パターン生成 CA の方程式による解析

応用可積分系研究部会
パターン生成 CA の方程式による解析
早稲田大学基幹理工学研究科数学応用数理専攻
新田真奈美,高橋大輔
セルオートマトン(CA)には,特徴的なパターンを示
たが,進行波は見つからなかった.そこで,進行波を
す解を持つものが数多く存在している.今回の研究で
パターン上で持つ方程式の候補として,時間 2 階の
は 2 次元 CA が生成する縞状の解に注目し,その生成
項として𝑢𝑛−1
𝐶 を加えた時間 2 階空間 2 次元の束方程
メカニズムを方程式の解の立場から解析し,更にパタ
式𝑢𝑛+1
= ℎ(𝑢𝑛−1
, 𝑢𝑛𝐶 , 𝑢𝑛𝑊 , 𝑢𝑛𝐸 , 𝑢𝑆𝑛 , 𝑢𝑛𝑁 ) を新たな解析対
𝐶
𝐶
ーンを持つような方程式の探索を行なった.
象とした.時間 1 階の 34 種類の方程式を時間 2 階に
今回の研究では 2 次元格子上の縞状のパターンに着
目し,十字型の近傍を持つ時間 1 階空間 2 次元の束方
拡張し解析したところ,時間 1 階には存在しなかっ
た進行波の存在を確認することが出来た.
程式𝑢𝑛+1
= 𝑓(𝑢𝑛𝐶 , 𝑢𝑛𝑊 , 𝑢𝑛𝐸 , 𝑢𝑆𝑛 , 𝑢𝑛𝑁 ) についてパターン生
𝐶
また,これまでの結果の拡張として,非対称な方程
成のメカニズムを解析した.解析には曲線群の考え方
式や,より複雑なパターンの存在条件についても考
を利用し,2 次元の束方程式を 1 次元の束方程式にリ
察を行った.
ダクションするという手法を用いた.
図2
複雑なパターンの例
図 1 2 次元格子上の縞パターンの例
非対称な方程式では対称な方程式と比べて接続パ
2 種類の基本的なパターンおよびそれらを接続した
ターンの無矛盾条件の詳細が変化することが確認さ
パターン 4 種類についてリダクションを行うと,接続
れ,3 つ以上の基本パターンの組み合わせからなる複
したパターンにおいて,近傍の配置によりいくつかの
合パターンでは無矛盾条件はより複雑になり,元の
領域が存在しそれらが異なる式にリダクションされ
方程式に課される条件が多くなることがわかった.
る場合があることがわかった.よって接続されたパタ
特にパターンの境界領域が交差する場合には新たな
ーンが存在するためには,パターン上の全ての領域で
近傍配置が出現することもあり,条件が非常に厳しく
等価な式にリダクションされる必要がることがわか
なることがわかった.
った.そこで各パターンが存在するために元の方程式
に必要となる条件を導いた.
更にこれまでに得られた結果を用いて逆に空間 1 次
元の束方程式から空間 2 次元のパターンを生成する手
はじめに解析対象として時間 1 階空間 2 次元の束
法についても一般化を行い,任意の ECA について曲線
方程式を解析した.まず,方程式に回転・鏡映の対称
番号と近傍の対応表を用いることで特定のパターンを生
性を仮定し,34 種類の方程式を取り上げた.そして,
成することが出来た.
それぞれに対して,前述したパターンの無矛盾条件
今後の課題として,今回の研究で方程式に課した制
を調べることにより,その存在・非存在を判定した.
限を取り払うことで、より多くのパターンを再現できる方程
また存在が確認されたパターンについて,ブール束
式を探索すること,また十字形以外の近傍や今回は取り
上でどのような挙動を持つかを分析したところ解析
上げなかった曲線配置についても研究の対象とすること
した 34 種類の方程式には定値解や定在波は見つかっ
が挙げられる.