SIDS 初期評価プロファイル - 日本化学物質安全・情報センター

SIDS 初 期 評 価 プ ロ フ ァ イ ル
ScreeningInformationDataSetforHighVolumeChemicals
OECDInitialAssessment
SIDS 初 期 評 価 プ ロ フ ァ イ ル (SIAP)の 日 本 語 訳 を 掲 載 し ま す 。
SIDS ホ ー ム ペ ー ジ で CASNo.検 索 に よ り SIAP ま た は SIAR の 原 文 を 見 る こ と が で き ま す 。
http://cs3-hq.oecd.org/scripts/hpv/
テトラオクチルスズ
物 質 名 :Tetraoctyltin
CAS No.: 3590-84-9
化 学 式 :C 32 H 69 Sn
SIAR の概要
ヒト健康
テトラオクチルスズ(TTOT)のラットに対する急性経口 LD 50 は >2000mg/kg bw であった。急性
経皮または、吸入毒性、刺激性、感作性に関するデータはない。
TTOT(純度 90.8%)のラットに対する反復投与毒性は、反復投与毒性試験および生殖 /発生毒性 ス
クリーニングの併合試験(OECD TG 422)で評価された。7500mg/kg 餌群で観察された影響(胸腺 重
量 の 減 少 お よ び 胸 腺 リ ン パ 球 枯 渇 と マ ク ロ フ ァ ー ジ 蓄 積 )に 基 づ い て 、 亜 急 性 毒 性 の NOAEL は
1500mg/kg 餌(雄は 86- 99 mg/kg bw/日、雌は 80- 141 mg/kg bw/日に相当)であり、 LOAEL は
7500mg TTOT/kg 餌(雄は 445-480 mg/kg bw/日、雌は 426-624 mg/kg bw/日 )であった。
TTOT は、標準 Ames 試験( in vitro )では Salmonella typhimurium の複数の株と Escherichia coli
を用いて代謝活性化の有無のいずれにおいても陰性であった。TTOT はまた、標準マウス小核 試 験
( in vivo )でも陰性であった。
受胎率または生殖能および発生に関した有害影響は、 OECD 422 試験の生殖 /発生毒性部分にお
ける 7500mg TTOT/kg 餌の最高用量(母獣毒性)においても観察されなかった。観察される影響がな
かった 事に基づき 、 TTOT の生殖および 発生毒性に 関する NOAEL は 7500mgTTOT/kg 餌 (雄は
445-480 mg/kg bw/日、雌は 426-624 mg/kg bw/日)であった。
環境
TTOT の不溶性と実験容器への強い吸着性のために、幾つかの物理化学的性質は容易には測 定 で
きず、モデル化されたデータに基づいている。 Syracuse Research Corporation により開発さ れ た
現在の EPWIN モデルから導かれた推定値は注意深く用いられるべきである、分子構造に金属を 含
む化学物質の推定指標について現在のバージョンでは検証されていないからである。TTOT は 、無
色 か ら 僅 か に 黄 色 の 懸 濁 液 で あ り 、 測 定 凝 固 点 は - 102℃ 、 沸 点 は 414- 425℃(1013hPa(760mm
Hg))である。TTOT は、推定蒸気圧は 9.4x10 -6 hPa(25℃ )、相対密度は 0.96- 0.98g/cm 3 (20℃)、推
定 log K ow は 17.2 である。この log K ow 17.2 を 用いて TTOT は 1.3x10 -12 mg/L の 推定水溶解度であ
り、ほとんど水に溶けない。TTOT の水溶解度の追加予測が推定 log K ow 8.0(このパラメータに対 し
て実際的な最高の値として広く受け入れられている値)を用いて実施された;結果的に得られた 水 溶
解度は 9.5x10 -4 mg/L であった。しかし、全スズが測定された場合、より高い溶解度の可能性 が 水
生毒性 試験により 示唆され、 その原因は 不純物の割 合 (例えば四 塩化スズ、 三オクチル スズ塩化物、
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二塩化ジオクチルスズ)の差による可能性があり、より溶解性が高くなるかまたは、加水分解で可 溶
性が高いスズ化合物になることによるかもしれない。測定された蒸気圧は、同様な問題を呈した、
即ち不純物は純 TTOT よりより容易に蒸発することであった。
TTOT は 、 加 水 分 解可能 な 官 能基を 持 た ないの で 水 中で安 定 で あり、 そ し て易生 分 解 性でな い 。
TTOT の大気への放出は、蒸気圧が低いので顕著であるとは予想されない。蒸気相 TTOT は光化 学
的 に 生 じ た ヒ ド ロ キ シ ル ラ ジ カ ル と の 反 応 に よ り 大 気 中 で 79.5x10 -12 cm 3 /分 子 *秒 の 推 定 速 度 定 数
と推定半減期 3.2 時間で分解されることが予期される。
土壌、大気、水相への 1000kg/時間の放出を推測するレベル III フガシティモデルに基づいて 、
TTOT は、主に底質と土壌(log K ow 17.2 に基づいてそれぞれ 68%と 28%、log K ow 8.0 に基づいてそ
れぞれ 84.5%と 10.5% )に分配すると予測される。推定ヘンリー定数 562atm.m 3 /モルは、TTOT が
水相から蒸発することを予期している;モデルの半減期は、河の場合 2.4 時間、湖の場合 9.5 日 と
推定される。推定 BCFs 100(log Kow 17.2 による)および 2188(log Kow 8.0 による)は BCFWIN を
用いて決定された。実験的に確定した測定 BCF 値幅が 38-310 である関連物質テトラブチル ス ズ
