国際化学肥料ニュース(2014 年 12 月) 肥料業界の 2014 年 12 月動態 * アメリカ肥料研究所(TFI)の統計データによれば、アメリカ 10 月のりん安(DAP、 MAP)輸出量が 17.8 万トンに達し、前年同期より 36%急増した。輸出量急増の原因は インド向けに 7.5 万トンを輸出した。なお、1~10 月のりん安輸出量が 9%減の 190 万 トンであった。 一方、10 月のりん酸輸出量が 4.1 万トン、前年同期より 30%増であった。特にイン ド向けの輸出量が 3.55 万トンであった。但し、1~10 月のりん酸輸出量が 23%減、主 にインド、メキシコ、ブラジル、カナダ向けのりん酸輸出が急減した。 * ベラルーシ政府の財務省長官が 12 月 2 日の記者会見に於いて、2015 年に加里肥料の輸 出関税徴収制度を再開しないことを表明した。ベラルーシは 2008 年から加里肥料の輸 出に対して輸出関税を徴収した。2008 年は 200 ユーロ/トンの関税を徴収したが、2009 年 9 月 1 日から 75 ユーロ(FTA 協定国)と 85 ユーロ(その他の国)/トンに減額、 2013 年 7 月 1 日、ロシアの Uralkali が BCP から脱退した後、加里肥料の輸出競争力 を維持するため、輸出関税を免除した。 2014 年、ベラルーシの塩化加里生産量 900 万トン、輸出 750 万トンと計画していた が、実際に塩化加里生産量が 1030 万トン、輸出 900 万トン、国内消費 130~140 万ト ンと計画を大幅に超えることが確実になった。 * ベトナム税関のデータによれば、今年 1~11 月、ベトナムが 358 万トン、金額約 118 億ドルの化学肥料を輸入した。中国からの輸入が最も多く、数量で 51.7%であった。 また、ベトナム政府の副総理が国内化学肥料の生産拡大、特に加里肥料と DAP の生産 拡大に力を入れて、肥料生産と流通コストを下げ、農業の需要を満たすように指示した。 * 12 月 16 日、中国政府が 2015 年輸入輸出関税の改定を発表した。化学肥料に関しては、 需要期と非需要期に分けて異なる輸出関税を撤廃し、年間 1 本化する。また、尿素とり ん安の輸出関税を従価制から従量制に変え、尿素輸出関税を 80 人民元/トン、りん安輸 出関税を 100 人民元/トンにする。NPK 化成肥料の輸出関税が 30%のままであるが、 NP 化成、PK 化成など 2 成分の化成肥料輸出関税を 5%に引き下げる。 1 2012~2015 年の 4 年間に中国の化学肥料輸出関税の変動は「2012~2015 年中国化 学肥料輸出関税対比表」をご参考ください。 * 中国政府は 2015 年にすべての化学肥料に対して増値税の徴収を再開する予定である。 化学肥料増値税の税率が 13%で、徴収再開は 2015 年 4 月以降の適宜な時期と予定され ている。 肥料資源の探索と肥料プラント新規建設 * ロイター通信社の報道によれば、カザフスタン政府投資発展省長官 Aset Isekeshev 氏 は中国から 38 億ドルの投資を受け入れ、2 ヶ所の加里鉱山と加里肥料工場を建設する と発表した。これは中国とカザフスタンの両国総理が会談で決めた 140 億投資計画の 一部である。 Zhiyanskoye 加里鉱山は年間生産能力塩化加里 60 万トン、硫酸加里 120 万トン、 2015~2016 年に完成する予定。Chekkarskaya 加里鉱山の建設規模が未定である。 この 2 ヶ所の加里鉱山は塩湖または乾固した塩湖である。鉱山と加里肥料工場が完成後、 生産される加里肥料は主に中国や東南アジアに輸出する予定である。 * ヨルダン国営 JPMC 社はインドネシアに地元の国営企業と合弁でりん酸肥料工場を建 設することを発表した。それぞれ 50%ずつ出資して、生産能力は年間 20 万トンりん 酸肥料と予定している。 * 12 月 24 日、国営インド Rashtriya Chemicals & Fertilizer Ltd.