なぜマレーシア航空機MH は、 17 航空機 機が撃墜されて

なぜマレーシア航空機MH 17 は、
航空機 10 機が撃墜されている交戦地帯を飛んだのか?
トニー・ゴスリング
Op-Edge, RT、 2014 年 7 月 18 日
Why was MH17 flying through a war zone where 10 aircraft have been shot down?
Tony Gosling
Published time: July 18, 2014 10:06
http://rt.com/op-edge/173788-malaysian-plane-crash-ukraine/
翻訳:寺島隆吉&美紀子、公開 20140723
A journalist takes photographs at the site of Thursday's Malaysia Airlines Boeing 777 plane crash near the
settlement of Grabovo, in the Donetsk region July 18, 2014 ( Reuters / Maxim Zmeyev )
http://rt.com/op-edge/173788-malaysian-plane-crash-ukraine/
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トニー・ゴスリング( Tony Gosling)は、職業人生を航空産業でスタート
し、BBCで訓練を受け、いまは英国の土地活動家、歴史家、そして調査
報道ラジオジャーナリストである。
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アムステルダムでマレーシア航空のフライトに乗るひとりの乗客の立場に、自分を置いてみてほし
い。木曜の朝、クアラルンプールに到着する 12 時間の旅に。
前にあったマレーシア航空機の不思議な失踪のことを考えて、ソーシャルメディアに「もし失踪す
るようなことがあれば、この飛行機も同じ運命かな」と冗談を書き込んだとき、少し神経質になっ
た搭乗者はあなた一人ではなかったはずだ。
その飛行機に座って、座席の前にある画面の動く地図を眺めながら、あなたは画面の右側から「ウ
クライナ」という文字が少しずつ動いていくのを見たかも知れない。最近その上空で非常に多くの
飛行機が撃墜されているという知識をもっていたら、少し不安にならなかっただろうか。戦争が続
いている上空じゃないのか?
デイビッド・チェンチオッティ ( David Cenciotti)の「航空専門家」というブログをチェックする
と、この数週間で東ウクライナでは航空機 10 機が撃墜されていることが分かる。 MI-24Hind 5 機、
MI-8 Hip ヘリコプター 2 機、軍の輸送機の AN-2 が 1 機と AN-30 が 1 機。 7 月 8 日には最新式輸送
機 I1-76 が 1 機、ルガンスクで撃墜された。そのときウクライナの国家航空管制局は民間航空機に
たいして領空を無期限封鎖した。しかし、なぜ航空管制官たちは、高度がもっと上の東ウクライナ
領空については封鎖せず、そこを航空機に飛べと指示しつづけたのか。
あとで反省することは良いことだ。しかし、過去 1 か月のあいだにウクライナ上空を飛ぶ数百の航
空機のどれに乗っていたとしても、私なら客室乗務員の一人の袖を引っ張ってみたくなってさえい
ただろう。機長から即座に安心を得ようとして彼らにぶっきらぼうに尋ねるのだ。飛行機が沢山、
とくに最近、撃墜されているまさにその領空を通過しないんだろうね、と。
それでその飛行機はそこで何をしていたのか?
マレーシア航空は素早く指摘した。ウクライナの交戦地帯は上空を飛行しても「安全」だと国連の
国際民間航空機構(ICAO)からお墨付きを得ていたと。しかし、いったいこれは、アイスラン
ド周辺を漂っているエイヤフィヤトラヨークトルの「火山灰雲」のせいで約 1 週間のあいだヨーロ
ッパと北大西洋を封鎖した機構と、同じ関係者だったのか。そのとき彼らは、ほぼ 1 千万人の乗客
のフライトをキャンセルしたはずなのに、今回は地対空ミサイルが飛び交っていることを知ってい
て交戦地帯を封鎖しなかったというのか?
[註:エイヤフィヤトラヨークトル( Eyjafjallajökull)。アイスランドにある氷河のひとつで氷帽が火山を覆っている]
私はICAOの地区責任者ルイス・フォンセカ・デ・アルメイダ( Luis Fonseca de Almeida)に、辞
職し、自首して事情聴取に応じる前に、すべての犠牲者の家族に本人自ら謝罪してもらいたいと切
に願う。
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もちろん、これは失敗し弱体化しつつある国連のただ唯一の部局でもないし国際統治の他の部門で
もない。だから、その部門を運営するために任命された人々は、その任を果たすための十分な独立
心がある人物というよりは、ひとに食いものにされるカモ程度だったということなのか?
