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2014 年 10 月 2 日
数学を学ぶ (微分積分2)・授業用アブストラクト
No.2
§2. 級数の収束判定法
一般に、級数の和を求めることは難しい問題であり、統一的な理論はない。しかし、ある種
の級数については、和が存在するかどうか、すなわち、収束するかどうかを調べることができ
る。この節では、級数の収束判定法のうち、比較判定法とダ・ランベールの判定法を学ぶ。
● 2 - 1 : 比較判定法
次の定理に書かれている、級数の収束判定法を比較判定法という。
定理 2 - 1 - 1
∞
∞
∑
∑
正項級数
an ,
bn について、
n=1
n=1
an ≤ bn
(2 - 1 a)
(n = 1, 2, 3, · · · · · · )
が成り立つとき、
∞
∞
∑
∑
(1)
bn が収束するならば、
an も収束する。
(2)
n=1
∞
∑
n=1
an が +∞ に発散するならば、
n=1
∞
∑
bn も +∞ に発散する。
n=1
例 2 - 1 - 2 次の各級数について、収束するかしないかを判定せよ。
∞ 1
∞
∑
∑
n
(1)
(2)
3
2 + 3n − 1
n
n
n=1
n=1
解;
(1) すべての n について、
1
1
≤ 2
3
n
n
∞ 1
∑
である。また、[例 1 - 5 - 2] により、級数
は収束することがわかっているから、比較判
2
n=1 n
∞ 1
∑
定法を適用して、級数
もまた収束することがわかる。
3
n=1 n
(2) すべての n について、
n
1
n
> 2
=
n2 + 3n − 1
n + 3n
n+3
∞
∞
∑
∑
1
1
1
1
である。ここで、級数
=
+
+
·
·
·
·
·
·
は、調和級数
n+3
4
5
n が +∞ に発散する [例
n=1
n=1
1 - 4 - 1] ことから、+∞ に発散する。比較判定法により、級数
∞
∑
n=1
する。
n2
n
も +∞ に発散
+ 3n − 1
● 2 - 2 : ダ・ランベール (d’Alembert) の判定法
次の定理に書かれている、級数の収束判定法をダ・ランベールの判定法という。
–7–
定理 2 - 2 - 1
∞
∑
正項級数
an について、
n=1
(2 - 2 a)
(n = 1, 2, 3, · · · · · · )
an > 0
an+1
=
n→∞ an
が成り立っているとする。このとき、
∞
∑
(1) < 1 のとき、級数
an は収束する。
(2 - 2 b)
(2)
lim
> 1 のとき、級数
n=1
∞
∑
が存在する
an は +∞ に発散する。
n=1
(証明)
(1) r = 1+
2 とおくと、 < 1 より、 < r < 1 となる。(2 - 2 b) により、n が十分大きいとき
an+1
には、
は の「ごく近く」にいなければいけないから、
an
an+1
< r が満たされる。
ある番号 N 以上のすべての n については、常に、
an
すると、n ≥ N のとき、
an an−1
aN +1
()
an =
·
······
aN ≤ r · r · · · · · · r · aN = rn−N aN
an−1 an−2
aN
となる。そこで、数列 {bn }∞
n=1 を
{
an
bn =
aN rn−N
(n = 1, 2, · · · , N ),
(n = N + 1, N + 2, · · · · · · )
によって定義する。n ≥ N なるすべての自然数 n に対して
n
∑
bk = b1 + · · · + bN −1 + bN + bN +1 + · · · + bn
k=1
= a1 + · · · + aN −1 + aN + aN r + · · · + aN rn−N
= a1 + · · · + aN −1 + aN (1 + r + · · · + rn−N )
1 − rn−N +1
(∵ r = 1)
1−r
1
≤ a1 + · · · + aN −1 + aN
(∵ 0 ≤ r < 1)
1−r
}∞
{∑
∞
n
∑
bn
は上に有界である。よって、正項級数
bn は収束する。さら
となるので、数列
= a1 + · · · + aN −1 + aN
に、( ) により、
k=1
n=1
n=1
an ≤ bn
であるから、比較判定法により、級数
∞
∑
(n = 1, 2, 3, · · · · · · )
an は収束することがわかる。
n=1
(2) (1) と同様にして証明することができる。
1+
2
となる。今度の場合には
an+1
ある番号 N 以上のすべての n について、常に、
> r が満たされる。
an
すると、n ≥ N のとき、
an an−1
aN +1
()
an =
·
······
aN ≥ r · r · · · · · · r · aN = rn−N aN
an−1 an−2
aN
r=
とおくと、 > 1 より、1 < r <
–8–
となる。そこで、(1) と同じように数列 {bn }∞
n=1 を定めると、n ≥ N のとき、
n
∑
1 − rn−N +1
bk = a1 + · · · + aN −1 + aN
−→ +∞
1−r
k=1
↑
↑
(∵ r = 1)
(∵ r > 1)
となるので、正項級数
∞
∑
bn は発散する。さらに、( ) により、
n=1
bn ≤ an
であるから、比較判定法により、級数
(n = 1, 2, 3, · · · · · · )
∞
∑
an も発散することがわかる。
n=1
例 2 -2 -2
√
n
級数
はダランベールの判定法により、収束することがわかる。
n!
