方形導波管 科 v1.3 Jun.2014 1. 変数分離法による偏微分方程式の解 d2 X + kx 2 X = 0 (14) dx2 2 d Y + ky 2 Y = 0 (15) dy 2 式 (14) の一般解は X = A cos kx x + B sin kx x 式 (15) の一般解は Y = C cos ky y + D sin ky y である*4 。以上より,式 (6) の一般解 h(x, y) は hz (x, y) = X(x)Y (y) = (A cos kx x + B sin kx x) (C cos ky y + D sin ky y) (16) となる。ただし,この段階では A, B, C, D は任意定数である。 b 0 µ, ε a x 図1 番 氏名: 成立するためには次の二つの条件が必要である。即ち, y z 年 方形導波管の構造 2. 境界条件の適用 式 (16) は任意定数 A, B, C, D および kx , ky から成るため,導波管内 図 1 において,TE モード (Ez = 0) の場合を考える。この導波管の の電磁界を求めるには境界条件を課してこれらの値を決定する必要が 伝搬方向を z 軸とすると xy 面を除く 4 壁面はすべて金属で,内部は µ, ε の材料で満たされているものとする。TE モードでは進行方向に 磁界成分 Hz が存在するので, ( ) Hz は次の波動方程式を満たす。 ∂2 ∂2 ∂2 2 (1) + + 2 + k Hz = 0 ∂x2 ∂y 2 ∂z ここで Hz の xy 断面磁界分布を hz (x, y) とおき,z 軸進行方向分布 を e−γz とおけば Hz = hz (x, y)e−γz (2) とおくことができる。ここで,γ = α + jβ は導波管 z 軸方向の伝搬 定数である*1 。 式 (4) を式 ( ) (1) に代入すると ∂/∂z = −γ であるから ∂2 ∂2 2 2 (3) + + γ + k hz (x, y)e−γz = 0 ∂x2 ∂y 2 となる。ここでカットオフ波数 (または遮断波数) kc を kc 2 = k 2 + γ 2 (4) とおくと,式 (3) は ( 2 ) ∂ ∂2 2 (5) + + kc hz (x, y)e−γz = 0 ∂x2 ∂y 2 γz となる。式 (5) 両辺に ( 2 ) e を掛ければ ∂ ∂2 2 + + kc hz (x, y) = 0 (6) ∂x2 ∂y 2 が得られる*2 。さて,式 (6) の 2 次元波動方程式を解くために,断面 磁界分布 hz (x, y) を次式のように独立変数 x, y の関数に分解する。 ある。そこで,式 (4) と同じように TE モードの横電界*5 Ex , Ey を Ex = ex (x, y)e−γz Ey = ey (x, y)e−γz とおけば,電界に関する完全導体の境界条件*6 ⃗ ×n E ˆ=0 (19) を図 1 の構造に適用すればよいので,具体的には ex (x, y) = 0|y=0,b (20) ey (x, y) = 0|x=0,a (21) の 2 つの条件を課せばよいことになる。マクスウェルの方程式より xˆ yˆ zˆ ∂ ⃗ ∂B ∂ ∂ ⃗ = ∇×E (22) ∂x ∂y ∂z = − ∂t Ex Ey Ez xˆ ⃗ = ∂ ∇×H ∂x Hx ∂ ∂y Hy ∂D ⃗ ∂ = ∂z ∂t Hz zˆ (23) 関係を使うと以下の 6 つの式に分解できる。 ∂Ez (24) + γEy = −jωµHx ∂y ∂Ez −γEx − = −jωµHy (25) ∂x ∂Ey ∂Ex − = −jωµHz (26) ∂x ∂y ∂Hz (27) + γHy = jωεEx ∂y ∂Hz −γHx − (28) = jωεEy ∂x ∂Hy ∂Hx − = jωεEz (29) ∂x ∂y ここで,式 (24) の Ey に式 (28) を代入し,式 (25) の Ex に式 (27) を代入し,式 (27) の Hy に式 (25) を代入し,式 (28) の Hx に式 (24) ⃗ t = (Hx , Hy ) と E ⃗ t = (Ex , Ey ) を進行 を代入すると,横電磁界のH 方向の電磁界 ) ( Ez , Hz のみで表現できる。 j γ ∂Hz ∂Ez Hx = 2 ωε − (30) ∂y j ∂x kc ( ) γ ∂Hz ∂Ez −j + Hy = 2 ωε (31) ∂x j ∂y kc ( ) ∂Hz −j γ ∂Ez + ωµ Ex = 2 (32) ∂y kc ( j ∂x ) γ ∂Ez ∂Hz j + ωµ Ey = 2 − (33) j ∂y ∂x kc (7) (8) となり ∂ 2 (XY ) ∂ 2 (XY ) + + kc 2 XY = 0 2 ∂x ∂y 2 式 (9) を整理すると d2 X d2 Y Y + X 2 + kc 2 XY = 0 2 dx dy となる*3 。ここで式 (10) 両辺を XY で割ると 1 d2 X 1 d2 Y + + kc 2 = 0 X dx2 Y dy 2 が得られる。ここで,kx , ky を任意定数として kc 2 = kx 2 + ky 2 yˆ ⃗ = µH, ⃗ D ⃗ = εE, ⃗ ∂/∂t = jω, ∂/∂z = −γ の であるから,ここで B このような偏微分方程式の解法を変数分離法と呼ぶ。 