複素関数論 講義ノート ver. 2.1.55 群馬大学 理工学部 共通講座 #1 #2 #3 #4 #5 #6 #7 #8 #9 #10 #11 #12 #13 #14 #15 天野一男 はじめに 複素数 一次分数変換 ベキ級数 解析関数 Cauchy-Riemann の方程式 複素積分 Cauchy の積分定理 Cauchy の積分公式 Taylor 展開 Laurent 展開 留数 留数積分 留数積分の応用 おわりに –1– #1 はじめに ● 講義のテーマ 複素関数論 ● 教科書 複素関数論 E. クライツィグ著 培風館 ● 担当者 群馬大学 理工学部 共通講座 天野一男 ● 電子メールのアドレス prof k [email protected] ● 講義ノートをダウンロード出来ます http://www.geocities.jp/prof k amano/ ● 成績 2つのコースを用意する。 • 小テストコース 毎回行われる小テストの評価と期末試験の評価の平均点 (算術平均) が最終成績と なる。小テストの答案は、まとめて提出するのではなく、毎回提出してもらいます。 • レポートコース 講義のテスト問題に関するレポートを期限内に提出した場合は、このレポートの評 価が最終成績となります。レポートは各テスト問題ごとに提出するのではなく、最 後の講義までに一括して提出して下さい。 ※ どちらか1つのコースを選択して下さい。レポートを提出した学生は、レポート コースを選択したものとみなされます。レポートを提出しなかった学生は、小テス トコースを選択したものとみなされます。 ● 注意 • 答案の返却は行いません ので、提出前にコピーあるいは写真をとっておきましょ う。皆さんの答案は大学が大切に保管します。 –2– #2 複素数 実数 x, y に対して、 (2.1) z = x + iy を複素数 (complex number) と言う。ここで、i は純虚数 (imaginary unit) と呼ばれ、等式 i2 = −1 (2.2) をみたす。(2.1) において、x, y をそれぞれ z の実部 (real part)、虚部 (imaginary part) と 呼び、 x = Re z , y = Im z と表す。 複素数全体の集合を C と表す*。C 上には自然に四則演算 (和差積商) が定義される。 さらに、C の点は自然に (x, y) 平面 R2 上の点と 1 対 1 に対応するので z = x + iy ∈ C ←→ (x, y) ∈ R2 これを複素平面 (complex plane) と呼ぶ。 複素数 z = x + iy に対して、その共役複素数 (conjugate) z, 絶対値 (absolute value) |z|, 偏角 (argument) arg z ををれぞれ z = x − iy , (2.3) |z| = で定義する。 (2.4) p x2 + y 2 , z = r(cos θ + i sin θ) where arg z = arctan r = |z| , y x θ = arg z を z の極形式 (polar form) と呼ぶ。 定理 2.1. すべての複素数 z に対して、 (2.5) Re z = z+z , 2 Im z = z−z , 2i |z|2 = zz がなりたつ。 定理 2.2(de Moivre の公式). (2.6) 複素数 z = r(cos θ + i sin θ) に対して、 z n = r n cos nθ + i sin nθ for n = 1, 2, 3, · · · * [復習] 実数全体の集合を R と表し、n 次元 Euclid 空間を Rn と表す。 –3– がなりたつ。 証明. 複素数の計算と加法定理より、 cos kθ + i sin kθ (cos θ + i sin θ) = (cos kθ cos θ − sin kθ sin θ) + i(sin kθ cos θ + cos kθ sin θ) = cos(k + 1)θ + i sin(k + 1)θ なので、数学的帰納法により結論が従う。 立体射影 (stereographic projection) によって (教科書カバー参照)、複素平面 C に無限 遠点 ∞ を付け加えた集合 C ∪ {∞} は、3次元空間 R3 に埋め込まれた平面 R2 上に原点 に接する様に置かれた直径 1 の球面 S と同一視される: ξ η ∈ R2 . , (ξ, η, ζ) ∈ S ←→ 1−ζ 1−ζ この球面を Riemann 球面 (Riemann sphere) と呼ぶ。ただし、無限遠点 ∞ はこの球面の北 極 N (0, 0, 1) に対応させる。ちなみに、上述の立体射影の定式化は、点 (0, 0, 1) と点 (ξ, η, ζ) を通る直線の媒介変数表示 (0, 0, 1) + t(ξ, η, ζ − 1) = tξ, tη, 1 + t(ζ − 1) for − ∞ < t < +∞ より導かれる。 問 2.1. 公式 (2.5) を証明しなさい。 [ヒント] z = x + iy , z = x − iy と置いて、(2.5) の各式の右辺を計算してみる。 問 2.2. 方程式 の3つの複素解をすべて求めなさい。 [ヒント] z3 − 1 = 0 z 3 − 1 = (z − 1)(z 2 + z + 1) と因数分解して、2次方程式の解の公式を用いる。このとき、 i = る。あるいは、 z 3 = 1 , z = r(cos θ + i sin θ) √ −1 である事に注意す を de Moivre の公式を使って r 3 (cos 3θ + i sin 3θ) = (cos 2nπ + i sin 2nπ) , n = 0, ±1, ±2, ±3, · · · と書き直し、右辺と左辺を比較する事によって、 r = 1 と θ の3つの値を求める。 問 2.3. de Moivre の公式 (2.6) を省略無しに完全に証明しなさい。具体的には、数学的帰 納法に関する議論を完成させなし。 –4– #3 1次分数変換 複素平面から複素平面への写像 (3.1) w= az + b , cz + d ad − bc 6= 0 を1次分数変換 (M¨ obius transformation) と言う。容易に分かるように、任意の 1 次分数変 換は3種類の基本的な変換 (3.2) w = Az (回転) , (平行移動) , w =z+B w= 1 z (反転) の適当な合成で表される†。 z=− d ←→ w = ∞ , c z = ∞ ←→ w = a c と定義を拡張すれば、1次分数変換は Riemann 球面から Riemann 球面への全単射 (bijection)‡である。 例 3.1(Cayley 変換). Cayley 変換 w= z−i z+i は、z 平面の上半平面を w 平面の単位円板に移す。 じっさい、Cayley 変換において、 z=x, とすると、 w = u + iv x−i (x − i)2 x2 − 1 − 2ix = 2 = , x+i x +1 x2 + 1 x2 − 1 2x u= 2 , v= 2 , x +1 x +1 (x2 − 1)2 + 4x2 (x2 + 1)2 u2 + v 2 = = =1 (x2 + 1)2 (x2 + 1)2 u + iv = が得られるので、 Im z = 0 (実軸) ←→ |w| = 1 a (cz + d) − ad +b az + b bc − ad a c = c = 2 + cz + d cz + d c z + cd c ‡ 1 対 1 上への写像 (one-to-one onto mapping) † –5– (単位円周) when c 6= 0 と対応することが確かめられる。さらに、z = i のときは明かに w = 0 なので、 Im z ≥ 0 (上半平面) ←→ |w| ≤ 1 (単位円板) と対応することも分かる。 定理 3.1. 異なる3点 z1 , z2 , z3 をそれぞれ異なる3点 w1 , w2 , w3 に移すという条件に よって、1 次分数変換は一意に確定する。さらに、その 1 次分数変換は w − w1 w2 − w3 z − z1 z2 − z3 . . = w − w3 w2 − w1 z − z3 z2 − z1 によって与えられる。 証明. z1 , z3 がそれぞれ w1 , w3 に移されるのだから、求める 1 次分数変換は (w − w1 )(z − z3 ) = C(z − z1 )(w − w3 ) where C = 定数 という関係式を w について解くことによって得られる。z2 が w2 に移されるという仮定よ り、上述の式に z = z2 と w = w2 を代入すると、 C= (w2 − w1 )(z2 − z3 ) (z2 − z1 )(w2 − w3 ) が得られる。よって、証明が完了した。 定理 3.2(円々対応性). 1 次分数変換によって円周は円周に移される。 この定理を証明するには、(3.2) の3つのタイプの変換に対して円々対応性を示せば良 いので。証明は学生の皆さんの練習問題とする。 注意. 直線を ∞ を通る円周とみなすことにより、円々対応性を拡張できる。 問 3.1. Cayley 変換による第 1 象限 Re z > 0 , Im z > 0 の像を求めなさい。 [ヒント] z = iy と置いて虚軸 (Re z = 0) の像を調べてみる。 問 3.2. 単位円内部を下半平面に移す 1 次分数変換を求めなさい。 [ヒント] Cayley 変換の逆変換を利用するのも一つの手である。あるいは、定理 2.1 を使って も良いだろう。 問 3.3. 1 次分数変換 w= 1 z が円周を円周に移すことを証明しなさい。 –6– #4 ベキ級数 級数 ∞ X n=0 an (z − a)n をベキ級数 (power series) と呼ぶ。a を中心 (center)、an をその係数 (coefficient) と言う。 0 ≤ R ≤ ∞ に対して、 ∞ X n=0 an (z − a)n が |z − a| < R で収束し、かつ |z − a| > R で発散する とき、R を収束半径 (radius of convergence) と言う。 定理 4.1(Cauchy-Hadamard の公式). ベキ級数 ∞ X n=0 R= lim n→∞ 1 p n an (z − a)n の収束半径 R は |an | で与えられる。ただしここで、 1/∞ = 0 , 1/0 = ∞ と規約する。 注意. 数列 {αn } の上極限 (upper limit) と下極限 (lower limit) はそれぞれ lim αn = lim sup αk , n→∞ n→∞ k≥n lim αn = lim inf αk n→∞ n→∞ k≥n で定義される。