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US Trends
ガイダンスが効き過ぎるのも困り者
発表日:2014年9月9日(火)
~9月FOMCでガイダンスを修正へ~
第一生命経済研究所 経済調査部
主席エコノミスト 田中 理
03-5221-4527
◇ サンフランシスコ連銀が公表した調査レポートでは、予測専門家のサーベイや先物金利から計算した
FF金利の予想水準がFOMC参加メンバーの予想を下回っている点に着目、金融市場がFRBの利
上げペースを過小評価している可能性を指摘した。
◇ FRB高官からは、資産買入終了後も相当な期間に亘って政策金利の据え置きを約束するフォワード
ガイダンスの文言修正が必要との発言が相次ぐ。9月FOMCでは、ガイダンスの文言修正や出口戦
略が議論されるとみられ、利上げペースについて市場の期待修正が図られよう。
8日の米国債市場では、予測専門家や市場参加者がFRBの利上げペースを過小評価している可能性を
指摘したサンフランシスコ連銀の調査レター(Christensen, Jens H.E., and Kwan, Simon, “Assesing
Expectations of Monetary Policy”, FRBSF Economic Letter 2014-27, http://www.frbsf.org/economicresearch/publications/economic-letter/2014/september/assessing-expectations-monetary-policy/ )
が関心を集めた。
同レターでは、①ブルーチップが集計する予測専門家によるFFレートのコンセンサス予想(8月の集
計結果、集計期間は7月23-24日)、②NY連銀が集計するプライマリーディーラーによるFFレートの中
央(メディアン)予想(7月21日時点の集計結果)、③FFレートの先物金利から計算した市場参加者の
FF金利の平均予想(7月30日付けの先物金利)、④ユーロドル金利先物から計算した市場参加者のFF
金利の平均予想(7月21日時点の集計結果)、⑤金利のゼロ制約と分布の非対称性を考慮に入れた期間構
造モデルから計算したFFレートの平均予想と中央予想を比較し、いずれもFOMC参加メンバーによる
6月時点の中央予想を下回っていることを示し、将来の金融政策に関するFRBのフォワードガイダンス
が誤って解釈されている可能性を指摘した。
また、データのバラツキの大きさを示す統計量の1つである四分位範囲(将来のある時点におけるFF
金利の予想分布について、分布の小さい方から25%目の金利予想と75%目の金利予想との差)を比較し、
プライマリーディーラー予想の方がFOMC参加メンバー予想よりもバラツキが小さいことに着目。市場
参加者が政策関係者よりもFF金利予想の不確実性を低く考えていることを指摘した。
図表1は同レターから転載したものだが、プライマリーディーラーによるFFレートの中央予想が2015
年末に0.75%、2016年末に2.13%で、これはFOMC参加メンバーの中心予想(2015年末に1%、2016年
末に2.5%)を下回る。また、プライマリーディーラー予想の四分位範囲(緑色の点線と破線の差)とFO
MC参加メンバー予想の四分位範囲(○印と+印の差)では、前者が後者よりも小さいことが見て取れる。
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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(図表1)予測サーベイが示唆するFF金利予想
出所:サンフランシスコ連銀の調査レターより転載
図表2も同レターから転載したものだが、FF先物金利が示唆する将来のFF金利の予想水準は、2015
年末時点でFOMC参加メンバー予想の第1分位(下位25%)と第2分位(下位50%)の間にあるが、
2016年末時点では第1分位(下位25%)未満にある。時間の経過とともに、市場参加者がFRBの利上げ
ペースを過小評価している様子が窺える。また、期間構造モデルからFFレートの平均予想を推定すると、
金利がゼロに近い水準では確率分布が歪んでいることが考えられ(一般に金利はゼロ以下にならないこと
が想定されるため)、この点を加味したFFレートの中央予想はさらに低くなり、2015年末・2016年末時
点ともに第1分位(下位25%)未満にある(図表2の破線)。
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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(図表2)先物金利と期間構造モデルが示唆するFF金利予想
出所:サンフランシスコ連銀の調査レターより転載
FRBは現在フォワードガイダンスを通じて、「資産購入プログラムの終了後も、相当な期間に亘って
現在のFF金利の誘導レンジを維持することが適切である」との方針を表明している。だが、最近のFR
B高官の発言からは、早ければ9月16・17日のFOMCにおいて、フォワードガイダンスの文言に修正が
加えられる可能性が示唆される。例えば、FRBのコミュニケーション戦略の作業部会メンバーであるパ
ウエル理事は5日、ガイダンスの見直しが必要との趣旨の発言をしている。今回のサンフランシスコ連銀
の調査レターもガイダンス修正に向けた布石と見られる。10月にも資産購入プログラムの終了を控え、9
月FOMCではガイダンスを修正するとともに、出口戦略についての議論もさらに本格化することが予想
される。イエレンFRB議長は先月のジャクソンホール会合で、労働市場にはまだかなりの緩み(スラッ
ク)が残っていることを強調する一方で、労働市場とインフレ率が予想よりも加速する場合、早期に利上
げを行う可能性も排除しなかった。議長は引き続き慎重な政策コミュニケーションを続ける意向と見られ
るが、9月のFOMCでは先行きの利上げペースについて市場の期待修正が図られよう。
以上
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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