関数空間を調べるということ 慶應義塾数理科学科 2 年 紅村 冬大 ∗ 2014/5/31 1 Banach 空間 1.1 初めに 数列や方程式を考える際, 実数 R の性質を知っていることが不可欠であった. 同様に, 関数列や微分方程式を 扱うには「関数からなる集合」の性質を知る事が不可欠である. 本稿では適当な「関数からなる集合」の構造 を線形構造の視点から調べ, それが「関数空間」と呼ぶに相応しいことを確かめる. その後で関数空間の性質を 用いて関数列や微分方程式に関する定理を証明する. 本稿で扱う関数空間は Banach 空間, つまり完備なノルム空間になる. 最初に Banach 空間の定義とその性質 を使うものに限り紹介する. 1.2 Banach 空間の定義 Definition. 1.1. V がベクトル空間であるとは, x, y ∈ V に対し x + y ∈ V , a ∈ R, x ∈ V に対し ax ∈ V が定義されていて, 1. (x + y) + z = x + (y + z) (∀x, y, z ∈ V ) 2. x + y = y + x (∀x, y ∈ V ) 3. ∃0 ∈ V s.t. 0 + x = x + 0 = x (∀x ∈ V ) 4. ∀x ∈ V ∃ − x ∈ V s.t. x + (−x) = (−x) + x = 0 5. a(bx) = (ab)x (∀a, b ∈ R, ∀x ∈ V ) 6. (a + b)x = ax + bx (∀a, b ∈ R, ∀x ∈ V ) 7. a(x + y) = ax + ay (∀a ∈ R, ∀x, y ∈ V ) 8. 1x = x (∀x ∈ V ) を満たすことである. Example. 1.2.1. 例えば, 線形代数で習ったように Rn がそうである. Definition. 1.2. ベクトル空間 V がノルム空間であるとは, ∥ · ∥ : V → R があって任意の a ∈ R, x, y ∈ V に対し ∗ [email protected] 1 1. ∥x∥ ≥ 0, ∥x∥ = 0 ⇔ x = 0 2. ∥ax∥ = |a|∥x∥ 3. ∥x + y∥ ≤ ∥x∥ + ∥y∥ が成り立つことである. Remark. 1.3. ノルム空間 (V, ∥ · ∥) に対し, d(x, y) := ∥y − x∥ とすれば d は距離関数となり, V に距離空間 √∑ |xi |2 とすれば (Rn , ∥ · ∥) としての位相が自然に入る. 例えば, x = (x1 , x2 , · · · , xn ) ∈ Rn に対し ∥x∥ = はノルム空間である. ∥x − y∥ は x, y の通常の距離を表す. Definition. 1.4. (V, ∥ · ∥) をノルム空間とする. {xn } ⊂ V が x ∈ V に収束するとは, lim ∥xn − x∥ = 0 n→∞ が成り立つことである. Definition. 1.5. (V, ∥ · ∥) をノルム空間とする, {xn } ⊂ V が Cauchy 列であるとは, lim n, m→∞ ∥xn − xm ∥ = 0 が成り立つことである. Remark. 1.6. 一般に収束列は Cauchy 列であるが, Cauchy 列が収束列であるとは限らない. Definition. 1.7. (V, ∥ · ∥) をノルム空間とする. V 上の任意の Cauchy 列が収束列であるとき, (V, ∥ · ∥) を Banach 空間という. 1.3 Banach 空間の簡単な性質 Proposition. 1.8. (級数の優収束定理) (V, ∥ · ∥) を Banach 空間とし, 点列 {xk } ⊂ V に対し {ak } ⊂ R が 存在して 1. ∥xk ∥ ≤ ak (∀k ∈ N) ∑∞ 2. k=1 ak < +∞ が成り立っているとする. このとき, Proof. ∑ ∑ xk はある x ∈ V に収束する. xk の部分和が Cauchy 列になっている事を示せばよい. 任意の自然数 n > m に対し n n m ∑ ∑ ∑ xk − xk = xk k=1 k=1 ≤ ≤ k=m+1 n ∑ ∥xk ∥ k=m+1 n ∑ |ak | k=m+1 ( ≤ n ∑ |ak | − k=1 m ∑ k=1 2 ) |ak | → 0 (as n, m → ∞) より, ∑ xk の部分和は Cauchy 列で, V が Banach 空間だから Banach 空間上の級数 ∑ xk はある x ∈ V に 収束する. Remark. 