ここで、sup と inf はそれぞれ上限 (upper bound) と下限 (lower bound) を 表す記号である。例えば、 lim (−1)n = 1 , n→∞ lim (−1)n = −1 n→∞ である。また、収束数列に対しては、上極限と下極限は一致する。 定理 4.1(d’Alembert の公式). 辺の極限が存在する限り、 で与えられる。 ベキ級数 ∞ X n=0 an (z − a)n の収束半径 R は、次式の右 a n R = lim n→∞ an+1 注意. 上述の 2 つの公式を結び付ける有名な不等式が存在する: a a p p n+1 n+1 lim ≤ lim n |an | ≤ lim n |an | ≤ lim . an an n→∞ n→∞ n→∞ n→∞ –7– 証明. |z − a| < r < R ならば、十分に大きなすべての n に対して、 なので、不等式 a |z − a| n+1 (z − a)n+1 an+1 <1 |z − a| < = n an (z − a) an r n |an (z − a) | ≤ |z − a| n r |a0 | が得られる。したがって、等比級数の収束性よりベキ級数の収束性が従う。 同様に |z − a| > r > R ならば、十分に大きなすべての n に対して、 なので、不等式 a |z − a| n+1 (z − a)n+1 an+1 >1 |z − a| > = n an (z − a) an r n |an (z − a) | ≥ |z − a| n r |a0 | が得られる。したがって、等比級数の発散性よりベキ級数の発散性が従う。 問 4.1. 次のベキ級数の中心と収束半径を求めなさい。 ∞ X (i) (z − 1)n (ii) (iii) n=0 ∞ X 1 n z n! n=0 ∞ X z n+1 1 n(n + 1) 4 n=1 ∞ X (−1)n 2n+1 (iv) z (2n + 1)! n=0 (v) ∞ X n! (z + π)n n n n=0 –8– #5 解析関数 複素数 z に複素数 w を対応させる写像 w = f (z) を複素関数 (complex function) と言う。複素関数のうちで z に関して微分可能なものを特 に解析関数 (analylic function) と呼ぶ。複素変数に関して微分可能な事を、しばしば解析的 analytic) であると言う。 例 5.1. 多項式 f (z) = c0 + c1 z + c2 z 2 + c3 z 3 + · · · + cn−1 z n−1 + cn z n は解析関数で、 f ′ (z) = c1 + 2c2 z + 3c3 z 2 + · · · + (n − 1)cn−1 z n−2 + ncn z n−1 . 例 5.2. 正の整数 k に対して、 g(z) = は z 6= 0 で解析的な関数で, 定理 5.1. g ′ (z) = − ベキ級数 f (z) = ∞ X 1 zk k z k+1 an z n . ( |z| < R ) n=0 で定義される関数は解析的で、その導関数 f ′ (z) もベキ級数 ′ f (z) = ∞ X nan z n−1 n=1 ( |z| < R ) で与えられる。 初等関数 ez , log z, sin z, cos z は以下の様に定義される: ez = exp z = ∞ X zn , n! n=0 log z = exp−1 z , ∞ X z 2n cos z = (−1)n , (2n)! n=0 sin z = ∞ X (−1)n n=0 –9– z 2n+1 . (2n + 1)! これらの定義より、残りの初等関数も自然に定義される。例えば、 az = exp(z log a) , sin z , tan z = cos z ez − e−z , sinh z = 2 .. . 問 5.1. 次の解析関数の導関数を求めなさい。 (i) (3z 2 + iz)2 iz + 2 (ii) 3z − 6i (iii) exp( iz 2 ) p (iv) z log z (v) arctan z 問 5.2. 初等解析関数の定義より Euler の公式 eiθ = cos θ + i sin θ を証明しなさい。 問 5.3. 極形式を利用して等式 log z = log |z| + i arg z を証明しなさい。 [解法のヒント] log(reiθ ) = log r + log eiθ = log r + iθ . – 10 – #6 Cauchy-Riemann の方程式 解析関数 f (z) , z = x + iy の実部と虚部をそれぞれ u(x, y), v(x, y) とする, i.e., f (z) = u(x, y) + iv(x, y) とする。このとき、 定理 6.1. u(x, y) と v(x, y) は Cauchy-Riemann の方程式 (Cauchy-Riemann equations) ux = vy , uy = −vx を満足する。 証明. なので、 f ′ (x + iy) ∂ (x + iy) = f ′ (x + iy) ∂ ∂x f (x + iy) = , ∂ ∂x u(x, y) + iv(x, y) = ux (x, y) + ivx (x, y) ∂x ∂ f ′ (x + iy) ∂y (x + iy) = if ′ (x + iy) ∂ f (x + iy) = ∂y ∂ u(x, y) + iv(x, y) = uy (x, y) + ivy (x, y) ∂y f ′ (x + iy) = ux (x, y) + ivx (x, y) = vy (x, y) − iuy (x, y) . よって、結論が従う。 定理 6.2. u(x, y) と v(x, y) は Laplace 方程式 (Laplace equation) ∇2 u = uxx + uyy = 0 , ∇2 v = vxx + vyy = 0 を満足する。 証明. Cauchy-Riemann の方程式より、 uxx = vyx , uyy = −vxy が得られ、かつ偏微分の基本性質より、 vxy = vyx が成り立つので、Laplace 方程式 uxx + uyy = 0 が従う。定理の残りの部分の証明も同様である。 Laplace 方程式を満す関数を 調和関数 (harmonic function) と言う。また、v を u の 共 役調和関数 (conjugate harmonic function) とも言う。∇2 をしばしば ∆ と表し ラプラシア ン (Laplacian) と呼ぶ。 – 11 – 注意 1. 以上の議論とは逆に、調和関数 u(x, y) とその共役調和関数 v(x, y) を与えると、こ れらから作られた複素関数 f (z) = u(x, y) + iv(x, y) は解析関数になる事が知られている: 調和関数 + i 共役調和関数 =⇒ 解析関数 . 注意 2. 滑らかな実多変数関数の高階導関数はそれを計算するための偏微分の順序には依存 しない。しかしながら、この滑らかさの仮定を外す事はできない。じっさい、十分には滑ら かではない 2 実変数関数 に対しては、 2 2 xy(x − y ) x2 + y 2 f (x, y) = 0 if (x, y) 6= (0, 0) if (x, y) = (0, 0) fxy (0, 0) 6= fyx (0, 0) となってしまい、二階偏導関数の値が偏微分の順序に依存してしまう。 問 6.1. 「同様である」と省略せずに、定理 6.2 の証明を完成しなさい。 問 6.2. 解析関数 f (z) = z 2 , z = x + iy の実部 u(x, y) と虚部 v(x, y) を求めて、それらに対して定理 6.1 と 6.2 が成り立つ事を検 算によって確認しなさい。 問 6.3. 解析関数 f (z) = log z , z = x + iy の実部 u(x, y) と虚部 v(x, y) を求めて、それらに対して定理 6.1 と 6.2 が成り立つ事を検 算によって確認しなさい。 [解法のヒント]問 5.3 を利用すると良い。 – 12 – #7 複素積分 複素平面上の滑らかな曲線 (a ≤ t ≤ b) C : z = z(t) を考える。媒介変数 t の動く範囲である閉区間 [a, b] を 分割 (partition) ∆ : a = t0 < t1 < t2 < t3 < · · · < tn−1 < tn = b によって離散化し、その メッシュ(mesh) δ(∆) を δ(∆) = max |z(tk ) − z(tk−1 )| 1≤k≤n で定義する。曲線 C の近傍で定義された複素関数 f (z) に対して、 S(∆) = n X k=1 f (ζk ) z(tk ) − z(tk−1 ) をその Riemann 和と呼ぶ。ただしここで、各 ζk (1 ≤ k ≤ n) は z(tk−1 ) と z(tk ) の間の C 上の点を表す。Riemann 和 S(∆) の δ(∆) → 0 としたときの極限値 Z (7.1) f (z) dz = C lim S(∆) δ(∆)→0 を 複素積分 (complex integral) と言う。特に、曲線 C が閉曲線のとき, i.e., z(a) = z(b) のとき、しばしば複素積分は I f (z) dz C と表される。自分自身と交わらない閉曲線 (単純閉曲線) C 上での複素積分は、特に断らな い限り、必ず C の囲む領域を 進行方向の左側に見る向きに沿って 行われる。 複素積分の計算には次の定理がよく利用される。 定理 7.1. (7.2) Z f (z) dz = C 例 7.1. 単位円 |z| = 1 上での Z b f z(t) a 1 の複素積分 z I dz |z|=1 z – 13 – dz(t) dt . dt を求める。 単位円は z = eiθ (0 ≤ θ ≤ 2π) と表される。したがって、定理 7.1 により、 I |z|=1 問 7.1. dz = z Z 2π 0 1 iθ ie dθ = i eiθ Z 2π dθ = 2πi . 0 中心 a, 半径 r > 0 の円 |z − a| = r 上での (z − a)k の複素積分 I |z−a|=r (z − a)k dz を求めなさい。ただしここで、k は整数とする。 [解法のヒント]例 7.1 と同様に計算をすると、 I (7.3) k |z−a|=r 問 7.2. (z − a) dz = ( 2πi if k = −1 0 if k 6= −1 . 