(RCF)はインドの天 然ガスメーカーGail 社、国営インド石炭社(CIL)、インド肥料社の 4 社が合弁でイン ド南東部のオリッサ州 Talcher に肥料工場を建設することに合意したと発表した。 当該肥料工場は 2 部分から構成され、Gail 社が石炭のス化とガスを浄化してアンモ ニア原料として供給する子会社を担当し、投資額約 4.73 億ドル。RCF がアンモニア合 成、尿素と硝安生産の子会社を担当し、投資額約 9.5 億ドルと予定されている。 その他 * 12 月 1 日、ノルウェーの Yara 社は Galvani 社の 60%株式の取得を完了し、子会社と して傘下に収めた。買収金額 3.18 億ドル。 Galvani 社はブラジル東北部にりん鉱山 2 ヶ所(Lagamar 鉱山と Angico dos Dias 鉱山)と過りん酸石灰工場、販売組織を持ち、2013 年の売上高 3.52 億ドル、純利益 4800 万ドル。また、Salitre りん鉱山と Santa Quiteria りん鉱山を開発中で、完成後、Salitre 2 鉱山が 120 万トン/年、Santa Quiteria 鉱山が 80 万トン/年のりん鉱石を産出し、り ん酸肥料に生産に供する予定である。 * ロシア Uralkali 社は、所有の Solikamsk2 号加里鉱山の逆流被害はまだ制御されてい ないと発表した。地下採掘トンネルの落盤範囲は 11 月 18 日発見されてから 12 月 10 日現在にすでに 50~80m に拡大し、そこから 1 時間当たり約 700m3 の鹹水がトンネ ルに逆流される。鹹水の逆流を止めるにはまだ時間がかかりそうである。もし、鹹水の 逆流量が制御できず、ポンプの排水能力を大きく超えた場合は、当該鉱山を永久に閉鎖 する可能性も排除できない。 この鉱山事故により、Uralkali 社は 2015 年塩化加里生産量を予定の 1300 万トンか ら 1100 万トンに下方修正して、輸出に一定の影響を及ぼす。 * インド IFFCO 社と La Coop 社はカナダのケベック州に尿素工場を建設する計画を中止 すると発表した。当該尿素工場に 11 億ドルを投資して、年間大粒尿素の生産能力 130 ~160 万トンと予定された。しかし、精算した結果、投資額が 20 億ドルに膨らみ上が って、採算ラインを超えたため、中止することになった。但し、ケベックが天然ガスと 輸送の面に優勢があり、建設計画と設計を練り直して、再度提出する可能性がある。 * ブラジル国営石油は建設中の尿素工場の施工を一時休止すると発表した。当該尿素工場 はブラジル国営石油が中国の国営企業中国石油と合弁で建設するもので、生産能力がア ンモニア 76.1 万トン/年、尿素 120 万トン/年、2015 年 6 月完成予定である。但し、 すでに 8 割以上が完成して、そのまま中止する訳がなく、来年春~夏あたりに建設を再 開するだろうと見ている。 * エジプトの尿素メーカーは原料天然ガスの不足により順番に生産を停止した。Mopco 社は 12 月 21 日から 4 日間、 Alexfert 社は 12 月 22 日から月末まで生産を停止した。 EFC 社は 1 本の生産ラインを停止し、残りの 1 本しか稼働していない。Helwan 社は 12 月 2 週目から生産停止したが、19 日から生産再開した。12 月の工場稼働率がさが り、尿素生産量が半減する予定で、来年 1 月の尿素輸出量が大幅に減少する見通しであ る。 * 12 月 31 日、 カナダ Agrium 社は傘下の Vanscoy 加里鉱山を再稼働させたと発表した。 2014 年 7 月、Vanscoy 加里鉱山の鉱石輸送装置の故障で、地下に採掘された加里鉱 石を地上に運ばなくなって、鉱山の生産を停止した。その後、設備の更新と生産拡大に 伴う新設設備の完成で、生産再開となった。 3 Agrium 社は Vanscoy 加里鉱山の 2015 年に 210 万トン塩化加里を生産する計画で、 今回の設備更新と新設により 2015~2017 年の 3 年間に約 100 万トン塩化加里が増産 される見通しとなる。 4
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