地理的表示保護制度について

資料2
地理的表示保護制度について
平成27年2月
1
地理的表示保護制度とは
○ 地理的表示保護制度とは、品質、社会的評価その他の確立した特性が産地と結びついている産
品について、その名称を知的財産として保護するもの。国際的に広く認知されており、世界で100カ
国を超える国で保護。
■ 地理的表示のイメージ ~ ○○干柿(※架空の食品)を例に ~
商品
産地
品 質
“
主として帰せられる”
・ 他産品より高い糖度
・ もっちりとした食感
社会的評価
・ 農林水産大臣賞受賞
・ 市場で高値で取引
その他の特性
・ 飴色に仕上がる
・ 小ぶりで食べやすい
自然的な特性
・ 気候・風土・土壌 等
人的な特性
・ 伝統的なノウハウ
・ 地域伝統の文化 等
“○○”(地名)
○ ○ 干 柿
地 理 的 表 示
○ 国際的には、「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定:WTO協定附属書1C)」において、
地理的表示の保護について規定。
○ 諸外国では、地理的表示に対
する独立した保護を与えている
国は、100か国以上。
[地理的表示に対する独立した保護を与えている国]
アジア
中東
欧州(EUを除く)
EU
中南米
アフリカ
11か国
7か国
17か国
(28か国)
24か国
24か国
※ 国際貿易センター(WTOと国連貿易開発会議(UNCTAD)の共同設立機関)調べ(平成21年)
1
2
特定農林水産物等の名称の保護に関する法律(地理的表示法)
○ 日本においても地理的表示保護制度を創設するため、「特定農林水産物等の名称の保護に関す
る法律」 (地理的表示法)が平成26年6月に成立 。(平成27年6月までに施行。)
制度の概要
生産・加工業者
③
品
質
管
理
生産・加工業者
生産・加工業者
生産・
加工業者
の団体
生産・加工業者
① 地理的表示、生
産・加工業者の団体
の登録申請
農林水産大臣
③ 品質管理体制の
チェック
④取締り
不正
使用
目
② 地理的表示、 生産・
加工業者の団体の登録
通
報
地理的表示の不正使用を知った者
①生産・加工業者の団体が「地
理的表示」を生産地や品質等
の基準とともに登録申請。
②農林水産大臣が審査の上、
地理的表示及び団体を登録。
→基準を満たすものに「地理
的表示」の使用を認め、統
一マークを付す。
③登録を受けた団体が品質管
理を実施。農林水産大臣が団
体の品質管理体制をチェック。
④不正使用があった場合は農
林水産大臣が取締り。
的
① 生産者利益(地域の知的財産)の保護
農林水産物等の適切な評価・財産的価値の
維持向上
② 需要者利益の保護
高付加価値の農林水産物等の信用の保護・
需要の確保
2
3
地理的表示と地域団体商標の留意点及びブランド戦略
地理的表示保護制度
地域団体商標制度
対象
農林水産物、飲食料品等(酒類等を除く。)
全ての商品・サービス
申請主体
生産・加工業者の団体。
法人格を有しない地域のブランド協議会等も可能。
事業協同組合等の特定の組合、商工会、商工会議所、
NPOに限る。
産地との
関係
品質等の特性が当該地域と結び付いている必要。
当該地域で生産されていれば足りる。
伝統性
周知性
一定期間継続して生産されている必要(伝統性)。
一定の需要者に認識されている必要(周知性)。
品質基準
産地と結び付いた品質の基準を定め、登録・公開する必要。 制度上の規定はなく、権利者が任意で対応。
品質管理
生産・加工業者が品質基準を守るよう団体が管理。
管理状況について国の定期的なチェックを受ける。
制度上の規定はなく、権利者が任意で対応。
登録の
明示方法
統一マークを付す必要。
登録商標である旨の表示を付すよう努める。
規制手段
不正使用は国が取り締まる。
不正使用は商標権者自らが対応(差止請求等)。
その際、損害額の推定等の規定を活用できる。
権利付与
権利ではなく、地域共有の財産となり、品質基準を満たせ
ば、地域内の生産者は誰でも名称を使用可能。
名称を独占して使用する権利を取得。
保護期間
取り消されない限り権利が存続。
(更新手続・費用はかからない。)
登録から10年間。
(継続するためには更新手続・費用が必要。)