n=1
∞
∑
● 2 - 3 : 絶対収束
∞
∞
∑
∑
級数
an が絶対収束するとは、級数
|an | が収束するときをいう。
n=1
n=1
定理 2 - 3 - 1
∞
∑
級数
an が絶対収束するならば、その級数自体も収束する。
n=1
(証明)
各自然数 n に対して、
a+
n =
|an | + an
,
2
a−
n =
|an | − an
2
とおくと、
0 ≤ a±
n ≤ |an |
∞
∑
が成り立つ。仮定により、正項級数
|an | は収束するから、比較判定法により、正項級数
(∗)
∞
∑
n=1
a+
n,
∞
∑
n=1
n=1
a−
n
は収束し、したがって、差
∞
∑
n=1
例 2 - 3 - 2 任意の x ∈ R に対して、級数
自身も収束する。
a+
n −
∞
∑
n=1
a−
n =
∞
∑
an も収束する。
n=1
∞ xn
∞ xn
∑
∑
は絶対収束する。したがって、級数
n=0 n!
n=0 n!
(証明)
• x = 0 のとき
∞
∑
|x|n
n=0
n!
= 1 + 0 + 0 + ······
∞ |x|n
∑
であるから、級数
は 1 に収束する。
n=0 n!
• x = 0 のとき
|x|n
|x|
an =
(n = 0, 1, 2, 3, · · · · · · ) とおくと、an > 0 であり、 lim an+1
= lim n+1
=0 < 1
n→∞ an
n→∞
n!
n
∞
∞
∑ xn
∑ |x|
は収束する、つまり、級数
は絶
である。ダランベールの判定法により、級数
n=0 n!
n=0 n!
対収束する。
–9–
● 2 - 4 : 級数の収束条件
一般の級数に対する収束判定法は存在しないが、次の定理は役に立つ。
定理 2 - 4 - 1
∞
∑
級数
an が収束するならば、 lim an = 0 でなければならない。
n→∞
n=1
(証明)
Sn を第 n 部分和とすると、an = Sn − Sn−1 (n = 2, 3, 4, · · · ) と書ける。与えられた級数は
収束するから、その和を S とおくと、
lim an = lim Sn − lim Sn−1 = S − S = 0
n→∞
n→∞
n→∞
となる。
– 10 –
2014 年 10 月 2 日
No.2
数学を学ぶ (微分積分2) 演習問題 2
2-1. 次の各級数について、収束するかしないかを判定せよ (答えのみは不可)。
∞ | sin n|
∞
∑
∑
en
√
(1)
(2)
n4 + 1
n=1
n=2 (log 2)(log 3)(log 4) · · · (log n)
2-2. 次の各級数について、絶対収束するかしないかを判定せよ (答えのみは不可)。
∞ (−1)n n!
