タイトル: 気候変動ファイナンスと開発金融機関の役割 日時:2014 年 12 月 6 日(土)13:00-14:30 主催者・共催者名: JICA 研究所 目的・概要 気候変動資金をいかに有効に活用し、気候変動対策と開発の両立を達成するべきか。開発金融機関(DFI) のこれまでの長年の経験から多くの教訓を学ぶことができる。本イベントは、開発金融機関の経験から 有益な教訓を学ぶとともに、それらの教訓を気候変動ファイナンスに応用する際の課題と機会を特定す ることを目的とした。 アジェンダ(講演者名を含む。敬称略) 須藤智徳, JICA 研究所主任研究員 Katrin Enting, KfW/ドイツ Ophélie Risler, AFD/フランス Ubaldo Elizondo, ラテンアメリカ開発銀行 Stephanie Ockenden, DAC/OECD Michael Westphal, WRI/アメリカ Yuqing Ariel Yu, IGES/日本 Tao Wang, GCF (Green Climate Fund) 発表・議事の概要 JICA 研究所須藤主任研究員より、資金ニーズ及び気候資金フローに関するデータを示しつつ、(1) 気候問題対応と開発とを両立させるために,開発ファイナンスからどんなレッスンが得られるか? (2)気候ファイナンスを有効に使うためにはどの要素が重要か? (3)開発金融機関がその経験を気候 ファイナンスに活かすための課題と機会は? (4)気候ファイナンスをよりよく使うためには,開発金 融機関や研究機関はどんな問題をさらに研究すればよいか? との問題提起を行なった。 JICA の経験として、緩和側で Latin America and Caribbean Sustainable Energy project Fund と、適応側でペルー政府に対する Stand-by Emergency Credit for Urgent Recovery (SECURE)の 紹介を行った。上記問題提起に対する暫定的結論としては、(1)開発における気候変動問題のメイン ストリーム化、(2)その国のオーナーシップと結果をベースとした説明責任、(3)気候問題と開発の双 方に資するデザイン、(4)公的資金による民間資金等の動員の触媒となる手法に関する研究に必要性 を示した。 ドイツ開発銀行 KfW の Ening 氏は,気候ファイナンスは開発ファイナンスの一部であって、その 1 事例であるメキシコを家庭部門対象の Eco-Casa プロジェクトの紹介を行った。このケースでは、 KfW は IDB、EU、他ドイツ省庁等と共に、技術協力、パッシブソーラーハウス補助金、NAMA と しての FC 要素、Green Mortgages クレジット、プロジェクト開発者へのブリッジローンのファイ ナンスなどを組み合わせたもので、それをベースに現地開発機関 SHF が、プロジェクト開発者に対 して低利融資を行ったもの。KfW は、使用技術は問わないが 20%の CO2 削減を要請している由。 フランス開発庁(AFD)の Risler 氏は、JICA や AFD も所属している国際的開発機関のクラブで ある International Development Finance Club (IDFC)の活動を紹介し、気候ファイナンスのコミッ トメント 720 億ドル(2013 年)のうち、緩和が 72 億ドル、適応が 17 億ドルであることを示した。 ファイナンスの方法として、個別プロジェクトを対象としたプロジェクトサポート(ローン、グラ ント) 、部門政策を対象としたセクター予算ローンとプログラムローン(使途指定がある場合とない 場合あり) 、気候変動戦略や行動計画に対するテーマ指定予算ローン(使途指定なし)がある旨紹介。 開発金融機関の付加価値は、3 つのクライテリア(クイック、構造的、高い気候緩和/適応効果)を 設定することで、高いレベルの気候問題へのインパクトを出すことができる旨説明。 ラテンアメリカ開発銀行(CAF)の Elizondo 氏は、 「バリアリムーブ」という考えでファイナン スを行っており、Adaptation にいかにお金を付けるかが今後の大きな課題、一般に気候ファイナン スは MRV に厳しいことがあると述べた。 先進国の ODA の議論の場である OECD 開発協力局(DCD)の Ockenden 氏は、DAC 加盟国、 多国間開発銀行、GEF、UAE からの気候関係ミットメントとして、気候関係開発資金が 2013 年に 370 億ドルであることを明らかにし、これは UNFCCC の気候ファイナンスとは必ずしも一致しない 定義であることを述べた。そのうち緩和は 61%(主としてローンで中進国が主対象)、適応は 26% (低所得国が主対象でグラントが主) 、両方に重なるものが 13%であり、経済インフラ部門(エネル ギー,交通,水)がその 2/3 を占める旨紹介。 米国シンクタンク WRI の Westphal 氏は、今後の研究課題として、Public finance をスマートに 有効に使う方法、Private sector の engagement の重要性、フラグメントしている多数のチャンネ ル間のコーディネーション、適応策は一般に収益を生まないこと、アウトプットベースのファイナ ンスの重要性を挙げた。 IGES の Yu 氏は、適応技術移転と気候ファイナンスをテーマに、債務コスト、エクイティーコス トの課題として、前者は、低担保価値、既存成熟技術とのローンにおける競争、プロジェクトロー ンが途上国では一般的でないことを示し、この高い債務コストが短期的な課題となっていること、 後者に関しては、途上国の投資家は戦略的に低い IRR を採ることもできると言うことを示した。 GCF 事務局の Wang 氏は、本格稼働始めた GCF の今後のスケジュール、戦略的な重点領域、プ ロジェクトプロポーザルプロセスを示した。NDA/窓口機関のノミネーションは 69 カ国から受け取 っており、27 カ国からは準備状況であることが示された。プロジェクトの accreditation は、まずは 2 政府機関であるが,公的機関や民間企業もアクセスでき、その対象はマイクロスケール・プロジェ クトまで含まれている。また REDD+の result-based payment のロジックモデル検討の現況に関し ても報告があった。 イベント風景 (報告者: JICA 研究所 須藤智徳) COP20/CMP10 日本パビリオンにおけるイベント開催報告・発表資料については以下をご覧ください。 日本語:http://www.mmechanisms.org/cop20_japanpavilion/ 英 語:http://www.mmechanisms.org/e/cop20_japanpavilion/ 3
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