1.9. 実は逆も成り立つ. すなわち, ノルム空間 (V, ∥ · ∥) 上の任意の級数に対し優収束定理が成り立 つならば, (V, ∥ · ∥) は Banach 空間である. V を Banach 空間, f : V → V を写像とする. 一般に, f (x) = x なる x ∈ V を f の不動点と言う. ここで, 方程式 f (x) = 0 (1) を考えよう. V を関数空間, f を作用素とすればこれは一般には非線形微分方程式である. g(x) = f (x) + x と g を定めると, 「(1) が解を持つか」という問題は「g が不動点を持つか」という問題に帰着できる. もちろん常 に写像が不動点をもつとは限らない. しかしながら, ある程度の条件を写像に仮定すると不動点の存在が保証さ れる. Theorem. 1.10. (Banach の不動点定理) (V, ∥ · ∥) を Banach 空間, A ⊂ V を空でない閉集合*1 とする. ま た, f : V → V について 1. f (A) ⊂ A*2 2. ∃θ ∈ [0, 1) ∀x, y ∈ V ∥f (x) − f (y)∥ ≤ θ∥x − y∥ が成り立っているとする.*3 このとき, f (x) = x なる点 x ∈ A が一意に存在する. Proof. x0 ∈ A を一つ固定する. {xn } ⊂ V を xn = f (xn−1 ) と帰納的に定める. 縮小写像の条件 2 より {xn } ⊂ A である. まず, 不動点の存在を示す. (i)x0 = x1 の時 f (x0 ) = x1 = x0 より x0 ∈ A が不動点である. (ii)x0 ̸= x1 の時 {x} が Cauchy 列であることを示す. まず, 任意の n ∈ N について ∥xn − xn−1 ∥ = ∥f (xn−1 ) − f (xn−2 )∥ ≤ θ∥xn−1 − xn−2 ∥ ≤ · · · ≤ θn−1 ∥x1 − x0 ∥ *1 *2 *3 A 上の収束列の収束点が必ず A に属すような集合 任意の a ∈ A にたいし f (a) ∈ A が成り立つということ このような f を縮小写像と呼ぶ 3 である. これを用いると, 任意の自然数 n > m について ∥xn − xm ∥ = ∥(xn − xn−1 ) + (xn−1 − xn−2 ) + · · · + (xm+1 − xm )∥ ≤ ∥xn − xn−1 ∥ + ∥xn−1 − xn−2 ∥ + · · · + ∥xm+1 − xm ∥ ≤ θn−1 ∥x1 − x0 ∥ + θn−2 ∥x1 − x0 ∥ + · · · + θm ∥x1 − x − 0∥ = ∥x1 − x0 ∥ n ∑ θk−1 k=m+1 ( = ∥x1 − x0 ∥ n ∑ θ k−1 − k=1 m ∑ ) θ k−1 → 0 (as n, m → ∞) k=1 従って, {xn } ⊂ A は Cauchy 列であり, ゆえ収束列である. A が閉集合であることより {xn } の収束先を x ∈ A とおける. 定義より xn = f (xn−1 ) であるから, 両辺の極限を考えると x = f (x) である. 以上より, 不動点の存 在は示せた. 一意性を示す. x, y ∈ V が f の不動点であったとすると, ∥x − y∥ = ∥f (x) − f (y)∥ ≤ θ∥x − y∥ ∥x − y∥ > 0 とすると 1 ≤ θ が導かれ矛盾. ゆえ ∥x − y∥ = 0 から x = y となり, 一意性が示せた. 2 関数空間 2.1 関数空間の構造 Definition. 2.1. I ⊂ R を空でないとする. この I に対し C 0 (I) := {f : I → R; f は I で連続 } Cb0 (I) := {f ∈ C 0 (I); sup |f (x)| < +∞} x∈I と定める. Proposition. 2.2. 非空な I ⊂ R に対し, C 0 (I), Cb0 (I) は通常の足し算, 実数倍についてベクトル空間. Proof. 明らか Proposition. 2.3. Cb0 (I) 上のノルムを ∥f ∥L∞ := sup |f (x)| x∈I と定めると, 実際に ∥ · ∥L∞ は Cb0 (I) 上のノルムになる. Proof. 