ポイント

微小ダイポールアンテナ (TMr モード)
科
v1.7 Jul.2014
zˆIl
[Am]
l
x
y
r
ˆ δ ( x)δ ( y )δ ( z ) [A/m 2 ]
J ( x, y, z ) = zIl
r
J S ( x, y )
[A/m]
z0
x
r
J ( x, y , z )
[A/m 2 ]
(a)
(7)
(8)
さらに,任意のスカラー Φ の勾配の回転に関するベクトル公式*2
∇ × ∇Φ = 0
(9)
と式 (8) を比較すると
⃗ + jωµA
⃗ = ±∇Φ
E
(10)
⃗ について求めると,任意ベクトル A
⃗ と任意ス
が得られる。これを E
⃗ を次のように表現することもできる。
カラー Φ を使って電界 E
⃗ = ±∇Φ − jωµA
⃗
E
(11)
⃗
⃗
式 (11) と式 (6) を式 (2) に代入して H と E を消去すると,
(
)
(
)
⃗ = jωε ±∇Φ − jωµA
⃗ + J⃗
∇× ∇×A
(12)
t≃0
x
y
r
r
J ( x, y, z ) = J S ( x, y )δ ( z − z0 )
[A/m 2 ]
(b)
y
z
ˆ ( x ) z0
xI
[A]
xˆIl
[Am] z0
x0
y0
x
y
r
ˆ ( x)δ ( y − y0 )δ ( z − z0 )
J ( x, y, z ) = xI
[A/m 2 ]
(c)
図2
z0
z
となり,これを整理すると次式 (8) となる。
)
z
z
r
J ( x, y , z )
[A/m 2 ]
(6)
⃗ + jωµA
⃗ =0
∇× E
z 方向に流れる電流素とその電流密度 [A/m2 ]
図1
次式 (6) のように表現することもできる。
(
番 氏名:
z
1. ベクトルポテンシャルによる電磁界の表現
電流源 J⃗ [A/m2 ] を含むマクスウェルの方程式
⃗
⃗ = − ∂ B = −jωµH
⃗
∇×E
(1)
∂t
⃗
⃗ = ∂ D + J⃗ = jωεE
⃗ + J⃗
∇×H
(2)
∂t
1
*
について考える。式 (1)
( 両辺の発散をとると
)
⃗
)
(
)
∂B
∂ (
⃗ =0
⃗
∇•B
∇• ∇×E =∇• −
=−
(3)
∂t
∂t
となるから,次式 (4) が得られる。
⃗ = 0, or ∇ • H
⃗ =0
∇•B
(4)
⃗
ここで,任意ベクトル A の回転の発散に関するベクトル公式
(
)
⃗ =0
∇• ∇×A
(5)
⃗ を任意ベクトル A
⃗ を使って
と式 (4) との比較より,磁界ベクトル H
⃗ =∇×A
⃗
H
式 (6) を式 (1) に代入すると
(
)
⃗ = −jωµ ∇ × A
⃗
∇×E
年
x
y0
y
r
ˆ δ ( x − y0 )δ ( y − y0 )δ ( z − z0 )
J ( x, y, z ) = xIl
[A/m 2 ]
(d)
x 方向に流れる電流,面電流,線電流,電流素の違いとそれ
ぞれの電流密度 [A/m2 ]。(a) は断面積が有限の通常の電流,(b)
は厚みがゼロのシート状の面電流,(c) は断面積を考えない理想
が得られる。この式をベクトル公式*3 を使って整理すると
的な線電流,(d) は長さだけを考慮した微小電流素
⃗ ∓ jωεΦ − ∇ A
⃗−k A
⃗ = J⃗
∇ ∇•A
(13)
となる。もともと Φ は任意のスカラーとして導入したものなので式
(13) の左辺の () 内を
⃗ ∓ jωεΦ = 0
∇•A
(14)
において x
ˆ → zˆ, x0 = y0 = z0 = 0 を代入することにより
(
)
2
2
[
J⃗ (x, y, z) = zˆIlδ(x)δ(y)δ(z)
A/m2
