微分方程式や超関数など解析学の研究(全学自由研究ゼミナール) 木曜5限 16:30⇠18:00, 於 114 片岡 清臣 (数理科学研究科棟 3F 321 号室) [email protected] http://agusta.ms.u-tokyo.ac.jp/microlocal.html 1 講義内容 現代数学の中で解析学,特に最前線の偏微分方程式論や超関数論に関係した話題でもそ の重要なアイデアのいくつかは大学初年次の数学(多変数微積分と線形代数)程度がわか れば理解できるものも多い.もちろん正確な理解と応用力をつけるには集合論や位相など 抽象的な概念や論理の理解が欠かせないがそのようなアイデアを例を挙げながら平易に 解説することにより解析学の楽しさを伝えたい. 毎回(2回にわたることがあるかもしれないが)1つのトピックを選んで現代解析学の 重要なアイデアを平易に解説していく.例えば微分方程式と積分方程式,変分問題とヒル ベルト空間,偏微分方程式の境界値問題,超関数とは,積分変換,積分不等式の応用,解 析性と微分可能性,などが考えられる. 少なくとも初年度で習う多変数の微積分と線形代数は理解していることを前提とする. また,成績は出欠状況と期末のレポートによる. 2 変分問題(1変数) Euler による変分法 (Calculus of variations) とそれを使っていくつかの問題を解こう. 実数の閉区間 [a, b] 上の微分可能な関数 f (x) を与えた時,積分 Z b I[f ] := L(x, f (x), f 0 (x))dx a を最小(または最大)にする f を求める問題を変分問題という.ここで L(x, y, z) は3変 数 x, y, z の微分可能な関数.通常の1変数関数 Y = F (X) の最小値(または最大値)を 達する点は F 0 (X) = 0 で求められる.今の場合これにあたるのが Euler の微分方程式 Ly (x, f (x), f 0 (x)) d Lz (x, f (x), f 0 (x)) = 0 dx 1 という,2階の微分方程式である.ここで Ly , Lz はそれぞれ y, z に関する偏微分.もっと も2階の微分方程式はいわゆる初期条件などの付加的な条件を与えないと一意には決ま らない.変分問題では関数 f (x) の端点での値,f (a), f 0 (a), f (b), f 0 (b) の間に2つの条件 を課すことが多い.もっとも簡単なものは Dirichlet 条件: f (a) = f (b) = 0, や Neumann 条件 f 0 (a) = f 0 (b) = 0, が知られている. 通常の Y = F (X) なる1変数最大最小問題と同じように極値条件 F 0 (x) = 0 は必要条 件ではあるが十分条件ではない.従って Euler の方程式の解が真に最小,最大を与えるか どうかは別途,厳密な数学的考察が必要である事を注意しておく. なお,上よりさらに高度な問題,例えば f (a) = f (b) = 0 なる [a, b] 上の微分可能な関 数 f (x),かつ Z b K(x, f (x))dx = 0 a をみたすものの中で I[f ] := Z b L(x, f (x), f 0 (x))dx a を最小にする f (x) を求める,という,制約条件付き変分問題,というのも考えられる. ここで K(x, y) は x, y の関数.大変難しそうであるが実は有限次元の制約条件付き最大 最小問題と同じく,Lagrange の未定係数法,というのが使える.すなわち, なる実パ ラメータを導入し, Z b J [f ] := L(x, f (x), f 0 (x)) + K(x, f (x)) dx a という,制約条件なしの変分問題を考えればいい,という不思議な理論である. 2
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