いずれにしても、マレーシア当局が専門家の声にも注意を払うことを望みたい。それは国際機関か
らの援助にあまりに頼りすぎてはいけないという警告であり、国際機関は彼らの意に反して悪用さ
れることがあるからだ。
では「誰がやったのか」だが、航空機の撃墜がウクライナ分離主義者たちによる出任せの「射撃」
だったというのは、まず考えられない。そのような行動によって何も得るものはないし、自らをさ
らに孤立化するだけだ。また、彼らがこの種の武器システム、すなわち、今まで使ってきたどの武
器よりもはるかに高度なものをどうして手に入れたのかという疑問もある。だからこそ、ICAO
とマレーシア航空は、高度 3 万フィートの旅客機が肩掛け発射ミサイルからは安全だと考えたのだ
ろう。
他方、BBCテレビの『ニュースナイト』に登場した、武器システムの専門家ダグ・リチャードソ
ン( Doug Richardson)は次のように言っている。かなりの高度を飛んでいた飛行機だとしても、お
そらく元ソ連の「BUK」ミサイルからは「身を守れない」だろう。 1970 年代に開発され汚い行
動をおこなった旧式のものだが、これは肩掛け発射ミサイルと比べれば、はるかに高度なものだか
らだ。
ロシア大統領専用ジェット機の機首方向を横切ってミサイルが?
そのとき撃墜されたMH 17 のすぐ近くに、ロシア大統領ウラジミール・プーチン自身がいた。彼
は偶然にもブラジルから、西から東へ、ロシアに帰る機中にあった。米大統領専用機エアフォース
ワンにあたるのがロシアの「ボードワン 」( the Ilyushin-96)だ。
その運命のマレーシア機がウクライナ領空に入る直前のワルシャワ近くを通過したとき 、その後方 、
約 200 マイル( 320 ㌔ )、およそ半時間の飛行時間のところにプーチンの「ボードワン」はいた。
しかし大統領専用機はウクライナ領空を回避した。
西側の大国が反ロシアの経済制裁をおこなってもロシアに噛みつくことができず、西側列強が支援
するキエフ政府も地上戦で敗北を重ねてい。だから、これはNATOがみずから攻撃を仕掛けたい
という彼らの動機を示すものかも知れない。もしそうなら、この手の大胆な行動は、英国の新外務
大臣フィリップ・ハモンド( Philip Hammond )と防衛省長官マイケル・ファロン( Michael Fallon )
といった西側の権力エリートの、キエフ政府にたいする忠誠心の初期テストなのかも知れない。メ
ッセージはこうだ 。「この問題に関して[休戦とか和睦とかなど]自国で決断ができるという厄介な
考えを持たないように気をつけるんだな」
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攻撃のタイミングもまた興味をそそる。プーチンが署名した歴史的合意の翌日であったことだ。中
国国家主席・習近平とともに、ブラジルのフォルタレザ( Fortaleza )という都市で 、「 BRICS 世界
開発銀行」をつくったからだ。それはたぶん、 1944 年のブレトン・ウッズ協定以来、アメリカが不
当にも独占してきた世界銀行にたいする最大の挑戦だった。それがブラジル、ロシア、インド、中
国、南アフリカによって水曜日[マレーシア機撃墜の前日]に署名されたのだ。
[ブレトン・ウッズ協定:
アメリカ、ニューハンプシャー州ブレトン・ウッズで開かれた連合国通貨金融会議で締結され、 1945
年に発効した国際金融機構についての協定で 、 ここで IMF( 国際通貨基金 ) と IBRD( 国際復興開発銀行 ) の設立が決められた 。 ]
命を終えるその日までさらなる金儲けのことしか考えない連中の、偏執狂的性質について思いを巡
らす人々にとっては、ぞっとするような驚くべき最近の歴史がある。オイルダラーの地球的独占や
WB(世界銀行 )・IMF(国際通貨基金)の中枢部独占に、恐れを知らず果敢に反対しようとす
る国家やその指導者たちには、不吉な結末が待っているのだ。
イラク大統領サダム・フセインは、 2000 年 11 月に、株式取引所すなわちドルではなくユーロで取
引する石油取引所を設置することに向けて一歩を踏み出したと発表したとき、自分にどんな運命が
待ち受けているのかを知らなかった 。2 年半後 、存在しない大量破壊兵器が彼の国で「 発見され 」、
爆弾が雨あられと降り注ぎ、サダムと彼の同胞たちは、ブッシュ、ブレア両氏の命令の下、不法に
