「NICKEL MARKET OUTLOOK 強気相場はどこまで続くのか? 強気

IRUNIV2014/04/24
「NICKEL MARKET OUTLOOK 強気相場はどこまで続くのか?」
強気相場はどこまで続くのか?」
ニッケル相場はこのまま腰折れせずに上がり続けていくのか?急落はないのか?
今、ステンレス特殊鋼メーカーからニッケル系スクラップディーラーまで最大の関心事はこれであろう。
LME ニッケル相場は年初から 30%上昇し、足下は USD18,000/ton で地合い堅調。
特に 2007 年の歴史的高騰とその後の急落を経験している方ほど「高所恐怖症」にかられている。
ニッケル関係者は毎年GW(日本の GoldenWeek)が到来するとあの暴落を思い出す・・とも聞く。
最近のニッケル予想はとかく景気の良いものばかり。GS(ゴールドマンサックス)の 2 万ドル説然り。
その高値の裏付けになっているのが供給不足説。
→(関連記事)需給ひっ迫感強まるニッケル 年初から 30%上昇
住友金属鉱山は最新の世界ニッケル需給予測で 2014 年で3万トンの不足とした。1 月時は 5 万 5000 トンの
余剰としていたことからすると大胆な見直しだ。しかし住友金属鉱山に限らず、バークレイズ、シティ、G
S、モルガンスタンレーとメジャーな金融アナリストは一様に Surplus から Deficit へと需給見通しを修正
している。
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通底しているのはインドネシアのニッケル鉱石禁輸政策に伴う鉱石供給不足感だ。
確かにインドネシアからの供給は今年 1 月 12 日のインドネシア禁輸実施から急減しており、なかでも
中国のインドネシア産ニッケル鉱石輸入量は 3 月が 902,279 トンで前年同月比 8 割減となっている。
→(関連記事)中国の 2014 年 3 月のニッケル輸出入データ
そえゆえ
代替としてのフィリピン産ニッケル鉱石の輸入量が急増。3 月は 1,315,019 トンで同 12%増。中国のニッケ
ル鉱石の輸入先で一躍トップに立っている。しかしよく言われているようにフィリピンのニッケル鉱石はイ
ンドネシア産に比べてニッケル品位が低いため、中国のステンレス原料でメインになっている高品位(10~
15%Ni)NPI(ニッケル銑鉄)生産量を賄うことはできない、といわれている。
→(関連記事)中国のニッケル鉱石価格続伸&NPI 生産動向
ゆえに中国のニッケル鉱石在庫は加速度的に減っていき、タイト感は増幅~ニッケル相場は一気に 30,000
ドル目指して駆けのぼる、という投機的に動きやすいニッケルならではの挙動も加味され先高感は日増しに
高まっている。
もうひとつ
需要面では欧米日でのステンレス特殊鋼生産が堅調であることも相場の腰を強くしている。欧州でのステン
レス生産(需要)回復は大きい。ステンレス製品価格も上昇しており(アジアでは足下 USD2600/ton 以上
=304 冷延コイル)
、いわば今のニッケル相場は需給要因がうまく回転しており健康的な上昇だとも言える。
従って、今回は大幅な下落は免れるのではないか、との予想は少なくない。
高値で新規 Ni 供給増
ただ、仮にニッケル相場が 20,000 ドルを超えるような展開になると、各サプライチェーンで高値の副作用
あるいは変動が生じることになろう。
そもそも今年の新規ニッケル供給は主なもので
(フィリピン)
タガニート PJCT
3 万トン/年(NI 純分ベース) 住友金属鉱山など
(マダガスカル)
アンバトビーPJCT
6 万トン/年*コバルト 5600 トン 住友商事など
(ニューカレドニア)
ゴロ・ニッケル PJCT 6 万トン/年
住友金属鉱山、三井物産など
(ニューカレドニア)
コニアンボ・ニッケル PJCT 6 万トン/年 GlencoreXstrata
と、この4つのプロジェクトで 21 万トンある。但し、率直にいってゴロは不透明。それでも 15 万トンある。
相場の高騰でプロジェクトの稼働は進み、新規供給は増えやすくなる。またここ 2 年のニッケル相場低迷で
操業を止めていた製錬所、鉱山も再開しやすいマーケットになる。そうなればインドネシアの供給不足をカ
バーできるほどの供給増がニッケル相場を圧迫するのではないかという懸念も浮上する。
タガニートのニッケルは日本向けというよりもむしろ中国市場がターゲット。
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また
今はニッケル相場上昇に伴ってステンレス製品価格も上がっているが、ニッケル相場が 22,000 ドル、25,000
ドルと上がっていった場合、どこまでステンレス製品需要がついてきてくれるのかという実需面での減少懸
念がでてくる。2007 年の 54,000 ドル相場を経験している方ほど当時の熱狂と宴のあとの寂しさをよく知っ
ている。
ニッケル相場の急激な上昇には、新規供給増、需要減少という2つの大きなリスクも伴う。
実需に関係している方々ほど「ニッケル相場 18,000 ドル~20,000 ドルの間で安定してくれれば」との思い
は強い。大手証券系アナリストは「20,000 ドルは突破したとしても、先々の供給増を考えるとあまり楽観視
はしていない。下値 14,000 ドル、高値 19,000 ドル、2014 年平均で 16,000 ドル前後ではないか」とみてい
る。
(IRUNIV 棚町裕次)
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