となる*5 。これを式 (19) に代入すると
⃗ + k2 A
⃗ = −ˆ
∇2 A
z Ilδ(x)δ(y)δ(z)
式 (21) をスカラー表示すると,
∇2 Az + k2 Az = −Ilδ(x)δ(y)δ(z)
のように選ぶと次の非同次偏微分方程式が導出できる。
⃗ + k2 A
⃗ = −J⃗
∇2 A
(15)
⃗ が決まれば,式 (11) と式 (14) より
式 (15) を解いて A
(
)
⃗ = −jωµA
⃗+ 1 ∇ ∇•A
⃗
E
(16)
jωε
⃗
⃗
が求まり,式 (6) より H が求まる。以上まとめると,電流源 J が存
⃗ を使って
在する場合,その周囲の電磁界は任意のベクトル A
⃗ =∇×A
⃗
H
(17)
(
)
1
⃗ = −jωµA
⃗+
⃗
E
∇ ∇•A
(18)
jωε
⃗は
と表現することができる。ただし,A
2⃗
2⃗
⃗
∇ A + k A = −J
(19)
となる。球座標系で考えると
(
の解である。
(22)
)
(
∂ 2 Az
2 ∂Az
+
+ k2 Az = 0
∂r2
r ∂r
となる。Az = R(r)e−jkr としてみると,左辺第 1 項目は
(
) (
)
d2 Az
d
d
=
R(r)e−jkr = R′′ − 2jkR′ − k2 R e−jkr
2
dr
dr dr
左辺第 2 項目は
) (
)2
2 d (
2 dAz
=
R(r)e−jkr = R′ − jkR e−jkr
r dr
r dr
r
素*4 を考える。この電流素を電流密度 [A/m2 ] で表現すると,図 2(d)
)
⃗ = 0 である。発散を取る理由は,ベクトルポテ
ベクトル公式 ∇ • ∇ × A
⃗ という新たなベクトル量を使って,電磁界を間接的に表現するた
ンシャル A
⃗ → E,
⃗ H
⃗ という順
めに行う数式操作である。解法イメージとしては J⃗ → A
⃗ H
⃗ という
序である。このような間接的で回りくどい表現をしないで J⃗ → E,
直接解法もあるが,解くべき方程式が微分方程式ではなく積分方程式となる
ため,より高度な数学テクニックが必要になる。
*2 ベクトル公式 ∇ × ∇Φ = 0 は ∇ × (−∇Φ) = 0 としても成り立つ。
(
)
*5
*4
*6
*3
(21)
)
の解になっている。これを整理すると
示すような原点に置かれた厚み 0 かつ長さ l で z 方向に流れる電流
(
(
(20)
1 ∂
∂
∂Az
1
∂ 2 Az
2 ∂Az
r
+
sin
θ
+
r2 ∂r
∂r
r2 sin θ∂θ
∂θ
∂φ2
r2 sin2 θ
+k2 Az = −Ilδ(⃗r)
(23)
6
*
となるが,∂/∂θ = ∂/∂φ = 0 なので ,
(
)
1 ∂
∂Az
r2
+ k2 Az = −Ilδ(⃗r)
(24)
2
r ∂r
∂r
となり,⃗
r
=
̸
0
のすべての点 (原点以外) における Az は
(
)
1 ∂
2 ∂Az
r
+ k2 Az = 0
(25)
r2 ∂r
∂r
2. 非同次波動方程式の解
⃗ を求めるために,最も簡単な例として,図 1 に
ここで式 (19) の解 A
*1
)
]
∫
1
(27)
(28)
λ ≪ l のとき,電流素の位相は同じで電流 I の大きさを一定とみなせる。
図 2(d)
∫ において,以下の積分を実行すると,デルタ関数の性質から
∫
∞
∞
∞
−∞
−∞
−∞
x
ˆIlδ(x − y0 )δ(y − y0 )δ(z − z0 ) dxdydz = x
ˆIl
⃗ =∇ ∇•A
⃗ − ∇2 A
⃗
∇×∇×A
波長 λ に比べて十分に小さい長さ l と電流 I との積を電流素 [Am] と呼ぶ。