hz (x, y) = X(x)Y (y) 式 を式 (6) に代入すると ( (7) ) ∂2 ∂2 2 + + k XY = 0 c ∂x2 ∂y 2 (17) (18) (9) (10) (11) (12) とおくと 1 d2 X 1 d2 Y + + kx 2 + ky 2 = 0 (13) 2 X dx Y dy 2 が得られる。式 (13) 左辺の第 1 項は x のみの関数,第 2 項は y のみ の関数,第 3 項は定数となっており,これが任意の x, y について常に *4 2 階微分した結果がもとの関数の定数倍になるような関数は,sin kx, cos kx, e±jkx , e±γx である。ただし,k は定数。 *5 進行方向に対して垂直な成分を有する電界成分のこと。 n ˆ は境界に対して垂直な単位ベクトルなので,式 (19) の左辺は導体の接線成 分である Ex と Ey を意味する。 *1 導波管内部が無損失媒質ならば α = 0,即ち γ = jβ である。 *2 式 (1) が 3 次元波動方程式であったのに対して,式 (6) は 2 次元波動方程式 になっており,問題の次元が 1 つ下がって簡単になっている。 *3 式 (9) の偏微分が式 (10) では常微分に代わっていることに注意。 *6 1 ここで,式 (4),式 (17),式 (18) を式 (32) と式 (33) に代入して,TE 4. 反射波と一般化 ここまで入射波 e−γz だけを扱ってきたが,反射波 Hz を モードの条件 (Ez = 0) を使うと −jωµ ∂hz ex = kc 2 ∂y jωµ ∂hz ey = kc 2 ∂x mπx nπy γz cos e (62) a b とおくと,式 (22) と式 (23) の展開において ∂/∂z = +γ となること に注意して TEz モード (Ez = 0) の条件を使うと γ ∂Hz Hx = 2 (63) kc ∂x γ ∂Hz Hy = 2 (64) kc ∂y −jωµ ∂Hz Ex = (65) kc 2 ∂y jωµ ∂Hz Ey = (66) kc 2 ∂x Hz = Bmn cos (34) (35) が得られる。ここで先に導出した hz の一般解である式 (16) を使うと −jωµ ky (A cos kx x +B sin kx x) (−C sin ky y +D cos ky y)(36) kc 2 jωµ ey = kx (−A sin kx x + B cos kx x) (C cos ky y + D sin ky y)(37) kc 2 となる。境界条件の式 (20) に式 (36) を適用すると,y = 0 のときは −jωµ ky (A cos kx x + B sin kx x) (D) = 0 ex |y=0 = (38) kc 2 ex = となるから, より,上式を常に満たすには D=0 mπx nπy γz Hz = Bmn cos cos e (67) a b −γ mπ mπx nπy γz Hx = 2 Bmn sin cos e (68) a b kc a −γ nπ mπx nπy γz Hy = 2 Bmn cos sin e (69) a b kc b mπx nπy γz jωµ nπ Bmn cos sin e Ex = (70) a b kc 2 b mπx nπy γz −jωµ mπ Bmn sin cos e Ey = (71) a b kc 2 a となる。式 (52) から式 (56) の入射波と式 (67) から式 (69) の反射波 (39) が必要である。y = b のときは式 (36) にまず D = 0 を代入して ex |y=b = −jωµ ky (A cos kx x + B sin kx x) (−C sin ky b) = 0 (40) kc 2 従って,上式を常に満たすには ky = nπ b n = 0, 1, 2, · · · (41) が必要である。一方,境界条件の式 (21) に式 (37) を適用すると, x = 0 のときは jωµ ey |x=0 = kx (B) (C cos ky y + D sin ky y) = 0 kc 2 (42) B=0 (43) をまとめて記述すると ) nπy ( mπx Hz = cos cos Amn e−γz + Bmn eγz (72) a b ) γ mπ mπx nπy ( −γz γz sin cos Amn e − Bmn e Hx = 2 (73) a b kc a ( ) γ nπ mπx nπy Hy = 2 cos sin Amn e−γz − Bmn eγz (74) a b kc b ( ) jωµ nπ mπx nπy Ex = (75) cos sin Amn e−γz + Bmn eγz a b kc 2 b ( ) −jωµ mπ mπx nπy Ey = (76) sin cos Amn e−γz + Bmn eγz a b kc 2 a 8 となる* 。さらに Ey の振幅が Amn になるように式 (72) から式 (76) より,上式を常に満たすには が必要である。x = a のときは式 (37) にまず B = 0 を代入して ey = jωµ kx (−A sin kx a) (C cos ky y + D sin ky y) = 0 kc 2 (44) mπ a (45) 従って,上式を常に満たすには kx = m = 0, 1, 2, · · · が必要である。