On Diffusion Phenomena for the Linear Wave Equation with Space-Dependent Damping Yuta Wakasugi (Osaka University) Introduction Main Result 空間変数に依存する摩擦項を持つ線形消散型波動方程式を考える.この 方程式は,摩擦の大きさが場所によって変化するような媒質の中を伝わ る波動現象を記述する一つのモデルである.本研究の目標は,摩擦の大 きさや形状が解の時間無限大での挙動にどのように影響を及ぼすのかを 明らかにすることである. 以下では,0 < α < 1 の場合を考える.このとき,Todorova2 Yordanov [8] により L 評価 2 ∥u(t)∥L2 消散型波動方程式の初期値問題 { n utt − ∆u + a(x)ut = 0, (t, x) ∈ (0, ∞) × R , (DW) n u(0, x) = u0(x), ut(0, x) = u1(x), x ∈ R . の解 v に対して次が得られる. を考える.ここで, 2 ∥v(t)∥L2 • u = u(t, x):実数値の未知関数, ∑ 2 n ∂ 2u ∂u ∂ u • ut = ∂t , utt = ∂t2 , ∆u = j=1 ∂x2 , j ∞ n C0 (R ), n R ∃L}. α = 0,すなわち定数係数の消散型波動方程式 G(t, x) = t 2 −α |x| vt − ∆v = 0 2 および ∥G(t)∥L2 vt − ∆v = 0 の解に漸近する.(cf. [1],[3],[5],[6]) 散乱 n ̸= 2, α > 1 のとき,(DW) の解 u は,t → +∞ において波動方 程式 wtt − ∆w = 0 これより,α > 1 の場合には,t → +∞ のとき摩擦の効果がなく なってしまうことが分かる.これらの結果から,次の問題が自然 に生じる: 問題 0 < α ≤ 1 の場合,(DW) の解はどんな関数に漸近するのか? ≤ C(1 + t) ∂u ∂t , ∇xu = ∂u ∂u ( ∂x1 , . . . , ∂xn ) なる記号を用いた.) 今後の課題 • α = 1 の場合の漸近挙動([2] により解の減衰率は得られている). • 摩擦項の係数 a が時間,空間両方の変数に依存する場合. References [1 ] T. Hosono, T. Ogawa, J. Differential Equations 203 (2004), 82-118. [2 ]R. Ikehata, G. Todorova, B. Yordanov, J. Math. Soc. Japan 65 (2013), 183-236. [3 ] P. Marcati, K. Nishihara, J. Differential Equations 191 (2003), 445-469. [4 ] K. Mochizuki, Publ. Res. Inst. Math. Sci. 12 (1976), 383-390. [5 ] T. Narazaki, J. Math. Soc. Japan 56 (2004), 585-626. [6 ] K. Nishihara, Math. Z. 244 (2003), 631-649. [7 ] K. Nishihara, Comm. Partial Differential Equations 35 (2010), 1402-1418. [8 ] G. Todorova, B. Yordanov, J. Differential Equations 246 (2009), 4497-4518. [9 ] Y. Wakasugi, preprint, arXiv1309.3377v1. 2 n−2α − 2−α −(1−α)+ε Rn (ここで,∂tu = の解に漸近する. Theorem 2. 任意の ε > 0 に対し,ある δ > 0 が存在して,以下 が成立する:任意の非負整数 k に対し,定数 C = C(k, ε, u0, u1) > 0 が存在して,消散型波動方程式 (DW) の解 u に対し ∫ 2⟨x⟩2−α n−α − 2−α −2k+ε 2(2+δ)(1+t) k 2 (2−α) , e a(x)|∂t u(t, x)| dx ≤ C(1 + t) Rn ∫ 2⟨x⟩2−α n−α −2k−1+ε − 2(2+δ)(1+t) k 2 (2−α) 2−α e . |∇x∂t u(t, x)| dx ≤ C(1 + t) α > 1 の場合には,Mochizuki [4] により次が示されている. を満たす. Theorem 1 の証明の鍵となるのは,(DW) の解の高階導関数に対す る重み付きエネルギー評価である.[7], [8] の手法を用いて,次の評 価を示すことができる. 熱核 = Ct − n−2α 2−α Weighted Energy Estimates 1 −|x−y|2/(4t) = e + (剰余項) 1/2 (4πt) | {z } となるので,次のことが言える: 拡散現象 α = 0 のとき,(DW) の解 u は,t → +∞ において熱方程式 e が成立する(ε は任意の正数,C = C(ε, u0, u1) > 0). ここで I0(s) の漸近展開から,t → +∞ のとき I0 |x|2−α − (2−α)2t という関数を考えると,これは a(x) = |x|−α とした熱方程式 2 ∥u(t) − v(t)∥L2 に対しては,解表示ができて(簡単のため n = 1, u0 = 0 とすると), ( ) ∫ √ x+t −t/2 1 2 e I0 t − |x − y|2 u1(y)dy u(t, x) = 2 2 x−t ( ) ∑∞ 2m 1 s (I0 は修正 Bessel 関数で,I0(s) := m=0 (m!)2 2 ). 1√ 2 t − |x − y|2 2 は最良であると思われる.実際, − n−α 2−α utt − ∆u + ut = 0 e Theorem 1. 0 < α < 1 とし,u を消散型波動方程式 (DW) の解, −1 v を v0 = u0 + a(x) u1 とおいたときの熱方程式 (H) の解とする. このとき, 拡散現象と散乱 ) ≤ C(1 + t) n−2α − 2−α Remark n−2α ここで,減衰率 − 2−α • u0, u1 ∈ supp (u0, u1) ⊂ {x ∈ | |x| < 特に,摩擦項の係数 a(x) の空間遠方での減衰率と,方程式 (DW) の 解 u の t → +∞ における漸近挙動との関係を調べたい.そこで, a(x) として具体的に −α a(x) = ⟨x⟩ √ という形のものを考える.ここで α ≥ 0,⟨x⟩ := 1 + |x|2 である. ( ∫ が得られている (ε は任意の正数,∥u(t)∥2L2 := Rn |u(t, x)|2dx). [8] と同様 の方法で,対応する熱方程式 { n a(x)vt − ∆v = 0, (t, x) ∈ (0, ∞) × R , (H) n v(0, x) = v0(x), x ∈ R . 消散型波動方程式 −t/2 ≤ C(1 + t) − n−2α 2−α +ε
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