CS・顧客ロイヤルティ向上の考え方

編集・発行 三井住友銀行グループ・SMBCコンサルティング株式会社
2014.9.16 第 1410 号
SMBC経営懇話会
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【顧客満足度向上のための】
CS・顧客ロイヤルティ向上の考え方
株式会社リクルートライフスタイル
企画統括室 CS推進部 CS2グループ
グループマネジャー 山田修司
1. 「クレームとはお客様の当社に対する関心の表れである。よって当社にとってクレームは必要である」
ことを、より理解して臨みましょう。
2. CS(Customer Satisfaction=顧客満足向上)で大事なことは、CSを実践する部門の担当者の「気持
ち」と、経営「意志」との距離を縮めることです。
3. 顧客接点の最前線にいる従業員に対し、自社が大切にしており、世の中に提供していきたい価値を、
何度も繰り返し伝えていくことが、顧客ロイヤルティを高める上でもっとも効果的な手法です。
1.クレーム対応の基本
(1)クレームとは何か?
自社にとっての「クレームの定義」を決めている企業は少ないのではないでしょうか。自社製品やサービスに対
する非難や要望、このような捉え方が一般的かもしれません。自社にとって、顧客からのクレームは必要なのか、
不要なのか。そして、ありがたいことなのか、忌避すべきことなのか。ISOなどの基準を取沙汰する前に、まずは
この質問に対する企業としての覚悟を決めることが、お客様相談部門もしくはCS部門における、もっとも原理的
かつ原始的で必要不可欠な決定事項です。
(2)経営者の意志表示がCS部門を動かす
「クレームとはお客様の当社に対する関心の表れである。よって当社にとってクレームは必要である」。この、
極めてシンプルな、経営による意志表示=ステートメントこそが、CS部門を突き動かす原動力になり得ることを、
すべての経営者は意識しなければなりません。そして、CS部門におけるKPI(Key Performance Indicator=重要
業績評価指標)や、他のあらゆる指標、例えば生産性や効率、回答品質や回答スピード、VOC(Voice Of
Customer=顧客の声)活用などは、そのステートメントの前に忠実かつ矛盾のない数値を設定するべきです。な
ぜならば、コンタクトセンターの現場におけるほとんどの混乱、すなわち顧客対応における一貫性や公平性の欠
如、KPIの未達成、職場のモチベーション低下などは、元の原因をたどれば 100%間違いなく、この経営意志の
薄弱さを原因としているからです。
会社の看板を背負って顧客クレームの矢面に立ち、時に過剰要求にさらされ、罵詈雑言を浴びせられつつも
顧客に対する自社のメッセージを正しく伝え、顧客の声を経営に反映させようと試みる、そんなCS部門の従業
員の心の支柱こそが、経営による「クレーム」の捉え方であることを、経営者は決して忘れてはいけないでしょう。
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2.CS向上への第一歩
(1)自社にとってのCSとは何か
自社にとっての「CSの定義」を決めている企業も少ないように思います。「顧客の満足度を高めるために、
顧客の声を商品やサービスに反映させること」、このような捉え方が一般的なのかもしれません。多くの企業
は、売上や利益と直結した自社に「短期的な利益をもたらすための戦略であり戦術」としてCSを捉えているよ
うにも思います。
一方で、CSを事業の継続性に貢献する顧客との「長期的で安定的な関係性を作るための戦略であり戦
術」と考えている企業も存在します。これはどちらが良くてどちらが悪いというものではありません。しかし、概
して前者のCSは利益と直結しているため、その時々の景況感によって経営意志が揺らぎを見せるのに対し、
後者のCSは企業ブランドの維持確保につながるものであり、多少の景気変動には左右されないようです。
(2)CS部門の「気持ち」と経営者の「意志」
このとき大切なのは、企業が決めたCSの戦略に基づいて、肝心なCS(=お客様が喜ぶ施策)を実践する
CS部門の担当者のマインド=気持ちであると考えます。「状況に応じて対応する。今はこんなに手厚い対応
をしているけれど、景気が悪くなればきっとここまではできません。それが私たちの会社です」という対応と「状
況には左右されない。どんな場面であっても、やるべきことはやるし、やらないことはやらない。それが私たち
の会社です」という対応。会社の代表として顧客と対峙するCS部門の当事者を、どんな「気持ち」で現場に立
たせるか。この「気持ち」と、経営者の「意志」の距離感こそが、その企業の CS を形作っているもののすべてだ
と思います。
したがって、経営者が企業の CS を高めようとする時、まず取り組まなければいけない事は、自身が考える
CS の在り様を、CS 部門を含めた全従業員に対してしっかりと語り続けていくことであり、何度も諦めず発信し
続けること以外にはありません。経営者が作らなければならないのは、従業員の「気持ち」であり、経営者が取
り組まなければいけない CS 上の最優先課題は、経営「意志」と従業員の「気持ち」の距離を縮めることです。
3.従業員が顧客ロイヤルティを生み出す
顧客ロイヤルティとは何か? この質問に答えられる経営者がどれほどいるでしょうか。自社の商品やサービス
に対し顧客が忠誠心を表し、「この会社から買いたい」「この会社の商品でなければ嫌だ」と思ってもらえる会社。
物もサービスも溢れ、すべてがコモディティ化していく市場の中で、顧客ロイヤルティを作り出し、維持していくこ
とは、生半可な努力では実現できませんし、企業規模の大小で作りやすさが異なるものでもありません。
では、そのような熱狂的な顧客を作るために経営者にできる努力にはどんなことがあるのでしょうか。それは、
やる気のある従業員を作ること、それ以外にはあり得ません。
資本主義の発達によってあらゆる工業製品は大量生産が可能になり、クラウド下における Web マーケティング
の世界において、あらゆるIT技術がたちまち独自性をなくしていく時代。このような環境下において、唯一無二
のオリジナルを発揮し得るのは(商品の品質が一定基準より高い前提でいえば)、もはや極めてアナログな感性
である「誰の」商品か、「誰から」買うか、その「誰か」は「どんな人」なのか、を際立たせていくこと以外にないと考
えます。そして、その「誰か」とは、経営者本人ではなく、経営者に代わり顧客接点の最前線で自社の在り様を体
現する従業員に他なりません。
従業員の働く姿=その企業の最大の資産と捉えること。そして、自社が大切にし、世の中に提供していきたい
価値を、花に水を与えるように、何度も繰り返し伝えていくこと。そうした経営者の営みこそが、顧客ロイヤルティ
を高めるために、もっとも直接的かつ効果的な手法であることに、経営者は気づかなければなりません。
熱狂的な従業員だけが、熱狂的な顧客を作ることができる。これこそが顧客ロイヤルティ向上の真実でしょう。
【本稿に関するご照会窓口】 SMBCコンサルティング・法人サービス開発部 TEL:0120-7109-49
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