三角不等式のみ示す. 他は容易にできる. f, g ∈ Cb0 (I) について, ∥f ∥L∞ + ∥g∥L∞ が A := {|f (x) + g(x)|; x ∈ I} の上界になっていることを示す. 任意 の x ∈ I について, |f (x) + g(x)| ≤ |f (x)| + |g(x)| ≤ ∥f ∥L∞ + ∥g∥L∞ 4 である. 従って ∥f ∥L∞ + ∥g∥L∞ は A の上界である. 一方, ∥f + g∥L∞ は A の上界のうち最小のものであった から, ∥f + g∥L∞ ≤ ∥f ∥L∞ + ∥g∥L∞ である. Remark. 2.4. lim ∥f − fn ∥L∞ = 0 は {fn } が f に一様収束する事を意味する. 各点収束するが一様収束し ない関数列の例をあげる. I = [0, 1], fn (x) = xn とすると {fn } は { 0 (x ̸= 1) f= 1 (x = 1) に各点で収束する. 一方で任意の n ∈ N に対し ∥f − fn ∥L∞ = 1 だから {fn } は f に一様収束しない. Theorem. 2.5. (Cb0 (I), ∥ · ∥L∞ ) は Banach 空間 Proof. {fn } ⊂ Cb0 (I) を Cauchy 列とする. lim ∥f − fn ∥L∞ = 0 となる f ∈ Cb0 (I) の存在を示せば良い. 3 ス テップに分けて証明する.*4 Step1: {fn } が収束しそうな関数を見つける. 各 x ∈ I について, lim fn (x) = f (x) なる f (x) ∈ R が存在する事を示す. 任意の n, m ∈ N について, |fn (x) − fm (x)| ≤ ∥fn − fm ∥L∞ → 0 (as n, m → ∞) ゆえ, 各 x ∈ I について実数列 {fn (x)} ⊂ R は Cauchy 列であるから R の完備性より {fn (x)} はある f (x) ∈ R に収束する. Step2: {fn } が f に収束している事, つまり lim ∥fn − f ∥L∞ = 0 を示す. 任意に ε > 0 を固定する. 任意の x について, |fm(x) (x) − f (x)| < ε 2 なる m(x) ∈ N が存在する. また, {fn } が Cauchy 列であることから n, m ≥ n0 ⇒ ∥fn − fm ∥L∞ < ε 2 なる n0 ∈ N が存在する. n ≥ n0 なる任意の n ∈ N と任意の x ∈ I に対し, m = max{n0 , m(x)} とすると, |f (x) − fn (x)| ≤ |f (x) − fm (x)| + |fm (x) − fn (x)| ε ε < + =ε 2 2 であるから, n ≥ n0 ⇒ ∥f − fn ∥L∞ ≤ ε である. これは lim ∥f − fn ∥L∞ = 0 を意味する. Step3 :f ∈ Cb0 (I), つまり {fn } が今考えている空間の元に収束していること. f が I で有界な連続関数であることを示せばよい. *4 lp , Lp 等の完備性も, 使うテクニックに差はあれど同じステップで証明される. 5 (i) 有界性 ∥f ∥L∞ < +∞ を示せばよい. lim ∥f − fn ∥L∞ = 0 より, ∀ε > 0 ∃n(ε) ∈ N ∀n ∈ N n ≥ nε ⇒ ∥f − fn ∥L∞ < ε である. 例えば ε = 1 としてみると ∥f − fn1 ∥L∞ < 1 となる. 一方で, ∥f ∥L∞ = ∥f − fn0 + fn0 ∥L∞ ≤ ∥f − fn0 ∥L∞ + ∥fn0 ∥L∞ < 1 + ∥fn0 ∥L∞ < +∞ より f は I で有界である. (ii) 連続性 x ∈ I, ε > 0 を任意にとる. lim ∥f − fn ∥L∞ = 0 より, ∀n ∈ N n ≥ n0 ⇒ ∥f − fn ∥L∞ < ε 3 なる n0 ∈ N が存在する. この n0 について, fn0 は I で連続だから特に x ∈ I で連続. ゆえ ∀y ∈ I |x − y| < δ ⇒ |f (x) − f (y)| < ε 3 なる δ > 0 が存在する. |x − y| < δ なる任意の y ∈ I について, |f (x) − f (y)| = |f (x) − fn0 (x) + fn0 (x) − fn0 (y) + fn0 (y) − f (y)| ≤ |f (x) − fn0 (x)| + |fn0 (x) − fn0 (y)| + |fn0 (y) − f (y)| ε < ∥f − fn0 ∥L∞ + + ∥f − fn0 ∥L∞ 3 ε ε ε < + + =ε 3 3 3 が成り立つから, f は x ∈ I で連続. x ∈ I は任意であったから, f は I で連続. 