以上より,境界条件を考慮した hz の一般解は式 (39) 式 (41) 式 (43) 式 (45) を式 (16) に代入して mπx nπy hz (x, y) = AC cos kx x cos ky y = Amn cos cos (46) a b となる。ただし,Amn = AC とおいた。従って,Hz は式 (4) より mπx nπy −γz Hz = Amn cos cos e (47) a b となる。式 (47) の結果より,Hx は式 (30) で Ez = 0 として −γ ∂Hz γ mπ mπx nπy −γz Hx = 2 = 2 Amn sin cos e (48) a b kc ∂x kc a 式 (31) において Ez = 0 より Hy は −γ ∂Hz γ nπ mπx nπy −γz Hy = 2 = 2 Amn cos sin e (49) a b kc ∂y kc b となる。式 (34) と式 (17) より Ex は −jωµ ∂Hz jωµ nπ mπx nπy −γz Ex = = Amn cos sin e (50) 2 2 ∂y b a b kc kc 式 (35) と式 (18) より Ey は jωµ ∂Hz −jωµ mπ mπx nπy −γz Ey = (51) = Amn sin cos e a b kc 2 ∂x kc 2 a の振幅項に Hz = 電磁界分布を導出できる。 5. エバネッセントモード 式 (4) と式 (12),式 (41) と式 (45) より, ( ) ( )2 mπ 2 nπ kc 2 = kx 2 + ky 2 = + = k2 + γ 2 (82) a b 導波管が無損失ならば γ = jβ とおけるので,式 (82) は次式となる。 ( ) ( )2 mπ 2 nπ + = k2 − β 2 (83) a b 簡単のために n = 0 (電磁界は y 方向に一様) とすると,自由空間の 波数 k とカットオフ波数 kx の大小関係によって,伝搬方向の波数 β は次の √2 つの場合に分かれる。 ( ) mπ 2 mπ 2a 2π β = k2 − > ⇒ λ> (84) k= a λ a m √( )2 mπ 2π mπ 2a −jα = − k2 k= < ⇒ λ< (85) a λ a m 式 (84) を伝搬モード,式 (85) を非伝搬モードまたはエバネッセント モードと呼ぶ。また,λg = 2π/β を導波管内波長と呼ぶ。 3. まとめ 方形導波管 TEz モードの入射電磁界は (52) (53) (54) (55) (56) となる。特に方形導波管の基本伝送モード*7 として最も良く使われる TE10 モードの場合は,m = 1, n = 0 を代入して次のようになる。 πx −γz Hz = A10 cos e (57) a γ π πx −γz Hx = 2 A10 sin e (58) a kc a Hy = 0 (59) Ex = 0 (60) −jωµ π πx −γz Ey = A10 sin e (61) a kc 2 a *7 を掛けると*9 ) kc a mπx nπy ( cos cos Amn e−γz + Bmn eγz (77) −jωµ mπ a b ( ) 1 mπx nπy Hx = − sin cos Amn e−γz − Bmn eγz (78) ZT E a b ( ) 1 na mπx nπy Hy = − cos sin Amn e−γz − Bmn eγz (79) ZT E mb a b ) na mπx nπy ( Ex = − (80) cos sin Amn e−γz + Bmn eγz mb a b ) mπx nπy ( −γz γz Ey = sin (81) cos Amn e + Bmn e a b 10 * と表現することもできる。ただし,ZT E = kη/β である 。TM モード (Hz =0) の場合も同様に Ez に関する波動方程式から出発して 2 となる。 nπy −γz mπx cos e Hz = Amn cos a b γ mπ mπx nπy −γz Hx = 2 Amn sin cos e a b kc a γ nπ mπx nπy −γz Hy = 2 Amn cos sin e a b kc b jωµ nπ mπx nπy −γz Ex = Amn cos sin e a b kc 2 b −jωµ mπ mπx nπy −γz Ey = Amn sin cos e a b kc 2 a kc 2 a −jωµ mπ *8 実際には m, n 無限の組み合わせが導波管内には存在することができるので, 式 (72) から式 (76) にはそれぞれ ∞ ∑ ∞ ∑ が掛かる。 m=1 n=0 *9 もともと Amn は任意の振幅定数なので,最も良く使う Ey の振幅項が簡単 になるように変更してもよい。 *10 これを TEz モード の波動 インピ ーダン ス (横電 磁界の 電界と 磁界の比 率:Ey /Hx , または Ex /Hy のこと) と呼ぶ。 Dominant mode:ドミナントモード (主要モード) と呼ぶ。 2
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