QA6

電気回路学 I 及び演習 (web 公開:2014.8.3)
6
6.1
QA–8
質問と回答 (その 6)
交流の電力について
複素電力 Pc = EI とありますが,なぜ電流 I にバー(複素共役)がつくのです
か?(2014.7.31,メール)
複素電力の計算で,電流フェーザ I の複素共役をとって電圧フェーザ E とかけ
たときに,どのような計算が行われているかは,資料 4–9 の補足に詳しく書いてあり
ますので,参照して下さい.
教科書の古い版の定義では,Pc = EI となっていて,この定義では無効電力 Pr の
符号が逆になります.無効電力の符号(負号)については単に便宜上の問題(教科書
p.64)で,理屈の上ではどちらの定義でもかまわないのですが,運用で混乱が生じな
いように,現在は Pc = EI で計算される無効電力と一致する方に決められています.
EI (イーアイバー)としっかり覚えるようにしましょう.
なお,資料 4–9 の補足と同様の計算を行うと,フェーザを使った EI ,E I の計算は
全く意味がないことも確認できます.
6.2
模擬試験(期末試験 2012)の問題について
7 月 29 日に行った模擬試験の問題 2 で,電流までは求めることができたのです
が,どうして電圧 V が V = R4 J − R4 I の式で求められるのかが分かりませんでした.
(2014.7.30,メール)
問題の回路を下図 (a) に,電源の等価変換を行って書き換えたものを,下図 (b)
に示します.図では,背景が同じ色の部分が互いに等価です.
R1 R 2
R1 + R 2
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R2
E
R1 + R 2
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R3
R4
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R4 J
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模擬試験(期末試験 2012)-問題 2
図 (b) で I が分かっているときに,電圧 V を含むようにループを考えて KVL を適用
すると,
R4 J − R4 I − V = 0
という関係が得られ,V = R4 J − R4 I となります.
この式は,電圧 V は,電源電圧 R4 J に抵抗 R4 の電圧降下 R4 I を考慮したもの と
考えることもできます.
期末試験 2012 の問題 2 ですが,電流源のほうの等価変換において,問題に印刷
されている求める電圧 V は R4 の右側であるのに,変換後は R4 の左側に来ているの
はなぜですか?(2014.8.2,メール)
問題の回路を下図 (a) に,電源の等価変換を行って書き換えたものを,下図 (b)
に示します.図では,電流源 J の等価変換を行った部分の背景を同じ色にしています.
電気回路学 I 及び演習 (web 公開:2014.8.3)
R1 R 2
R1 + R 2
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QA–9
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R2
E
R1 + R 2
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R3
R4
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R4 J
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模擬試験(期末試験 2012)-問題 2
一般に,回路の一部に等価変換を施すと,等価変換を受けない外部の電圧および電
流は変化しませんが,等価変換を行った内部の電圧および電流は,変換の前後で同じ
とは限りません.図 (a) では電圧 V は内部にあり,このままの位置で変換後も電圧 V
を考えることはできません.変換を受けない外部に電圧 V と同じ電圧になる部分があ
れば,そこで電圧 V を考えるようにします.電圧 V は 2 点間の電位差ですから,図の
色つきの配線(黄緑と灰色)を頼りに考えると,この問題の場合は,図 (b) に示す位
置で電圧 V を考えれば良いことになります.
以上のように,抵抗 R4 の右側,左側という考え方ではなく,等価変換の前後で変
わらない外部で考えることが重要です.