経済数学入門 — 初歩から一歩ずつ — 第 9 回の宿題の解答 練習 1 この関数を利潤関数 v(p) = p2 /2 を微分して下さい.その答えは, 経済学的に何になるか.なぜ,利潤関数は直線族の包絡線となるのだろうか. 答え 1 微分の公式を用いて以下に利潤関数の導関数が求まる. dv(p) d = dp dp µ p2 2 ¶ =p 以前行った問題よりこの企業の供給関数は,q(p) = p だった.供給曲線は原点を通る直線 だった.よって, dv(p) = q(p) dp となる.利潤関数を微分すると供給関数が求まる.この命題はホテリングの補題と呼ばれ る.よって,ある価格 p での利潤関数の傾きはその価格での最適な供給量に等しくなる. ある価格 p∗ で最適な数量 q ∗ を供給している企業を考える.このとき,(q ∗ , p∗ ) の利潤 は,利潤関数の値 v(p∗ ) と等しくなる.その時,上の議論で v(p∗ ) の傾きと q ∗ は等しく なっている. この企業は,価格が変化しても同じ供給量を行っている「頑固な」企業だとしよう.そ の時の利潤は,下の価格 p の関数となる. π(p) = pq ∗ − q ∗2 2 (1) このとき,π(p∗ ) = v(p∗ ) である.よって,p = p∗ で直線 (1) と利潤関数のグラフは接し ている.もし,価格 p0 が p∗ と異なれば,その価格 p0 での最大の利潤は,q ∗ を供給し続 けている利潤 (1) よりも大きくなっている.なぜならば,価格が上昇すれば最大化された 利潤が増加し,かつ供給量も増えるからである.このことは,直線 (1) は利潤関数のグラ フの下に位置していることを示している.利潤関数は下記の形であった. v(p) = pq(p) − p2 p2 q(p)2 = p2 − = 2 2 2 これを p で微分すると dq(p)/dp の効果が出てくるが,企業の最適な生産量のための条件 があるので,価格 p の「直接」の効果のみを考えれば良いことが分かる.この命題を包絡 線定理という. 1 π v(p) = p2 2 π =p− 1 2 1 8 1 32 0 1 4 1 2 1 1 2 π= p 2 − 1 8 π= p 4 − 1 32 p 図 1: 利潤関数のグラフ 練習 2 増減表を作成して次の関数のグラフを書いて下さい. f (x) = y = −x3 + 12x 答え 2 まずは微分する. f 0 (x) = −3x2 + 12 f 00 (x) = −6x よって,1 階微分が 0 になるのは,f 0 (x) = 0 を解いた x = −2 および x = 2 である.この 曲線の変曲点は,f 00 (x) = 0 を解いた x = 0 である.これらの点での関数値は以下になる. f (−2) = −(−2)3 + 12(−2) = 8 − 24 = −16, f (2) = −23 + 12 · 2 = −8 + 24 = 16 f (0) = −03 + 12 · 0 = 0 √ また,関数は下記になるので,x = 0 および x = ±2 3 で x 軸と交わる. y = −x3 + 12x = −x(x2 − 12) 明らかに,x → ∞ のとき,3 次の項の係数の符号は負なので関数値は負の無限大に発散す る.同様に,x → −∞ のとき,関数値は正の無限大に発散する.これらの情報は下の増減 表に記載されている.この増減表を下にグラフが描かれる. 2 x y0 y 00 y −∞ ∞ − + & −2 0 + −16 0 + + + 0 % 0 + − % 2 0 − − − 16 & ∞ −∞ 表 1: 増減表 y y = −x3 + 12x のグラフ 16 √ −2 3 −2 0 2 √ 2 3 −16 図 2: 3 次関数のグラフ 3 x √ 練習 3 一種類の生産要素である労働 L を用いる生産関数 Y = F (L) = L を持っている企業の利潤のグラフを描いてください.ただし財市場と労働 市場は完全競争的で生産物価格を p および賃金率を w とします.さらにそ の最大値と最大点を求めて下さい. 答え 3 企業の利潤は, √ π(L) = pF (L) − wL = p L − wL (2) となる.これを L について微分すると √ dπ 1 (L) = p( L)0 − w(L)0 = p √ − w dL 2 L 利潤最大化の 1 階の条件は,dπ(L)/dL = 0 であり,それは 1 p √ −w =0 2 L となる.これを L について解くと, L∗ = p2 4w2 となる.これを (2) に代入すると r ∗ π(L ) = p p2 p2 p2 − w · = 4w2 4w2 4w となる.2 階の条件が満たされているかどうか (3) をもう一度微分すると, d2 π (L) = dL2 µ ¶0 ³ ´0 3 p 1 p −1 p √ −w = L 2 − w = − L− 2 < 0 2 4 2 L となり満たされている.よって,最大値は p2 /4w,最大点は p2 /4w2 となる. 4 (3)
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