海外での
保護
地理的表示保護制度を持つ国との間で相互保護が実現し
た際には、当該国においても保護される。
各国に個別に登録を行う必要。
【ブランド
戦略】
産地と結び付いた品質に国のお墨付きを得て、
統一マークを付すことで差別化し、地域一体となって、
ブランド価値の維持・向上を図ることができる。
産品の名称を独占して使用する権利を取得して、
自らの管理の下で、ブランド価値の維持・向上を
図ることができる。
3
4
既に地域団体商標登録している場合の併用イメージ
地域団体商標権者が地理的表示の登録を行うメリット
① 産地と結び付いた品質について国のお墨付きが得られる。
地域で育まれた伝統と特性を有する産品について、国際的にも広く認知された制度に則
して国がお墨付きを与えることにより、地域及び生産者等の意欲が高まる。
② 統一マークが使用可能となる。
産地と結び付いた品質について国のお墨付きを得た産品であることを需要者に示すことが
でき、他の同種の産品と差別化できる。
③ 不正使用は国が取り締まってくれる。
地理的表示の不正使用に対して国が取締りを行うため、自ら権利行使する必要がなく、
手間・費用がかからない。
留意点
○ 地理的表示に登録されると、地域共有の財産となるため、登録された品質基準を
満たした産品に対しては、差止請求等の権利行使はできなくなる。
なお、登録された生産者団体の構成員以外の者が生産した産品や登録された品質基準
を満たさない産品に対しては、引き続き権利行使ができる。
登録手続
① 商標権者自ら、又は商標権者から承諾を得た生産者団体が、地理的表示の
登録を申請。
② 産地と結び付いた品質等の特性や生産方法を規定する品質基準を策定。
4
5
地理的表示、地域団体商標、商標の組み合わせ活用
自社ブランドを活かしつつ
豊富なGI産品をラインナップ
イタリアの大手食品企業G社は、自社ブランド(品質管
理による信頼感、強い販売力)の強みを活かしつつ、製
品として様々なGIチーズ(下記)をラインアップしている。
・モッツァレラ・ディ・ブッファラ・カンパーナ〔伊・中
南部〕
・ゴルゴンゾーラ(3種)〔伊・北部〕
・パルミジャーノ・レッジャーノ〔伊・北部〕
・グラナ・パダーノ〔伊・北部〕
・タレッジオ〔伊・北部〕
地域団体商標、地理的表示に加え
トップブランドを商標で保護
地域団体商標又は地理的表示を活用し、地域ブランド
全体での価値の保全を図りつつ、その中のトップブランド
については商標により保護するブランド戦略がある。
この場合、トップブランドは地域ブランド全体の価値を
牽引するものともなる。
・「佐賀牛」は1984年から販売開始(2000年商標登録)。
・2004年に、黒毛和種であって (社)日本食肉格付協会の
定める規格の最高肉質である「5」等級及び「4」等級の
脂肪交雑値(BMS)「No.7」以上を「佐賀牛」と定め、それ
以下を「佐賀産和牛」と区分しブランド化。
・「佐賀産和牛」は2007年地域団体商標登録。
海外GIの地域団体商標登録
海外のGI産品として、2品目が我が国地域団体商標に
登録されている。
○ PROSCIUTTO DI PARMA(イタリアGI)
・我が国においては2002年に文字と図形を組み合わせた
商標を商標登録、2007年に地域団体商標登録。
・タイ、中国(EU・中国間のGI相互指定プロジェクト)、
韓国(韓EU・FTA)等においてGI登録。
○ 鎮江香醋(中国GI)
・我が国においては2011年に地域団体商標登録。
・EU・中国間のGI相互指定プロジェクトに基づき、2012年
にEUにおいてもGI登録されている。
地域団体商標→GIへと展開
地理的表示の登録には、一定の伝統性とともに、地域
の生産者で品質の基準を設け、生産行程管理を行う体
制が確保されることが必要。
このため、新しいブランド産品については、地域団体商
標→地理的表示の2段階戦略が考えられる。
① 地域団体商標に登録
・一定の周知性が生まれた段階で、地域団体商標へ登録
(限られた構成員により、当該名称を保護しつつブランド
育成)
② 地理的表示に登録
・産地ぐるみで品質基準や生産行程管理の方法を定め、ブ
ランド産品の特性を明確化、伝統性要件を満たした後に
地理的表示に登録
5