侵略され、その国は混沌とした地獄に突き落とされてしまった。その地獄は今でも中東周辺にペス
トのごとく広がり続け、その地獄からいつ抜け出せるか誰も分からない。
同じように、負債ゼロという豊かな国をつくりあげたリビアのカダフィー大佐は 、「自国民を爆撃
した 」という捏造された罪で 、国連安全保障理事会から万事休す!を宣告された 。彼の往復外交が 、
金貨ディナール[イスラム諸国で使われている 4.25 グラムの金貨]を土台にしたアフリカ準備通貨
を発表するために 、アフリカの指導者たちの充分な合意を確かなものにしたときだった 。こうして 、
2011 年 5 月 1 日、ロンドンでウィリアム王子とケイトの王室結婚式がおこなわれた週末、カダフ
ィー大佐の息子の一人と孫のうちの 3 人が空爆で粉々に吹っ飛ばされ、そしてNATOがリビアを
爆撃しはじめた。その結果、アフリカ大陸で乳児死亡率最低という豊かで恵まれた国を、石器時代
に戻すことになった。
国連が地上軍を許可していなかったのに、外国人傭兵が送り込まれ、 2011 年 10 月 21 日、カダフ
ィーは背後からの銃剣で処刑された。IMFとその仲間から供給された抑制のきかないほど巨大な
筋肉(=金力)にあわせて軍事権力が踊り出すとき、最近の国民政府は取るに足らない余興的存在
になってしまったようだ。
なぜマレーシア航空?
「航空機 1 機を失うのは不運と見なされるかも知れない。だが 2 機を失うと不注意に見える」これ
はオスカー・ワイルドの「まじめであることの重要性」から拝借したことばだ。古臭いことばに見
えるかも知れないが、今回の撃墜と 3 月のMH 370 の「失踪」の両方が、不運なマレーシア航空ジ
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ェット機であるというのは、じっさい単なる偶然の一致なのか。どちらも「事故」であったように
は思われない 。両方が 、マレーシア航空にたいする侵略行為 、戦争行為なのか 。もしそうならなぜ?
そして犯人は?
マレーシアは、まさに東側と西側のあいだで板挟みになっている独立国だ。ウクライナその他多く
の中サイズの独立国に見られるように、マレーシアも独立状態を維持するのが非常に困難だ。世界
が、資本主義の崩壊によってもたらされた巨大な世界戦争になるかもしれない、そう多くのひとが
考えている方向へとジリジリと歩を進めているので、小国や中サイズの国が独立国を維持しつづけ
ることは、ますます不可能になりつつある。だから、マレーシアの指導者たちはアメリカから同盟
を組むよう圧力をかけられている可能性があるし、これがマレーシアを恫喝したり手を縛ったりす
ることになっている可能性もある。
誰も経済的崩壊などのぞまず、誰も世界戦争などのぞまないとくりかえすことは慰めとなるが、支
配エリートが「ダブルパンチ 」(縁起の悪いことが
2 つ同時に起きること) としてこの2つを配置したのは、
何も初めてのことではないだろう。経済的崩壊を餌にして富を築くことは容易だ。崩壊が始まるの
が見えるときには、とくにそうだ。そしてその経済的崩壊が古い神への古典的な「人身御供(ひと
みごくう )」を提供するときには、戦争は、あなたを監禁しようと考えているかもしれないすべて
のひとから注意を逸らす一番良い方法だ。というのは、見る勇気のあるひとなら誰にとっても、証
拠はそこに存在しているからだ。たとえば、9・11攻撃のとき、米国が既に破滅的だった軍事力
を突出させることに突き進もうと決心したことを見よ。それは恐らくドルの力が衰えたことにたい
する対応策だったのだ。
特務軍曹ジミー・マッシー ( Jimmy Massey)は 、
「 戦争に反対するイラク帰還兵の会 」
( Iraq Veterans
Against the War)と「平和を求める復員軍人の会 」( Veterans For Peace)米国支部の一員だ。彼がベ
ネズエラ国営テレビのインタビューを受けたとき、こう言った 。「もはや戦争法規はない。これが
第3次世界大戦だ。法規集は 2001 年の 9 月 11 日に窓の外に投げ捨てられた」
米国海兵隊情報ブリーフィング(状況説明)に規則的に出席してきた人物として、ジミーは西側の
一般人、メディア、政治家たちが知るよりは多くを知る立場にあった。ホワイトハウスとペンタゴ