複素平面上の放物線 C : y = x2 に沿っての複素積分 Z (0 ≤ x ≤ 1) z dz C を計算しなさい。 問 7.3. 中心 0, 半径 π の半円 C : |z| = π , 上での複素積分 Z Re z ≥ 0 cos z dz C を求めなさい。 – 14 – #8 Cauchy の積分定理 領域 D 内の任意の単純閉曲線 (自分自身とは交わらない閉曲線) の囲む領域がいつでも D の部分領域であるとき、この領域は 単連結 (simply connected) であると言う。 定理 8.1(Cauchy の積分定理). 単純閉曲線 C に対して、 f (z) が単連結領域 D で解析的ならば、D 内の任意の I f (z) dz = 0 C が成り立つ。 証明. z = x + iy , f (z) = u(x, y) + iv(x, y) と表す。このとき、 f (z) dz = u(x, y) + v(x, y) d(x + iy) = u(x, y) dx − v(x, y) dy + i v(x, y) dx + u(x, y)d y なので、 Z f (z) dz = C Z C u(x, y) dx − v(x, y) dy + i Z v(x, y) dx + u(x, y)d y C が得られる。一方、ベクトル解析で習う Green の定理 より、 Z ZZ ∂v ∂u (x, y) dxdy , u(x, y) dx − v(x, y) dy = − (x, y) − ∂y ∂x ZC Z ZG ∂v ∂u v(x, y) dx + u(x, y)d y = − (x, y) + (x, y) dxdy . ∂y ∂x C G ここで、G は曲線 C の囲む領域を表す。以上の結果と Cauchy-Riemann の方程式より、目 的の結論が従う。 定理 8.2(経路に関する独立性). 単連結領域 D で解析的な関数 f (x) と D 内の二点 a, b が与えられたとする。このとき、a を始点、b を終点とする D 内の任意の二つの曲線 C1 , C2 に対して、 Z Z f (z) dz = C1 f (z) dz C2 が成り立つ。 証明. 簡単のために C1 と C2 が交わならい場合のみを証明する。曲線 C2 の向きを逆にし た、b を始点、a を終点とする曲線を C3 とする。このとき、 Z Z f (z) dz = − f (z) dz C3 c2 – 15 – である事に注意する。一方、Cauchy の積分定理より、 Z f (z) dz + C1 Z f (z) dz = 0 . c2 以上より直ちに結論が従う。 定理 8.2 の結果を踏まえて、a を始点、b を終点とする D 内の曲線に沿っての解析関 数 f (z) の複素積分を Z b f (z) dz a としばしば表す。この表現を用いれば、f (z) の原始関数 F (z) は (8.1) F (z) = Z z f (ζ) dζ a と表せ、複素積分に拡張された微分積分学の基本定理 Z (8.2) b a f (z) dz = F (b) − F (a) も得られる。 問 8.1. 単連結ではない領域の例を二つ以上挙げなさい。また、その例がどうして単連結 ではないのかを詳しく説明しなさい。 問 8.2. 2 つの円 C1 : |z − i| = 1 , に対して、2 つの複素積分 I C1 dz , 2 z +1 C2 : |z + i| = 1 I C2 dz +1 z2 をそれぞれ計算しなさい。 問 8.3. 楕円 C : に沿っての複素積分 を計算しなさい。 (x − 1)2 + y2 = 1 4 I 1 1 dz + z−2 C z – 16 – #9 Cauchy の積分公式 定理 9.1. 点 z = a の近傍で解析的な複素関数 f (z) と十分に小さなすべての r > 0 に 対して、Cauchy の積分公式 I 1 f (ζ) (9.1) f (a) = dζ 2πi |ζ−a|=r ζ − a が成り立つ。 証明. (7.3) より、 I なので、 |ζ−a|=r 1 f (a) = 2πi dζ = 2πi ζ −a I |ζ−a|=r f (a) dζ ζ −a となる事に注意する。さらに、複素積分の基本性質と Cauchy の積分定理より、 I f (a) 1 f (a) = dζ 2πi |ζ−a|=r ζ − a I I 1 f (ζ) f (a) − f (ζ) 1 = dζ + dζ 2πi |ζ−a|=r ζ − a 2πi |ζ−a|=r ζ −a I I f (ζ) f (a) − f (ζ) 1 1 = dζ + dζ 2πi |ζ−a|=r ζ − a 2πi |ζ−a|=ε ζ −a I f (ζ) 1 −→ dζ + 0 (ε → 0) . 2πi |ζ−a|=r ζ − a 証明が完了した。 定理 9.2. 点 z = a の近傍で解析的な複素関数 f (z) と十分に小さなすべての r > 0 , 整 数 n = 0, 1, 2, 3, · · · に対して、 I f (ζ) n! (n) (9.2) f (a) = dζ 2πi |ζ−a|=r (ζ − a)n+1 が成り立つ。 証明. a を変数とみなして、(9.1) の両辺を a で n 回微分すれば、(9.2) が導かれる。 例 9.1. 解析関数 g(z) = の複素積分 I z2 + 1 z2 − 1 g(z) dz |z−1|=1 – 17 – を計算してみよう。 分母の因数分解により、 g(z) = z2 + 1 z2 + 1 = z2 − 1 (z + 1)(z − 1) なので、 z2 + 1 f (z) = z+1 と置けば、Cauchy の積分公式より、 I I g(z) dz = |z−1|=1 例 9.2. 複素積分 |z−1|=1 Z |z−πi|=1 f (z) dz = 2πi f (1) = 2πi . z−1 cos z dz (z − πi)2 を計算してみよう。 初めに、 f (z) = cos z と置くと、定理 9.2 (a = πi, n = 1 の場合) より、 Z f (z) 1! dz = f ′ (πi) = − sin(πi) 2πi |z−πi|=1 (z − πi)2 なので、 問 9.1. Z |z−πi|=1 cos z dz = −2πi sin(πi) = 2π sinh π . (z − πi)2 解析関数 g(z) = の複素積分 I z2 + 1 z2 − 1 g(z) dz |z+1|=1 を計算しなさい。 問 9.2. 複素積分 I |z+i|=1 z 4 − 3z 2 + 6 dz (z + i)3 を計算しなさい。 – 18 – #10 Taylor 展開 定理 10.1(Taylor の定理). 点 z = a の近傍で解析的な複素関数 f (z) に対しては、十 分に小さな r > 0 をとれば、Taylor 級数 (10.1) f (z) = ∞ X n=0 1 an = 2πi n an (z − a) , I |ζ−a|=r f (ζ) dζ (ζ − a)n+1 による一意的な展開が可能である。 注意. 原点 z = 0 での Taylor 展開を特に Maclaurin 展開 (Maclaurin expansion) と言 う。また、Taylor の定理と (9.2) を合体させれば、 f (n) (a) an = n! (10.2) であると分る。 証明. Cauchy の積分公式より、 |z − a| < r ならば I 1 f (ζ) f (z) = dζ . 2πi |ζ−a|=r ζ − z 一方、計算により、 ∞ 1 1 1 X n 1 1 ρ . = = = ζ −z (ζ − a) − (z − a) ζ −a 1−ρ ζ − a n=0 ただしここで、 ρ = z−a . 以上より、 ζ −a ∞ ∞ f (ζ) 1 X 1 f (ζ) X n 1 f (ζ) r = = (z − a)n , 2πi ζ − z 2πi ζ − a n=0 2πi n=0 (ζ − a)n+1 I I ∞ X 1 f (ζ) f (ζ) 1 f (z) = dζ = dζ (z − a)n . n+1 2πi |ζ−a|=r ζ − z 2πi (ζ − a) |ζ−a|=r n=0 よって、証明が完了した。一意性の証明は省略する。 例 10.1. 対数関数 f (z) = log z を z = 1 で Taylor 展開してみよう。 等比級数の和の公式より、 ∞ ∞ X X 1 1 n f (z) = (log z) = = = (1 − z) = (−1)n (z − 1)n z 1 − (1 − z) n=0 n=0 ′ ′ – 19 – なので、 f ′ (z) = 1 − (z − 1) + (z − 1)2 − (z − 1)3 + (z − 1)4 − (z − 1)5 + · · · . この結果の両辺を z に関して積分すれば、求める Taylor 展開 f (z) = (z − 1) − (z − 1)3 (z − 1)4 (z − 1)5 (z − 1)6 (z − 1)2 + − + − +··· 2 3 4 5 6 が得られる。 また、以下の様な別解も考えられる。微分の計算により f (1) = 0 , f ′ (z) = z −1 , f ′′ (z) = (−1)1! z −2 , f ′′′ (z) = (−1)2 2! z −3 , f (4) (z) = (−1)3 3! z −4 , f (5) (z) = (−1)4 4! z −5 , .. . f (n) (z) = (−1)n−1 (n − 1)! z −n なので、(10.1) と (10.2) より、 f (z) = 問 10.1. ∞ ∞ X X (−1)n−1 f (n) (1) (z − 1)n = (z − 1)n . n! n n=1 n=0 逆三角関数 g(z) = arctan z を Maclaurin 展開しなさい。 問 10.2. 有理関数 h(z) = を z = 1 で Taylor 展開しなさい。 [解法のヒント] 2z 2 + 9z + 5 z 3 + z 2 − 8z − 12 2z 2 + 9z + 5 1 2 = + . 3 2 2 z + z − 8z − 12 (z + 2) z−3 – 20 – #11 Laurent 展開 定理 11.1(Laurent の定理). 点 z = a を中心とする円環領域 R1 < |z − a| < R2 の 近傍で解析的な複素関数 f (z) 対しては、Laurent 級数 (11.1) f (z) = ∞ X n=−∞ 1 an = 2πi n an (z − a) , I |ζ−a|=r f (ζ) dζ (ζ − a)n+1 による展開が可能である。