSSOOO Na Na - 日本化学物質安全・情報センター

Ⅵ.
SIDS 初 期 評 価 プ ロ フ ァ イ ル
Screening Information Data Set for High Volume Chemicals
OECD Initial Assessment
SIDS 初 期 評 価 プ ロ フ ァ イ ル (SIAP)の 日 本 語 訳 を 掲 載 し ま す 。
SIDS ホ ー ム ペ ー ジ で CAS No.検 索 に よ り SIAP ま た は SIAR の 原 文 を 見 る こ と が で き ま す 。
http://cs3-hq.oecd.org/scripts/hpv/
1.次亜硫酸ナトリウム
物 質 名 :Sodium dithionite
O
化 学 式 :O4S2Na2
CAS No.:7775-14-6
Na
O
S
O Na
S
SIAR 結論の要旨
ヒトの健康
O
次亜硫酸ナトリウムは生理学的条件下で安定でなく、酸性度が増すに従って分解速度が増加する。湿
気との接触で酸化され、亜硫酸水素塩(HSO3- )、亜硫酸塩(SO32- )、並びに硫酸水素塩(HSO4- )を
形成し、強い酸性条件で二酸化硫黄を遊離するかもしれない。嫌気性条件で(下部胃腸管におけるように)、
亜硫酸水素塩(HSO3- )、及びチオ硫酸塩(S2O32- )が形成されるかもしれない。亜硫酸水素塩(HSO3
-
)は経口による摂取で吸収され得る。それは効率的に代謝され、そのほとんどは尿中に硫酸塩として
迅速に排泄される。
ラットにおける次亜硫酸ナトリウムの急性経口 LD50 は約 2500mg/kg bw であり、LD50 近くの用量ま
たはそれを超える用量で、主な臨床学的および病理学的症状として、無緊張症、胃腸管刺激、下痢、並
びに呼吸困難を伴った。急性経皮及び有効な吸入試験が入手できなかった。
次亜硫酸ナトリウムは僅かにウサギの皮膚に刺激性があり、ウサギの眼に強い刺激性があった。酸性
状態で、次亜硫酸ナトリウムは二酸化硫黄を遊離するかも知れないが、二酸化硫黄はヒトに呼吸器刺激
を引き起こすことが知られている。感作性に関する動物データは入手できなかった。ヒトにおいて、亜
硫酸塩へのばく露によるアレルギー性皮膚炎はまれであり、その結果、次亜硫酸ナトリウムは重大な皮
膚感作性を有するとは考えられない。次亜硫酸ナトリウムに関する特定の報告は入手できなかったが、
アレルゴイド反応(“亜硫酸塩-喘息”)の潜在性は経口または吸入ばく露後の感受性のある個人においてあ
りうる。
次亜硫酸ナトリウムは反復投与による毒性試験が行われなかった。in vivo 状態で迅速に分解するため
に、その分解生産物についての毒性データはこの毒性指標の評価に用いられた。亜硫酸塩(SO32- )、亜
硫酸水素塩(HSO3- )、硫酸塩(SO42- )、並びにチオ硫酸塩(S2O32- )を含む分解生成物は非常に全身
毒性が低い物質として考えられている。亜硫酸塩は一般的に食品中のチアミン含量を減少させることが
留意されるべきである。二亜硫酸ナトリウムのラット経口毒性 NOAEL について 30 週の試験で全身毒
性に基づき 942mg/kg bw/日、および 104 週の試験で局所的胃腸管毒性に基づき 217mg/kg bw/日が得ら
れた。これらの結果は次亜硫酸ナトリウムの評価について充分に描写していると思われる。皮膚及び呼
吸器経路を用いた動物における反復投与試験は入手できなかった。
次亜硫酸ナトリウムは代謝活性化のありなしに関わらず、標準のバクテリア試験(OECD TG 471、472)
において変異原性がなかった。次亜硫酸ナトリウムの in vitro 染色体異常誘発能に関する実験データは
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入手できなかった。マウスの骨髄細胞における小核頻度の増加が、亜硫酸水素(HSO3- )ナトリウムと
亜硫酸ナトリウム混合物の高用量(2×500 または 2×750mg/kg bw)の腹腔内注射により検出された、何
れも次亜硫酸ナトリウムの生理学的条件下での分解生成物である。
次亜硫酸ナトリウムの発がん性についての実験データは入手できなかった。1992 年に IARC は亜ジチ
オン酸塩の分解生成物、すなわち、二酸化硫黄、亜硫酸塩類、亜硫酸水素塩類、並びにメタ重亜硫酸塩
類は“ヒト発がん性については分類することができない(グループ 3)”と結論した。
次亜硫酸ナトリウムは生殖/発生毒性試験が行われていない。その物理-化学的な動き及びその体内にお
いて迅速に変換されることに基づいて、親分子が生殖器官に到達し、生殖及び発生に対して直接的に影
響を及ぼすことは予想できない。次亜硫酸ナトリウムの分解生成物に関連したデータもいかなる有害影
響も示唆しない。しかしながら、母獣の栄養失調、並びにチアミン破壊を引き起こすような高用量によ
る混餌で、胎仔生長の阻害が観察された。亜硫酸ナトリウムを用いたラットの混餌試験(OECD TG 414
に類似)において、発生毒性の NOAEL は 5%(約 1450mg/kg bw/日;最高試験用量)であった。この用
量で、明白な母獣毒性の症状が観察された(LOAEL、母獣毒性:混餌 5%=約 1450mg/kg bw/日)。母
獣毒性の NOAEL は混餌 2.5%(約 850mg/kg bw/日)であった。