ンの機密の方針がどれくらい終わりの見えない展開になりさがるのかについて。
そしてここに摩擦がある。マレーシアは、偽の「対テロ戦争」にたいする、世界で最も果敢な敵対
者 の ひ と つ だ 。 マ レ ー シ ア 連 邦 裁 判 所 の 元 判 事 ア ブ ド ル ・ カ ヂ ー ル ・ ス レ イ マ ン ( Abdul Kadir
Sulaiman )は、ブッシュとブレアを戦争犯罪人として裁判にかけようと、 2011 年に法廷を開きさえ
している。元マレーシアの首相マハティール・モハマド( Mahathir Mohamad )に支持され、法廷で
は次のように判決をくだした 。「暴力の不法な使用は世界を脅かし無法社会に戻してしまう。被告
人の行動は国際法違反だ 。」マレーシアは国連とハーグ国際司法裁判所が敢えてやらないことをや
ったのだ。
ヨーロッパと北米諸国が[航空機撃墜の]その日、あまりにも遅くになって認識したのは、為替管理
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を厳格に維持することによってのみ、主権国家でいられるのだということだ。それがなければ、国
際金融資本が莫大な資源をもって入り込み、メディアから議会まで、邪魔になるものすべてを破壊
する。それに耐えうるものはなにもない。万一、密かに交渉が進んでいる TTIP (環大西洋貿易投
資パートナーシップ)が今年中に署名されることにでもなれば、裁判所でさえ脱税する超国家企業
へのサービス機関と化してしまうだろう。
裁判所は彼ら超国家企業のものなってしまい 、企業が好まない議会決定などひっくり返してしまう 。
そして彼らはもっともっと多くの現金を蓄えつづけ、世界最良の弁護士たちを雇うことになる。彼
らが勝利することを確かにするために。
http://rt.com/op-edge/173788-malaysian-plane-crash-ukraine/
あなたのために旅客機を撃ち落とす人々はいくらでもいる
西側陣営が戦争を民営化するにともなって、英国の慈善団体「欠乏との戦い 」( War On Want )はこ
う指摘している 。「くりかえされる人権侵害」は「外国人傭兵によって犯され、一般市民への無差
別殺害と拷問などをおこなっている。このような企業は何の責任もなく何の規制もないので、世界
中の人権侵害に加担している。人間よりも利益優先をかかげ、世界中に戦争の炎を煽っているの
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だ 。」
だから誰かに核戦争を戦わせたいと思えば、大虐殺をおこなったり旅客機を撃墜すればよい。今で
はそのようなサービスを自由市場で買うことができる。9・11以降の民間軍事会社の増殖は、軍
産複合体と見事に一致しているのだ。感謝。
しかし、ではどのようにして世界は、そのような民間軍事企業が国家の保護を受け、商売大繁盛と
いう事態になったのか。
問題はまたもや全世界を股にかけて行動する巨大銀行だ。彼らは何度も何度も法廷に召還され、諜
報機関や国際犯罪組織と手を組むようになった。今や彼らは、法を超越した犯罪者であるだけでな
く、自身の私的利益のために法をつくっている。麻薬が一方に飛び、銃が別のところへ飛んだ「イ
ラン=コントラ事件」であろうが、不正な資金洗浄をおこなったとして香港上海銀行( HSBC: The
Hongkong and Shanghai Banking Corporation Limited) が 2012 年に 20 億ドルという雀の涙ほどの罰金を
支払った事件であろうが、本質はまったく変わっていない。
彼ら巨大金融資本が支配しようとしているのは、彼らを監視しつづけるアジア・太平洋・南米とい
った勢力圏だけではなく、彼ら自身の国民つまり彼らが寄生している人々なのだ。うまく切り抜け
てきたと思っているあらゆる悪事のために、彼らは逆に窮地に追い込まれている。彼らが支配しよ
うとしている大西洋横断の大建築物( TTIP)が、彼らの足元で崩れつつあるからだ。
<このコラムで表明された声明、見解、意見は、著者のものであり、必ずしもRTのそれを表明す
るものではありません。>
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