ただしここで、 0 < R1 < r < R2 とする。 証明. 証明のために、2 つの円 C1 : |z − a| = R1 , C2 : |z − a| = R2 を考える。Cauchy の積分公式より、 R1 < |z − a| < R2 ならば I I f (ζ2 ) f (ζ1 ) 1 dζ2 − dζ1 f (z) = 2πi C2 ζ2 − z C1 ζ1 − z I I 1 f (ζ2 ) f (ζ1 ) = dζ2 − dζ1 2πi C (ζ2 − a) − (z − a) C1 (ζ1 − a) − (z − a) I 2 I f (ζ2 ) f (ζ1 ) 1 1 1 dζ2 + dζ1 = 2πi C2 ζ2 − a 1 − ρ2 C1 z − a 1 − ρ1 I I ∞ ∞ f (ζ2 ) X n f (ζ1 ) X m 1 ρ2 dζ2 + ρ1 dζ1 = 2πi C2 ζ2 − a n=0 C1 z − a m=0 I I ∞ ∞ X X (z − a)n (ζ1 − a)m 1 = f (ζ2 ) dζ2 + f (ζ1 ) dζ1 2πi (ζ2 − a)n+1 (z − a)m+1 C2 C1 n=0 m=0 I I ∞ ∞ X X 1 (z − a)n (ζ1 − a)m−1 = f (ζ2 ) dζ2 + f (ζ1 ) dζ1 2πi (ζ2 − a)n+1 (z − a)m C2 C1 n=0 m=1 I I ∞ ∞ X X 1 (z − a)n (z − a)−m = f (ζ2 ) dζ + f (ζ ) dζ 2 1 1 2πi (ζ2 − a)n+1 (ζ1 − a)−m+1 C2 C1 n=0 m=1 I I −∞ ∞ X X f (ζ2 ) f (ζ1 ) 1 1 n dζ2 (z−a) + dζ1 (z−a)n . = n+1 n+1 2πi (ζ −a) 2πi (ζ −a) 2 1 C C 2 1 n=−1 n=0 ここで、 ρ1 = ζ1 − a , z−a ρ2 = 証明が完了した – 21 – z−a . ζ2 − a 例 11.1. 有理関数を Lauran 展開するには、部分分数分解と等比級数の和の公式を用いる と上手く行く事が多い。例えば、 ∞ ∞ X −1 1 1 1 X 1 1 =− =− = 1−z z 1 − (1/z) z n=0 z n zm m=1 と変形する事によって、解析関数 1/(1 − z) の円環領域 1 < |z| < ∞ での Laurent 展開 が得られる。 例 11.2. 解析関数 f (z) = z 2 e1/z を z = 0 を中心とする円環領域で Laurent 展開してみよう。 指数関数の定義より、 1/z e ∞ ∞ X X 1 (1/z)n = = n! n! z n n=0 n=0 なので、この式の両辺に z 2 を掛ければ、求める Laurent 展開 2 1/z f (z) = z e ∞ X 1 1 1 1 1 1 = = z2 + z + + + + +··· =z n n−2 2 3 n! z n! z 2 3! z 4! z 5! z n=0 n=0 2 ∞ X が従う。 問 11.1. 解析関数 g(z) = を 2 つの円環領域 0 < |z| < 1 , z3 1 − z4 1 < |z| < ∞ のそれぞれで収束する Laurent 級数に展開しなさい。 問 11.2. 解析関数 h(z) = cos z (z − π)2 を z = π を中心とする円環領域で Laurent 展開しなさい。 – 22 – #12 留数 孤立特異点 z = z0 をもった解析関数 f (z) の留数 (residue) を 1 Res f (z) = z=z0 2πi I f (z) dz C によって定義する。ただし、C は点 z = z0 を中心とする十分に小さな円とする。Laurent の 定理 (定理 11.1) より、 (12.1) Res f (z) = b1 z=z0 である事に注意する。 定理 12.1. (12.2) m 位の極 z = z0 をもつ解析関数 f (z) に対して、 Res f (z) = z=z0 dm−1 1 m lim (z − z ) f (z) 0 (m − 1)! z→z0 dz m−1 for m = 1, 2, 3, · · · が成り立つ。 証明. 仮定より、f (z) の z = z0 における Laurent 展開は f (z) = ∞ X n=0 n an (z − z0 ) + m X bn (z − z0 )n n=1 なので、 m (z − z0 ) f (z) = ∞ X n=0 an (z − z0 ) m+n + m X n=1 bn (z − z0 )m−n = bm + bm−1 (z − z0 ) + bm−2 (z − z0 )2 + · · · + b1 (z − z0 )m−1 + a0 (z − z0 )m + a1 (z − z0 )m+1 + a2 (z − z0 )m−2 + · · · が得られる。ここで、一般に dk (z − z0 )k = k! k dz for k = 1, 2, 3, · · · である事に注意すれば、 lim z→z0 dm−1 m (z − z ) f (z) = (m − 1)! b1 0 dz m−1 が従う。よって、(12.1) より、証明が完了した。 – 23 – 例 12.1. 解析関数 f (z) = 9z + i z(z 2 + 1) の留数 Res f (z) z=i を求める。 上述の解析関数 f (z) の分母は z(z 2 + i) = z(z + i)(z − i) と因数分解されるので、 z = i は f (z) の 1 位の極である。したがって、定理 12.1 より、 9i + i 10i 9z + i = = = −5i Res f (z) = lim (z − i)f (z) = lim z=i z→i z→i z(z + i) i(i + i) −2 であると分かる。 例 12.2. 解析関数 f (z) = の留数 50z (z + 4)(z − 1)2 Res f (z) z=1 を求める。 この例の解析関数 f (z) の分母の形から、 z = 1 は f (z) の 2 位の極である。したがっ て、定理 12.1 より、 d 50z 50(z + 4) − 50z 200 d (z − 1)2 f (z) = lim = lim = =8 Res f (z) = lim z→1 dz z + 4 z→1 z=1 z→1 dz (z + 4)2 25 が得られる。 問 12.1. (i) (ii) (iii) (iv) 次の解析関数の特異点の留数をすべて求めなさい。 4 1 + z2 1 (z 2 − 1)2 sin 2z z6 z 2 e1/z [ヒント] (iii), (iv) では、Taylor 展開 z3 z5 z7 z9 z 11 + − + − +··· , 3! 5! 7! 9! 11! z3 z4 z5 z6 z2 + + + + +··· ez = 1 + z + 2! 3! 4! 5! 6! sin z = z − を利用する。 – 24 – #13 留数積分 定理 13.1(留数定理). 単純閉曲線 C が囲む領域 D を考える。D 内だけに有限個の孤 立特異点 z1 , z2 , · · ·, zn をもつ解析関数 f (z) に対して、等式 I (13.1) n X f (z) dz = 2πi C k=1 Res f( z) z=zk が成り立つ。 証明. 各 k = 1, 2, · · · , n に対して、特異点 zk を中心とする十分に小さな次の様な円 Ck を 考える: Ck ⊂ D , Ck ∩ Cℓ = ∅ if k 6= ℓ . このとき、Cauchy の積分定理より、 I C f (z) dz − なので、 I f (z) dz = C が得られる。証明が完了した。 例 13.1. n I X k=1 n I X k=1 f (z) dz = 0 Ck f (z) dz = 2πi Ck n X k=1 Res f (z) z=zk 円 C : |z| = 2 に沿っての複素積分 I 4 − 3z dz 2 C z −z の値を求めてみよう。 与えられた被積分関数は 2 つの特異点 z = 0, 1 をもつので、留数定理より、 I 4 − 3z dz = 2πi Res f (z) + Res f (z) 2 z=0 z=1 C z −z が成り立つ。一方、定理 12.1 によれば、 4 − 3z 4 − 3z = lim = −4 , 2 z=0 z→0 z→0 z − 1 z −z 4 − 3z 4 − 3z = lim =1 Res f (z) = lim (z − 1) 2 z→1 z=1 z→1 z −z z Res f (z) = lim z である。よって、留数定理により、 I 4 − 3z dz = 2πi(−4 + 1) = −6πi . 2 C z −z – 25 – 例 13.2. 楕円 C : x2 + y2 = 1 に沿っての複素積分 32 I zeπz π/z dz + z e 4 C z − 16 の値を求めよう。 zeπz は 4 つの特異点 z = ±2, ±2i をもち、 z eπ/z は 1 つの特異 z 4 − 16 点 z = 0 をもつ。これら 5 つの特異点のなかで楕円 C の内部に含まれるのは、3 つの点 z = −2i, 0, 2i だけである事に注意する。一方、 解析関数 zeπz zeπz zeπz = = , z 4 − 16 (z 2 + 4)(z 2 − 4) (z + 2i)(z − 2i)(z 2 − 4) ∞ X π2 1 π3 1 1 π k π/z =z+π+ + +··· ze =z k! z 2 z 6 z2 k=0 なので、(12.2) と (12.1) より、 zeπz zeπz zeπz −2i e−2πi 1 = lim (z + 2i) = lim = =− 4 4 2 z=−2i z − 16 z→−2i z − 16 z→−2i (z − 2i)(z − 4) (−4i)(−8) 16 zeπz zeπz 2i e2πi 1 zeπz = lim (z − 2i) 4 = lim = =− , Res 4 2 z→2i z=2i z − 16 z − 16 z→2i (z + 2i)(z − 4) (4i)(−8) 16 π2 Res z eπ/z = z=0 2 Res が得られる。