環境
次亜硫酸ナトリウム二水和物は微細な結晶質状態で、大気中の酸素に非常に敏感で、発熱しながら酸
化する:酸化熱は例えば湿気との接触で着火の誘因となり得る。無水塩は 90℃以上で加熱を続けると、
空気中で発熱分解する(分解/酸化生成物:硫酸ナトリウム(Na2SO4)及び二酸化硫黄(SO2))。無酸素
下の約 150℃以上で、激しく分解し、主に亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)、チオ硫酸ナトリウム(Na2S2O3)、
二酸化硫黄(SO2)、並びに少量の硫黄を生じる。発熱分解のため、沸点及び融点は実際的に意味がない。
蒸気圧は無視でき、ヘンリー定数は無機塩のイオン特性のためにゼロに近い。生分解性試験または除去
試験(elimination test)は無機物質には適切ではない。加水分解は pH7 及び室温で数時間以内に生じる。
生物蓄積性を示唆する証拠はない。
主な加水分解生成物はチオ硫酸塩(S2O32- )及び亜硫酸塩(SO32- )である。少量の硫黄及び硫化物
(S2- )が無酸素条件下の加水分解で検出された。水中に溶解している酸素は溶解した次亜硫酸ナトリ
ウムにより消費される。最終酸化生成物は硫酸塩(SO42- )及び亜硫酸塩(SO32- )である。
20℃で Na2S2O4 は 182g/L 及び Na2S2O4*2H2O は 219g/L と水溶解度が高いので、水和した次亜硫酸
ナトリウムは水生環境が標的区分である。次亜硫酸ナトリウムは、水中での迅速な分解と酸素との反応
のために、土壌中では安定でないと予想される。
魚(Leuciscus idus)の急性毒性試験から、LC50(96hr)は 62.3mg/L であった。藻類( Scenedesmus
subspicatus)は、ErC50(72hr)が 206mg/L、EbC50(72hr)が 135mg/L(設定濃度)であり、NOErC(72hr)
は 62.5mg/L、NOEbC(72hr)は 62.5mg/L(設定濃度)であった。甲殻類(Daphnia magna)について、急
性毒性値 EC50(48hr)は 98.3mg/L、慢性毒性値 NOEC(21d)は>10mg/L であった。魚及び急性ミジンコ
試験における高濃度において、試験開始時に酸素濃度が<1mg/L であるために、これらの試験で検出さ
れた影響値は少なくとも部分的に酸素不足により引き起こされたものであるということを排除できない。
水生生物に対する PNEC は評価係数 100 を用いて慢性値(ミジンコの NOEC>10mg/L)から 0.1mg/L と
算出された。
ばく露
作業者の次亜硫酸ナトリウムへの主なばく露経路は吸入及び経皮であり、消費者は家庭製品の使用に
よる経皮経路である。
2001 年において、世界市場の次亜硫酸ナトリウム製造量は合計して約 55 万トン/年であったと予測さ
れる。これらは次のような配分である:ドイツで 6 万-12 万トン、残りのヨーロッパで 4 万-8 万トン、
NAFTA で 10 万-15 万トン、並びにアジアにおいて 20 万-30 万トン。製造量は分散方法(dispersive
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manner)により、主として工業的適用に約 90%までが用いられた。用途のパターンは 50%が織物漂白、
35%がパルプ及び製紙の漂白、5%がカオリン漂白、10%が他の用途(例えば、家庭用シミ抜き剤)である。
スイス、デンマーク、並びにスウェーデン製品登録によると、次亜硫酸ナトリウムは多くの製品に含ま
れている。それらの幾分かは消費者の利用が可能である。本物質、その反応生成物並びに加水分解生成
物の環境中(特に廃水)への放出は、次亜硫酸ナトリウムの製造及び加工中、並びにその調剤の直接使用
により生じ、そして本物質を含む製品の使用から生ずるだろう。
2000 年に担当国内の 1 企業で、製造及び加工中に約 115kg の次亜硫酸ナトリウム(塵埃)が大気中に排
出された。そこではそれが硫酸塩(SO42- )に酸化されると予想される。廃水及び表層水への放出に関
する情報はこの工場については入手できない。他の製造及び加工工場、並びに文献からの排出するデー
タは入手できなかった。
勧告と勧告の理論的根拠と勧告された追加作業の特徴
ヒトの健康
本化学物質は追加作業の候補物質である。次亜硫酸ナトリウムはヒト健康へ有害性(亜硫酸塩喘息、
眼の刺激性、分解生成物の腹腔内注射(in vivo)による染色体異常)を示唆する特性を有する。製造及び
川下産業の作業員ばく露に関しては限られた情報しかなく、消費者は家庭用製品(洗剤、シミ抜き剤)
を通してばく露するかもしれない。そのため、ばく露評価、並びにもし指摘されれば、リスクアセスメ
ントを実施することが推奨される。
環境
本化学物質は現在のところ、追加作業の優先度が低い。本化学物質は環境に対する有害性を示唆する
特性を有する。これらの有害性は非常に高いばく露レベルでだけ明白である急性毒性に関係するで、追
加作業を要しない。しかし、それらについては化学物質安全性の専門家及び使用者により注意されるべ
きである。
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