「初級ミクロ経済学 3」(宮澤和俊) 第3講 2014/10/8 消費者行動の理論 (2) 無差別曲線と効用関数のグラフ (前回の復習)無差別曲線の性質 (1) 単調性と希少性を満たすとき,無差別曲線は右下がりで原点に関して凸 である. (2) 効用水準 u ¯ が高ければ高いほど,無差別曲線は右上にある. 1. 限界代替率 無差別曲線の接線の傾きの絶対値を限界代替率という. M RS21 = − dx2 dx1 限界代替率は主観的な財の交換比率を意味する.添え字の 21 は,財 1 を 1 単位余計にもらえるならば手放してもよいと思う財 2 の数量を測っているこ とを表す. 2. 2 変数関数のグラフ 関数 u = u(x1 , x2 ) を空間 (x1 , x2 , u) に図示すると,図 2.5(1) のような曲 面になる. 3. 2 変数効用関数の限界効用 曲面 u = u(x1 , x2 ) を平面 x2 = x ¯2 で切断すると,図 2.5(2) のような曲線 ¯2 に保つときの,財 1 になる.曲線の接線の傾きは,財 2 の消費量を x2 = x の限界効用を表す.数式では, ∂u(x1 , x2 ) ∂x1 あるいは,u1 (x1 , x2 ) と表現する.∂/∂x1 は偏微分を表す. 同様にして,財 1 の消費量を一定に保つときの財 2 の限界効用は, ∂u(x1 , x2 ) ∂x2 あるいは,u2 (x1 , x2 ) と表現する. 4. 限界代替率と限界効用 限界代替率は,2 つの限界効用の比に一致する1 . M RS21 = 講義資料 u1 (x1 , x2 ) u2 (x1 , x2 ) http://www1.doshisha.ac.jp/˜kmiyazaw/ 1 数学補論の (1) 式より. 1 数学補論 1. 偏微分 変数が 2 つ以上の関数の微分を偏微分という.変数の数だけ偏微分がある. ∂ (ラウンド)という記号を用いる.右下の添え字で表現することもある. 定義 関数 u = u(x1 , x2 ) に対して, ∂u u(x1 + h, x2 ) − u(x1 , x2 ) = u1 (x1 , x2 ) ≡ lim h→0 ∂x1 h ∂u u(x1 , x2 + h) − u(x1 , x2 ) = u2 (x1 , x2 ) ≡ lim h→0 ∂x2 h 問題 関数 u = x21 x2 の偏微分 ∂u/∂x1 , ∂u/∂x2 を定義を用いて求めよ. 解答 (x1 + h)2 x2 − x21 x2 (2x1 h + h2 )x2 = = (2x1 + h)x2 h h より, ∂u = lim (2x1 + h)x2 = 2x1 x2 h→0 ∂x1 x21 (x2 + h) − x21 x2 x2 h = 1 = x21 h h より, ∂u = lim x21 = x21 h→0 ∂x2 偏微分の意味 ∂u/∂x1 ∂u/∂x2 x2 を定数とみなして x1 で微分する. x1 を定数とみなして x2 で微分する. 2. 合成関数の微分法(1 変数) ( y = f (u) のとき u = g(x) dy du dy = dx du dx (証明) dy f (g(x + h)) − f (g(x)) = lim dx h→0 h f (g(x + h)) − f (g(x)) g(x + h) − g(x) = lim h→0 g(x + h) − g(x) h ¸∙ ¸ ∙ f (g(x) + k) − f (g(x)) g(x + h) − g(x) lim = lim k→0 h→0 k h = f 0 (g(x))g 0 (x) (注)g(x + h) − g(x) = k とおくと,h → 0 のとき,k → 0 である. 2 問題 y = log(x2 + x + 1) を微分せよ. 解答 y = log u, u = x2 + x + 1 とおけば, dy dy du = dx du dx 1 = · (2x + 1) u 2x + 1 = 2 x +x+1 3. 合成関数の微分法(2 変数) t の関数 u = u(x1 (t), x2 (t)) に対して, du ∂u dx1 ∂u dx2 = + dt ∂x1 dt ∂x2 dt が成り立つ. (証明)定義より, du u(x1 (t + h), x2 (t + h)) − u(x1 (t), x2 (t)) = lim h→0 dt h ∆x1 = x1 (t + h) − x1 (t), ∆x2 = x2 (t + h) − x2 (t) とおく. u(x1 (t + h), x2 (t + h)) − u(x1 (t), x2 (t)) h u(x1 (t) + ∆x1 , x2 (t) + ∆x2 ) − u(x1 (t), x2 (t)) = h u(x1 (t) + ∆x1 , x2 (t) + ∆x2 ) − u(x1 (t), x2 (t) + ∆x2 ) = h u(x1 (t), x2 (t) + ∆x2 ) − u(x1 (t), x2 (t)) + h u(x1 (t) + ∆x1 , x2 (t) + ∆x2 ) − u(x1 (t), x2 (t) + ∆x2 ) ∆x1 = ∆x1 h u(x1 (t), x2 (t) + ∆x2 ) − u(x1 (t), x2 (t)) ∆x2 + ∆x2 h h → 0 のとき,∆x1 → 0, ∆x2 → 0 であって, ∆x1 /h → dx1 /dt, ∆x2 /h → dx2 /dt であるから, du ∂u dx1 ∂u dx2 = + dt ∂x1 dt ∂x2 dt が成り立つ. 3 4. 陰関数の定理(implicit function theorem) ¯ = u(x1 , x2 ) は,x1 と x2 の対応関係を「暗黙のうちに」 (implicit 無差別曲線 u に)表している.つまり,x2 を x1 の関数とみなすことができる. 陰関数の定理 ¯ = u(x1 , x2 ) で表される関数 x2 を x1 で微分すると, 方程式 u u1 (x1 , x2 ) dx2 =− dx1 u2 (x1 , x2 ) (1) が成り立つ. (証明)x2 = f (x1 ) とおく: u ¯ = u(x1 , f (x1 )) 両辺を x1 で微分する.合成関数の微分法より, 0 = u1 + u2 · f 0 (x1 ) したがって, u1 (x1 , x2 ) u2 (x1 , x2 ) f 0 (x1 ) = − 問題 無差別曲線 u ¯ = x21 x2 の限界代替率 M RS21 を x1 , x2 を用いて表せ. 解答 陰関数の定理より, M RS21 = − dx2 u1 = dx1 u2 ここで, u1 = 2x1 x2 u2 = x21 であるから, M RS21 = 問題 2x1 x2 2x2 = 2 x1 x1 上の例で限界代替率 M RS12 を求め, M RS12 = が成り立つことを確かめよ. 4 1 M RS21
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