したがって、留数定理により、 I 1 zeπz 1 1 π2 2 π/z = π π − i + z e dz = 2πi − − + 4 16 16 2 4 C z − 16 が求まる。 問 13.1. I 次の複素積分の値を求めなさい。 z − 23 (i) dz , C1 : |z − 2| = 4 , 2 C1 z − 4z − 5 I ez (ii) dz , C2 : |z| = 2 , C2 cos z I z+1 1 (iii) dz , C3 : |z| = . 4 3 2 C3 z − 2z – 26 – #14 留数積分の応用 例 14.1(三角関数の積分). の値を求める。 留数定理を用いて、三角関数の積分 Z 2π dθ √ 2 − cos θ 0 z = eiθ とすると、 1 1 eiθ + e−iθ z+ , = 2 2 z となる事に注意する。さらに、 cos θ = sin θ = eiθ − e−iθ 1 1 z− = 2i 2i z dz deiθ = = ieiθ = iz dθ dθ が成り立つ事も記憶に止めておく。以上より、留数定理により、 I Z 2π dz 2 dθ √ √ √ =− i |z|=1 z − ( 2 + 1) (z − ( 2 − 1) 2 − cos θ 0 2 1 √ √ = − 2πi Res √ i z= 2−1 z − ( 2 + 1) (z − ( 2 − 1) 2 1 = − 2πi − = 2π . i 2 例 14.2(有理関数の無限積分). 次の有理関数の積分の値を求める: Z ∞ dx . 1 + x4 0 極形式を用いた簡単な計算より、解析関数 1/(1 + z 4 ) は 1 位の極を π z1 = e 4 i , z2 = e 3π 4 i , z2 = e 5π 4 i , z2 = e 7f π 4 i の 4 つの点でもつ事に注意する。実数 R > 0 に対して、線分と曲線 IR : −R ≤ Re z ≤ R , Im z = 0 , CR : |z| = R , を考える。このとき、積分の計算により、 I Z Z dz dz dz = + 4 4 4 IR ∪CR 1 + z IR 1 + z CR 1 + z Z π Z ∞ Z R Reiθ dθ dx dx + i −→ = 4 4 4θi 4 0 1+R e −∞ 1 + x −R 1 + x Im z ≥ 0 when R→∞. 一方、留数定理と (12.2) と L’Hospital の定理より、任意の R > 0 に対して、 I dz 1 1 = 2πi Res + Res 4 z=z1 1 + z 4 z=z2 1 + z 4 IR ∪CR 1 + z z − z1 π z − z1 = 2πi lim + lim =√ . z→z1 1 + z 4 z→z1 1 + z 4 2 √ よって、求める積分の値は π/(2 2) である。 – 27 – 例 14.3(Fourier 積分). Fourier 積分 Z +∞ −∞ cos sx dx k 2 + x2 の値を求める。 解析関数 cos sz/(k 2 + z 2 ) は z = ±k i で 1 位の極をもつので留数定理より、 Z IR eisz dz + k2 + z2 Z CR eisz e−ks π eisz dz = 2π i Res = 2π i = e−ks , 2 2 2 2 z=ki k + z k +z 2ik k ただし、IR と CR は 例 14.2 と同じ線分と曲線である。ここで、 R → ∞ とすれば、求め る積分値が πe−ks /k であると分かる。 例 14.4(Cauchy の主値積分). 複素積分を利用して、Cauchy の主値積分 pr.v. Z +∞ −∞ dx x3 の値を求める。 良く知られている様に、普通は pr.v. Z +∞ −∞ Z −ε dx Z +∞ dx dx 1 1 = lim − 2 + 2 = 0 = lim + 3 ε→0 ε→0 x3 x3 2ε 2ε ε −∞ x という手順で計算をする。複素積分を用いる計算は以下の様にする。実数 R > ε > 0 に対 して、曲線 Cε : |z| = ε , Im z ≥ 0 , CR : |z| = R , Im z ≥ 0 を考える。このとき、Cauchy の積分定理より、 Z −ε −R dz + z3 Z R ε dz = z3 Z Cε dz − z3 Z CR dz =i z3 Z 0 π dθ −i 2 ε e2θi Z π 0 dθ R2 e2θi なので、ここで R → ∞ とすれば、上述の普通の計算と同じ結果が従う。 問 14.1. 次の積分の値を求めなさい。 2π cos θ dθ (i) 3 + sin θ 0 Z +∞ sin 2x (ii) dx 2 −∞ x + x + 1 Z +∞ dx (iii) pr.v. 2 2 −∞ (x − 3x + 2)(x + 1) Z – 28 – #15 おわりに – 29 – 複素関数論 講義ノート 演習問題略解 ※ 以下の解答は単なる略式の解答例にしか過ぎません。完全な解答にするためには、 相当量の説明と計算を適宜挿入する必要があります。良い成績評価が欲しい人は、 解答例をより豊かな内容に発展させるように頑張りましょう。また、解答例とは異 なるオリジナルな解答をした人には、特別な高評価を与えたいと思います。 問 2.1. 公式 (2.5) を証明しなさい。 [ヒント] z = x + iy , z = x − iy と置いて、(2.5) の各式の右辺を計算してみる。 [解答] z+z x + iy + x − iy 2x = = = x = Re z , 2 2 2 x + iy − (x − iy) 2iy z−z = = = y = Im z , 2i 2i 2i zz = (x + iy)(x − iy) = x2 − ixy + iyx − (iy)2 = x2 + y 2 = |z|2 . 問 2.2. 方程式 z3 − 1 = 0 の3つの複素解をすべて求めなさい。 [ヒント] z 3 − 1 = (z − 1)(z 2 + z + 1) と因数分解して、2次方程式の解の公式を用いる。このとき、 i = る。あるいは、 z 3 = 1 , z = r(cos θ + i sin θ) √ −1 である事に注意す を de Moivre の公式を使って r 3 (cos 3θ + i sin 3θ) = (cos 2nπ + i sin 2nπ) , n = 0, ±1, ±2, ±3, · · · と書き直し、右辺と左辺を比較する事によって、 r = 1 と θ の3つの値を求める。 [解答] 因数分解を用いる解答: z 3 − 1 = (z − 1)(z 2 + z + 1) なので、 z3 − 1 = 0 ⇐⇒ z = 1 or – 30 – z2 + z + 1 = 0 である。上述の 2 次方程式を解の公式を用いて解けば、 √ √ −1 ± i 3 −1 ± −3 = . z= 2 2 よって、求める解は z=1, √ −1 ± i 3 . 2 極形式を用いる解答: z = r(cos θ + i sin θ) と置くと、de Moivre の公式より、 r 3 (cos 3θ + i sin 3θ) = (cos 2nπ + i sin 2nπ) . したがって、 r=1, θ = 0, 1 2π 言い替えれば、 cos ± 2π 3 = − 2 と sin ± 3 = ± z=1, 2π 2π , − , 3 3 √ √ 1 3 − +i , 2 2 3 2 より、 √ 3 1 − −i . 2 2 問 2.3. de Moivre の公式 (2.6) を省略無しに完全に証明しなさい。具体的には、数学的帰 納法に関する議論を完成させなし。 [解答] z = r(cos θ + i sin θ) なので、 z k = r k cos kθ + i sin kθ ならば、加法定理より、 z k+1 = r k+1 cos kθ + i sin kθ (cos θ + i sin θ) = r k+1 cos kθ cos θ + i cos kθ sin θ + i sin kθ cos θ − sin kθ sin θ = r k+1 cos kθ cos θ − sin kθ sin θ + i(sin kθ cos θ + cos kθ sin θ) = r k+1 cos(k + 1)θ + i sin(k + 1)θ , i.e., n = k のとき (2.6) が成り立てば n = k + 1 のときにも (2.6) は成り立つ。よって、 数学的帰納法により、証明が完了する。 – 31 – 問 3.1. Cayley 変換による第 1 象限 Re z > 0 , Im z > 0 の像を求めなさい。 [ヒント] z = iy と置いて虚軸 (Re z = 0) の像を調べてみる。 [解答] Cayley 変換 w= z−i z+i に z = iy を代入すると、 y−1 iy − i = iy + i y+1 w= が得られるので、 Re z = 0 (虚軸) ←→ Im w = 0 (実軸) であると分かる。さらに、 z = 1 + i を代入すると、 w= 1 1 − 2i = 1 + 2i 5 なので、Cayley 変換によって第 1 象限は単位円板の下半分に移ると分かる。 問 3.2. 単位円内部を下半平面に移す 1 次分数変換を求めなさい。 [ヒント] Cayley 変換の逆変換を利用するのも一つの手である。あるいは、定理 3.1 を使って も良いだろう。 [解答] Cayley 変換を用いる解答:Cayley 変換 w= z−i z+i を z に関して解けば、 w(z + i) = z − i , wz + iw = z − i , (w − 1)z = −i(w + 1) , w+1 z=− i. w−1 したがって、求める 1 次分数変換は ( ★) w= z+1 i. z−1 である。 – 32 – われわれの得た 1 次分数変換 (★) が、単位円板を下半平面に移す事を確認してみよう。 |z| = 1 , z = x + iy ならば、 z+1 w= i z−1 (z + 1)(z − 1) i = (z − 1)(z − 1) |z|2 − z + z − 1 = 2 i |z| − z − z + 1 −2iy = i 2 − 2x y . = 1−x したがって、 |z| = 1 (単位円周) Im w = 0 (実軸) . ←→ 一方、明かに z = 0 ならば w = −i なので、 |z| ≤ 1 (単位円板) ←→ Im w ≤ 0 (下半平面) であると分かる。 