(26)
[Am]
が得られる。このとき,積分記号内部の次元は [A/m2 ] に等しい。
ベクトルポテンシャル Az は θ 方向,φ 方向ともに対称形となっている。
左辺第 3 項目は
2
2
k Az = k R(r)e
−jkr
となる。式
[ (40)(と式 (41) をを式 (43)
)] に代入すれば,
(
−jkr
2
1
Hφ =
r
= k Re
(29)
となる。これら式 (27)-式 (29) をまとめると
(
)
2
2jk
R′′ +
− 2jk R′ −
R=0
(30)
r
r
が得られる。ここで,R = C/r (C は任意の定数) とおいて式 (30)
に代入して確かめると R = C/r は式 (30) を満たすことが分かる。
従って,式 (25) の解は
Ce−jkr
Az =
(31)
r
であることが分かる。一方,式 (22) を半径 r0 の球で積分すると,
∫
0
∫
2π
∫
π
∫
0
(
r0
−Ilδ(⃗r) dv = −Il
従って
∫
(
Il e−jkr
sin θ
4π r
⃗ を求める。
で近似できる。次に式 (18) から極座標系で電界 E
(
)
1
⃗ = −jωµA
⃗+
⃗
E
∇ ∇•A
jωε
において,まず第 2 項目の () 内
(
)
1 Aφ
∂
⃗ = 1 ∂ r2 Ar + 1
∇•A
(sin θAθ ) +
2
r ∂r
r sin θ ∂θ
sin θ ∂φ
に式 (40)-式 (42) を代入して,
(
)
⃗ = Il cos θe−jkr − 1 − jk 1
∇•A
4π
r2
r
∇2 Az + k2 Az dv = −Il
(33)
V
となる。さらに式 (33) について lim の極限を取ると,左辺第 2 項は
∫
∫
2π
0
π
0
∫
(
r0
r0 →0
)
k Az r sin θdθdφ → 0
2
2
(34)
0
となって無視できる。従って
∫
(
)
∇2 Az dv = −Il
(35)
となる。次に,
(
V
となる。式 (35) 左辺にガウスの発散定理を適用して計算すると
∫
I
I
dAz
∇ • ∇Az dv =
∇Az • d⃗s =
rˆ • d⃗s
dr
VI
S
S
−jkr dAz
2 dAz 2 d Ce
=
ds = 4πr0
= 4πr0
dr
dr r=r0
dr
r
S
r=r
[
= 4πr0 2 C −jk
−jkr
e
r
(
(
+ e−jkr −r−2
)
]
)
⃗=
∇∇ • A
−4πCr0
2e
(
0
(
r0 →0
−jkr0
= −Il
(37)
Il
4π
(38)
となる。以上より,式 (24) の解は式 (39) となることが分かる。
Az =
Il e−jkr
4π r
(39)
3. 電磁界の導出
求めたベクトルポテンシャル Az から実際に電磁界を導出する。ま
ず,式 (39) の Az を極座標で表すと,図 3 より
Il e−jkr
cos θ
(40)
4π r
−jkr
Il e
Aθ = −Az sin θ = −
sin θ
(41)
4π r
Aφ = 0
(42)
となるので,式 (17) について ∂/∂φ = 0,Aφ = 0 であることを使っ
⃗ を求めると,
て極座標系で磁界 H
Ar = Az cos θ =
⃗
⃗
H = ∇ × A = (
1
=
r
r
ˆ
r 2 sin θ
∂
∂r
Ar
)
∂ rAθ
∂Ar
−
φ
ˆ
∂r
∂θ
θˆ
r sin θ
∂
∂θ
φ
ˆ
r
∂
∂φ
rAθ
r sin θAφ
r
=
Il
cos θe−jkr
4π
)
⃗
∇∇ • A
θ
)
−
k2
2jk
2
+ 2 + 3
r
r
r
)
(53)
)
=
