引抜き型釘接合における腐朽と釘発錆の定量評価

北海道大学 大学院農学院 修士論文発表会,2014 年 2 月 7 日,10 日
引抜き型釘接合における腐朽と釘発錆の定量評価
環境資源学専攻 森林資源科学講座 木材工学 高梨 隆也
1.緒言
木材腐朽は接合部耐力を損なう危険性があるため,様々な接合様式に対して腐朽の影響を評価す
ることが重要である。そこで本研究では引抜き型釘接合部に注目し,腐朽劣化と釘発錆が釘接合部
の引抜き抵抗力へ及ぼす影響を定量的に評価した。
2.方法
試験体には寸法が(幅)30×(高さ)50×(長さ)90 mm のトドマツ(Abies sachalinensis)を用いた。
釘(CN65 釘)の打ち込み方向は放射方向(R 試験体)と接線方向(T 試験体)の 2 種類とした。釘打ち込
み後に褐色腐朽菌オオウズラタケ(Fomitopsis palustris)を接種した菌床を用いて強制腐朽処理を
施した。腐朽期間は 30, 60, 90, 120 日で,試験体数は R 試験体,T 試験体ともに各腐朽期間 15 体ず
つとした。腐朽処理終了後に油圧試験機を用いた単調加力方式で釘引抜き抵抗力(Pw)を測定した。
引抜き試験終了後,釘を打ち込んだ方向と同一の方向でピロディン(6J)を用いてピン打ち込み深さ
(Dp)の測定,レジストグラフ(IML 社製 IML RESI F500)を用いて平均穿孔抵抗値(Ravg)の測定を行っ
た。また,釘打ち込み前と引抜き試験後に,マイクロメーターを用いて試験に用いた釘の胴部径(ds)
を測定した。同様にレーザー顕微鏡(キーエンス社製 VK-9500)を用いて釘表面の表面粗さ(Ra)の測
定を行った。
3.結果と考察
図 1 に Dp 及び Ravg と Pw の関係を示す。Pw と Dp は負の相関,Pw と Ravg では正の相関を持つ傾向がみ
られた。Ravg と Pw の相関は Dp と Pw の相関に比べ強い相関となり,レジストグラフによる計測では釘
40.0
引抜き抵抗力の推定が
40.0
R試験体
コントロール
可能であると考えられ
腐朽
30.0
y = -0.6142x + 35.656
R² = 0.3888
Pw [N/mm]
ds または Ra を説明変数と
30.0
Pw [N/mm]
る。次に,Dp または Ravg と
T試験体
コントロール
腐朽
20.0
10.0
y = -0.6336x + 35.848
R² = 0.4792
20.0
10.0
して Pw の重回帰分析を
0.0
行ったところ,ds または
40.0
コントロール
腐朽
すべての組み合わせで
20
30
0.0
40
0
10
20
30
40
Dp [mm]
40.0
y = 0.5934x + 10.824 R試験体
R² = 0.4283
コントロール
30.0
20.0
y = 0.6438x + 7.4627 T試験体
R² = 0.5725
腐朽
30.0
Pw [N/mm]
Pw [N/mm]
って,本研究の条件にお
10
Dp [mm]
Ra にかかる係数の P 値が
0.05 を上回った。したが
0
20.0
10.0
10.0
いては釘発錆を無視し
て腐朽指標のみから Pw
の推定が可能であると
結論付けた。
0.0
0.0
0.0
10.0
20.0
30.0
0.0
10.0
20.0
Ravg [%]
Ravg [%]
図 1 各腐朽指標値と Pw の関係
30.0