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Journal of Sugiura Foundation for Development of Community Care
Vol.3 July 2014
都市部地域包括支援センターにおける
多業種間ネットワークの構築とその活用に向けた
取り組みに対する実証的研究
野中 久美子 氏
東京都健康長寿医療センター研究所
社会参加と地域保健研究チーム 研究員
1.背景
2.目的
高齢者が地域で出来る限り暮らせる地域包括ケア体
見守りNWの事例を取り上げ、地域で「援助者」
として
制の確立が進められている。
そしてその実現には、高齢者
活躍するアクティブシニアの活動を専門職が支援すること
の在宅生活を支援する関係行政機関、医療機関、介護
により、1)包括および医療・介護・福祉サービスの専門職
サービス事業者、関係団体により構成される専門職ネット
たちが多職種連携を強める過程、
および2)高齢者が自身
ワーク、
および高齢者が適切な時期に適切な医療や介護
の能力が減衰する中で専門職との結びつきを強め
「被援
サービスを受けることを可能にする専門職―住民・高齢
助者」
として円滑に介護保険サービスに繋がる様子をモ
者間ネットワークという2種の連携構築が必須である。
そ
ニタリングする。地域高齢者の社会参加活動支援による
のために、様々な先進的な取り組みが全国各地で試行さ
地域づくり活動を通して、多様な専門職の連携によるネッ
れているものの、ネットワークづくりの中核を担う地域包
トワーク、専門職―住民・高齢者間ネットワークという2種
括支援センター(以後、包括)
が「ネットワーク構築の手法
のネットワークを構築する方法を提示すると共に、その
が分からない」、
「 住民や関係機関の協力を得られない」
「Win-Winな地域包括ケアネットワーク」構築の有用性
などの理由のために、
ネットワークづくりは遅々として進ん
を検証する。
でいないのが実情である。
一方で、少子高齢化が進行する中、地域社会における
3.計画
多様な人的資源の活用が重要視されている。特にアク
対象:見守りNW利用高齢者及び、運営者(包括職員、医
ティブシニアは現役世代に比べ時間的柔軟性が高く、
ボラ
療・介護・福祉の専門職)
ンティア活動などを通じて地域社会を支える重要な役割
方法:質問紙調査および聞き取り調査
を担うことを期待される存在である。
しかし、
そうしたアク
ティブシニアも一般高齢者同様、加齢とともに身体的、認
4.期待される成果
知的能力が減衰することは自明である。
そこで、
「援助者か
地域包括支援センターの9割以上が「必要」
と回答する
ら被援助者」への移行を示す兆候を、地域包括支援セン
多職種連携によるネットワークが、実際に
『おおた高齢者
ター職員およびその他専門職は互いに連携して察知し、
見守りネットワーク』
でどのように活用されているかを明ら
適切な時期に適切な支援策を講じる必要がある。
こうし
かにすることは、今後の新たなネットワーク形成を後押し
た取り組みにより早期介入がなされれば、高齢者の健康
する意味で、意義が大きいと考えられる。
寿命の延伸と、最終的に必要な医療費の低減に繋がると
考えられる。
また持続可能な地域包括ケアシステムの構築
を目指す上でも、やはり多職種の連携を伴った高齢者へ
の早期介入が重要であるといえよう。
こうした統一的見解
の元、東京都大田区で組織された任意団体が、
『おおた
高齢者見守りネットワーク』
(以後、見守りNW)
である。
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