素 Il が作る電磁界は
(
)
Il
1
1
Er =
cos θe−jkr k2 η
−j
2
2π
(kr)3
( (kr)
)
Il
1
1
1
Eθ =
sin θe−jkr k2 η j
+
−
j
4π
kr
(kr)2) (kr)3
(
Il
1
1
Hφ =
sin θe−jkr k2 j
+
4π
kr
(kr)2
Eφ = Hr = Hθ = 0
r
Ar
(62)
(63)
(64)
(65)
となり,波源から十分離れた遠方界では
Il e−jkr
sin θ
4π r
−jkr
Il e
Hφ = jk
sin θ
4π r
θ
Eθ = jηk
y
x
図3
)
⃗
∇∇ • A
(51)
以上まとめると,原点に z 軸方向を向いて置かれた長さ l の微小電流
z
− Aθ
(
(50)
4. まとめ
(43)
Az
)
(49)
Il
jk
1
sin θe−jkr
+ 3
(54)
4π
r2
r
となる。ここで,式 (49) の r 成分は
)
1 (
⃗
Er = −jωµAr +
∇∇ • A
(55)
r
jωε
であるから,これに式((40) と式 (53))を代入して
η
1 1
Il
cos θe−jkr
+
Er =
(56)
2π
r2
jωε r3
これを位相 kr の関数として表すと,
(
)
1
j
Il
cos θe−jkr k2 η
−
Er =
(57)
2π
(kr)2
(kr)3
となる。同様にして式 (49) の θ 成分は
)
1 (
⃗
Eθ = −jωµAθ +
∇∇ • A
(58)
θ
jωε
であるから,これに式
((41) と式 (54) を代入して
)
Il
jωµ
η
1 1
−jkr
Eθ =
sin θe
+ 2 +
(59)
4π
r
r
jωε r3
これを位相 kr の関数として表すと,
(
)
Il
j
1
j
Eθ =
sin θe−jkr k2 η
+
−
(60)
4π
kr
(kr)2
(kr)3
となる。波源から十分離れた遠方では,式 (60) 右辺の第 2 項目と第
3 項目を無視できるため,次式 (61) で近似できる。
Il e−jkr
Eθ = jηk
sin θ
(61)
4π r
となる。従って任意定数 C は最終的に
C=
∂r
(
(48)
⃗
⃗
1∂ ∇•A
1 ∂ ∇•A
rˆ +
φ
ˆ (52)
θˆ +
r
∂θ
r sin θ
∂φ
同様にして θ 成分について考えると,
(
r=r0
jk
r0 2
)
⃗
∂ ∇•A
⃗ の r 成分について考えると,
より ∇∇ • A
(
e−jkr0
e−jkr0
+
(36)
r0
r0 2
ここで,再度 lim をとると式 (36) 第 1 項は消えるので,式 (35) より
= −4πCr0 2
)
Hφ = jk
)
)
できるため
(32)
V
V
Il e−jkr
cos θ
4π r
Il
1
k
sin θe−jkr j + 2
(44)
4π
r
r
Hr = 0
(45)
Hθ = 0
(46)
が得られる。式 (44) は距離 r の関数となっているが,次式 (47) のよ
うに位相 kr の関数として表す場合もよく使われる。
)
(
Il
1
1
Hφ =
sin θe−jkr k2 j
+
(47)
4π
kr
(kr)2
また,波源から十分離れた遠方では,式 (47) の右辺第 2 項目は無視
∫
)
2
(
1 ∂
−
r ∂θ
Hφ =
)
∇ Az + k2 Az dv =
=
より
∇2 Az + k2 Az r2 sin θdθdφ
0
(
Il e−jkr
−
sin θ
4π r
∂
r
∂r
となる。
ベクトルポテンシャル Az の極座標成分
2
(66)
(67)