スペインでダブル再選挙の予感 ~視界不良な年越し

EU Trends
スペインでダブル再選挙の予感
発表日:2015年12月28日(月)
~視界不良な年越し~
第一生命経済研究所 経済調査部
主席エコノミスト 田中 理
03-5221-4527
◇ スペインからの独立を目指すカタルーニャ州では9月末の州議会選挙後も新たな州首相の選出が出来
ずにいる。再任を目指すマス現州首相は、独立派の左派政党に協力を求めているが、同党内の意見は
真っ二つに割れている。1月9日までに新たな州首相が選出できない場合、来年3月にも再選挙が行
なわれることになる。国政レベルでも12月20日の総選挙後の政権発足が難航しており、来春にダブル
選挙となる可能性が高まってきた。
12月20日の総選挙後の政権発足が難航するスペインに、新たな政局の不透明要素が加わった。同国から
の独立の動きを強めるカタルーニャ州では、9月末の議会選挙で独立賛成派の獲得議席が過半数を上回っ
たが、選挙後3ヶ月を経た今も州首相の選出が出来ずにいる。独立賛成派の統一会派「ともにイエス
(Junts pel Sí)」を率いるマス現州首相が再任を目指しているが、同州の独立に反対する野党勢に加え、
統一会派に加わらなかった強硬な独立派の「州民連合の候補(CUP)」が同氏再任での協力を拒んでい
る。「ともにイエス」の獲得議席は62と定数135の州議会の過半数に6議席届かず、政権発足には10議席を
持つ独立賛成派のCUPの閣外協力が必要となる。11月に2回行なわれた議会投票でCUPはマス州首相
の再任に反対したほか、12月27日の党員投票では同氏の再任に賛成/反対する票が同数となり、党内は真っ
二つに割れている。マス州首相は統一会派を構成する中道右派政党「カタルーニャ民主集中(CDC)」
を率いており、その経済政策運営や汚職疑惑を巡って、左派のCUPはこれまで距離を置いてきた。18ヶ
月以内の州独立を目指すマス州首相はCUPの協力を得るため、社会支出の拡大や州首相の権限を弱める
行政改革などを約束しているが、CUP内には引き続き不満の声が燻っている。州議会規則では1月9日
までに次期州首相を選出できなければ、州議会を解散し、再選挙が必要となる。CUPは1月2日にマス
州首相を支持するかを巡って再協議をするとしており、その帰趨に注目が集まる。マス州首相の再任支持
でCUP内の意見がまとまらねければ、来年3月にも再選挙が行なわれることになろう。このまま州首相
の選出が出来ずに独立賛成派の求心力が削がれることになれば、スペインの分裂リスクは低下する。他方、
再選挙後に独立賛成派が安定過半数を確保すれば、独立に向けた動きを一層強めることになる。この間、
国政レベルでも先の総選挙が明確な勝者のいない結果に終わり、政権発足を巡る連立協議は早くも暗礁に
乗り上げている。安定政権の発足は困難で、政権発足ができないまま再選挙となるシナリオの確率が増し
ている(詳しくは12月21日付けレポート「暗雲漂うスペイン政局
~連立協議の難航で高まる再選挙のリ
スク~」を参照されたい)。来春にかけてスペインの将来を占うダブル再選挙が行なわれる可能性が高ま
ってきた。
以上
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