と比較して、これらの値は代表値と考えられる。
水生毒性試験は OECD 試験ガイドラインに従って実施され、ばく露濃度は全スズに基づい て 測
定され、当該物質に変換し報告された。測定された全スズ(水溶性が高いスズ化合物、不純物、加水
分解産物による寄与も含む)は当該物質 TTOT に起因した。 100mg/L の負荷率で調整された 100%
水 性 画 分 (WAF)は 、 ゼ ブ ラ フ ィ ッ シ ュ ( Brachydanio rerio )に 目 に み え る 影 響 は 認 め ら れ な か っ た
(LC 50 (96hr)>0.52mg TTOT/L)。 ろ 過 さ れ た 飽 和 溶 液 は 、 試 験 さ れ た 全 て の 濃 度 で オ オ ミ ジ ン コを
遊泳阻害した(EC 50 (24hr)<0.13mg/L)。 100mgTTOT/L の 負荷率で調整された 100%WAF は、オ オ
ミジンコの生長または、繁殖に処理に関連した死亡または、有害影響を誘導しなかった
(EC 50[repro] (21d)>0.068mgTTOT/L ; 全 体 的 な LOEC>0.068mgTTOT/L ; 全 体 的 な NOEC は
≧ 0.068mg/L)であった。ろ過された TTOT の飽和溶液は、緑藻 Scenedesmus subspicatus に阻害
を示さないか非常に僅かな生長阻害(7%)のみを示した(EC 50 (72hr)>0.21mg TTOT /L)。 慢性毒性と
急性毒性の間の相違についての可能な説明は、この物質が表面に吸着する傾向により、毒性メカ ニ
ズムよりむしろ物理的メカニズムのために引き起こされる移動不能に帰せられた。この理由は 、二
つの試験の WAF 調整における違いによる可能性がある。更に、水溶性不純物が試験の最低濃 度 で
存在し、観察された毒性を引き起こしたとする考え方も排除できない。
ばく露
2000 年 で TTOT の全世界の製造は、年間 2,500 トンから 7,500 トンと推定された。 TTOT は、
北アメリカ、ヨーロッパ、アジア太平洋で製造され、他のオクチルスズ化学物質類の合成にお け る
産業中間体としてのみ用いられる。個々のジオクチルスズおよびモノオクチルスズまたは、混 合 物
中で安定剤として用いられる TTOT は、<0.1%のレベルで存在する可能性がある。 TTOT は、 他
のトリオクチルスズ化合物の製造中間体であるトリオクチルスズ塩化物中に 5%までのレベル で 存
在するかもしれない。TTOT は、他の有機スズ製造者に移送されるかもしれない;しかし、全 て の
生産された TTOT は 、他の化合物への転換の間に消費される。TTOT の商業的利用はない。環境 へ
の放出は、この中間体の製造の間または、他のオクチルスズ化合物への転換の間の漏出を通じて 生
じるかもしれない。
TTOT の製造において、操業は大気への放出を防止するために通常は密閉されている。米国で 有
害化学物質放出インベントリーから有機スズ化合物の放出に関する情報はない、なぜなら、緊 急 計
画・地域社会知る権利法の 313 項の下で放出の報告が製造者に要求されていないからである。推 奨
される廃棄の方法は、認可された有害廃棄物燃焼炉での焼却であり、燃焼炉は有機スズを無機ス ズ
に転換する。
職場における TTOT への最も顕著な潜在的ばく露の経路は、吸入と皮膚接触である。職場にお け
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る ば く 露 は、 装 置 の 設計 (工 学 的 管 理 方 法 )と 定期 的 な 大 気の モ ニ タ リン グ に よ り制 御 さ れ てい る 。
大気汚染源における機械的局所換気装置のような工学的管理法は、大気ばく露限界値以下にば く 露
濃度を抑制するために換気を仕様できる。また、化学的耐性手袋、ゴム手袋、認可された吸入装置
の よ う な 個人 用 保 護 具 (PPE)の 使 用 が 常 に 勧 告さ れ て い る。 作 業 者 ばく 露 は 材 料の 添 加 、 移送 あ る
いはサンプリングのような手作業に限定されている。有機スズ化合物 (TTOT 特異的ではない )の手
に よ る 取 り 扱 い を 特 異 的 に 含 む 操 業 に つ い て 、 最 近 測 定 さ れ た ば く 露 量 は 、 0.1mg/m 3 の 許 容 濃度
(TLV)の 50%以上の値であった。
さらに米国では、製造場所から輸送されるわずかな割合の TTOT が、中間体のバルク容器(totes)
に詰められる。それらは、運搬容器製造者または、化学物質供給者を通じて残渣の処理や容器 の リ
サイクルに対応する指定施設に返送される。
勧 告 およ び、 勧 告と 追加 の 推奨 作業 の 種類 に関 す る理 論的 根 拠
ヒト健康
この化学物質は現在、追加作業の優先度は低い。この化学物質は、ヒト健康に対して有害性を 示
す 特 性 を 有 す る (反 復 投 与 毒 性 )。 担 当 国 に よ り 提 出 さ れ た デ ー タ (世 界 規 模 の 製 造 に 対 す る 不 明 な
割合を説明する、1 国の製造に関連している) に基づいて、そして 1 国での用途パターンに関連 し
て、ヒトに対するばく露は低いと予想され、それ故この化学物質は今のところ追加作業の優先順 位
は低い。諸国は、担当国により提出されていないばく露シナリオの調査を望むかもしれない。
環境
この化学物質は追加作業の候補の一つである。この化学物質は、環境有害性(水生無脊椎動物 に 対
する水生毒性)を示す性質を有する。諸国は環境に対するばく露評価、そして必要ならリスク評価 を
行うことが招請される。
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