Hirosaki University Repository for Academic Resources Title Author(s) Citation Issue Date URL Gene Alterations Involving the CRLF2-JAK Pathway and Recurrent Gene Deletions in Down SyndromeAssociated Acute Lymphoblastic Leukemia in Japan Isamu, Hanada Genes, chromosomes & cancer, 53(11), 2014, p.902-910 2014-11 http://hdl.handle.net/10129/5475 Rights Text version ETD http://repository.ul.hirosaki-u.ac.jp/dspace/ 医共リポ様式1 機 関 リポジトリ登 録 用 論 文 の要 約 論文提出者氏名 成育科学領域領域小児病態学教育研究分野 氏名 花田勇 (論文題目) Gene alterations involving the CRLF2 -JAK pathway and recurrent gene deletions in Down syndrome-associated acute lymphoblastic leukemia in Japan ( 本 邦 の ダ ウ ン 症 候 群 関 連 急 性 リ ン パ 性 白 血 病 に お け る CRLF2-JAK 経 路 の 遺 伝 子 異 常 および白血病関連遺伝子の欠失) (内容の要約) 背景、目的 Down 症 候 群 ( DS ) の 小 児 は 、 健 常 児 よ り 高 率 に 急 性 リ ン パ 球 性 白 血 病 ( acute lymphoblastic leukemia: ALL )を 発 症 す る こ と が 知 ら れ て い る 。DS 患 者 で は 健 常 人 に 比 べ て 抗 が ん 剤 に 対 す る 認 容 性 が 低 く 、治 療 関 連 死 の 頻 度 が 高 い こ と が 問 題 と な っ て お り、分子標的治療のような毒性の低い治療の開発が待たれている。 最 近 、 JAK2 の 活 性 化 変 異 が DS 関 連 ALL( DS-ALL) の 約 20%程 度 で 認 め ら れ る こ と が 報 告 さ れ た 。 ま た こ れ に 引 き 続 き 、 サ イ ト カ イ ン レ セ プ タ ー の 一 種 で あ る CRLF2 の 高 発 現 が DS-ALL の 50-60%に 認 め ら れ る こ と が 報 告 さ れ た 。さ ら に 、CRLF2 の 高 発 現 が 認 め ら れ る 症 例 の 大 半 で 性 染 色 体 の 部 分 欠 失 に よ り P2RY8-CRLF2 融 合 遺 伝 子 が 形 成 さ れ て い る こ と も 明 ら か と な っ た 。 CRLF2 の 活 性 化 型 変 異 も DS-ALL の 数 %に 認 め ら れ 、CRLF2-JAK シ グ ナ ル 伝 達 経 路 が DS-ALL の 発 症 に 深 く 関 わ っ て い る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。現 在 、JAK 阻 害 薬 は 原 発 性 骨 髄 線 維 症 に お い て 臨 床 応 用 が 進 め ら れ て お り 、 治 療 関 連 死 の 頻 度 が 高 い DS-ALL に お い て 新 た な 治 療 法 と な り う る 可 能 性 が あ る 。し か し 、アジ ア諸国 で の こ れら遺 伝子異 常に つい て の 報 告 は非 常に 少な いため 、我々は その 頻度を解析した。 ま た 一 方 で 、DS-ALL の 20-30% で IKZF1 の 欠 失 が 認 め ら れ 、IKZF1 欠 失 例 は 予 後 不 良 で あ る こ と が 最 近 報 告 さ れ た 。 IKZF1 と 同 様 に ALL の 発 症 に 関 わ る と さ れ る 遺 伝 子 群 に つ い て も DS-ALL で の 頻 度 や 予 後 に つ い て 欧 米 で の 解 析 が 進 め ら れ て お り 、 今 回 我々はその点も含め解析を試みた。 方法 ① 使 用 検 体:1987 年 か ら 2011 年 に 本 邦 多 施 設 に て 診 断 治 療 さ れ た DS-ALL 38 例 の 診 断 時 骨 髄 を 使 用 し た 。 発 現 量 測 定 の 対 照 と し て 、 2002 年 か ら 2010 年 に 当 院 で 診 断 治 療 さ れ た non-DS-ALL 25 例 の 診 断 時 骨 髄 を 使 用 し た 。 ② CRLF2-JAK 経 路 関 連 遺 伝 子 異 常 の 解 析: JAK2 の pseudokinase domain、CRLF2 の 全 コ ー ド 領 域 に つ い て ゲ ノ ム PCR と RT-PCR を 施 行 し 、ダ イ レ ク ト シ ー ク エ ン ス法により塩基配列を解析した。 ③ P2RY8-CRLF2 解 析 : 特 異 的 プ ラ イ マ ー を 用 い て 、 ゲ ノ ム PCR、 RT-PCR を 施 行 し、ダイレクトシークエンス法により融合遺伝子の存在を確認した。 ④ CRLF2 発 現 量 解 析 : cDNA の 得 ら れ た DS-ALL 24 例 、 non-DS-ALL 25 例 に 対 し 定 量 的 リ ア ル タ イ ム PCR を 施 行 し 、比 較 Ct 法 に て CRLF2 発 現 量 を 測 定 し た 。内 因 性 コ ン ト ロ ー ル と し て GAPDH を 採 用 し た 。 CRLF2 高 発 現 の 定 義 は 、既 報 に な ら い 非 DS 関 連 ALL に お け る CRLF2 発 現 量 中 央 値 の 10 倍 以 上 と し た 。 ⑤ ALL 関 連 遺 伝 子 の コ ピ ー 数 解 析 : 十 分 な DNA サ ン プ ル が あ る DS-ALL32 例 に つ い て 、 IKZF1 、 EBF1 な ど 、 ALL の 発 症 や 予 後 に 関 わ っ て い る 遺 伝 子 に つ い て 、 multiplex ligation-dependent probe amplification( MLPA)法 を 用 い て コ ピ ー 数 解析を行った。 ⑥ 統 計 解 析 : 臨 床 デ ー タ を 用 い た サ ブ グ ル ー プ 解 析 、 CRLF2 発 現 量 に つ い て の 統 計 解 析 に つ い て は Fisher の 正 確 確 率 検 定 と Mann-Whitney の U 検 定 の い ず れ か を 使 用 し た 。生 存 分 析 に 関 し て は Kaplan-Meier 法 を 使 用 し 、ロ グ ラ ン ク 検 定 に よ り 有 意 差 を 解 析 し た 。 そ れ ぞ れ P 値 <0.05 を も っ て 有 意 差 あ り と 判 定 し た 。 結果 ① 38 例 中 6 例 ( 16%) で JAK2 変 異 を 認 め 、 欧 米 か ら 報 告 さ れ て い る 頻 度 と 同 じ か や や 低 頻 度 で あ っ た 。 CRLF2 に つ い て 遺 伝 子 変 異 は 1 例 も 認 め ら れ な か っ た 。 ② DS-ALL 38 例 中 11 例( 29%)で P2RY8-CRLF2 を 認 め 、欧 米 か ら の 報 告 (約 50% ) よりもやや低頻度であった。 ③ CRLF2 高 発 現 は 、 P2RY8-CRLF2 陽 性 例 7 例 中 6 例 、 陰 性 例 20 例 中 3 例 、 計 27 例 中 9 例 ( 33% ) で 認 め ら れ た 。 ④ IKZF1 欠 失 は 8 例 ( 25%) で 認 め ら れ た 。 EBF1 欠 失 は 32 例 中 5 例 ( 16%) で 認 め ら れ 、 P2RY8-CRLF2 陽 性 群 で 有 意 に 高 頻 度 で あ っ た 。 ⑤ 臨床データが得られた症例で、各遺伝子異常の有無での臨床的特徴の差異を解析 し た 。IKZF1 欠 失 例 は IKZF1 非 欠 失 例 と 比 較 し て 有 意 に 全 生 存 期 間 が 短 い こ と が 明らかとなった。そのほかの遺伝子異常の有無は性別、診断時年齢、診断時白血 球 数 、 NCI リ ス ク 分 類 、 無 イ ベ ン ト 生 存 期 間 、 全 生 存 期 間 の い ず れ に も 相 関 は 認 められなかった。 考察 本 邦 の DS-ALL で は CRLF2-JAK シ グ ナ ル 伝 達 経 路 の 活 性 化 を も た ら す よ う な 遺 伝 子 異 常 の 頻 度 が 欧 米 諸 国 よ り 低 い こ と が 明 ら か と な っ た 。本 邦 DS-ALL で は CRLF2-JAK 経路以外に分子標的となる主要な経路が存在する可能性が示唆された。 IKZF1 欠 失 症 例 の 頻 度 、予 後 に 関 し て は 欧 米 で の 既 報 と ほ ぼ 同 様 の 結 果 で あ っ た 。EBF1 欠 失 を 認 め る DS-ALL 症 例 は 欧 米 で は 約 2%と か な り 稀 で あ る が 、 本 邦 DS-ALL 症 例 で は 16% に 認 め ら れ 、 特 に P2RY8-CRLF2 を 有 す る 症 例 で 高 頻 度 に 認 め ら れ た 。 本 邦 DS-ALL 症 例 の 一 部 で は 、 P2RY8-CRLF2 と EBF1 欠 失 が 協 調 し て 白 血 病 発 症 に 関 わ っ ている可能性が示唆された。
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