∞ n2
∑
∑
nπ
(1)
(2)
cos
n
n
n
3
n=1
n=1 e
(
1 )n
lim 1 +
= e であることは既知としてよい。
n→∞
n
– 11 –
✎
☞
数学を学ぶ (微分積分2) 通信
[No.2]
✍
2014 年 10 月 2 日発行
✌
演習 1-1 について
(1) では、与えられた級数の形のまま和を計算するのであれば、
∞
∑
1
1(1
1
1
1 ) 1 1
1
= · =
=
·
·
·
=
lim
−
−
−
n→∞ 6 3
4n2 − 9
2n − 1 2n + 1 2n + 3
6 3
18
n=1
のように書かなければなりませんが、中間部分の lim がない答案が数枚ありました。第 n 部
n→∞
分和と級数の和の違いをきちんと理解し、適切に記号を使ってください。
級数の形のまま和を計算するのではなく、まず、与えられた級数の第 n 部分和を Sn とおき、
この値を求めてから、極限 lim Sn を計算するようにしましょう。
n→∞
演習 1-2 について
(1) は、授業の中で説明した「調和級数が +∞ に発散する」ことの証明に倣って、解答する
ことができるのですが、解答する際に一箇所注意すべき点があります。
関数 f (x) = x(log x + 1) (x > 0) は単調増加であって、f (1) > 0 であることから、k を自然
1
1
数としたとき、k ≤ x を満たす任意の実数 x に対して
≥
が成り立ち
k(log k + 1)
x(log x + 1)
ます。特に、k✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿
≤ x ≤ k + 1✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿
においてこの不等式が成立するので、両辺を k から k + 1 まで積
分して不等式
∫ k+1
1
1
≥
dx · · · · · · (∗)
k(log k + 1)
x(log x + 1)
k
が得られます。答案を読んでいて、波線部分の意識 (積分区間において常に不等式が成り立って
いるので、この区間で積分しても不等式は保たれるということ) が弱い人が多いという印象を
持ちました。
∞ 1
∑
が収束する」ことの証明を真似て、解答すること
2
n=1 n
ができます。[定理 1 - 5 - 1] を用いて証明することになるので、与えられた級数が正項級数であ
(2) は、授業の中で説明した「級数
ることの確認が必要です。このことを言及していない答案がほとんどでした。定理を使う場合
には、その前提条件がきちんと満たされていることを確かめるようにしましょう。
次回予告
次回はべき級数について学びます。べき級数とは “無限に項が続く多項式”のようなものです。
ある種の関数はべき級数で表わすことができること(関数をそのように表わすことを Maclaurin
級数展開と呼びます) を説明します。例えば、指数関数や三角関数はべき級数で表わすことがで
きます。
– 12 –
2014 年 10 月 2 日
数学を学ぶ(微分積分2)第 2 回・学習内容チェックシート
学籍番号
氏 名
Q1. 次の表を完成させてください。ページ欄にはその言葉の説明が書かれているアブストラク
トのページを書いてください。
ページ
意味
p.
比較判定法とは?
ダ・ランベールの判定 p.
法とは?
級数
∞
∑
an が絶対収
n=1
p.
束するとは?
Q2. 次の
• 級数
に適当な言葉や数式を入れてください。
∞
∑
1
は
2
n=1 n
となっていれば、
• 調和級数
∞ 1
∑
は
n=1 n
となっていれば、
• 正項級数
∞
∑
∞
∑
するので、正項級数
an について an ≤
n=1
∞
∑
判定法により、級数
an は
n=1
∞
∑
するので、正項級数
判定法により、級数
することがわかる。
an について
n=1
∞
∑
an は
1
(n = 1, 2, · · · )
n2
1
≤ an (n = 1, 2, · · · )
n
することがわかる。
n=1
an が収束するかどうかを調べるための方法には、前回学んだ直接的な方
n=1
法の他に、
と
という2つの収束判定法を使
う方法がある。
•「
収束する級数は収束する」ので、級数
∞
∑
an に対して、正項級数
n=1
∞
∑
an 自身も収束することがわかる。
が収束することがわかると、
n=1
∞
∑
an が収束するならば、 lim an =
• 級数
でなければならない。
n=1
n→∞
Q3. 第2回の授業で学んだ事柄について、わかりにくかったことや考えたことなどがありまし
たら、書いてください。