定理 3.1 を利用する方法:定理 3.1 より、 z1 = −1 , z2 = 0 , z3 = 1 をそれぞれ w1 = 0 , w2 = −i , w3 = ∞ に移す 1 次分数変換は w − w1 w2 − w3 z − z1 z2 − z3 . . = , w − w3 w2 − w1 z − z3 z2 − z1 w − 0 −i − ∞ z+1 0−1 . . = , w − ∞ −i − 0 z−1 0+1 w z+1 − =− , i z−1 z+1 i w= z−1 である。ただしここで、 問 3.3. ∞ 1 =0, = 1 として計算した。 ∞ ∞ 1 次分数変換 w= 1 z – 33 – が円周を円周に移すことを証明しなさい。 [解答] 中心 a, 半径 r > 0 の円周の方程式は |z − a| = r , (z − a)(z − a) = r 2 , zz − az − az + aa − r 2 = 0 , a a r 2 − |a|2 − − =0, z z zz 1 − aw − aw − (r 2 − |a|2 )ww = 0 , 1− (r 2 − |a|2 )ww + aw + aw − 1 = 0 , a a 1 w+ 2 ww + 2 w− 2 =0, 2 2 r − |a| r − |a| r − |a|2 a a r2 − =0, w + w+ 2 r − |a|2 r 2 − |a|2 (r 2 − |a|2 )2 r2 a a = , w + w+ 2 r − |a|2 r 2 − |a|2 (r 2 − |a|2 )2 a r w + 2 = 2 2 r − |a| r − |a|2 と変形できる。よって、証明が完了した。 – 34 – 問 4.1. 次のベキ級数の中心と収束半径を求めなさい。 ∞ X (i) (z − 1)n (ii) (iii) n=0 ∞ X 1 n z n! n=0 ∞ X z n+1 1 n(n + 1) 4 n=1 ∞ X (−1)n 2n+1 (iv) z (2n + 1)! n=0 (v) ∞ X n! (z + π)n n n n=0 [解答] (i) 与式より、 a=1, an = 1 である。したがって、d’Alembert の公式により、 an =1 n→∞ an+1 R = lim が得られる。 (ii) 題意より、 a=0, an = 1 n! なので、d’Alembert の公式より、 an (n + 1)! = lim = lim (n + 1) = ∞ n→∞ an+1 n→∞ n→∞ n! R = lim が従う。 (iii) 問題の式より、 a=0, なので、 an = 0 if n = 0 1 1 n(n + 1) 4n+1 if n = 1, 2, 3, · · · 1 (n + 1)(n + 2) 4n+2 an 1 1+ −→ 4 = =4 1+ an+1 n(n + 1) n n+1 4n+1 よって、d’Alembert の公式より、収束半径 R = 4 である。 – 35 – (n → ∞) . (iv) 問題の式より、 a=0, an = 0 if n = 2k (−1)k n! if n = 2k + 1 である。したがって、 n = 2k + 1 のとき、 √ 1 n p n! = n |an | である事に注意する。一方、積分の基本性質と部分積分法により、 log √ n log 1 + log 2 + log 3 + · · · + log n n Z n 1 ≥ log x dx n 1 in Z n 1h x log x − dx = n 1 1 n log n − (n − 1) = n 1 = log n − 1 + −→ ∞ (n → ∞) . n n! = 以上より、Cauchy-Hadamard の公式から、収束半径 R= lim n→∞ 1 p n |an | =∞ が従う。 (v) 問題の仮定より、 a = −π , an = n! nn である。一方、自然対数の底 e の定義より、 n! (n + 1)n+1 1 n an −→ e (n → ∞) . = n = 1+ an+1 n (n + 1)! n よって、d’Alembert の公式より、収束半径 R = e であると分かる。 – 36 – 問 5.1. 次の解析関数の導関数を求めなさい。 (i) (3z 2 + iz)2 iz + 2 (ii) 3z − 6i (iii) exp( iz 2 ) p (iv) z log z (v) arctan z [解答] (i) (3z 2 + iz)2 ′ = 2(3z 2 + iz)2−1 (3z 2 + iz)′ = 2(3z 2 + iz) (6z + i) = 2(6z + i)(3z 2 + iz) . (ii) iz + 2 ′ (iz + 2)′ (3z − 6i) − (iz + 2)(3z − 6i)′ = 3z − 6i (3z − 6i)2 i(3z − 6i) − 3(iz + 2) = (3z − 6i)2 0 = (3z − 6i)2 =0. (iii) exp( iz 2 ) ′ = exp( iz 2 ) (iz 2 )′ = 2iz exp( iz 2 ) . (iv) p ′ p p ′ z log z = (z)′ log z + z log z p z (log z)′ = log z + √ 2 log z p 1 = log z + √ 2 log z 2 log z + 1 = √ . 2 log z (v) w = arctan z と置くと、 z = tan w なので、 1 = (z)′ = ( tan w )′ = (1 + tan2 w) w′ , 1 1 . = w′ = 2 1 + z2 1 + tan w – 37 – 問 5.2. 初等解析関数の定義より Euler の公式 eiθ = cos θ + i sin θ を証明しなさい。 [解答] 指数関数と三角関数の定義より、 iθ e ∞ X (iθ)n = n! n=0 = = ∞ X (iθ)2k k=0 ∞ X k=0 ∞ X (iθ)2ℓ+1 + (2k)! (2ℓ + 1)! ℓ=0 ∞ X θ 2ℓ+1 θ +i (−1)ℓ (−1) (2k)! (2ℓ + 1)! k 2k ℓ=0 = cos θ + i sin θ . 問 5.3. 極形式を利用して等式 log z = log |z| + i arg z を証明しなさい。 [解答] 極形式 z = r(cos θ + i sin θ) , r = |z| , θ = arg z と Euler の公式より、 z = reiθ なので、 log z = log( reiθ ) = log r + log eiθ = log r + iθ = log |z| + i arg z . – 38 – 問 6.1. 「同様である」と省略せずに、定理 6.2 の証明を完成しなさい。 [解答] Cauchy-Riemann の方程式 uy = −vx ux = vy , より、 uyx = −vxx uxy = vyy , 得られる。この結果を偏微分の基本性質 uxy = uyx と合せれば、Laplace 方程式 vxx + vyy = 0 が従う。 問 6.2. 解析関数 f (z) = z 2 , z = x + iy の実部 u(x, y) と虚部 v(x, y) を求めて、それらに対して定理 6.1 と 6.2 が成り立つ事を検 算によって確認しなさい。 [解答] f (z) = z 2 = (x + iy)2 = (x2 − y 2 ) + 2ixy なので、 u(x, y) = x2 − y 2 , v(x, y) = 2xy である。したがって、直接計算により、 ux = 2x , vx = 2y , uy = −2y , vy = 2x , uxx = 2 , vxx = 0 , uyy = −2 , vyy = 0 . 定理 6.1 と 6.2 が成り立つ事が分った。 問 6.3. 解析関数 f (z) = log z , z = x + iy の実部 u(x, y) と虚部 v(x, y) を求めて、それらに対して定理 6.1 と 6.2 が成り立つ事を検 算によって確認しなさい。 [解答] 問 5.3 と (2.3) より、 f (z) = log z = log |z| + i arg z = y 1 log(x2 + y 2 ) + i arctan 2 x – 39 – なので、 u(x, y) = 1 log(x2 + y 2 ) , 2 v(x, y) = arctan である。したがって、直接計算により、 y x , uy = 2 , 2 +y x + y2 y x vx = − 2 , vy = 2 , 2 x +y x + y2 y 2 − x2 x2 − y 2 uxx = 2 , u = , yy (x + y 2 )2 (x2 + y 2 )2 2xy 2xy vxx = 2 , vyy = − 2 . 2 2 (x + y ) (x + y 2 )2 ux = x2 定理 6.1 と 6.2 が成り立つ事が分った。 – 40 – y x 問 7.1. 中心 a, 半径 r > 0 の円 |z − a| = r 上での (z − a)k の複素積分 I (z − a)k dz |z−a|=r を求めなさい。ただしここで、k は整数とする。 [解答] 中心 a, 半径 r > 0 の円は z = a + reiθ (0 ≤ θ ≤ 2π) と表される。したがって、定理 7.1 により、 Z I Z 2π k k kiθ iθ k+1 (z − a) dz = r e (ire ) dθ = r |z−a|=r 0 0 ところで、 Z (k+1)iθ ie dθ = よって、 I |z−a|=r 問 7.2. 2π if k = −1 iθ e(k+1)iθ k+1 (z − a)k dz = ( if k 6= −1 . 2πi if k = −1 0 if k 6= −1 . 複素平面上の放物線 C : y = x2 に沿っての複素積分 Z (0 ≤ x ≤ 1) z dz C を計算しなさい。 [解答] 問題の放物線は C : z(t) = t + it2 (0 ≤ t ≤ 1) と媒介変数表示されるので、定理 7.1 より、 Z Z 1 z dz = (t + it2 )(1 + 2it) dt C 0 = Z 1 (t + it2 + 2it2 − 2t3 ) dt 0 = Z 0 1 3 (t − 2t ) dt + i h t2 4 Z 0 t i1 3 1 = − + t 0 2 2 0 =1. – 41 – 1 3t2 dt i e(k+1)iθ dθ . 問 7.3. 中心 0, 半径 π の半円 C : |z| = π , 上での複素積分 Z Re z ≥ 0 cos z dz C を求めなさい。 [解答] 問題の半円は iθ C : z(θ) = πe π π − ≤θ≤ 2 2 と媒介変数表示されるので、定理 7.1 より、 Z cos z dz = Z = Z = Z C h π/2 −π/2 π/2 ′ cos(π eiθ ) πeiθ dθ π i eiθ cos(π eiθ ) dθ −π/2 π/2 ( sin(π eiθ ) )′ dθ −π/2 iθ = sin(π e ) i π/2 −π/2 = sin(π i) − sin(−π i) = 2 sin(π i) = 2i sinh π . 注意. eiz − e−iz 2i −z ez − e−z e − ez = i = i sinh z . sin iz = 2i 2 sin z = – 42 – 問 8.1. 単連結ではない領域の例を二つ以上挙げなさい。また、その例がどうして単連結 ではないのかを詳しく説明しなさい。 [解答] D1 = D2 = 問 8.2. 2 つの円 1 < |z| < 2 , |z| < 4, |z − 2| > 1, |z + 2| > 1 C1 : |z − i| = 1 , に対して、2 つの複素積分 I C1 dz , z2 + 1 . C2 : |z + i| = 1 I C2 dz z2 + 1 をそれぞれ計算しなさい。 [解答] 初めに、 1 1 1 1 1 = = − z2 + 1 (z + i)(z − i) 2i z − i z + i である事に注意する。したがって、Cauchy の積分定理と (7.3) より、 I I 問 8.3. C1 C2 I dz dz 1 = −0 =π , 2 z +1 2i |z−i|=1 z − i I dz 1 dz =0− = −π . 2 z +1 2i |z+i|=1 z + i 楕円 C : に沿っての複素積分 を計算しなさい。 (x − 1)2 + y2 = 1 4 I 1 1 dz + z−2 C z [解答] Cauchy の積分定理と (7.3) より、 I I I dz dz 1 1 dz = + + = 2πi + 2πi = 4πi . z−2 |z|=1 z |z−2|=1 z − 2 C z – 43 – 問 9.1. 解析関数 g(z) = の複素積分 I z2 + 1 z2 − 1 g(z) dz |z+1|=1 を計算しなさい。 [解答] z2 + 1 f (z) = z−1 と置いて、Cauchy の積分公式を用いれば、 I g(z) dz = |z+1|=1 問 9.2. I |z+1|=1 f (z) dz z+1 = 2πif (−1) = −2πi . 複素積分 I |z+i|=1 z 4 − 3z 2 + 6 dz (z + i)3 を計算しなさい。 [解答] f (z) = z 4 − 3z 2 + 6 と置き、定理 9.2 (a = −i, n = 2 の場合) を利用すれば、 I |z+i|=1 f (z) 2! dz = πi (z + i)3 2πi ′′ I |z+i|=1 f (z) dz (z + i)3 = πi f (−i) = πi (12z 2 − 6)|z=−i = πi (−12 − 6) = −18πi . – 44 – 問 10.1. 逆三角関数 g(z) = arctan z を Maclaurin 展開しなさい。 [解答] 逆三角関数の微分の公式と等比級数の和の公式より、 ∞ X 1 g (z) = = (−1)n z 2n 1 + z2 n=0 ′ なので、 g ′ (z) = 1 − z 2 + z 4 − z 6 + z 8 − z 10 + · · · が従う。この結果の両辺を z で積分すれば、求める Maclaurin 展開 g(z) = z − z5 z7 z9 z 11 z3 + − + − +··· 3 5 7 9 11 が得られる。 問 10.2. 有理関数 h(z) = を z = 1 で Taylor 展開しなさい。 2z 2 + 9z + 5 z 3 + z 2 − 8z − 12 [解答] h(z) を部分分数分解する事により h(z) = 2z 2 + 9z + 5 1 2 = + . 3 2 2 z + z − 8z − 12 (z + 2) z−3 が得られる。一方、等比級数の和の公式と微分の計算より、 ∞ ∞ 1 X 1 − z n X (−1)n 1 1 1 = = = (z − 1)n , n+1 1 − z z+2 3 1− 3 n=0 3 3 n=0 3 ∞ ∞ X X 1 (−1)n n (−1)m+1 (m + 1) n−1 − = (z − 1) = (z − 1)m , (z + 2)2 3n+1 3m+2 n=1 ∞ X m=0 (−1)m (m + 1) 1 = (z − 1)m , (z + 2)2 m=0 3m+2 ∞ ∞ X X 1 2 1 z − 1 n =− =− =− (z − 1)n . n z − 1 z−3 2 2 1− 2 n=0 n=0 以上より、求める Taylor 展開 h(z) = ∞ X (−1)n (n + 1) n=0 が得られる。 3n+2 – 45 – − 1 (z − 1)n 2n 問 11.1. 解析関数 g(z) = を 2 つの円環領域 0 < |z| < 1 , z3 1 − z4 1 < |z| < ∞ のそれぞれで収束する Laurent 級数に展開しなさい。 [解答] 等比級数の和の公式より、 ∞ X 1 = zn 1−z n=0 (|z| < 1) , ∞ ∞ X −1 1 1 X 1 1 1 =− =− = n 1−z z 1 − (1/z) z n=0 z zm m=1 (|z| > 1) が得られる事に注意する。一方、仮定より、 g(z) = 1 1 . 3 z 1−z 以上より、 ∞ ∞ ∞ X 1 X n X n−3 z = z = zm g(z) = 3 z n=0 n=0 m=−3 (0 < |z| < 1) , ∞ ∞ ∞ X X −1 −1 1 X −1 = = g(z) = 3 m m+3 z m=1 z z zℓ m=1 ℓ=4 問 11.2. 解析関数 h(z) = cos z (z − π)2 を z = π を中心とする円環領域で Laurent 展開しなさい。 [解答] (cos z)′ = − sin z , (cos z)′′ = − cos z , (cos z)′′′ = sin z , (cos z)′′′′ = cos z なので、 (cos z)(4k+1) = − sin z , (cos z)(4k+2) = − cos z , (cos z)(4k+3) = sin z , (cos z)(4k+4) = cos z , – 46 – (1 < |z| < ∞) . (cos z)(4k+1) |z=π = − sin π = 0 , (cos z)(4k+2) |z=π = − cos π = 1 , (cos z)(4k+3) |z=π = sin π = 0 , (cos z)(4k+4) |z=π = cos π = −1 . したがって、Taylor の定理により、 cos z = ∞ X (−1)n+1 n=0 (z − π)2n . (2n)! この結果の両辺を (z − π)2 で割れば、 h(z) = ∞ X n=0 (−1)n+1 ∞ X (z − π)2m (z − π)2(n−1) = (−1)m . (2n)! (2(m + 1))! m=−1 – 47 – 問 12.1. (i) (ii) (iii) (iv) 次の解析関数の特異点の留数をすべて求めなさい。 4 1 + z2 1 2 (z − 1)2 sin 2z z6 2 1/z z e [ヒント] (iii), (iv) では、Taylor 展開 z3 z5 z7 z9 z 11 + − + − +··· , 3! 5! 7! 9! 11! z2 z3 z4 z5 z6 ez = 1 + z + + + + + +··· 2! 3! 4! 5! 6! sin z = z − を利用する。 [解答] (i) 与えられた解析関数 f (z) = 4 4 = 2 1+z (z + i)(z − i) は z = ±i で 1 位の極をもつ。したがって、定理 12.1 より、 4 2 4 = = = −2i , z=i z→i z→i z + i 2i i 4 4 2 Res f (z) = lim (z + i)f (z) = lim = = = 2i . z=−i z→−i z→−i z − i −2i −i Res f (z) = lim (z − i)f (z) = lim (ii) 与えられた解析関数 g(z) = (z 2 1 1 = 2 2 − 1) (z + 1) (z − 1)2 は z = ±1 で 2 位の極をもつ。したがって、定理 12.1 より、 Res h(z) = lim (z − 1)2 h(z) z=1 z→1 Res h(z) = lim z=−1 z→−1 ′ (z + 1)2 h(z) 1 = lim −2(z + 1)−3 = − , z→1 4 1 ′ (z − 1)−2 = lim −2(z − 1)−3 = , z→−1 4 = lim (z + 1)−2 ′ z→1 = lim z→−1 ′ (ii) Taylor の定理から、 (2z)3 1 (2z)5 (2z)7 (2z)9 (2z)11 sin 2z 2z − = + − + − + · · · z6 z6 3! 5! 7! 9! 11! – 48 – なので、(12.1) より、 Res z=0 あるいは、 sin 2z 25 4 = b = = . 1 6 z 5! 15 sin 2z は z = 0 で 5 位の極をもつので、定理 12.1 より、 z6 ′′′′ 23 z 2 1 25 z 4 27 z 6 29 z 8 211 z 10 1 5 sin 2z ′′′′ z 2 − + − + − + · · · = lim z→0 4! z→0 4! z6 3! 5! 7! 9! 11! 5 4 4! 2 = . = 4! 5! 15 lim (iii) Taylor の定理から、 2 1/z z e ∞ ∞ X 1 1 n X 1 2−n =z = z n! z n! n=0 n=0 2 なので、(12.1) より、 Res z 2 e1/z = b1 = z=0 1 1 = . 3! 6 z = 0 は z 2 e1/z の真性特異点なので、定理 12.1 は使えない。 – 49 – 問 13.1. I 次の複素積分の値を求めなさい。 