以上より f ∈ Cb0 (I) であり, (Cb0 (I), ∥ · ∥L∞ ) は Banach 空間である. 2.2 応用 Theorem. 2.6. (Weierstrass) 連続関数列 fn : I → R (n ∈ N) について, ある {an } ⊂ R が存在して 1. ∥fn ∥L∞ ≤ an (∀n ∈ N) ∑ 2. an < +∞ が成り立っているとき, f (x) := ∞ ∑ fn (x) n=1 は有界な連続関数. Proof. 条件 1 より {fn } ⊂ Cb0 (I) である. ゆえ, 定理 1.8 より る. 6 ∑ fn (x) ∈ Cb0 (I) で, f は有界な連続関数とな Example. 2.2.1. 例えば, f : R → R を ∞ ∑ f (x) = an sin(bn πx) n=1 とする. ただし 0 < a < 1 で b は ab > 1 + 32 π を満たす奇数整数である. このとき f は有界な連続関数であ る. じつはこの関数は至る所微分不可能である.*5 Theorem. 2.7. (Pic´ ard-Lindel¨ of) ODE の初期値問題 { df dx (x) = F (x, f (x)) f (x0 ) = y0 (2) について, 以下の条件が成り立つと仮定する. ただし, Ix = [x0 − δx , x0 + δx ], Iy = [y0 − δy , y0 + δy ], Ω = Ix × Iy ⊂ R2 とする.(δx , δy > 0) 1. F (x, y) は y について Iy で Lipshitz 連続. つまり, ある L ∈ R が存在して任意の x ∈ Ix , 任意の y1 , y2 ∈ Iy に対し |F (x, y1 ) − F (x, y2 )| ≤ L|y1 − y2 | 2. F は Ω で連続 このとき, (2) は局所解を一意にもつ. Proof. f が x0 の近傍で (2) 式を満たす事と f が x0 の近傍で ∫ x f (x) = y0 + F (x, f (x))dx (3) x0 を満たす事は同値である. (3) 式を解く事を考える. M ∈ R, h > 0 を M := sup |F (x, y)| (x, y)∈Ω hM ≤ δy かつ hL < 1 となる数とし*6 , θ = hL とする. I := Ix ∩ [x0 − h, x0 + h] とし, ∀x ∈ I で (3) 式を満たすような f が一意に 存在する事を示す. A ⊂ Cb0 (I) を A := {f ∈ Cb0 (I); ∥f − y0 ∥L∞ ≤ δy } とする. H : Cb0 (I) → Cb0 (I) を ∫ x H(f )(x) := y0 + F (x, f (x))dx x0 と定める. H の不動点は (3) 式を満たし, 逆に ∀x ∈ Ix で (3) を満たす f は H の不動点である. H の不動点が A に一意に存在する事を Banach の不動点定理を用いて示す. *5 *6 微分が不可能であることの証明は [1] が詳しい. Ω がコンパクトで F が連続だからこのような M が存在する 7 (i)H(A) ⊂ A 任意の f ∈ A について, ∥H(f ) − y0 ∥L∞ ∫ x = F (x, f (x))dx x0 L∞ ∫ x ≤ ∥F (x, f (x))∥L∞ dx x0 ∫ x = M dx x0 ≤ hM ≤ δy 以上より, H(A) ⊂ A である. (ii)∀f1 , f2 ∈ Cb0 (I) ∥H(f1 ) − H(f2 )∥L∞ ≤ θ∥f1 − f2 ∥L∞ ∫ x ∫ x ∥H(f1 ) − H(f2 )∥L∞ = sup F (x, f1 (x))dx − F (x, f2 (x))dx x∈I x x0 ∫ x0 ≤ sup |F (x, f1 (x)) − F (x, f2 (x))|dx x∈I x0 ∫ x ≤ sup L|f1 (x) − f2 (x)|dx x∈I x0 ≤ Lh∥f1 − f2 ∥L∞ = θ∥f1 − f2 ∥L∞ 以上より, Banach の不動点定理から H は不動点 f ∈ A をただ一つ持つ. これが (2) の解である. Remark. 