他者との相互作用場面における 学習者の目標設定と関連要因

PC059
教心第 56 回総会(2014)
他者との相互作用場面における
学習者の目標設定と関連要因
-学習動機と学習観に着目した検討-
篠ヶ谷圭太(日本大学)
目
CFI = .910, RMSEA = .061),本研究ではこのモデル
的
言語力や表現力の育成のため,学校教育現場で
に基づいて下位尺度得点の算出を行った。
は以前にも増して,複数の学習者が相互作用を行
次に,学習動機(内容関与動機,内容分離動機)
う活動が授業の中に取り入れられている。自己調
と学習観(認知主義的学習観,非認知主義的学習
整学習(self-regulated learning)研究では,学習
観)を独立変数とし,重回帰分析を用いて各目標
者の動機づけや信念によって学習時の目標が規定
得点の予測を行ったところ,内容関与動機や認知
され,それが学習方略の選択に影響を及ぼすこと
主義的信念がすべての目標と有意な正の関連を示
が指摘されている(e.g., Muis, 2007)。他者との
すことが明らかとなった(Table 1)。
相互作用場面での個々の発話を,学習者が選択す
る一種の「方略」と捉えるならば,相互作用に際
Table 1
学習動機,学習観と相互作用時の目標の関連
して学習者が設定する目標は,学習者の発話を規
理解
定する重要な変数になりうる。そこで本研究で
自己
モニタリング
共通
自己
は,相互作用場面において学習者が設定する目標
内容関与動機
.18 **
.19 **
.08
の因子構造,さらには,学習動機や学習観と目標
内容分離動機
.01
.06
-.02
設定の関連について検討を行った。
方
対象
法
認知主義的学習観
.17
非知主義的学習観
-.02
.10
*
.04
.13
**
-.01
他者
.17 **
-.05
.13 **
.02
埼玉県の公立高校 1 年生計 796 名。
学習動機
内容関与動機(e.g., 内容がおもしろい
から)と内容分離動機(e.g., 先生や親にほめられたい
から) について,各 5 項目を使用して測定した。
学習観
**
✝
考
察
本研究の結果,他者との相互作用場面において
学習者が設定する目標には,自己の理解に関する
認知主義的学習観(e.g., なぜそのように
目標だけでなく,他者の理解まで視野に入れた目
解けるのかを理解することが大切だ),非認知主義的
標も存在することが示された。また,学習内容に
学習観 (e.g., 答えさえ合っていればその問題は分かっ
価値を見出している学習者や,学習において深い
たと言える) について,各 4 項目を使用した。
理解を重視する学習者ほど,相互作用時に他者の
相互作用場面での目標設定 他者と相互作用を
行う際にどんなことに注意しているかについて,
23 項目(e.g., 自分の中ではわかっていることを相手に
も分かるようにすること)を使用して測定を行った。
回答はすべて 1(まったくあてはまらない)から 5
(とてもよくあてはまる)の 5 件法で求めた。
結 果
相互作用場面での目標設定について確認的因子
分析を行ったところ,
「自己の理解」,
「自他の共通
理解」,「自己の理解のモニタリング」,「他者の理
理解状態まで意識しながら活動に取り組んでいる
ことが示された。本研究では相互作用中の発話は
測定していないため,目標設定と発話の関連につ
いて明らかにされていない。今後は,動機づけや
信念以外の様々な要因(学習者の知識状態や課題
内容)が相互作用場面での学習者の目標設定およ
び実際の発話に与える影響について,より詳細に
検討していく必要があるだろう。
解のモニタリング」の 4 因子を想定したモデルが
高い適合度を示したため(GFI = .927, AGFI = .903,
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