z − 23 (i) dz , C1 : |z − 2| = 4 , 2 C1 z − 4z − 5 I ez dz , C2 : |z| = 2 , (ii) C2 cos z I z+1 1 (iii) dz , C3 : |z| = . 4 3 2 C3 z − 2z [解答] (i) 解析関数 f (z) = z − 23 z − 23 = z 2 − 4z − 5 (z + 1)(z − 5) は、 z = −1, 5 で 1 位の極をもち、しかも |z − 2| < 4 at z = −1 , 5 である。 したがって、留数定理と 定理 12.1 より、 I z − 23 dz = 2πi Res f (z) + Res f (z) 2 z=−1 z=5 C1 z − 4z − 5 = 2πi lim (z + 1)f (z) + lim (z − 5)f (z) z→−1 z→5 z − 23 z − 23 + lim 2πi lim z→5 z + 1 z→−1 z − 5 24 18 = 2πi − 6 6 = 2πi . (ii) 解析関数 g(z) = は z=± π で 1 位の極をもち、かつ 2 cz cos z π 2 である。したがって、留数定理と L’Hospital の定理より、 I ez dz = 2πi lim (z + π/2) g(z) + lim (z − π/2) g(z) z→−π/2 z→π/2 C2 cos z z (z + π/2)e (z − π/2)ez = 2πi lim + lim cos z cos z z→−π/2 z→π/2 z z ez + (z − π/2)ez e + (z + π/2)e + lim = 2πi lim − sin z − sin z z→π/2 z→−π/2 = 2πi e−π/2 − eπ/2 π = −4πi sinh . 2 |z| < 2 at z = ± – 50 – (iii) 解析関数 h(z) = z+1 z+1 = z 4 − 2z 3 z 3 (z − 2) は z = 0, 2 にそれぞれ 3, 1 位の極をもち、かつ |z| < 1 2 at z = 0 である。したがって、留数定理と定理 12.1 より、 I C3 z+1 dz = 2πi Res h(z) z=0 − 2z 3 z4 ′′ = πi lim z 3 h(z) z→0 z + 1 ′′ = πi lim z→0 z − 2 6 = πi lim z→0 (z − 2)3 3π i. =− 4 – 51 – 問 14.1. 次の積分の値を求めなさい。 2π cos θ dθ (i) 3 + sin θ 0 Z +∞ sin 2x (ii) dx 2 −∞ x + x + 1 Z +∞ dx (iii) pr.v. 2 2 −∞ (x − 3x + 2)(x + 1) Z [解答] (i) z = eiθ と置くと、 1 1 iθ e + e−iθ = z + z −1 , 2 2 1 1 iθ sin θ = e − e−iθ = z − z −1 2i 2i cos θ = なので、 cos θ (z + z −1 )/2 (z + z −1 ) (z + z −1 ) = = = 3 + sin θ 3 + (z − z −1 )/(2i) 6 + (z − z −1 )/i 6 − (z − z −1 )i i(z 2 + 1) z2 + 1 = = 6z − iz 2 + i z 2 − 6iz − 1 となる事に注意する。さらに、 i 1 dz = ieiθ = iz , dθ = dz = − dz dθ iz z となる事にも注意する。したがって、問題の積分を Z 2π I I cos θ z2 + 1 z2 + 1 dθ = i dz = i dz 2 3 + sin θ 0 |z|=1 z(z − 6iz − 1) |z|=1 z(z − z1 )(z − z2 ) と複素積分に書き換える事が出来る。ただしここで √ √ z1 = (3 − 8)i , z2 = (3 + 8)i したがって、留数定理と定理 12.1 と z1 z2 = −1 より、 I z2 + 1 z2 + 1 z2 + 1 dz = 2πi Res + Res z=z1 z(z − z1 )(z − z2 ) z=0 z(z − z1 )(z − z2 ) |z|=1 z(z − z1 )(z − z2 ) z2 + 1 z2 + 1 + lim = 2πi lim z→z1 z(z − z2 ) z→0 (z − z1 )(z − z2 ) 1 z12 + 1 = 2πi + z1 z2 z1 (z1 − z2 ) 1 z1 + 1/z1 = 2πi + z1 z2 z1 − z2 z1 − z2 = 2πi −1 + z1 − z2 =0. – 52 – よって、 Z 2π 0 cos θ dθ = 0 . 3 + sin θ (ii) 最初に、 √ −1 − 3 i z2 = 2 √ −1 + 3 i , z1 = 2 2 z + z + 1 = (z − z1 )(z − z2 ) , である事に注意する。次に、 R > 0 に対して、以下の線分 IR と半円 CR を考える: IR : −R ≤ Re z ≤ R , CR : |z| = R , Imz = 0 , Imz ≥ 0 . このとき、留数定理と定理 12.1 より、 I IR ∪CR e2iz e2iz dz = 2πi Res z=z1 z 2 + z + 1 z2 + z + 1 = 2πi lim z→z1 e2iz z − z2 √ e−i− 3 = 2πi √ 3i √ 3 2πe− = √ 3 e−i . よって、ここで R → ∞ とすれば、 Z IR e2iz dz −→ z2 + z + 1 Z +∞ −∞ e2ix dx , x2 + x + 1 なので、 Z +∞ −∞ Z CR e2iz dz −→ 0 z2 + z + 1 √ 3 sin 2x 2πe− √ dx = − x2 + x + 1 3 sin 1 ≈ −0.54005535697422 · · · が得られる。 (iii) 簡単のために f (z) = (x2 1 − 3x + 2)(x2 + 1) と置く。最初に、 f (z) = 1 (z − 1)(z − 2)(z + i)(z − i) – 53 – に注意する。 z = 1, 2, i, −i が f (z) の 1 位の極である事が分かる。次に、 R > 2 , 0 < ε < 1 に対して、以下の線分と半円を考える: (1) IR,ε : −R ≤ Re z ≤ 1 − ε , Cε(1) : |z − 1| = ε , (2) IR,ε Im z = 0 , Im z ≥ 0 , : 1 + ε ≤ Re z ≤ 2 − ε , Cε(2) : |z − 2| = ε , (3) Im z ≥ 0 , IR,ε : 2 + ε ≤ Re z ≤ R , CR : |z| = R , Im z = 0 , Im z = 0 , Imz ≥ 0 . このとき、留数定理より、 Z Z dz dz − 2 2 2 2 (1) (1) IR,ε (z − 3z + 2)(z + 1) Cε (z − 3z + 2)(z + 1) Z Z dz dz − + 2 2 2 2 (2) (2) Cε (z − 3z + 2)(z + 1) IR,ε (z − 3z + 2)(z + 1) Z Z dz dz + + 2 2 2 2 (3) (z − 3z + 2)(z + 1) I CR (z − 3z + 2)(z + 1) R,ε = 2πi Res f (z) , z=i Z Z R dz dx + pr.v. 2 2 2 2 CR (z − 3z + 2)(z + 1) −R (x − 3x + 2)(x + 1) Z Z dz dz = lim + 2 2 2 2 ε→0 I (z − 3z + 2)(z + 1) CR (z − 3z + 2)(z + 1) R,ε = 2πi Res f (z) z=i Z Z dz dz + lim + lim ε→0 C (2) (z 2 − 3z + 2)(z 2 + 1) ε→0 C (1) (z 2 − 3z + 2)(z 2 + 1) ε ε = 2πi Res f (z) z=i I I 1 dz dz 1 + lim + lim 2 2 2 2 ε→0 |z−1|=ε (z − 3z + 2)(z + 1) 2 ε→0 |z−2|=ε (z − 3z + 2)(z 2 + 1) = 2πi Res f (z) + πi Res f (z) + πi Res f (z) , z=i ここで z=1 z=2 (1) (2) (3) IR,ε = IR,ε ∪ IR,ε ∪ IR,ε . 上で得られた結果の最後 2 つの等式を導くには、留数の定義と次の計算結果を用いる: Z I Z π Z dz d(1 + εeiθ ) 1 2π d(1 + εeiθ ) 1 dz = = πi = = , iθ iθ (1) z − 1 εe 2 0 εe 2 |z−1|=ε z − 1 0 Cε Z I Z π Z dz d(2 + εeiθ ) 1 2π d(2 + εeiθ ) 1 dz = = πi = = . iθ iθ (2) z − 2 εe 2 0 εe 2 |z−2|=ε z − 2 0 Cε – 54 – したがって、 R → ∞ とすれば、 Z CR (z 2 dz −→ 0 − 3z + 2)(z 2 + 1) なので等式 pr.v. Z +∞ −∞ (x2 dx = 2πi Res f (z) + πi Res f (z) + πi Res f (z) z=1 z=2 z=i − 3x + 2)(x2 + 1) が従う。 一方、定理 12.1 より、 1 1 1 + 3i 3−i = = = , z=i z→i z→i (z + − 3z + 2) 2i(1 − 3i) 20i 20 1 1 =− , Res f (z) = lim (z − 1)f (z) = lim 2 z=1 z→1 z→1 (z + 1)(z − 2) 2 1 1 = . Res f (z) = lim (z − 2)f (z) = lim 2 z=2 z→2 z→2 (z + 1)(z − 1) 5 Res f (z) = lim (z − i)f (z) = lim i)(z 2 以上より、 pr.v. Z +∞ −∞ 1 dx 1 3−i + πi = 2πi + πi − 2 2 (x − 3x + 2)(x + 1) 20 2 5 π 5πi 2πi 3πi + − + = 10 10 10 10 π . = 10 – 55 –
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