2.8. 任意の x ∈ Ix に対し ∂F ∂y (x, y0 ) が存在するような x0 の閉近傍 Ix が存在すれば, F は局所 Lipshitz だから, やはり局所解が一意に存在する. Example. 2.2.2. { f (0) = 0 √ df |f (x)| dx = (4) とすると, (4) の解は一意に定まらない. 実際, 任意の 0 ≤ x0 ≤ +∞ について { f (x) = 0 (|x| ≤ x0 ) 1 2 4 (x − x0 ) (|x| ≥ x0 ) は (4) の解となるから, (4) の解は無数にある. Example. 2.2.3. 縮小写像 f に対し xn = f (xn−1 ) で定めた点列 {xn } の収束先が f の不動点であったこ とを思い出す. これを直接 ODE の初期値問題に当てはめてみよう. つまり, (2) 式に対し { f1 (x) = y0 fn (x) = H(fn−1 )(x) とさだめると, {fn } は (2) 式の解 f に一様収束する. これを用いて具体的な問題を解く. { f (0) = 0 df 3 dx (x) = xf (x) + 2x − x 8 (5) とする. このとき { f1 (x) = 0 ∫x fn (x) = 0 (xf (x) + 2x − x3 )dx とすれば, {fn } はある f に一様収束し, f が (5) の解となるのである. 実際に計算してみよう. ∫ x (xf1 (x) + 2x − x3 )dx f2 (x) = 0 1 = x2 − x4 ) ) ∫ x (4 ( 1 f3 (x) = x x2 − x4 + 2x − x3 dx 4 0 1 x6 = x2 − 4 · 6 ) ) ∫ x( ( 1 6 x + 2x − x3 dx f4 (x) = x x2 − 4·6 0 1 = x2 − x8 4·6·8 となり, 帰納法より fn (x) = x2 − 1 x2n 4 · 6 · 8 · · · (2n − 2) · 2n (6) となることが示される. (6) は f (x) = x2 に compact 一様収束し, 実際この f は (5) の解になっている. 3 最後に 本稿では連続関数からなる空間上の解析を導入した. 空間の完備性や写像の性質に着目するだけで Weier- strass の M テストや Pic´ard-Lindel¨ of の定理を示す事ができた. 関数解析の理論では今回定義した Banach 空 間や Banach 空間に内積構造の入った Hilbert 空間をいかに調べるかという方法論を扱う.*7 空間の性質が具 体的な結果を導く事は本稿で分かって頂けたと思う. これを期に解析学に興味を持って頂けたら幸いである. 本稿を作成するにあたり, [6] をかなり参照した. 連続であるが微分不可能な関数の例は [1] から, 解が一意に 定まらない ODE の例は [5] から引用した. (Cb0 (I), ∥ · ∥L∞ ) が Banach 空間である事の証明は [7] が丁寧かも しれない. 参考文献 [1] William Dunham, 「微積分名作ギャラリー」, 日本評論社, 2009 [2] 杉浦光夫, 「解析入門 I」, 東京大学出版会, 2012 [3] 小平邦彦, 「解析入門 I」, 岩波書店, 2010 [4] 斎藤毅, 「線形代数の世界」, 東京大学出版会, 2012 [5] 高橋陽一郎, 「力学と微分方程式」, 岩波書店, 2004 [6] J¨ urgen Jost, Postmodern Analysis Third Edition, Springer Berlin Heidelberg New York, 2005 *7 ただいま勉強中である 9 [7] Douglas S.Bridges, Foundations of Real and Abstract Analysis, Springer verlag New York, 1997 10
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